この記事をまとめると
■かつては新車販売台数のランキングで国産Bセグメントのコンパクトカーは上位常連であった
いま一番ホットなライバル対決! ホンダ・フリード対トヨタ・シエンタを「シート・荷室・走り・燃費・装備」とあらゆる点で比較した
■代表格であるトヨタ・ヤリス、日産ノート、ホンダフィットを比較
■キャラは三車三様
いまだ根強い人気を誇るコンパクトハッチバック
運転初心者からベテランドライバーにまで愛される国産車の代表格となる1ジャンルがハッチバックタイプのコンパクトカーだ。2024年1~6月の乗用車ブランド別販売台数ランキングでもトヨタ・ヤリスが2位、日産ノートが4位につけている。ホンダ・フィットは大人しすぎるエクステリアデザインのせいか、それともN-BOXやフリード人気に押されているのか14位となっているが、かつてはランキング上位の常連でもあったのだ。ここではその国産Bセグメントに属するコンパクトカーの3台について徹底比較したみたい。
まずは2021年欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した攻めたエクステリアデザインをもつトヨタ・ヤリスだ。ランキング2位の販売台数のヤリスには、じつはまったく別物のヤリスクロスが含まれているが、レンタカー、カーシュアを含めて街で見る機会もめっぽう多い、かつてのヴィッツの後継車。ほかの国産コンパクトカーと違うのは、パーソナルカー、ドライバーズカーとしてのキャラクターが強いこと。つまり、前席優先のパッケージとなる。
パワーユニットは主力のハイブリッドが3気筒1.5リッターエンジン、91馬力、12.2kg-m+モーター80馬力、14.4kg-m(FF)。WLTCモード燃費は最高36.0km/Lを誇る。
また、HVのトヨタセーフティセンス=先進運転支援機能のなかに、プロアクティブドライビングアシストが加わっているのも特筆点。ACCを使わない市街地走行でも先行車との距離、カーブ手前減速などの支援を行ってくれる、ライバル車にない先進的な装備・機能だ。ただし、ライバルにある電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能は未搭載。ここで紹介する3台のうち、唯一、パーキングブレーキは旧来のレバー式となる。
気になる室内スペースは、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準(以下同)で前席頭上に160mm、後席頭上に100mm、膝まわりに170mmのスペースがあり、後席はフロア中央にやや凸がある。後席乗員の着座、立ち上がりのしやすさにかかわるヒール段差=フロアからシート前端までの高さは370mmと高めで、決して広々としてはいないが、乗り込んでしまえば着座、立ち上がり性は思ったよりよい。ただし、その数値からも、前席優先のパッケージであることは間違いない。もっとも、視界を含め、筆者の体形であればそれほど窮屈感を感じずに済む。
ラゲッジルームは開口部地上高660mm、フロア奥行き630mm、フロア幅995mm、最低天井高690mmだ。
また、トヨタのHV車の例に漏れず、HV車にAC100V/1500Wコンセントが用意されるのも、ノートやフィットのHV車にない特徴、ドライブ先や災害時において便利さという面で勝っているといっていい。
日産ノートもこの時代に相応しい人気コンパクトカーだ。というのもノートは100%電動駆動の第二世代e-POWERを用いており、エンジンにより発電された電気でモーターを駆動、街なかを、そして高速道路を静かに快適に走れる、経済性も抜群な電動車という環境性能に優れた先進性をもち合わせているからだ。
具体的にいうと、e-POWERはモーターと3気筒1.2リッターガソリンエンジンを融合させた新しい電動パワートレインであり、しかし駆動は100%、日産リーフにも搭載している大出力モーターで行う。エンジンはモーターを駆動させるための電気の発電に使われるシステムとなる。なお、エンジンは82馬力、10.5kg-m、モーターは116馬力、28.8kg-m(2WD)を発揮する。WLTCモード燃費は2WDが28.4km/L。
また、日産自慢の進化した高速道路同一車線運転支援技術のプロパイロット(1.5)やSOSコール、オペレーターサービス(ヤリスやフィットにもある)など、注目すべきポイントは数多く、万人向けのエクステリアデザインのスタイリッシュさを含む総合的な商品力の高さが魅力になっている。
室内スペースは前席頭上に190mm、後席頭上に110mm、膝まわりに200mm。後席フロア中央にはやや凸がある。後席乗員の着座、立ち上がりのしやすさにかかわるヒール段差=フロアからシート前端までの高さは360mmと高めで、着座性、立ち上がり性ともに文句なしである。ヤリスに対して後席膝まわり空間にゆとりがあることも注目点だ。
ラゲッジルームは開口部地上高650mm、フロア奥行き620mm、フロア幅1025mm、最低天井高720mmだ。つまり、ヤリスより幅方向と天井方向に余裕があり、たとえば折り畳み時約1000mmの折り畳み式カートを真横に積載しやすい使い勝手のよさがある(カート類は斜めにしか積めないと積載効率が悪化するゆえ)。
電子パーキングブレーキと、一時停止時などにブレーキを踏み続けなくていいオートブレーキホールド機能ももちろん装備する。
キャラの差がクッキリと出ているヤリス・ノート・フィット
フィットはホンダ自慢のセンタータンクレイアウトを採用した「パッケージング大賞!」と呼びたくなるほどのコンパクトカーだ。現行型はその4代目であり、内容的に、まさに熟成を極めたフィットといっていい。2024年9月5日発売モデルの一部改良では全グレードに全席オートパワーウインドウ、オートリトラミラー、ラゲッジルームランプなどを採用し、装備を充実させている。
標準車にBASIC、HOME、RS、LUXEといったグレードのほか、いきなりカッコよくなるクロスオーバーテイストのクロスターを揃えているのも特徴だ。
主力はe:HEVと呼ばれる1.5リッターエンジン、106馬力、13.0kg-m+2モーター、123馬力/25.8kg-mのハイブリット。WLTCモード燃費は最高30.2km/L。コネクティッド機能を始め、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能も装備する。
室内スペースは、フィット伝統でもあるハッチバックタイプのコンパクトカー最大級の広さが自慢だ。前席頭上に200mm、後席頭上に120mm、膝まわりに320mmものクラスを超えたスペースがある。後席フロア中央の凸は最小限。後席乗員の着座、立ち上がりのしやすさにかかわるヒール段差=フロアからシート前端までの高さは365mmとこれまた十分である。
ラゲッジルームは開口部地上高590mm、フロア奥行き600~660mm、フロア幅1010mm、最低天井高650mm(後席背後では780mm)。つまり、開口部がヤリスやノートより低く、重い荷物の出し入れ性で優位に立つ。しかも、シートアレンジ性はライバルを凌ぎ、後席の格納はワンアクションで行え、さらにごく低いフラットスペースが出現するため、リヤドアからの荷物の出し入れもラクラク。伝統の、観葉植物などの背の高い荷物を積むのに有効な座面と背もたれをハネ上げるトールモードの用意もフィットならではだ。
では、3車の走りはどうか。
ヤリスの運転席に座れば、まずはシートのよさが印象的。トヨタの上級車と同様、背中の優しい包まれ感、座面のソフトなクッション性がもたらす体重によるサポート感が好ましい。前方視界に不満はないものの、Cピラーの太さによる斜め後方視界はいまひとつ。とはいえ、そもそも5ナンバーサイズ、最小回転半径4.8~5.1m(標準装着タイヤ)の小まわり性が利くコンパクトカーなのだから、取りまわし性に不満などあるはずもない。
一部改良を受けたWLTCモード25.4km/LとなるHV ZのFFモデルを走らせれば、出足から強力なモーターパワーの威力で、どのドライブモードにセットしていてもスポーティカーのように速い。その速さを受け止めるボディ剛性の高さ、硬めのサスセッティングに加えて試乗車は185/55R16サイズのタイヤを装着しているため、乗り心地はけっこう硬め。荒れた路面、段差ではロードノイズ、ガタツキ感のあるショックと音に見舞われる。
が、パワーステアリングの中立付近のドシリとしたタッチ、そこから切り込んでいくときの安心感ある重み、路面からのインフォメーションの確かさもあって、コンパクトスポーティカーのような走りのテイストを伝えてくれるのだから、走りは痛快。繰り返すが、プロアクティブドライビングアシストの支援も特筆モノである。
ノートe-POWERの走りは、なるほど100%電動駆動による電動車感覚の強さが特徴だ。発電に専念する1.2リッターエンジンは始動しても静かにまわり、なおかつバッテリー残量に余裕がある場合、極力発電をしない(エンジンを始動させない)制御も採用されているから、走行中の静かさはコンパクトカーの域を超えたものといっていい。そして、好みは別れるかもしれないが、ワンペダル走行モードをもつのも特徴だ。
ルノーと共用するプラットフォームによる乗り心地はしっかりフラット。出足からの粘り強いEV走行時のスムースさ、フットワークの安定感もなかなかのもの。ワンペダルによる減速感(減速G)もいまではそこそこ違和感のないものとなっている。動力性能も十二分といってよく、終始、上質な走りが味わえる。
ちなみにプロパイロットは1.5と呼べる進化型で、高速道路上での渋滞追従機能、渋滞時の停止保持時間が約30秒というところも使いやすさに直結する。
前後ドアの開閉タッチ、音まで国産コンパクトカー離れした上質さのあるフィット。走らせれば、乗り心地は滑らかかつ伸びやかな加速感がまずは好印象。多くのシーンで基本的にはモーター走行を行い、エンジンは発電を担うのがe:HEVで、クルージング状態ではほぼモーター走行。たとえエンジンが始動しても、エンジンノイズの車内への透過音が抑えられ、それを気づかせないのもさすが。
パワーフィール的には、ホンダのエコモードスイッチといえるECONをオフ=ノーマルモードにしても穏やかなものだが、市街地、高速道路で加速力不足を感じさせることなどまずないといっていい。
乗り心地は15/16インチタイヤを問わず、フラットで心地よいマイルド感が持ち味(RSを除く)。シートの分厚いクッション感をもつかけ心地のよさとの相乗効果で、コンパクトカーらしからぬ、もっとずっと上級な大型のクルマに乗っているかのような快適感をもたらしてくれるのだ。
一方、専用サスペンションと16インチタイヤを奢るRS(ロードセイリングの略)の走りは、ドシリとして骨太で上質なタッチに終始。やや重めのパワーステアリングを操作すれば、乗り味としてコンパクトカーとは思えない上級車並みのしっかり感、上級感、走りの切れ味が特徴となる。
こうして国産コンパクトカーの代表格3台を比較して乗り比べると、エクステリアデザイン的に万人向けなのはノートとフィット(フィットはクロスオーバーモデルのクロスターがダントツにカッコいい)。後席の広さ、居住性、シートアレンジ性のよさにこだわるならフィット。電動車感の強さで選ぶなら100%電動駆動のノート(上級のノートオーラもある)。標準車でパーソナルカーとしてスポーティな走りを楽しみ、市街地走行でのさらなる安心を望むならプロアクティブドライビングアシストも備わるヤリス……ということになるだろうか。
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