国土交通省と自動車事故対策機構が実施した自動車アセスメント(JNCAP)で、スバルのレヴォーグが2020年度の衝突安全性能と予防安全性能の総合評価で最高得点を獲得して「ファイブスター大賞」を受賞した。
最高得点を獲得したレヴォーグは2番目の評価だったハリアーや、そのほか試験が実施された車種とは何が違ったのか?
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レヴォーグが最も安全なクルマとして評価された理由を自動車ジャーナリストの萩原文博氏が解説する。
文/萩原文博
写真/SUBARU、自動車事故対策機構
【画像ギャラリー】2020年最も安全なクルマ!? レヴォーグを徹底チェック!
■レヴォーグが2020年度安全性能評価でナンバーワン!
新型エンジンや新型アイサイトを野心的に採用したレヴォーグ。安全性も極めて高いことがわかった
かつて安全装備といえば、クルマを査定する際にまったく影響のないアイテムだった。かつてオプションだったSRSエアバッグでさえ、査定価格には反映されなかったのだ。
しかしスバルのアイサイトをはじめとした運転支援システムの標準装備化によって、プラス査定にはならないものの、装着されていないとマイナスとなるアイテムへと進歩している。
そして、安全装備というと一般的によく知られているのは、事故を防ぐ「予防安全」、そして万が一事故が起きた時の「衝突安全」だろう。しかし、クルマの安全性はこの2つに限らない。
「安全性能」と聞いて、フルラップ前面衝突試験を思い浮かべる人は多いかもしれない
そこで、今回は2020年度安全性能評価で最高得点を獲得したレヴォーグを検証し、その高い安全性の理由を考えてみた。
■安全性の5連星
レヴォーグをはじめとしたスバル車の場合、走り出す前の事故を起こしにくいクルマ作りである「0次安全」、走り出してからの「走行安全」、万が一に備えて先進技術で安全運転をサポートする「予防安全」、事故が起きてしまった時に乗員を守る「衝突安全」、そして事故やトラブルが起こってしまった時に命を守る「つながる安全」、を含めた5つの安全をスバルの「総合安全」と呼んでいる。
スバルはこの「総合安全」の考えに基づいて、クルマに乗るあらゆるシーンに潜む不安を徹底的に解消しているのだ。
まず、0次安全では事故を起こしにくいクルマ作りとして、死角を減らし、高い視認性を確保することや疲れにくいドライビングポジション、運転に差し支えのないユーザーインターフェイスを挙げている。
スポーツ性能として語られがちなドライバビリティは、危険な状況ではそのまま0次安全性能につながる
そして走行安全では、どんな路面でも高い走行性能を発揮するスバル独自のシンメトリカルAWDや危機回避性能に必要なステアリング操作に対する応答性や走りの安定性を実現するために、スバルグローバルプラットフォームの採用やボディの高剛性化を行っている。
さらに、ビークルダイナミクスコントロール(VDC)やアクティブ・トルク・ベクタリングなどの電子デバイスにより、クルマの挙動の乱れを防いでくれる。
予防安全では、スバル独自のステレオカメラを採用した運転支援システムのアイサイトやステレオカメラに加えて、前後4つのセンサーを組み合わせることで車両の全方位360°のセンシングを実現。
近年の運転支援システムは、単純に障害物検出だけでなく車両や人の識別もする
道路を横切る人も検出し、危険を検知すれば被害軽減ブレーキを動作させる
これによりあらゆるシーンでの「ぶつからない」をサポートする機能を拡充させている。
さらにレヴォーグに搭載されている「高度運転支援システム」を搭載した「アイサイトX」は、GPSや準天頂衛星「みちびき」などからの情報と3D高精度地図データを組み合わせることで、自車位置を正確に把握。従来のステレオカメラやレーダーでは検知しきれない先々の情報まで認識できるようになっている。
アイサイトXをはじめとして運転支援システムは、より安全な運転を実現させるだけでなく長時間の移動ストレスも軽減してくれる
衝突安全では、万が一の事故の被害を最小限にするために、衝突安全ボディをはじめ、乗員保護のエアバッグ、歩行者保護エアバッグなどを採用している。
採用されたシャーシ「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」は、10年、20年先でも通用することを目指して開発された
衝突時に車両内部だけでなく外部にもエアバッグを展開することで、乗員だけでなく歩行者も保護する
そして「つながる安全」として採用しているのが、コネクティッドサービスの「スバルスターリング」だ。この機能は万が一の事故の際、24時間365日コールセンターとつながり、サポートするというもので、安心感を高めて一人でも多くの命を救うためのものだ。
■自動車アセスメントとは
自ら掲げた「総合安全」を実現したスバル車のなかでも最新モデルである現行型レヴォーグは、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(以下NASVA)が実施する「自動車アセスメント」の2020年度の自動車安全性能評価で、最高点を獲得し「ファイブスター大賞」に輝いた。
これで、レヴォーグが最も安全なクルマということになったのだ。
自動車アセスメントというのは、クルマなどの安全性能の評価試験を行うことにより、ユーザーがより安全なクルマを選びやすくすると同時にクルマを作るメーカーに、より安全なクルマの開発を促進するための事業のこと。
それを行うのがNASVAで、市販されているクルマを対象に、衝突時の乗員の被害軽減性能、予防安全などの比較テストを行い、その結果を公表しているのだ。
評価実験は、予防安全性能評価として、衝突被害軽減ブレーキをはじめ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、車線逸脱抑制装置などの7項目を100点満点でテストする。
また衝突安全性能評価では、実際の事故を想定したフルラップ前面衝突試験や側面衝突試験、歩行者頭部保護性能試験など10項目について82点満点でテストするのだ。さらに、8点満点(先進型、基本型2点)の事故緊急通報装置のテストも行い、合計190点で評価する。
■「ファイブスター大賞」は安全性能のカーオブザイヤー
2020年度に評価を行ったクルマは乗用車6車種、軽自動車4車種の合計10車種。
そのうち、衝突安全性能評価そして予防安全性能評価において、最高ランクのAランクを獲得し、事故自動緊急通報装置を搭載したファイブスター賞にトヨタハリアー、トヨタヤリス、トヨタヤリスクロス、ホンダフィット、日産デイズ/デイズハイウェイスターが輝き、さらにそのなかで最も好成績だったスバルレヴォーグがファイブスター大賞となったのだ。
最も点数の高かったレヴォーグは190点中186.91点。第2位のハリアーは190点中177.68点でわずか9.23点差だった。両車ともに予防安全性能評価は82点満点、さらに事故自動緊急通報装置は先進型で8点満点だった。
差がついたのは衝突安全性能評価で、レヴォーグは10項目すべてレベル5を獲得しているのに対して、ハリアーは車両後方からの追突を想定した後面衝突保護(運転席)、後面衝突保護(助手席)、歩行者保護(頭部)そしてシートベルト着用警報の4項目でレベル4となってしまったことで点差が付いてしまった。
自動車安全性能2020年の評価結果 (レヴォーグ、ハリアー、デイズ/デイズハイウェイスター、ヤリスクロス)
自動車安全性能2020年の評価結果 (フィット、ヤリス、キックス、eKワゴン/eKクロス、タフト、ハスラー、フレアクロスオーバー)
この自動車安全性能の評価結果を見ると、同じコンパクトカーや軽自動車でも点数に差があることに気づく。見た目や走行性能という要素も大事であるが、大事な人を乗せるクルマだと考えると、少しでも安全性能の高いクルマを選ぼうという思いが高まるきっかけとなってほしい。
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不格好はないほうがいい
片方しかできないメーカーに明日は来るのか?