■元になったコンセプトカーから大人しめになった初代「ヴェゼル」
先代のホンダ「ヴェゼル」をはじめて見たのは2013年の東京モーターショーだった。トヨタ「ミライ」のプロトタイプが登場したり、3代目BMW「ミニ」がワールド・プレミアとなったのは、今でもとてもよく覚えている。
だが、実はヴェゼルも、別の意味で強烈に印象に残っている。同じホンダ・ブースで華々しく「S660」のコンセプトカーが登場したせいもあったかもしれないが、あまりにもヴェゼルが普通で「え? これもブランニューモデルなの?」と拍子抜けしてしまったからだ。
●ヴェゼルはご先祖もクールだった
展示されていたヴェゼルは、元になったコンセプトカー「URBAN SUV CONCEPT」のようなインラインタイプのLEDランプは採用されておらず、フロントマスクのクロームのあしらい方や、やや小さなフロントグリルなどのせいもあって、URBAN SUV CONCEPTよりずっと押しが弱く、地味に見えた。
ホンダ「CR-Z」などに代表されるように、ホンダはショー会場用のコンセプトカーの出来がいいのに、数年後に市販化されると頭に「?」マークが浮かぶことが多かった。だから、ヴェゼルもまた、そういうクルマなのだと僕は思った。
ただ、ヴェゼルについて、ひとつだけ「お!」と思ったのは北米仕様車のネーミングだ。ホンダ「HR-V」の名をふたたび使うというのである。懐かしい名前だ。
今でこそ小型のSUVは世界中のブランドが手がけている、いわば激戦区の大人気ジャンルだが、HR-Vが登場した1998年当時は決してそうではなかった。まして乗用車とRV(リクリエーション・ヴィークル)の両方のいいところを兼ね備えたHR-Vのような、今でいう小型のクロスオーバー・クーペなんて、日本の自動車メーカー以外に、造るところはなかった(Tバールーフで2シーターというスズキ「X-90」なんていうとんでもないモデルもあった)。
ホンダ「ロゴ」をベースに車高をうんと上げ、大径タイヤを履きながらも、クリーンでスタイリッシュなデザインを重視し、キャビン・スペースをむやみに広げなかったHR-Vのエクステリアは、今見てもとても斬新である。とくにルーフレールと一体のデザインとなっている凝ったリア・ウイングや、長く伸びたリア・クォーター・ウインドウ、そして3ドア・モデルのみという非常に潔いモデル展開(後に5ドア・モデルも追加)などなど、当時のホンダのやる気が前面に現れていた意欲作だった。
思えばHR-Vは、1997年に登場したコンセプトカーであるホンダ「JW-J」を、ほぼそのまま実写化したようなものだった。なぜ、今はそれができないのだろうか? とはいえ「ホンダe」のように、コンセプトカーからの市販化が非常にうまくいっている例もある。ここは今後に期待したいところだ。
●起源はレンジ・ストーマー
閑話休題。本稿の主旨としてはHR-Vのユーズド・カーをお薦めしたいところだが、いかんせん球数が非常に少ない上に、程度のいい個体もまず出てこない。
だから今回新型ヴェゼルに負けないくらいデザイン・コンシャスなSUVとして取り上げるのは、先代レンジローバー「イヴォーク」のユーズドカーである。価格帯はおよそ200万円台の中盤からと、ヴェゼルの予想新車価格に近い。その上このイヴォークもHR-V同様、忠実にコンセプトカーを再現した市販車なのである。
イヴォークの元になったのは、2008年のデトロイト・ショーで登場した「LRXコンセプト」だ。ジャガー・ランドローバー・グループのチーフ・クリエイティブ・オフィサーのジェリー・マグガバンが手がけた、3ドアのクーペSUVである。
これが非常に高い評価を得て、ほぼそのままレンジローバー・イヴォークとして市販化され、同社を代表する大ヒット作となった。イヴォーク登場以降、ランドローバーとレンジローバーのすべてのモデルが大きく影響を受け、さらにデザイン性の高い「レンジローバー・ヴェラール」のようにリダクショニズム(還元主義)という、よりシンプルで研ぎ澄まされたモデルまで誕生している。
このLRXコンセプトをさらに遡ると、その萌芽は「レンジローバー・スポーツ」のベースとなった、2004年のデトロイト・ショーで登場した「レンジ・ストーマー」というコンセプトカーにたどり着く。
2ドアでなんとガルウィングといういかにもショーカーな仕立てはともかく、後ろ下がりのルーフ・ラインと、跳ね上がるショルダー・ラインの組み合わせは、間違いなく今のイヴォークやヴェラールにまで繋がる、現行レンジローバー・デザインの源だ。
興味深いのが、このレンジ・ストーマーが登場したのが2004年と、HR-Vの登場後のことなのである。この当時、ターボや4WD、4WSといった技術的な面も、今のSUVに連なるRVブームなどのような時流も、日本は欧州より先行していた。とはいえ、それが長続きせず、ディファクトスタンダードになかなかなれないのがネックなのだが……。
とにもかくにも、どちらかといえば保守的だったランドローバー社が、ここまで攻めたコンセプトカーで世の反応を探ることになった背景として、この日本の小型SUVクーペの影響がまったくなかったとは考えにくいと思う。
■「フリーランダー」のチョップド・トップ版「イヴォーク」
2011年末、レンジローバー・イヴォークがはじめて東京の街を走り出した時のことは、すごく印象的で、今でもはっきり憶えている。まわりを走るクルマや景色が、色あせて、ものすごく古びて見えるくらいに輝いていた。
フェンダー・アーチに沿って付いた樹脂のパーツが20インチのタイヤをさらに大きく見せていたし、何よりぐっと寝かされたフロント・ウインドウと、そこに連なる低いルーフと高いショルダーのラインによって生まれた狭いキャビンが、ものすごくクールなものに見えた。
もし1960年代にスーパーカーが街を走っていたら、こんな風だったのではないか。そんなことが頭に浮かんだ記憶がある。
●フリーランダー2のチョップド・トップ仕様
このイヴォークのベースとなったのは、ランドローバー「フリーランダー2」という、実直な小型SUVである。小型とはいえあくまでランドローバー社のなかでのことなので車幅は1.9m以上と、けっして小さいクルマではない。
けれど視点は高く、クルマの四隅が把握しやすく、背筋を立てて座るシートはサイズが大きく身体をよく支えてくれるから、取り回しはとてもしやすかった。
ランドローバー社のクルマらしく悪路走破能力はもちろん高いが、どんな悪路だろうと前に進むには、いかに人を疲れさせないかも重要なポイントである。フリーランダー2は、そういう実用車として肝心なところをけっして外してない、隠れた名車だったと思う。
簡単にいってしまえば、イヴォークはこのフリーランダー2の屋根を切り飛ばし、ピラーを短くしてもう1度取り付けた、いわば「チョップド・トップ」である。
フリーランダー2とイヴォークの3ドアを比べると、なんと全高は135mmも低いのだ。もちろん、単純にルーフを下げたら、座っている人の頭が天井を突き抜けてしまうから、室内フロアも27mmとかなり下げられている。
そんじょそこらの会社だったら、そのまま何もせずに市販化されたかもしれないが、そこは悪路走破性に一家言ある老舗ランドローバー社だ。その看板が許さなかったのだろう。床下のメカニカル・コンポーネンツを再配置するなどし、最低地上高210mmと渡河水深限界500mmは確保された。数値的には、フリーランダー2と何ら変わっていないのだ。
上下からしわ寄せが来た室内はさぞ狭いかと思えば、実際に座ってみるとそうでもない。とくに絶望的に狭そうに見える後席は、座面の厚みもちゃんとあって、想像よりもずっと快適だ。
ただし、スペースそのものよりも、気になるのはシートのポジションである。とくに前席は着座位置が低く、背もたれをやや寝かせるレイアウトなのだ。シートも上体から丁寧に身体をサポートするフリーランダー2と違って、腰まわりのサポートが強い印象だ。伝統的な高い位置からまわりを見渡すようなポジションではなく、どちらかといえばスポーツカー的なのである。
なお、イヴォークはHR-V同様に3ドアと5ドアの設定があるが、より室内空間が広く、車体を把握しやすいのは当然5ドアのほうだ。ただし、格好良さは比べるまでもなく3ドアのほうである。
■「イヴォーク」狙うなら3ドア、もしくはコンバーチブル
イヴォークは乗ってみた印象も見た目のとおりで、ベースのフリーランダー2よりずっとスポーティなものになっている。とくに初期モデルが搭載するフォード製2リッター4気筒ターボ・エンジンは、最高出力240ps、最大トルク34.7kgmと比較的パワフルな上に、車両重量もボンネットやテールゲートをアルミ化していて3ドアで170kg、5ドアで140kgもフリーランダー2より軽いから、はるかに軽快で俊敏だった。
●より軽快でスポーティな3ドア
ユーズド・カー市場では、使い勝手のいい5ドアの方が圧倒的に多く流通しており、3ドアのタマ数は全体の約7%と、非常に少ない。しかも、そのほとんどは上位グレードの「ダイナミック」が占めている。
ホイールは標準が17インチだが、市場に流通する多くの個体はオプションの19ないしは20インチを履いており、さらに電子制御式の減衰力可変ダンパーも装備していることが多い。
もともと初期のイヴォークは路面の凹凸を拾いやすく、大径ホイールを履いているとさらに足まわりがバタつく傾向がある。登場してから時間が経っているから、万一交換ともなればコストも跳ね上がる。中古車として狙うなら17インチや機械式のダンパーを装着したエントリー・グレードの「ピュア」を探したいところだが、ことイヴォークに関しては、それは少々野暮というものかもしれない。
だってこれは見た目に惚れて買う、いわば伊達グルマである。スタイリングを重視した結果生まれたネガティブな面は、丁寧に手が加えられてはいるけれど、これはカタチに惚れて買うクルマだ。ならばやはり狙うべきは3ドアだろう。
ちなみにイヴォークは2019年に2代目へと進化したが、5ドアのみとなり、3ドアは廃止になってしまった。とはいえ、今のところプレミアが付くほど高騰はしてないようだ。
ボディカラーはライム・グリーンなど、明るく、キャビン部分やタイヤまわりとのコントラストが強いものをお薦めしたい。目立つのがイヤだとか、実用性云々をいうなら、5ドアのイヴォークよりも、いっそフリーランダー2の方が、はるかにお得で使いやすいことも付け加えておこう。
●大穴の1台。それがコンバーチブル
最後に、ヴェゼルにもHR-Vにもない、イヴォークだけが選べる大穴的な選択肢をひとつ、紹介しておこう。予算的には新型ヴェゼルと競合するどころか、中古車市場では倍以上のプライスが付いているので、あくまで大穴である。
実は初代イヴォークにはオープン・バージョンのコンバーチブルがあるのだ。一見3ドアの屋根をソフトトップ化しただけのように見えるが、実は幌の傾き具合は3ドアの屋根よりずっとなだらかで、リアのガラス部分もひとまわり大きくなっている。
後席は3ドアのように3人掛けではなく、専用の2人掛けになっており、Bピラーがなくなったこともあって、左右方向の視界も意外と開けている。だから実は後席の居住性だけなら、コンバーチブルは3ドアより優れている。
乗り込んでみると、傾きが強く頭上までフロント・ウインドウの後端が視界を遮ってしまう前席より、風じまいが優秀で解放感が抜群な後席は、イヴォーク・コンバーチブルのいちばんの特等席である。
車体剛性を確保するため床下に構造材を加えているため車重が200kg以上増加していることや、荷室の開口部が、かつてのゴルフ・カブリオレのようにものすごく狭いのは難点だが、2代目のイヴォークに3ドアの設定がない以上、今後コンバーチブルが登場する可能性は限りなく低い。
これぞデザイン・コンシャスなSUVの極みといえる1台だと、僕は思う。
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