今注目を集める欧州クロスオーバー トップ10
欧州Bセグメントのコンパクトクロスオーバーは、自動車市場において最も重要なセグメントの1つであると言っても過言ではない。従来のBセグメント・ハッチバックの販売台数が減少を続ける中、手頃な価格で比較的実用性の高い移動手段を求めるユーザーの間で、クロスオーバー人気はますます高まっている。
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その魅力を理解するのは難しいことではない。高い車高によって運転視界を確保し、タフな外観はアクティブなライフスタイルを表現している。また、全長・全幅も従来のコンパクトカーよりもわずかに大きい程度のサイズに収まっており、人や荷物のためのスペースが少しばかり広くなっている。実際、家族で楽しめる多用途性という点では、多くのモデルがハッチバックを凌駕している。
そのため、ほとんどの主要メーカーが5ドアのコンパクトクロスオーバーを市場に投入している。パワートレインも、旧来の内燃エンジンから電気駆動まで、幅広く用意されている。
つい最近まで、ハンドルを握ることが楽しくなるようなモデルは少なかった。重心が高く、小型で手頃な価格帯のクルマでは利益率が低いため、感情的な高揚感よりも日常的な使い勝手が重視されるのが普通だった。しかし、この状況は変わりつつあり、複数のコンパクトクロスオーバーが純粋にドライバーを楽しませてくれるようになった。
今回は、Bセグメント・クロスオーバーが激戦を繰り広げる欧州市場の一角、英国で販売されているモデルの中からベスト10を選出して紹介したい。各モデルのスペックや価格は英国仕様に準ずるので参考までに。
1. フォード・プーマ
フォードはコンパクトクロスオーバーの「パーティ」に遅刻したわけではないが、その最初の製品であるエコスポーツは、中途半端な準備体操程度のものに感じられた。新興市場向けにブラジルで設計・製造されたエコスポーツは、シャープなハンドリングの6代目フィエスタと同じプラットフォームを使用しているにもかかわらず、ちょっと安っぽくて、パッケージングに目立った欠点があり、走りもかなりスローだった。
そのためフォードは、欧州で定評あるプーマ(1997~2001年の2ドア・クーペ)という名称を使うことで、コンパクトクロスオーバーに活力を与えようとした。90年代後半のオリジナルのファンからは顰蹙を買ったものの、生まれ変わったプーマは、かつてのクーペに恥じないダイナミクスを打ち出している。コンパクトなクロスオーバー車が、ホットハッチのようにドライバーの琴線に触れることができないのは否定しないが、フォードのマーケティング部門が選んだネーミングを許せるだけの力は秘めている。
また、フィエスタ(現行の7代目)と足回りを共有しているため、クイックなステアリング、驚くほどの俊敏性、忠実なグリップにより、驚くほど正確かつ冷静にコーナーを切り抜けることができる。さらに、スポーティグレードではダンピングが特に流暢で巧みに調整されており、快適かつ洗練された走りを可能にしている。パワートレインは3種類の1.0Lガソリンターボを用意し、48Vマイルドハイブリッド技術により、最も強力なもので最高出力127psを発生する。
最も興味を惹かれるのは、ホットハッチのエスプリを吹き込んだフラッグシップモデル、プーマSTだ。最高出力200psの1.5Lターボと6速MTをフィエスタから取り入れたこのモデルは、硬い乗り心地に耐えられるなら、運転するのが本当に楽しくなるはずである。AT車は、見た目は同じだが、低出力の1.0Lエンジンを使用しているので注意が必要だ。
その他の点では、ファミリーカーに求められる条件を正しくクリアしており、他車ほどの高級感はないものの、十分な広さとスマートなデザインのインテリアを備えている。また、装備も充実しており、トランクフロアの下にある斬新なメガボックスは、濡れた衣服や泥だらけのブーツを収納できる、大きくて掃除がしやすいコンパートメントになっている。
2. フォルクスワーゲンTクロス
フォルクスワーゲンは、他社がクロスオーバー人気に便乗しようと躍起になるのを見守り、虎視眈々とチャンスを待ち続けた。そして登場した同社初のコンパクトクロスオーバー、Tクロスは、慎重に判断し実行されたクルマのように感じられた。
Tクロスは、サイズと価格においてクラスのちょうど真ん中に位置し、他車よりもSUVらしいスタイリングを持っている。また、インテリアの質感は期待されるほどのレベルではないが、誰にでもおすすめできるクロスオーバーとして高い実力を備えている。
英国向けのエンジンは、1.0Lの3気筒ターボと、最高出力150psの1.5L 4気筒ターボの2種類。編集部は1.0L TSIの95psと114psの両モデルに試乗したが、どちらも遅くは感じなかった。114psのモデルは、95psのモデルよりも少し速く、運転しやすいといったところ。
洗練されたデザイン、経済性の高さ(両車とも、郊外への長距離移動で21km/lは十分に達成可能)はいずれも好印象。乗り心地とハンドリングはきれいにまとまっており、堅実な作りと低速での落ち着き方はオーナーに気に入られるはずだ。
実用性はコンパクトカーとしては非常に高く、標準装備のスライド式リアシートは、かさばる荷物を運ぶ際に多用途性を発揮する。もう少しだけシャープなテイストが欲しければ、クーペタイプのタイゴもあるが、基本的には同じクルマだ。
3. ルノー・キャプチャー
2代目ルノー・キャプチャーは、いくつかの点で、アライアンスの兄弟車である日産ジュークを抑えている。インテリアはやや広く、スライド式リアシートを持つ柔軟性の高いものだ。また、驚くほど上品な質感を持ち、リッチな雰囲気を盛り上げる車載機器も充実。そして、エンジンのバリエーションが豊富なので、幅広いユーザーのニーズに対応できる。
キャプチャーが初代から得意とするスタイリングとバリューは、もちろん今も変わらない。エントリーグレードの1.0Lガソリンターボは、強力なトルクを持ち、運転しやすく、適度に洗練されているが、パフォーマンスに圧倒されることはない。中間グレードの1.3L TCeガソリンエンジンは、低回転域ではスムーズだが、回転が上がると少し騒々しい。
最上位のEテックPHEVもあるが、2代目キャプチャーにおいてはほんの端役に過ぎない。ドライバビリティはきちんとあるが、他のモデルほど乗り心地やハンドルはよくないし、価格も3万ポンド(約520万円)以上になる。
4. ヒョンデ・バイヨン
バイヨンは、ヒョンデが欧州市場に投入した2台目のBセグメント・クロスオーバーである。既存のヒョンデ・コナとはあらゆる面で対照的で、うまくキャラクター分けがなされている。バイヨンは最新の「K2」プラットフォームを採用し、コナと比べて室内が広く、トランク容量も10%ほど大きい。
スタイリングはコナよりも保守的だが、それでも道路上で目を引く外観に変わりはない。シャープなラインと多角形を用いたデザインは好みが分かれるかもしれないが、中身は広くて多用途なクロスオーバーであり、運転支援システムなど装備も充実している。
英国向けのパワートレインは、T-GDIと呼ばれる1.0Lガソリンターボのみ。48Vのマイルドハイブリッド・システムを搭載し、最高出力は100psと119psの2段階が用意される。高回転域ではうるさく聞こえるが、中回転域のトルクは十分にある。
乗り心地は決してソフトではなく、街乗りでは少し硬さを感じるものの、安心感のある安定したボディコントロールが維持されている。反応の鈍いエンジンや直感性に欠いたステアリングには改善の余地があり、低速域は苦手なようだ。しかし、運転操作は一部のライバル車ほど過敏なものではなく、肩の力を抜いて気楽に走らせることができる。
全体的に完成度が高く、価格も手頃で、実用的なファミリーカーである。ドライバーの愛情を刺激したり、羨望のまなざしを集めたりすることはないが、毎日の移動のニーズをしっかり満たしてくれるだろう。
5. セアト・アローナ
セアト・アローナは、兄弟車Tクロスに1年先行して英国市場に投入され、しばらくの間、このクラスのトップモデルだった。しかし、Tクロスと比較した場合のみではあるが、そのインテリアはかつてのような居住性の高さを感じさせず、運転体験もそれほど充実していない。
アローナのインテリアは、セアトの他のモデルと比べてやや古臭く、ハンドリングも淡泊だが、一部のライバル車に比べればマシな方だ。ディーゼルエンジンの設定はないが、高い洗練性とドライバビリティを持つ、幅広いエンジンラインナップを備えている。
スタイル、利便性、実用性が重視されるこのクラスにおいて、アローナはほとんどのライバル車よりも多くのものを提供している。価格設定はクラス平均よりも若干高いものの、一流のインフォテインメント・システムと充実装備によって相殺されている。
6. プジョー2008
プジョーの2代目2008は、初代よりも優れたクロスオーバーであることは間違いない。よりスマートなスタイリング、大幅に改善された室内スペース、3008や5008に匹敵する上質なインテリアを備えた2008は、真剣に検討すべき1台となった。
ブランド独自の「iコックピット」レイアウトは、低い位置にある小径ステアリングホイール、高い位置にある計器類、そしてドライビングポジションが、あらゆる体格のドライバーに合うとは限らない。しかし、それ以は広々としていて、非常によく仕上げられている。プジョーはやや背の低いボディデザインを採用したにもかかわらず、2列目シートは大人や背の高いティーンエイジャーにとって十分な広さになっている。
パワートレインは1.2LガソリンターボとEV(e-2008)から選択でき、後者は最高出力136psのモーターを搭載し、予想通りの軽快な加速と約340kmの航続距離を誇る。しかし、価格は3万5000ポンド(約600万円)からと、ガソリン車より1万ポンドも高い。
7. 日産ジューク
初代ジュークこそ、コンパクトクロスオーバーというクラスを欧州市場に根付かせた1台である。2000年代後半の欧州での成功は、ハッチバックより背が高く、SUVらしいスタイリングを持つクロスオーバー車の需要を掘り起こし、その後多くの模倣車が登場したが、生涯を通じて型破りな選択肢であり続けた。
2代目は、ファンキーでオフビートなスタイリングはそのままに、初代にあった最大の欠点を修正したものだ。室内空間はクラストップレベルの広さを誇り、リアシートには大人から子供までが座れるスペースがあり、トランクも十分なサイズが確保されている。
平均的なクロスオーバーよりもしっかりとバネの効いたスポーティなフィーリングと、安定したハンドリングを持つ。乗り心地は、時に少々落ち着きを失うこともあるが、ほとんどのケースで十分に落ち着いている。
パワートレインは、最高出力116psの1.0Lガソリンと、親戚のルノー・キャプチャーやクリオと同じ143psの1.6Lハイブリッドが用意されている。どちらも華のあるパフォーマーではないが、流れの速い交通について行くには、後者の方が適している。
8. ホンダHR-V
最新型のホンダHR-V(日本名:ヴェゼル)は、すべてが一新されている。全く新しいエクステリアデザインと、状況に応じてエンジン、電気、またはその両方を使用するハイブリッド・パワートレインを導入したのだ。
前方視界がよく、乗り心地もよく、運転操作も簡単で、このクラスの中では魅力的なクルマだと思う。しかし、街中ではそつなくこなす新パワートレインも、加速が必要なときにナーバスになりやすく、上質な雰囲気がやや損なわれてしまう。シャシーも「楽しさ」を追求したものではないが、公平を期すために言うと、まったく個性がないわけではない。
インテリアは大きく改善され、内装材もよく、十分な明るさと広さがある。ホンダの「マジック」シートが2列目に採用されており、使い勝手はクラストップではないものの、非常に適応性の高い1台となっている。
9. オペル/ヴォグゾール・モッカ
ヴォグゾール(オペルの英国版)が2020年に2代目モッカを発売したとき、初代の不格好なデザインが、一気にファッショナブルなものへと変貌を遂げた。ステランティスの傘下で新しいデザイン言語をいち早く導入したモッカは、以前よりもずっとスマートで個性的なマシンとなった。
また、おなじみのガソリンやディーゼルに加え、EVのパワートレイン(モッカ・エレクトリック)も用意されている。後者は血縁関係にあるプジョーe-2008と同じセットアップで、最高出力136psのモーター、50kWhのバッテリー、320km強の航続距離を謳っている。
どのパワートレインを選んでも、楽しいというより堅実なハンドリングを持った気楽な仲間となるだろう。残念なのは、硬めのサスペンション設定が、開発エンジニアがむしろ楽しさを目指していたことを暗示していることだ。確かにボディロールは思ったより少ないのだが、ダイナミックな輝きがないため、硬めの乗り心地を正当化するのは難しい。
さらに、スタイリングにこだわったことで、先代よりも汎用性が低下している。リアシートの乗員スペースが減っただけでなく、トランク容量も360Lから350Lにわずかに縮小された。それでも、インテリアはスマートで、装備も充実しているし、運転席からの見晴らしも良好だ。
モッカのエレガントな外観には興味を惹かれるが、その他の部分は期待値に届いていない。
10. トヨタ・ヤリス・クロス
トランクリッドに書かれているように、これはトヨタ・ヤリスのクロスオーバーバージョンである。90年代の初代RAV4は、オフローダー的なルックスにハッチバック的なドライビング・ダイナミクスとランニングコストを併せ持ち、コンパクトクロスオーバーの草分け的存在となったが、ヤリス・クロスは比較的後発のモデルである。
標準的なヤリスと同様に、トヨタのTGNAプラットフォームをベースにしていることから、キビキビとした操縦性、力強いグリップ、そして見事なまでにスムーズな乗り心地を実現している。従来の意味での面白さはないが、ボディコントロールには研ぎ澄まされた滑らかさがあり、取りこぼした要素はほとんどない。ガソリンと電気のハイブリッド・システムを搭載し、CVTとの組み合わせで、スムーズかつ驚くほど軽快に走る。街中では、短距離のEV走行も可能だ。
ヤリス・クロスは、全長をヤリスより伸ばしたことで少し実用性が高まり、特にトランク容量(397L)に関しては使い勝手が良くなっている。また、ややプラスチッキーではあるが、しっかりとした造りで、装備も充実している。角ばったホイールアーチの処理や背の高いスタンスなど、見た目も特徴的で、ライバル車よりも頑丈なSUVという雰囲気がある。
もっと運転が楽しくて、もっと実用的で、もっと高級感のあるクロスオーバーもあるが、ヤリス・クロスはランニングコストが安く、よく走り、花崗岩の塊のように頼りになることだろう。検討すべき1台である。
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みんなのコメント
韓国産はやはりそれなりの評価しか無いんだな