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トヨタで1番売れているクルマ 新型「RAV4」が見せたSUVの進むべき方向性とは

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トヨタで1番売れているクルマ 新型「RAV4」が見せたSUVの進むべき方向性とは

■5代目「RAV4」が目指している“新境地”

 日本での発売前からかなりの熱視線を集めていたトヨタ新型「RAV4」が、ついにデビューしました。ライトクロカンという新しいジャンルを切り拓き、SUVとして着実に進化してきたRAV4は、5代目にしてある大きな変化を遂げていたのです。

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 2018年11月、日本に先駆けて北米で華々しくデビューした新型RAV4。初代から3代目、そして日本では販売されなかった4代目と比べると、同車が明らかに“新境地”を目指していることがデザインからも見て取れます。

 初代RAV4が誕生したのは、1994年のこと。当時はクロスカントリー4WD、いわゆる四駆ブームのまっただ中でした。へビューディーティを標榜するクロスカントリー4WDはアウトドア派に大人気でしたが、一方で「価格が高い」「燃費が悪い」「都市部では持て余す」という声も聞かれました。

 そこでトヨタが、新たな提案として世に送り出したのがRAV4だったのです。ライトクロカンという新たなジャンルを切り拓いた同車は、雰囲気だけを必要とするユーザーに共感を得て、瞬く間にヒット街道をばく進。ライバルのCR-Vと共に、フルタイム4WDでモノコックボディという、今日のSUVやクロスオーバーの礎を築いた功労車なのです。

 しかし、潮流がラグジュアリーなSUVに向き始めると、RAV4は徐々に当初の存在意義を失い始めました。ついには4代目では共通のシャシーを持つトヨタ「ハリアー」のみを残して、日本では血統が絶えてしまうという事態に。トヨタ「クルーガー」や「ヴァンガード」とともに、その役割を一端終えていたのです。

 2018年11月、ロサンゼルスモーターショーでワールドプレミアが行われた5代目RAV4を見て、その変貌ぶりに驚いた人も多いのではないでしょうか。従来の欧州調の意匠を潔く脱ぎ去り、トヨタSUVの北米向けモデルである「タコマ」や「タンドラ」と同じプロトコルでデザインされていたからです。

 とくに特徴的なのはマスクで、六角形のグリルに対して、細いヘッドランプをT字形に配置。そこからボディ全体に多角的な面を伸ばしていくことで、独特の雰囲気を演出しているのです。日本では発表されたばかりですが、すでに好意的な意見が圧倒的に多く、同車はC-HRをも上回る大ヒットになるかもしれません。

 新型RAV4はそのエクステリアのみならず、資質も歴代モデルとは違うものを持っています。TNGAに基づく「GA-Kプラットフォーム」や国内モデル初採用となる「ダイレクトシフトCVT」、ハイブリッド車に搭載された「2.5?ダイナミックフォースエンジン」など、新しい技術に溢れています。

■新型RAV4は3タイプの四駆システムを採用

 その中でもとくに注目したいのが、「ダイナミックトルクベクタリングAWD」という四駆システムです。新型RAV4には3タイプの四駆システムが採用されました。ひとつは「ダイナミックトルク4WD」という従来型の電子制御式前後トルクスプリット型のシステム。

 2つ目は「E-Four」という前後2つのモーターを使ったハイブリッド4WD。そして3つ目が、今回の目玉である、ダイナミックトルクベクタリングAWDです(“アドベンチャー”と“G Zパッケージ”に装備)。

 この四駆システムは、全後輪の駆動トルクを100:0から50:50まで可変させます。さらに後輪に伝わった駆動トルクを左右で100:0から0:100まで、自動的に分配させます。この「トルクベクタリング機構」と呼ばれるメカニズムより、プッシュアンダーが発生していたフルタイム4WD車のハンドリンクを弱アンダーに改善。「4WDは曲がらない」という従来のイメージを払拭しています。

 このシステムが凄い点は、まだまだあります。サブトランスファーを持たないフルタイム4WD車は、たとえ4WDで走行していなくても(駆動トルクが伝わっていなくても)、パワートレインは受動的に動いています。この駆動系のロスが、燃費の悪化に繋がっているのです。

 そこでこのシステムは、前後のデファレンシャルギアの横にドグクラッチと電子クラッチを設置。4WD走行が必要ない場合は、フロントデフからリアデフにかけての駆動系を完全に切り離す「ディスコネクト機構」を持たせたのです。 

 つまりフルタイム4WDでありながら、パートタイム4WDのような機構を持っているのです。もちろん、この機構はすべて電子制御によって自動で働きます。ちなみに、ドグクラッチを使って駆動系を切り離すメカニズムは世界初となります。

 この4WDシステムの注目点は、それだけではありません。4WD統合制御「AIM」によって、各輪の駆動力、4WDへの切り替え、ブレーキ、ステアリングを自動でコントロール。さらにランドクルーザーシリーズに採用されている「マルチテレインセレクト」によって、特別なオフロードテクニックを有さずとも、マッド(泥)、サンド(砂)、ロック(岩)、ダート(砂利道)をスムーズに走破することができるのです。

 そういうと、「これまでも同様のシステムはあった」という人がいると思います。ですが、ダイナミックトルクベクタリングAWDによるRAV4の悪路走破性は、ランドクルーザーのようなクロスカントリー4WDに迫るものがあるのです。

 それもそのはず、前後駆動トルクは状況によっては50:50で固定され、対角線スタックでタイヤが空転し始めると、トルクベクタリング機構が働いて駆動トルクを最適配分すると同時に、ブレーキLSDが働いて瞬時にトラクションを回復させます。E-Fourやダイナミックトルク4WDと同じオフロード地形で乗り比べてみましたが、そのオフロード性能はダイナミックトルクベクタリングAWDが1ランクも2ランクも上でした。

 RAV4の開発者が「ハードなオフロードに行かなくても、そういう場所に行けるという付加価値を持たせたかった」と語るように、同車はハリアーとはまったく違う性能ベクトルを持っています。

■新型RAV4で狙ったのは「SUV本来の魅力であるワクドキ感」

 SUVが自動車市場の大半を占める現代ですが、そもそもクロスカントリー4WDとステーションワゴンなどのRV車をいかに近づけるかというのが、黎明期のSUVに与えられた命題でした。初期のSUVであるトヨタ「ハイラックス・サーフ」や、日産「テラノ」は4WDピックアップトラックをベースにしていましたが、それをRAV4が一気に乗用車に近づけたという歴史があります。

 ですが、乗用車ライクなSUVが当たり前の現代において、SUV本来のベクトルにはもはや個性がありません。昨年続いたGクラス、ジムニー、Jeepラングラーのフルモデルチェンジにより、多くの自動車ファンが本格的な悪路走破性を持ったヘビーデューティなモデルを再評価し始めました。

 そんな矢先に登場した新型RAV4は、SUVでありながら時計のG-SHOCKのような無骨なフォルムを持ち、しかもパートタイム4WDなみの悪路走破性を秘めています。これは並み居る国内外のSUVの中で、強い個性となっていることは間違いありません。

 見た目だけヘビーデューティな雰囲気を纏ったSUVやクロスオーバーはごまんとありますが、今後多くの自動車メーカーがRAV4を追随するモデルを開発することは想像に難くありません。

 2014年には完成していたというダイナミックトルクベクタリングAWDの技術ですが、開発者によれば「正直言って、コストが高いメカニズムなので、レクサスくらいにしか使えないと思っていた。だから、RAV4のチーフエンジニアからぜひ使いたいと言われた時は驚いた」といいます。

 佐伯禎一チーフエンジニアが新型RAV4で狙ったのは、「SUV本来の魅力であるワクドキ感」でした。クロスカントリー4WD、そしてスポーツユーティリティトラックがブーム再燃の兆しを見せている中で、リスクを恐れなかった英断は見事に結実しているのではないでしょうか。

 これからのSUVが目指すべきなのはもはやオンロードを中心としたオールマイティさではなく、ナンチャッテではない“ホンモノの付加価値”を持つことなのかもしれません。

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