「クルマを買う」という行為が、若い世代、特に初めての愛車を手に入れるときにはとてつもなく高いハードルに思えた人も多いだろう。
10万円単位はハッキリいえば安い方であり、100万円単位でようやく選択肢が・・・という世界だ。上を見ればそれこそキリがない。
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さらには、郊外の新築一戸建てよりも高いクルマ(それも中古車)が中古車検索サイトで見つけることも容易だ。誰が買うのだろう・・・と思って「お気に入り」登録してみると、翌日にはストックリストから消えていたり・・・。
ソニー損保が毎年年始に発表している「新成人のカーライフ意識調査 2022年版」によると、「自分のクルマを持っている」割合は16.0%であるのに対して「クルマを購入するつもりはない」割合は31.0%だという。
ちなみに「同年代でクルマを所有している人は格好いいと思う」のは46.1%で、女性では49.6%とのことだ。
さらに、クルマを購入する際の購入資金の捻出方法の割合は「働いて貯める」68.7%、「親など親族に援助してもらう」13.4%、「自動車ローンを組む」11.7%とあり、多くの新社会人が自分の手の届く範囲で頑張ろうとしている姿が見てとれる。
かつて、新社会人が入社数ヶ月でユーノスロードスターの新車(もちろんフルローン)を手に入れた・・・なんて時代もあったような気がする。
しかし、現在は親の力を借りず、すべて自力でとなると新社会人でローンが通らない可能性が高い。親が保証人となってはじめて可能性が開けてくるのが現実だ。
とはいえ、通勤の足としてクルマは必要だし、社会人になってクルマの必要性を実感することが増えてくるかもしれない。
そこで間もなく新生活を迎える新社会人にお勧めしたい「頑張れば手が届きそうなクルマ7選」と題してお届けしたい。
*中古車の価格は2022年3月16日現在のものです。
文/松村透
写真/レクサス、トヨタ、マツダ、BMW、フィアット、Adobe Stock(@tatsushi)
■「コミコミ50万円」で自由の翼を手に入れる!
これらの結果を踏まえたうえで、新社会人で「コミコミ50万円」ともなれば、コツコツとアルバイトをして貯めたお金と考えるのが妥当だろうか。
デザインが魅力的で、古さを感じさせなくて、実用的で維持費がかからず、しかもできるだけ壊れない(これが大切)。このあたりを加味した最大公約数は下記2台だろうか。
■初代ホンダN-ONE
・生産時期:2012年11月~2020年10月
・エンジン:直列3気筒DOHC、直列3気筒DOHCターボ
・排気量:658cc
・最高出力/最大トルク:58ps/6.6kgm、64ps/10.6kgm
・発売時の価格帯:115万円~189.8万円
・現在の中古車相場:68.5万円
クルマに詳しい人でなければ、先代モデルと現行モデルの区別が付きにくく、古さを感じさせない点も魅力。それほど完成されたデザインということを意味する
グレードや設定色により、男女それぞれが好みそうな内装のカラーバリエーションが用意されているのもN-ONEの魅力のひとつ
■トヨタiQ
・生産時期:2008年11月~2016年3月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:996cc、1329cc
・最高出力/最大トルク:68ps/9.2kgm、94ps/12kgm
・発売時の価格帯:129万円~355万円
・現在の中古車相場:41万円
生産終了からすでに6年が経過したとは思えないデザインが魅力のトヨタiQ
内装の仕立ても古さを感じさせない。iQをベースにアストンマーティンが「シグネット」を販売していたこともあった
■コミコミ100万円なら選択肢も広がる
初めての愛車。新社会人で「コミコミ100万円」ともなれば、だいぶ選択の幅が広がってくる。堅実路線・背伸び(見栄)路線・変化球(輸入車)も可能だ。
そこで、下記3台をピックアップしてみた。ソニー損保の調査で1位になっていたアクアも、先代モデルではあるが射程圏内に入ってくる。
日本車と比較したらそれなりに苦労もあると思うが、最初の愛車から輸入車デビューして沼にハマるのもありだろう。
■初代トヨタアクア
・生産時期:2011年12月~2021年6月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1496cc
・最高出力/最大トルク:74ps/11.3kgm
・発売時の価格帯:169万円~261万円
・現在の中古車平均価格:90.8万円
新社会人にとって現実的かつ「選んでおいて間違いはない1台」といえるのがこのアクアだろう
先代アクアの内装。壊れない、燃費がいい、クセがない。日常の足としても使える。さらにタマ数も多い。無難といえばそれまでだが、ハズレを引く可能性も低い
■初代レクサスLS
・生産時期:2006年9月~2017年9月
・エンジン:V型8気筒DOHC
・排気量:4608cc
・最高出力/最大トルク:370ps/48.6kgm
・発売時の価格帯:770万円~1348.5万円
・現在の中古車平均価格:125万円
お金はあまりかけられないし、でもちょっと背伸びしたい。レクサスLSなら本来であれば1000万円クラスの世界観が、いまやその1/10の価格で手に入るのだ
高級車として販売されていただけに、低予算でベーシックカーでは味わえないゴージャスな世界を堪能できるのもレクサスLSの魅力かもしれない
■フィアット500
・生産時期:2008年3月~生産中
・エンジン:直列4気筒DOHC、V型6気筒DOHC
・排気量:875cc、1240cc
・最高出力/最大トルク:69ps/10.4kgm、85ps/14.8kgm
・発売時の価格帯:179万円~282万円
・現在の中古車平均価格:103.8万円
フィアット500のデザインに一目惚れしてしまったら最後。代わりになるクルマがないのだから、手に入れるしかないかも!?
フィアット500は内装のデザインも魅力的。シフトアップ時のクセはあるものの、そんな七難隠すほどの魅力があるのも事実
■番外編:令和では特権階級!? 親ローンOK!
最近「ボンボン」という言葉を耳にしなくなった気がするが、ある程度の世代なら説明不要だろう。つまり「イイトコのお坊ちゃん」だ。皮肉を込めて「放蕩息子」なんて揶揄されたりもする。
古くは巨人の星の花形満、ファーストガンダムでいうところのガルマ・ザビ、ちびまる子ちゃんの花輪くん・・・。なぜかいずれも前髪が特徴的な美形揃いんなのはどうしてだ!?
それはさておき、かつては親にクルマを買ってもらえる子どもが特権階級だとしたら、このご時世では「親ローン可」も含めていいのかもしれない。
クルマにかかる総額を親がいったん全額負担してくれ、親子で取り決めた方法で返済していくパターンだ。親子といえどもきっちり覚え書きを交わすケースもあれば、口約束もあるだろう。少なくとも金利は0%というケースがほとんどではないだろうか。
バブル世代なら「親ローン可ならポーンと新車のGR86を買っちゃえばいいじゃない」と思うかもしれないが、いまの新社会人は堅実だ。
「親にそんな無茶はさせられない」と考えたりもする。そんな堅実なオーナー像を想定して「コミコミ200万円」と定義してみた。
■マツダロードスター(ND型)
・生産時期:2015年5月~生産中
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1496cc
・最高出力/最大トルク:131ps/15.3kgm
・発売時の価格帯:249.5~368.3万円
・現在の中古車平均価格:248.5万円
現行ロードスターを新車で購入するのは親ローンでも気が引ける・・・それならば中古車という手もある
間違いなく、名車として後世に語り継がれるであろう現行ロードスター。愛車遍歴の記念すべき最初の1台がこのクルマなんて最高だと思う
■BMW3シリーズ(F30型)
・生産時期:2012年1月~2019年2月生産モデル
・エンジン:直列3気筒DOHCターボ、直列4気筒DOHCターボ、直列6気筒DOHCターボ
・排気量:1498cc、1997cc、2997cc
・最高出力/最大トルク:136ps/22.4kgm、184ps/27.5kgm、245ps/35.7kgm、306ps/40.8kgmほか
・発売時の価格帯:399万円~879万円
・現在の中古車平均価格:186.6万円
先代のBMW3シリーズも、いつの間にか中古車としてずいぶんこなれてきた感がある。現行ロードスターとはまた違った魅力・世界観を手にすることができるだろう
BMW、そしてドイツ車特有の世界観、質感、操作感を知ってしまったら最後。なかなか日本車には戻れないかもしれない。手に入れる際はそれなりの覚悟を!!
■まとめ:「はじめの1歩」さえ乗り越えられればクルマは維持できる・・・はず
全回答者1000名に、クルマがある生活(カーライフ)をするにあたり、どの程度の手取り月収が必要だと思うかを聞いたところ、「16万円~20万円」(27.8%)や「26万円~30万円」(18.2%)との回答が多くなり、平均額は24.0万円との結果が出た。
手取り額で24万円というと、総支給額は約30万円。20代前半でこの給与を得るにはなかなかハードルが高い。
ソニー損保の調査によると、新社会人がカーライフのためにかけられる金額の平均が15,910円/月。その一方で「クルマを所有する経済的な余裕がない」との回答は61.1%だという
そして、カーライフのためにかけられる金額の平均が1万5910円/月(2021年から963円増加)とある。その一方で「クルマを所有する経済的な余裕がない」との回答は61.1%という結果が出ており、「クルマは欲しいけれど手が届かない」と考えている新成人は少なくないようだ。
公共交通機関が発達している都心部であればクルマを所有しなくてもこと足りるだろうし、レンタカーやカーシェアリングなどのサービス拠点も充実しているケースが多い。
しかし、地方在住の人にとってクルマは通勤するうえで欠かせない生活の足であり、4人家族で1人1台ずつ所有といったことも珍しくない。
若い時にMT車に乗って昼夜を問わず走り回る。特権であり、今しかできないことだと後で気づかされるものだ
だからこそ、限られた条件のなかでも最大限、20代の時だからこそ楽しめる(あるいは楽しんでおきたい)クルマがあるはずだ。
令和4年から10年経った令和14年、現在の小学校6年生~中学校1年生あたりの子どもたちが大人になったころだ。果たしてその時の新社会人はどんなカーライフを夢見ているのだろうか・・・。
「クルマを所有する経済的な余裕がない(61.1%)」の割合が少しでも減っていることを願うばかりだ。
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維持費など含めて現実的ではない