BYDが圧倒的な存在感を放つ
中国市場における9月のEV販売動向の詳細が判明し、新車販売の2台に1台以上がすでにBEVかPHEVに置き換わり、BYDをはじめとする中国勢がさらに爆発的に販売台数を増加。そのBYDなどのプレッシャーにさらされている日本メーカーの危機的な状況について考察します。
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まず、中国市場におけるBEVとPHEVを合わせた新エネルギー車の販売台数は112.3万台と、前年同月の74.4万台という販売台数と比較しても50.9%もの販売台数の増加を記録。そして、新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率は53.2%と、史上最高水準の電動化率を達成しています。
四半期別の動向も、Q3の新エネルギー車比率は52.74%と、史上初めて四半期でも50%の大台を突破。2023年Q3の電動化率が36.84%だったことからも、ここにきて電動化のスピードが加速していることがわかります。
また、バッテリーEVに絞った販売シェア率は、9月単体で30.54%と、こちらも史上最高水準の販売シェア率を達成。2023年Q3が24.73%だったことからも、バッテリーEVシフトが加速している状況です。
このグラフは、世界の主要マーケットにおけるバッテリーEVの販売シェア率の変遷を比較したものです。水色で示されている中国市場が欧米などを大きくリードしている状況であり、9月に1.75%だった日本と比較しても、その差は歴然です。
次に、9月に中国国内でどのようなEVが人気であったのか、そして2024年末にかけて、どのEVに注目するべきなのかを詳細に確認しましょう。
このグラフは、内燃機関車も含めたすべての販売ランキングトップ30を示したものです。ピンクが新エネルギー車、緑が内燃機関車を示します。トップはテスラ・モデルYで、BYDシーガル、BYD Song Plus、BYD Qin L、そしてBYD Qin Plusと続いていますが、ポイントは、トップ10のうち、なんと内燃機関車は日産シルフィとフォルクスワーゲン・ラヴィダしかランクインできず、トップ20に広げてみても、たったの6車種しかランクインすることができていないという点です。
つまり、すでに人気車種のマジョリティが、バッテリーEVかPHEVという新エネルギー車で占められているということを意味します。また、そのなかでも、トップ20のうちBYDが9車種もランクインしているという驚異的な支配構造も見て取れるでしょう。
次にこのグラフは、新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。黄色がバッテリーEV、水色がPHEVを示します。この通りBYDが13車種を席巻しながら、トップ20に限ると12車種、トップ10に限ると7車種、トップ5に限ると4車種を席巻。
同じくBYDの驚異的な支配構造が見て取れるでしょう。また、日本勢やドイツ勢などの海外メーカー勢はトップ30ではテスラ2車種のみであり、残りはすべて中国勢と、まるで販売規模では勝負になっていない様子も見て取れます。
また、このグラフはバッテリーEVに絞った販売ランキングトップ30を示したものです。この通り、黄色で示されたBYDがトップ20のうち8車種を席巻、トップ10に絞ると5車種を独占。2024年中旬から投入されている新型BEVが、さっそく上位にランクインしてきているという点も重要です。
具体的には、9月から納車がスタートしたばかりのXpengのMONA M03が第18位。4月に納車がスタートしたシャオミSU7も第14位。さらに、8月から発売がスタートしているGeely GalaxyのコンパクトSUV、E5も第13位にランクイン。
いずれにしても、新型EVの存在によって、ランキングトップ層の新陳代謝が行われている点も、この中国市場の競争の激しさが見て取れるわけです。
ドイツ御三家の販売台数は減少
それでは、いくつかのセグメントをそれぞれ詳細に分析しましょう。
まず初めに、大衆セダンセグメントの販売動向について、やはりBYD Qin PlusのHonor Editionによる大幅値下げ、および第五世代のPHEVシステムで大きな注目を集めているQin LとSeal 06が、それぞれ6万台、7.6万台を1カ月に売り上げて競合を圧倒している状況です。この大衆セダンセグメントでは、もはやBYDには誰も対抗できなくなっています。
日産シルフィこそ、前年同月比で11.2%のプラス成長を実現したものの、トヨタのカローラとレビンは42.7%ものマイナス成長。ホンダのシビックとインテグラは71.6%もの販売台数急減を記録。まさに、BYDの大衆セダンPHEVの存在によって、とくにホンダの大衆セダンの販売台数が壊滅している状況です。
このグラフは、BYDと日本メーカー勢など、大衆セグメントの販売が中心の大衆ブランドの月間販売台数の変遷を示したものです。このとおり、BYDが前年同月比で51.9%もの急成長を実現するなか、トヨタは9.5%ものマイナス成長。日産も4.3%ものマイナス成長。そしてホンダは42.8%ものマイナス成長を記録。
ちなみに四半期別で確認してみても、このQ3においてBYDは前年同期比で49%もの急成長を実現した一方、トヨタは10.2%ものマイナス成長。日産も16.7%ものマイナス成長。そしてホンダは43.2%という販売台数減少を記録。よってBYDは、2022年Q4以降、8四半期連続で中国トップのブランドの地位を確立しています。
次に、プレミアムBEVセダンに関して、黄色で示されているテスラ・モデル3がセグメントトップの販売台数を実現しました。そして競合のシャオミSU7も1.3万台強で生産キャパの上限に到達済みです。シャオミは10月中の納車台数目標を2万台と大幅に引き上げてきており、モデル3とSU7によるセダンEVの頂上決戦が始まろうとしています。
また、モデル3の販売台数は、事前の予測に反して非常に順調です。Q3は2021年Q1以来の高水準であり、ハイランドへのモデルチェンジ後としても史上最高の四半期となりました。
そして、最後に注目したいのがドイツ御三家の販売動向です。このグラフは、ドイツ御三家とテスラ、そしてNIO、Li Auto、ファーウェイというプレミアムブランドの四半期別販売台数の変遷を示したものです。
まず、中国勢が急速に販売台数を伸ばして、とくに直近のQ3では、Li Autoがドイツ御三家の販売台数を抜いています。さらにファーウェイもQ3で11.3万台超と、前年同期比で8倍もの販売台数増加を記録し、BMWの販売台数に接近しています。
よって、その影響によってドイツ御三家は販売台数が減少中です。アウディは前年同期比で18%ものマイナス成長。次にメルセデスも12.2%ものマイナス成長。そしてBMWに至っては30%ものマイナス成長となりました。
じつはドイツ御三家はQ3に突入してから揃って、中国市場における過度な値下げ競争からの撤退を表明していたという背景が存在します。ところが、とくに値下げをほぼ行わないようにしたBMWは、7月の販売台数が急落してしまったことを受けて、たまらず追加の値下げを容認した格好に。それでも直近の9月の販売台数は、前年同月比でマイナス29.5%と、販売減少に歯止めがかかっていない状況です。
いずれにしても、この中国EV市場の最新動向は、 ・大衆セグメントではBYDが驚異的な支配力を発揮することで、日本メーカーの販売台数がさらに低下している状況 ・中国市場が稼ぎどころでもあるドイツ御三家も、ファーウェイの台頭によって販売シェアを落とす。DenzaとNIOの更なる新型EV投入によって、より一層競争が激化 ・年末から2025年前半は、売れ筋のモデルYに対抗する、Zeekr 7X、ファーウェイLuxeed R7、NIOの大衆ブランドOnvoのL60、IMモーターLS6のフルモデルチェンジバージョン、Avatr 07など、電動SUVが続々と市場に投入
これらの点に注目しながら、年末の中国国内のEVシフト動向には注目するべきでしょう。
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