2002年(初代)、2008年(2代目)に年間販売台数NO.1となるなど、ホンダのベストセラー車といえばフィットだった。しかし現行フィットは、売れ行き不振にあえいでいる。
なぜフィットの販売は伸び悩んでいるのか? その要因は何か? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
フィットはなぜ売れ行きが伸び悩んでいるのか? マイナーチェンジ&RS投入でテコ入れなるか!?
文/渡辺陽一郎
写真/HONDA
■売れ行きが伸び悩む最近のフィット
現行型ホンダ フィット。2022年上半期(1~6月)の1ヵ月平均登録台数は約4900台で、これはコンパクトカーの平均登録台数では5番目にあたる
最近はフィットの売れ行きが伸び悩む。2022年上半期(1~6月)の1ヵ月平均登録台数は約4900台であった。
ほかのコンパクトカーの1ヵ月平均登録台数は、ルーミーが約1万1000台で最も多く、次はノート+ノートオーラの約9500台、ヤリス(SUVのヤリスクロスとスポーツモデルのGRヤリスを除く)は約6500台、アクアが約5700台と続く。これに次ぐのがフィットの約4900台だ。
過去を振り返ると、フィットの販売が絶好調だった時代もある。
2001年に登場した初代フィットは、2002年に1ヵ月平均で2万台以上が登録され、軽自動車を含めた国内販売の総合1位となった。2022年上半期に最も多く販売されたN-BOXが1ヵ月平均で約1万7300台だから、2万台に達した初代フィットは抜群の人気車だった。
2代目フィットも好調で、発売の翌年になる2008年には、1ヵ月平均で約1万4600台を登録して小型/普通車の最多販売車種になった。
3代目も発売の翌年になる2014年には、1ヵ月平均で約1万6900台が登録された。2代目はハイブリッドを途中で加えたが、3代目は最初から設定され、発売の翌年の売れ行きは2代目を上まわった。
そうなると問題は2020年2月に発売された4代目の現行型だ。発売の翌年となる2021年の登録台数は、前述の通り1ヵ月平均が約4900台と振るわない。2020年以降の国内販売は、コロナ禍の影響で全般的に低調だが、それにしてもフィットは少ない。
さらに今のフィットは、国内で売られるホンダ車の販売ランキング順位も下げている。直近の2022年上半期で見ると、国内で最も多く売られたホンダ車は前述のN-BOXだ。1ヵ月平均は1万7300台で、国内販売の1位になる。
問題はホンダ車の2位で、フリードだった。1ヵ月平均登録台数は約7300台だから、フィットの1.5倍だ。フリードの発売は2016年だから、約6年を経過する。2020年に登場したフィットよりもハイブリッドシステムなどの設計が古い。それなのに登録台数はフリードのほうが多いのだ。
■フィット伸び悩みの理由とは
伸び悩みの理由のひとつが、さっぱりし過ぎて少し頼りない内外装にある。乗ればわかる魅力があるだけに、外見の印象で敬遠されているのは残念
なぜフィットは、ここまで売れないのか。この背景には複数の理由がある。
まずは外観だ。フィットは現行型になって、視界を前後左右ともに向上させた。ボディの先端にあるAピラー(柱)は、実際にはフロントウインドウの窓枠で、細くデザインされている。ボディ剛性は、その後ろ側のドアミラーに隣接したピラーで保つが、外観の見栄えは少し頼りない。フロントマスクも賛否両論だ。
内装も同様だ。現行型はインパネの上面を平らに仕上げ、細い窓枠と相まって、前方視界が優れている。その代わり質感やボリューム感の演出が難しい。2本スポークのステアリングホイールも、メーターなどの視認性は向上するが、見栄えは物足りない印象を受ける。
ハイブリッドのe:HEVは、エンジンが発電を行い、駆動はモーターが受け持つ。そのためにアクセル操作に対する反応が機敏で加速は滑らかだが、WLTCモード燃費は、売れ筋グレードで見ると27.4~28.6km/Lだ。ライバル車になるヤリスハイブリッドの35.4~36km/Lに比べて見劣りする。
グレード構成も分かりにくい。現行型はグレードとメーカーオプションの組み合わせ総数を減らすことも視野に入れ、グレードを5種類と豊富に用意する代わりに、メーカーオプションを削減した。
そこで設定されたネスと呼ばれるグレードが曖昧だ。SUV風のクロスターをベースに、外装パーツをホームに近付けた内容になる。メーカーは「スポーティ指向のグレード」と説明したが、以前のRSに比べて魅力が分かりにくい。
それでも現行フィットは「乗ると良いクルマ」だ。e:HEVは加速が滑らかで静粛性も優れ、コンパクトカーでは乗り心地も快適だ。視界も良いから運転しやすい。
さらに全長が4m以下で、全高を立体駐車場が使いやすい高さに抑えたコンパクトカーでは、車内が最も広い。後席の居住性はミドルセダン並みで、燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席を床面へ落とし込むように畳むと大容量の荷室に変更できる。
これらのメリットが、市場には十分に伝わらず、売れ行きを低迷させた。
■ライバルは身内にいた!?
現行型ホンダ N-BOX。2018年、2019年の1カ月平均で約2万台以上、2020年、2021年はコロナ禍の影響を受けながらも約1万5000台以上を売り上げた
現行フィットの売れ行きが下がった理由として、N-BOXの存在もある。先代(初代)N-BOXは1ヵ月平均の届け出台数が1万5000台前後だったが、2017年に2代目の現行型にフルモデルチェンジされると、販売台数を急増させた。
2018年には1カ月平均で約2万台、2019年は約2万1000台に増えて、2020年はコロナ禍の影響を受けながらも約1万6300台だ。2021年も約1万5700台であった。
現行N-BOXが売れ行きを急増させたのは、先代型も好調に売られたために膨大な乗り替え需要があり、なおかつ好調な販売予測を前提に、現行型が高いコストを費やして商品力を一層高めたからだ。
具体的には、先代型の特徴とされた車内の広さや荷室の使い勝手を保ちながら、内装の質、シートの座り心地、乗り心地、静粛性を大幅に向上させた。
その結果、フィットから現行N-BOXに乗り替えるユーザーが増えた。ホンダの販売店では以下のように説明する。「N-BOXは軽自動車だが、車内はフィットよりも広く、後席の足元空間もタップリしている。後席を畳めば自転車などを積みやすい。
内装の質や安全装備もフィットに負けない。価格はフィットにノーマルエンジンを搭載するホームと、N-BOXにエアロパーツを装着したカスタムが同程度だから、多くのお客様がN-BOXを買い得と感じる」。
つまりフィットの強敵は、身内のN-BOXともいえるわけだ。そのために以前のN-BOXは、決算期などの低金利キャンペーンやディーラーオプションのサービスをほとんど実施しなかった。
販売店からは「N-BOXは積極的に売らないように指示されている」という声も聞かれ、メーカーの開発者は「N-BOXはモンスターのようなクルマで、ほかのホンダ車の需要を奪う」と述べた。そこまでN-BOXの販売は絶好調なのだ。
このような具合だから、フィットはN-BOXとの販売合戦に敗れ、フリードのほうが好調に売られている。フリードはコンパクトミニバンだから、3列のシートが装着されて多人数乗車も可能になり、3列目を畳むと4名で乗りながら自転車も積める。N-BOXとは競争しにくい。
■フィットのマイナーチェンジは2022年10月!!
2022年10月にマイナーチェンジを予定しているホンダ フィット。ノーマルタイプのガソリンエンジンが従来の直列4気筒1.3Lから1.5Lに拡大される
以上のような事情もあり、フィットは10月にマイナーチェンジを実施する。販売店では2022年8月上旬から予約受注を開始した。詳しいデータや価格がメーカーのホームページなどに掲載される正式発表は10月6日だ。納期を販売店に尋ねると「8月下旬の注文で納車は11月から12月になる」という。
フィットのマイナーチェンジで最も注目される変更点は、ノーマルタイプのガソリンエンジンが従来の直列4気筒1.3Lから1.5Lに拡大されることだ。今はヤリスやマツダ2のノーマルエンジンも1.5Lになる。
グレード構成も変わり、先に挙げたネスを廃止して、スポーティグレードのRSを復活させる。RSには、1.5Lに排気量を拡大したノーマルエンジンと、ハイブリッドの両方を用意する。
RSでは足まわりの設定も独自に変更される。e:HEVの場合、RSはフロントショックアブソーバーの減衰力を縮み側で66%、伸び側で101%増やす。フロントスタビライザーも4%強める。その一方でフロント側のスプリングレートは4%抑える。
リア側はショックアブソーバーの減衰力を縮み側で82%、伸び側で122%増やし、スプリングレートも26%強める。タイヤはヨコハマブルーアースGT(185/55R16)を装着する。
つまりRSは、路面の接地性を高める方向でチューニングされ、走行安定性が向上して、乗り心地も硬めながら重厚感のある上質な仕上げとする。スポーティであると同時に、高速道路を使った長距離ドライブ時の快適性も高める。
e:HEVのRSには、ドライブモードスイッチが備わり、ステアリングのパドルスイッチで操作する減速セレクターも加わる。
RS以外のグレードは、あまり変わり映えがしない。外装の装飾が部分的に変更されたりするが、賛否の分かれる顔立ちに明確な違いはない。改良されたのは機能で、ホンダセンシングには、低速域でも操舵支援が行われるトラフィックジャムアシスト(渋滞時運転支援機能)が加わった。
マイナーチェンジ後の価格は、売れ筋グレードになる2WDホームの場合、ノーマルエンジン搭載車が182万6000円だ。従来型は176万7700円だから、5万8300円値上げされた。
ホームのe:HEVはマイナーチェンジ後が217万5800円になる。従来型は211万7500円だから、同様に5万8300円値上げされている。
ノーマルエンジンの排気量が1.5Lに拡大され、そのほかの機能もいくつか改善されたが、6万円近い値上げは高すぎる。昨今は製造コストや輸送費が高騰して、輸入車は頻繁に値上げを行う。フィットもマイナーチェンジを機に、価格を若干高める。
新しい注目グレードのRSは、ノーマルエンジンが195万9100円、e:HEVは234万6300円だ。ライバル車のスイフトスポーツは、1.4Lターボエンジンを搭載して、6速MT仕様の価格が202万8400円だ。スイフトスポーツの価格は、フィットRSのノーマルエンジンとe:HEVの中間に位置する。
これからはフィットRSも、居住性や実用性の高いコンパクトなスポーツモデルとして注目されそうだ。
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