2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2014年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介したい。
東京モーターショーに抱く思いや、読者からの質問に答える徳さんの筆致には、おそらく普段抱かれているのとはまた違った「徳大寺有恒」の姿が見えてくるのではないだろうか。
ソニーAFEELAによる高次元の挑戦、ホンダの新たなEV計画…… 「CES2024」から見えてきたこと
(本稿は『ベストカー』2014年1月10日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)
■東京モーターショーに出かけた
3代目MINIクーパー…3気筒1.5L直噴ターボを搭載した3代目は136ps/22.4kgmとかなりのハイパワーだ。全長は98mm大きくなり、3821mmとなり、全幅は1727mmと3ナンバーになった。クーパーSは4気筒2Lターボとなり、192ps/28.5kgmとさらにハイスペック
東京モーターショー(編集部註:2013年11月22日 - 12月1日に開催された、第43回 東京モーターショーのこと)が開催中だ。
生まれて初めて東京モーターショーに出かけたのは高校2年生、つまり17歳の時だった。大学生となり洋書屋の「本流書店」の店員となり毎回東京モーターショーに出店し、働いた。
ここでお会いした方も多く、メルツェデスやBMW、ローバーやジャグァのオーナーとも親しくした。特にヴァンヂャケットの創始者である石津謙介氏の息子さんである石津祐介氏とは今も親しくつきあっている。
さて今回の東京モーターショーは前回よりも華やかだった印象だ。VW、メルツェデス、BMW、ジャグァ=ランドローバーといった、輸入車ブースもたくさんの人だかりができていた。日野やいすゞ、三菱ふそうといったトラック・バスメーカーも元気に見えた。
MINIのようにワールドプレミアといって世界初公開の場を東京モーターショーに選んだモデルが多いことは東京を重要なマーケットと認識している結果で、うれしいことだ。
個々のクルマの印象は次回話すとするが、やはりGMやフォードといったアメリカのメーカーが出展していないのは寂しい。
東京モーターショーはコストがかかりすぎ、効率的ではないらしいが、やはりアメリカ車が出展されていれば、もっと盛り上がるだろうにと思う。新型コルベットや、ダッジ・ヴァイパー、フォード・マスタングといったマッスルカーが、ショー会場にあればさぞ賑わったことだろう。
今回、平日は20時まで開催していた。東京の有明という立地もあるが、仕事帰りに立ち寄れるというのはいい。ショーと名のつくものである以上、お客のことを第一に考えなければならない。ショーアップやサービスを怠ってはならない。クルマで行けば、帰りに美しい夜景を楽しむことができたはずだ。
東京モーターショーがあると、名古屋モーターショー、大阪モーターショー、博多モーターショーと西に移っていく。東京モーターショーほど規模は大きくないが、趣向を凝らした見せ方をしているところもあり、出かけてみるといい。
■ビートとS660コンセプト
ホンダ S660コンセプト…ビート後継モデルとされるS660コンセプト。待望のミドシップのオープンモデルでエンジンは3気筒ターボと予想される。徳さんの期待も大きいが、何より「どれくらい軽くできるかが大事だ」と語る
(読者の方からの、ビートの新型が登場したら乗りますか? という質問に答えて)
ビートはサイズとスタイルが気に入っていました。ホンダはコメントしていませんが、ピニンファリーナの手が入っていると思われるデザインが好きでした。
軽自動車ながらミドシップを採用したパフォーマンスもよかったですね。またああいうクルマに乗りたいものです。ビートはNAでややトルク不足でしたが、現在ならターボで対処してくれるはずです。
2シーターオープンに必要なのは何より軽さです。軽さがビートの魅力であったことはいうまでもありません。大いに満足していましたが、ベストカー編集部にビートをぜひ欲しいという人物がいて譲りました。
今回ホンダはS660コンセプトという軽自動車のオープンを東京モーターショーに出展していますが、軽自動車はスポーツカーのベースにとてもいいと思います。ビートはホンダの都合でわずか5年ほどで生産を止めてしまいました。そこがホンダのいけないところで、S660が発売したらもっと長く大事に売ってほしいと思います。
税制問題はきわめて政治的な話ですが、ここはわれわれユーザーが声を大にして政府にプレッシャーを与えたいところです。
■日産の旧モデル販売
(読者の方からの、新型エクストレイル登場に絡めた、日産は日本市場を大事にしていないのですか? という質問に答えて)
エクストレイルのディーゼルは私の大好きなクルマです。エンジンの出来がよくてディーゼルらしさを感じませんでした。ヨーロッパのディーゼルのように長距離乗っても疲れず、ストレスを感じさせません。こいつが新型にないのは残念です。
スカイラインのほうは新型に乗っていませんが、旧モデルの2.5Lはバランスのいいクルマですから、熟成さえされれば、それでもいいと思います。
日産は会社の規模がとても小さくなりました。ルノーと合わせてグローバルで考えれば巨大な企業ですが、こと日本のマーケットを考えればずっと小さくなっています。もう昔の日産でないことを我我ユーザーも理解しなければなりません。
またスカイラインというクルマは日産のなかでは存在こそ偉大ですが、販売台数としては、メイン車種ではありません。
日本マーケットを考えれば、日産の選択は間違いではないかもしれません。とにかく日本においては日産はトヨタのライバルとして立ちはだかる存在ではないのです。
■大人しい日本人
(読者の方からの、増税に絡めた、日本人は本当に大人しいと思います。いつ怒るんでしょうか? という質問に対して)
確かに今の政治にはいろいろいいたいことがありますよね。日本人は本当に大人しいと思います。いつ怒るんでしょうか?
かつては自民党が下野したこともあるのに、政治は変わっていないように思います。その時の政権にあった民主党が何もできなかったから、元に戻ってしまった、そういうことでしょう。
現在は相当ライトハンドなトップですよね。もちろん与党を批判するばかりでは能がないと思うのですが、景気が少しばかりよくなったからといってそれでいいのでしょうか。
国民による国民のための政治、こいつが基本のはずです。国民は政権を監視し、時に声を上げることが進んだ民主主義だと思います。
■アヴァンタイムを見かけた
ルノー・アヴァンタイム…「2ドアミニバン」という特異なコンセプトを持ち、2002年11月日本に導入された。全長×全幅×全高は4680×1835×1630mmと当時としてはかなり大きかった。ドアは1.4mもあり、乗降性は決してよくなかった。FFでV6、2.9Lを搭載し、価格は500万円。この大きさで5人乗りは日本人には贅沢すぎた
(ルノーアヴァンタイムを東京で見かけました、日本からこういうクルマが生まれてこないのはなぜなのでしょう、という疑問に答えて)
アヴァンタイムが日本に導入された2002年に私も乗ってみましたが、全幅が当時としては大きく(1835mm)もてあました記憶があります。
今やミドルセダンのほとんどがこのサイズなのですから、現在乗るとまた違う印象を持つでしょうね。
アヴァンタイムはそのサイズが必要だとルノーは主張していましたが、日本では取り回しづらく、見切りがよくないこともあって不便なくらいでした。
フランスでも思ったより売れませんでした。パリでもリヨンでもニースでも道はタイトです。アヴァンタイムが、あのデザインでもう少し小さかったらと思ったりします。あのコンセプトはあれほど大きくなくてもできたのではないかと思います。
むしろ日本のミニバンのほうが、アヴァンタイムが狙った理想に近いように思います。
■ピンクのクラウン
(読者の方からの14代目クラウンの特別色ピンクの話題に答えて)
ピンクのクラウン、私はあまり評価していません。私と同じくらいのばあさんならともかく(ピンクは基本的にはばあさんカラーです)若い女性には乗ってほしくありません。またハリウッドの役者なら別ですが、いい歳の男が乗るのは難しいでしょう。
私が思うおしゃれな色はアイヴォリーホワイトかメタリックでないグレイだと思います。内装はタンかベージュ中心にまとめたいです。
黒ずくめというのはなんともうっとうしいです。ただし、カラーは個人の好みですから、他人がどう思おうが、それぞれが楽しめばいいと思います。
ピンクのクラウン…650台を受注し、12月からデリバリーが始まった新色「モモタロウ」の購入者層は30代、40代が約4割を占め、女性の購入者は約35%だという。街で見かけた時にどんな印象を与えるのか? 楽しみではある
■徳大寺有恒の「俺と疾れ!」リバイバル特集
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