大ヒットを飛ばし一時代を築いた3代目オデッセイを振り返る
バブルが弾けたあとの1994年、ホンダはオデッセイを発売する。この時代はまだまだミニバン黎明期で、ホンダが送り出した初のミニバンであるオデッセイがいきなり大ヒットを飛ばした。
まさに「走るラブホ」だった「S-MX」! メーカー自ら「恋愛仕様」と謳う「究極の車中泊カー」だった
初代オデッセイは高過ぎず低過ぎないちょうどいいフォルムで登場した。それには理由があり、ホンダの生産ラインで製造できる最大車高の規制があったからだといわれているが(※諸説あり)、これがミニバン黎明期であったことから、車高が高いクルマに慣れてないけど、豊富な居住空間が欲しいというユーザーにベストマッチ。ほどほどの高さの着座位置で扱いやすく、ほどほどに室内は広い。それがRVブームで存在感が薄くなっていたホンダを救ったワケだ。
そして「バン」というのは日本では商用車(=荷物優先車)を意味するわけだが、他社の一部モデルがミニバンをSUVや商用車をベースとして作り出すなか、オデッセイは(ミニ)バンを名乗りながらも操縦安定性と快適性を両立させていた。これには他社もすぐに追随し、日本のミニバンはこうして発展。初代オデッセイは、先行して登場したトヨタ・エスティマとの2大巨頭で時代を変革したのだ。
立体駐車場もOKの低全高スタイルと使い勝手の良さで販売は好調
初代オデッセイの月間販売目標台数はわずか5000台だった。ところが売れに売れてミニバンが一大ブームになり、1994年10月の発売ながら94年は1万5209台、翌1995年には年間12万5559台を販売。そして難しいとされていたキープコンセプトでモデルチェンジした2代目もヒットし、初代の発売から5年後の1999年には国内累計販売台数が50万台に達した。業界のヒットモデルの2代目は難しいという定説を覆して、2003年10月に3代目オデッセイが登場する。
3代目オデッセイ最大の特徴は、新開発の低床プラットフォームの採用。これは立体駐車場にも入庫できるサイズであり、2代目よりも80mm低い1550mmという低全高スタイルが、都市部のユーザーでも使いやすいボディサイズとして受け入れられた。
また、床下格納式3列目シートや多彩なシートアレンジで、ラゲッジルームの最大容量は1052Lを確保。2列目シートはフラットに収納できるダブルフォールダウン式で、3列目シートは電動床下格納機構とAC100V電源の設定もあり、高い利便性を誇っていた。 また、いち早く電動開閉できるパワーテールゲートも設定され、室内からはもちろんリモコンキーでも操作できるなど使い勝手と先進装備も魅力だった。
走りに一家言あるオーナーも納得のアブソルートを引き続きラインアップ
エンジンは当時のアコードなどでおなじみだった2.4L直4のK24A型を搭載して、先代からラインアップされたV6エンジンモデルを廃止。最高出力160ps(118kW)、最大トルク22.2kg-m(218N・m)のスペックは必要にして十分でありながらも、上位グレードに圧縮比を高めたハイオク仕様のアブソルートを先代に引き続き設定する。
最高出力200ps(147kW)、最大トルク23.7kg-m(232N・m)の高出力エンジンを筆頭に、ミニバンであっても運転していて楽しいクルマが欲しいというユーザーに強く訴求された。
トランスミッションも新開発の7スピードモード付CVTで燃費を向上させながらも、走りのアブソル―トや4WD仕様には5速ATを用意。自然な運転感覚も重要項目として開発され、「本当はミニバンなんか欲しくないけど、仕方がない……」というユーザーの受け皿になっていた。
駆動力に優れた4WDに加えて先進の安全装備も充実
4WDは従来のデュアルポンプ・システムを進化させて、ワンウェイ・カムユニットとパイロット・クラッチを追加。後輪への駆動伝達のタイムラグを短縮することで、旋回時の安定性を向上させたうえ、最小回転半径は5.4mとクラス最小を誇った。
また、安全装備も充実で、ステアリングの舵角でヘッドライトが向きを変えるAFS(アダプティブ・フロントライティング・システム)や、VSA(ABS+TCS+横滑り防止装置)、ドライブ・バイ・ワイアを採用。
ミリ波レーダーで前走車を検知して追突ダメージを軽減するブレーキシステムまでも備わる。ホンダ定番の4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンョンは、アブソルートに備わる17インチタイヤと相まって、走って楽しいミニバンの地位を確実なものとした。
ミニバン=スライドドアという定説が3代目オデッセイを埋没させる
だが3代目オデッセイは末期を迎えて、大転換が起こってしまう。初代モデルのヒットを受けてモデルチェンジした、2代目エルグランドや初代アルファードが2002年に登場して大ヒット。2008年には2代目アルファードの兄弟車としてヴェルファイアが登場するなど、ミニバンは大きくて背が高く「顔」が大事な時代がやって来る。
初代オデッセイが登場した頃は、ミニバンアレルギーがあった人もいたワケだが、時代を経て背が高くて室内が広いことが重要となったミニバン界において、3代目オデッセイは言葉は悪いが「中途半端」な存在となってしまった。
ライバルがスライドドアであったことに対して、ヒンジドアならではの利便性はニッチなユーザーにしか認知されず。ボディを軽量にできて、大きく開けば開口部が広いというメリットも訴求したが、ライバルと目された同じヒンジドアの2代目トヨタ・イプサムが2010年に、同マークXジオは2013年に販売終了。いつの日か、ミニバンといえば「室内の広さとスライドドアだよね!」という時代が到来したのだ。
ミニバンブームを築いたオデッセイの終焉は寂しい限り……
もちろんホンダも、エリシオンやステップワゴンなどでスライドドアを提案していたが、エリシオンはホンダらしいスマートなデザインが時代にそぐわなかったのか(途中大幅なテコ入れがなされたが)、日本国内は2013年に販売を終了。
5ナンバーサイズが主戦場のステップワゴンのライバルは、トヨタ・ノア&ヴォクシーや日産セレナであり、オデッセイはアルファードなどのLクラスでもステップワゴンなどのMクラスというジャンルに当てはまらず、強いてライバルを挙げればマツダMPVやトヨタ・エスティマなど。いずれも販売が終了したモデルであり、ある意味「オデッセイ」という唯一無二のジャンルになってしまった。
それでもファンに支えられて、オデッセイはオデッセイなのだと、2008年に4代目オデッセイがキープコンセプトで登場。一転して2013年にはスライドドアで起死回生を狙った5代目オデッセイも健闘したが、2020年11月にフェイスリフトなどの大幅改良を実施するも、2021年中の生産終了がすでにアナウンスされている。
ホンダらしい走りにこだわった3代目オデッセイだったが、ミニバン=スライドドアの流れに抗うことができず、5代目モデルでスライドドアを採用するも、時すでに遅し……。とはいえ、初代モデルの登場から最終モデルの5代目後期まで、一貫して走りにこだわってきたオデッセイがこれまで所有してきたユーザーや、クルマフリークの記憶に残るミニバンであったことは間違いないはずだ。
■3代目オデッセイの日本国内での販売台数(抜粋)
・2002年/5万2366台※10月に3代目登場
・2003年/4万5374台
・2004年/9万7849台
・2005年/6万4002台
・2006年/4万4986台
・2007年/3万1792台
・2008年/2万8982台※10月に4代目が登場
■ホンダ・オデッセイ・アブソルート(RB1型、FF)SPECIFICATION
〇全長×全幅×全高:4765mm×1800mm×1550mm
〇ホイールベース:2830mm
〇トレッド 前/後:1560mm/1560mm
〇車両重量:1640kg
〇乗車定員:7名
〇最小回転半径:5.4m
〇室内長×室内幅×室内高:2790×1535×1220mm(サンルーフ付きは1205mm)
〇エンジン:K24A型DOHC直列4気筒16バルブ
〇総排気量:2354cc
〇最高出力:200ps/6800rpm
〇最大トルク:23.7kg-m/4500rpm
〇トランスミッション:CVT
〇サスペンション 前後:ダブルウィッシュボーン式
〇ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
〇タイヤサイズ 前後:215/55R17
■ホンダ・オデッセイ・L(RB2型、4WD)SPECIFICATION
〇全長×全幅×全高:4765mm×1800mm×1570mm
〇ホイールベース:2830mm
〇トレッド 前/後:1560mm/1560mm
〇車両重量:1700kg
〇乗車定員:7名
〇最小回転半径:5.4m
〇室内長×室内幅×室内高:2790mm×1535mm×1220mm(※サンルーフ付きは1205mm)
〇エンジン:K24A型DOHC直列4気筒16バルブ
〇総排気量:2354cc
〇最高出力:160ps/5500rpm
〇最大トルク:22.2kg-m/4500rpm
〇トランスミッション 5速AT
〇サスペンション 前後:ダブルウィッシュボーン式
〇ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
〇タイヤサイズ:215/60R16
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