■なぜ日本で売らない? 海外ばかり魅力的なモデルをそろえる日産
2019年9月4日、日産は欧州で新型「ジューク」を発表しました。初代に引き続き個性的なスタイルで、コンパクトSUVのマーケットがますます拡大している日本でも人気を博しそうに思えます。
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しかし日産は、現時点ではジュークを日本で販売する予定はないといいます。その理由はどこにあるのでしょうか。
日産の日本におけるラインナップを見ると、人気を集めているのは軽自動車の「デイズ」、コンパクトカーの「ノート」、ミニバンの「セレナ」、SUVの「エクストレイル」が販売の中心。これらのモデルは多くの販売台数を稼いでいます。
もちろん、ほかにもいくつかの車種が用意されていますが、日産を象徴する存在である「GT-R」や大掛かりなマイナーチェンジをしたばかりの「スカイライン」を除けば、古いモデルを“細々と売り続けている”という印象が否めません。
そんな日産ですが、海外に目を向けてみると新型ジュークをはじめ日本では販売されていない多くの新型車や魅力的なクルマが存在しているのです。
北米では大型SUV「アルマダ」やフルサイズピックアップトラックの「タイタン」、スポーティセダンの「アルティマ」、SUVの「パスファインダー」、欧州ではコンパクトカーの「マイクラ」やCセグメントハッチバックの「パルサー」。
さらに、中国ではセダンの新型「シルフィ」などが売られています。日本でもシルフィはラインナップされていますが、中国で販売されているシルフィは、日本よりも世代が新しいモデルです。
また、グローバルで販売されている「ナバラ」というピックアップトラックも日産の主力モデルです。
パスファインダーやパルサーなど日本市場にもある程度の潜在マーケットが見込め、なおかつ販売中の車種とポジションが被らないモデルもいくつかあり、国内でも販売して欲しいと思わずにはいられません。しかし現時点では、それらを国内導入する可能性は低そうです。
他社の例を見ると、トヨタは海外では続いていたものの日本販売を休止していた「ハイラックス」や「RAV4」の販売を再開し、とくにRAV4は大人気モデルとなっています。
ホンダも、日本向けとはいい難い「シビック」や「CR-V」、「アコード」などを販売し続けており、好調に売れているとはいえませんが、「消費者の選択肢」を拡大しています。たとえ数多く売れなくても消費者の選択肢を増やすという考え方は、メーカーの姿勢としてはうれしいものです。
トヨタやホンダのように、日産が国内販売に踏み切らない理由はどこにあるのでしょうか。
日産の関係者は、次のように説明します。
「新型車を開発する際には、日本で受け入れられそうな車種に関しては国内営業部門に判断を仰ぎ、日本で販売するかどうかを決めます。
しかし、国内営業部門が『売らない』と判断すれば、その新型車は海外専用モデルとなります」
日本で販売するかどうかを決めるのは開発側ではなく、あくまで営業部門の判断なのです。
■クルマ好きがワクワクするようなモデルより効率化を重視?
日産の日本での車種ラインナップを見ると、実に効率のいい販売方法をとっているのが理解できます。
冒頭で紹介したように、人気モデルは「デイズ」「ノート」「セレナ」、そして「エクストレイル」と各ジャンルに1台ずつを用意。そこに販売を集中させることで、生産や物流から販売現場まで効率を高めているのです。
日産の販売店スタッフに話を聞いてみると、次のようにコメントします。
「より喜んでいただくために、お客さまに幅広い選択肢を用意したいという気持ちはあります。しかし、いまのように人気車種だけに絞るというやり方は販売スタッフにとってもやりやすいのです。
なぜなら、扱う車種が少なければ、スタッフが新型車について詳細に勉強する時間を減らせます。じつは、その負担はスタッフにとって意外に大きいのです。
また、お客さまに対して『SUVが欲しいならエクストレイル』というようにズバッと車種を絞れ、その結果、商談を効率よくスムーズに進めて契約までの時間を短縮できるのです」
日産が海外向けに用意する、クルマ好きにとって魅力的な車種を日本で販売しないのは、効率化のためということなのです。
一方で、販売には大きく貢献しないGT-Rや2ドアク―ぺの「フェアレディZ」をラインナップし続けるのは、クルマ好きを繋ぎ留めておくせめてもの策であり、効率を追求するための免罪符といえるのかもしれません。
※ ※ ※
いまの日産には「身近に購入できる車種で、かつてのようにクルマ好きをワクワクドキドキさせるクルマがない」という声が多く聞かれます。もちろん、効率は自動車メーカーにとって重要なことなのでそれ自体は否定すべきではありません。
しかし、もう少し選択肢を増やしてほしいというのは、多くの人が感じているのではないでしょうか。
今後、経営体制が変わって「効率だけでなく、クルマ好きも納得するような商品展開にも力を入れていく」となれば、状況は変わる可能性もあります。今後の日産に期待したいところです。
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