クルマの名前には、それを作った人たちのさまざまな想いが込められているもの。反面、その大きすぎる期待からか“名前負け”してしまった車種も。壮大な名前とは裏腹に、悲しい運命をたどったクルマとは……。
文/井澤利昭、写真/スズキ、ホンダ、マツダ、三菱、FavCars.com
キザシ国内販売の1/4が警察へ!? 名前負けしちゃったクルマ5選
神様の名を与えられたものの大地に根付くことはできず…「トヨタ ガイア」
中古市場での車両本体価格の多くが20万円台と、一時は狙い目のお買い得車として注目を集めたガイアだが、流通量が極端に少なくなっている現在は出会えるのが稀なレアな存在に
ギリシャ神話に登場する「大地の女神」を意味する壮大な名を引っ提げ、1998年に販売が開始されたのがトヨタの「ガイア」だ。
当時大ヒットとなっていた初代ホンダ オデッセイの対抗馬として、初代イプサムをベースに開発。イプサム同様5ナンバーサイズでありながら全長を90mm、全高を20mmほど拡大することで、取り回しの良さはそのままに広い車内空間の実現と快適性の向上が図られた。
また、エクステリア、インテリアともに高級感あふれる演出が各所になされ、イプサムには無かった6人乗りの2列目キャプテンシート仕様も用意されるなど、高品位でゆとりのある高級ファミリービークルとして、ライバル=オデッセイに挑んだ。
しかし5ナンバーサイズにこだわったことにより、室内空間にどうしても狭さを感じてしまうことや、中途半端にも感じてしまう高級感からかセールスはイマイチ伸びず、後継モデルも出ないまま2004年に一代限りでその名は消滅してしまうという悲しい結果に……。
取り回しの良さ、小さいながらも高級感がある点が後に評価され、中古車市場では隠れたお買い得車として一時人気となったガイアだが、新車の終売からすでに20年近くが経過しており、現在はタマ数もかなり少なくなってきている。
セダンならではの優美さを備えるも、時代の流れに抗えず!?「ホンダ グレイス」
1モーターでありながらEV発進を可能とした「SPORT HYBRID i-DCD」採用のハイブリッドモデルと、1.5リッター直噴DOHC i-VTECエンジン搭載のガソリンモデルを用意。5ナンバークラスのハイブリッドセダンとしては初となる4WD仕様もラインナップされた
かつての昭和の時代、クルマといえば「セダン」であり、それはある種の憧れの存在でもあった。
いっぽう時代は移り、コンパクトカーやミニバン、SUVといったクルマの多様化が進む現代においては、もはやそれは昔の話。その人気はすでに衰退し、数あるクルマのカテゴリーのなかでも、セダンがその主役の座から遠ざかっているというのはまぎれもない事実だ。
そんな苦しい状況のなか、ホンダ満を持して2014年に市場に投入した5ナンバーサイズのコンパクトセダンが「グレイス」だ。
グレイスとは英語で「優美」や「思いやり」を意味する言葉。「セダンとして、大切な人と過ごす時間を包み込む存在でありたい。」という、開発陣の並々ならぬ想いが込められている。
その名のとおり優美なボディスタイルのなかにホンダらしいスポーティさも感じさせるエクステリア、過剰な装飾を施すことなく、機能美に満ちたインテリアなど、現代のコンパクトセダンに相応しい仕上がりで、販売当初は好調なセールスを記録。
と、上々のスタートを切ったかに思われたが、その勢いも1年足らずで失速することに……。
2017年には安全運転支援システムの「Honda SENSING」を採用とともに、一部エクステリアの変更やシート表皮を一新するといったマイナーチェンジが行われたものの、人気の回復までには至らなかった。
「グレイス」に限った話ではないが、やはりいまの時代にセダンを売ることは難しく、2020年に販売は終了。後継モデルもなく、その名も一代限りで看板を下ろす淋しい結果に。
とはいえ、現代では数少ないコンパクトセダンというスタイルに魅力を感じる人であれば、グレイスはかなりお買い得なモデルだ。
主要グレードであったハイブリッド仕様でも中古車市場では200万円を切るものが多く、1.5リッター直噴エンジン搭載のガソリンモデルであれば100万円前後の出ものも多い。
年式も比較的新しいものが多いため、セダン初心者や高齢ドライバーなどでも安心して乗れる、いま狙い目の一台といっていいだろう。
名車の名を受け継ぐもバブルとともに消えた最後のコスモ「ユーノス コスモ」
マツダのプレミアムブランドに位置づけられていた「ユーノス」のフラッグシップモデルとして1990年に誕生。その優美なスタイルは「クーペ・ダイナミズム」というキャッチコピーを具現化している
1967年に登場し、もはや伝説とまでいわれる名車「コスモスポーツ」以来となるロータリーエンジン専用車であるとともに、市販車としては世界初の3ローターエンジン「20B-REW」を搭載したモデルも用意されたことでも記憶に残るのが1990年に登場した「ユーノス コスモ」だ。
車名である「コスモ」はイタリア語で宇宙を意味する言葉。宇宙ロケットの打ち上げや月面着陸への機運が高まった、初代コスモスポーツ誕生当時の世相を背景に、「宇宙時代にふさわしいエンジンを」という開発陣の想いを反映したものだという。
そんな「コスモ」の名が冠されたモデルとしては4代目となるユーノス コスモだが、初代のスポーティで宇宙船を思わす未来的なスタイルとは異なり、流麗でハイグレードな高級スポーツクーペとして誕生した。
大柄な2ドアクーペのみの設定というエクステリアに加え、本革やウッドパネルが多用された豪華なインテリア、世界初となるGPSカーナビを搭載したモデルも設定されるなど、その内容はまさにバブル絶頂期であった90年代を反映した豪華なもの。
いっぽうでロータリーエンジンならではの燃費の悪さも販売当初から話題となり、特に3ローターの20B搭載モデルではカタログスペックで上でも6.1km/L、実燃費ともなればそこからさらに悪くなるという大食漢ぶりを発揮。そんな点でもバブリーさを体現することとなった。
バブル景気に陰りが見え始めた1996年、ユーノスブランドの終焉とともにその姿を消したユーノスコスモだが、数少ない3ローターロータリー車に乗ることができるという希少性から「20B-REW」搭載車はいまなお人気が高い。
タマ数が少ないことも手伝って中古車価格も300万円程度から、程度が良いものとなれば新車価格を大きく上回るものも。
2ローターの「13B-REW」搭載モデルでも200~300万円程度で、維持費などを考えると決してコスパがいいクルマとは言い難いが、バブル時代に生まれた最後の“コスモ”の上質で優雅な走りを味わえることを考えれば、そう高くはないのかもしれない。
生産台数わずか59台!? 皇室御用達の最高級乗用車「三菱 ディグニティ」
政府要人や会社の重役クラスが乗るリムジン仕様の高級車であるディグニティ。写真の初代モデルは秋篠宮家の公用車として宮内庁に納入され、ニュース映像などにもたびたび映し出された
秋篠宮家の公用車として宮内庁に納入された実績もあり、当時の三菱のフラッグシップモデル的な役割を担って1999年12月20日に発表された最高級セダンが「ディグニティ」だ。
その車名は英語で「尊厳」や「気品」を意味する言葉が由来で、「技術の粋を集めて作り上げた、比類ない最高級車を象徴する名前」として命名されたという。
ヒュンダイとの共同開発で誕生し、2000年に発売が開始されたディグニティは、同時期に販売されていたプラウディアをベースにロングホイールベース化を図ったリムジン仕様で、トヨタのセンチュリーや日産プレジデントのライバルという位置づけのモデルだった。
最大出力280psを発揮する4.5リッターV型8気筒DOHC GDIエンジンを横置きに搭載した前輪駆動車で、幅広のセンターピラーが特徴的な品のあるボディに、豪華な内装とゆとりのある車内という内容でありながら1000万を切る価格は、十分魅力的と思われた。
ところが、FFである点が最高級のリムジンとしてはイマイチに魅力に欠けた点や、リコール隠しなどで揺れた当時の三菱のイメージダウンなどもあってか、わずか1年余りで販売が終了。
その生産台数もたった59台と、限定車を除く市販国産車としては生産台数が最も少ないクルマという不名誉な記録を残すこととなってしまった……。
生産台数が極端に少ないだけに中古車市場でもまず出てくることがないディグニティ。日産・シーマのOEMとして2012年に登場した2代目モデルこそ稀に見かけるものの、こちらもほぼ絶滅状態であることに変わりはないようだ。
世界に挑んだスズキのセダン! 国内ではそのほとんどがパトカーに!?「スズキ キザシ」
Dセグメントセダンのフラッグシップとして2009年にデビューしたスズキのキザシ。日本では完全受注生産という販売形態をとった点や、“スズキ=軽”というイメージを払拭できなかったことも影響し、国内での販売は伸び悩んだ
「世界の市場に向け、新しいクルマ作りに挑戦する“兆し”を見せる」というコンセプトからその名が命名されたのがスズキの「キザシ」だ。
2007年9月に開催された第62回フランクフルトモーターショーで発表された「コンセプト・キザシ」がその始まりで、同年10月の第40回東京モーターショーでは「コンセプト・キザシ2」へと進化。
翌2008年3月開催のニューヨーク国際オートショーで発表された「コンセプト・キザシ3」を経て、2009年からそのメインターゲットとされていたアメリカでの販売がスタートした。
いっぽう日本では受注生産品という独特な販売形式がとられた。そのせいもあってか国内での販売は伸び悩み、販売が終了する2015年までの登録台数は3379台にとどまることに。
また、キザシといえば警察の捜査車両やパトカーとして納入されたことでも有名なクルマ。2013年から908台が導入されており、これは国内販売されたキザシの実に1/4以上が、警察用車両として活躍したという計算になる。そのため、「キザシ=覆面パトカー」というイメージを持っている人も少なくないようだ。
こうした背景もあり、比較的高年式であるにもかかわらず中古車市場でのタマ数はやはり多くないのが現状。
とはいえ少ないながらも価格は100万円前後とこなれており、この先、新車では出る可能性が少ない、このクラスのスズキのセダンに魅力を感じるのであれば、購入を一考してみる価値はありそうだ。
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