長年使い続けている名称も存在する!
1980年代から電子制御技術の普及や解析技術の導入によって、自動車の性能や安全性などが飛躍的に高まった。開発競争は激化し、これまでになかった革新的なアイテムや斬新なテクノロジーが数多く投入されている。最新のデバイスやメカニズムは各メーカーの個性としてクルマ好きを魅了し、ファン同士が熱く語り合ったものだ。今回はそんな1980~2000年代の最新技術をクローズアップ! まるでパスワードのように組み合わされた英字の意味、貴方はいくつ知っている!?
「モモステ」「モモノブ」「モモシューズ」! MOMOにあった懐かしの「カー用品」
初級編:4-ESC(1983年登場)
まずは初級編。「ESC」といえば近年はElectronic Stability Control(横滑り防止装置)のことを示す。ただ、「4-ESC」は1983年にクラウンに搭載された技術だ。当時、横滑り防止装置は存在しない。では、このシステムはどのようなものか? 答えは4Wheel Electronic Skid Control(四輪電子制御アンチスキッドコントロール)で、トヨタの4輪ABSを表す名称だった。
じつは1990年代にABSへと名称が統一されるまで、ホンダは「4W A.L.B(4Whell Anti-lock Braking System)」という名で、日本初のABSとして1982年にプレリュードに搭載。そして日産は「4WAS(4Wheel Anti-Skid。現在4WASは4Wheel Active Steer[4輪アクティブステア]の名称として使われている)」と、各メーカー独自の名称を採用していた。また、TWINCAM24やTURBO同様に、リヤウインドウやトランク部にそのエンブレムやステッカーが取りつけられ、先進技術を誇らしげに主張していたのだ。
初級編:NICS(1985年登場)
続いて「NICS」。ヒントは1985年に7代目(R31型)スカイラインのRB20DETに搭載された世界初のシステムだ。吸気マニフォールドにバルブを設定して低回転では閉じて、高回転は開けることで低速トルクを補いつつ、高回転でもパワーを出す画期的なものだ。
さて、NICSとはNissan Induction Control System(電子制御可変吸気コントロールシステム)。システム自体はR31に先んじてトヨタの1G-GEUに「T-VIS(Toyota Variable Induction System)」として採用されていた。ただし、T-VISは1本のマニフォールドをバルブ手前で2本に分け、片側にバルブを設けて切り替えていた。それにに対し、NICSは吸気マニフォールドをサージタンクから低回転用と高回転用を別に設け、それぞれ形状や長さを変えるなど凝っていた。
ただし、その不等長形状が設計通りの効果を発揮せず、低速トルクは十分得られたが、高回転が回らないという悪癖を引き起こした。これにより初期のRB20DETはスポーツユニットらしくないという烙印を押されてしまう。そのため、NICSはモデルサイクル内では異例といえる全面刷新が敢行され、後期型ではT-VISと同じシステムに変更されている。また、可変吸気マニホールドはトヨタ、日産以外にもマツダの「VIS(Variable Induction System)」や三菱の「MVIC(Mitsubishi variable induction control system)」などがある。
中級編:AVCS(1998年登場)
中級編は「AVCS」から。その機構についてはクルマ好きなら馴染みがあり、システムを採用するのはスバルだ。3代目レガシィで初搭載された可変バルブタイミング機構(Active Valve Control System)の略称で、カムの位相を変化させ、吸気のバルブタイミングを連続的に変化させることで燃費と性能を両立させるシステムのこと。
ところで可変バルブタイミング機構といえばホンダの「VTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control system)」が有名だが、日本初採用は1984年に登場した三菱の「シリウスDASH3×2」エンジンだ。ただし、AVCSやVTECのようにカムを位相するのではなく、低速は吸排気ひとつずつの2バルブ、高回転ではカムを切り替えてバルブタイミング可変し、高速用のバルブも動かして3バルブとする機構だった。驚くべきはカムの作用角で、排気側カムが272度、吸気用の高回転用カムに至っては288度と、市販車としては異例のハイリフトを採用している。
ちなみにシリウスはおお犬座を意味する三菱エンジンの名称のひとつで、DASHはDual Action Super Headを意味している。1980年代前半、三菱はDOHCエンジンを持ち合わせていなかった。そこでSOHCに最新メカニズムを搭載することで、当時過熱していた2Lクラスの馬力競争に加わっただけでなく、週末ファミレスで交わされていたトークバトルでもファンの面目を保ったのだ。
中級編:RISE(1996年登場)
「RISE(ライズ)」と聞けば、トヨタのスモールSUVをイメージする人が多いと思うが、年代的にも別物(それにRAIZEとスペルも異なる)。ではRISEとは何なのか。それは1994年4月以降に発売された新車から義務付けられた、前面衝突試験に対応した三菱の新しい衝突安全ボディの略称である。Reinforced Impact Safety Evolution(進化した強化衝突安全)の頭文字を取ったものだ。エボリューションとはいかにも三菱らしいネーミングだ。
1996年登場の8代目(EA/EC型)ギャランから採用され、構造は年々進化しているが現在も変わらずこの名称が使われ続けている。ちなみにこの新しい衝突安全ボディにいち早く対応したのはトヨタで、1996年の5代目(EP9型)スターレットから採用。「GOA(Global Outstanding Assessmentの略)」のネーミングを掲げ、安全訴求キャンペーンを展開した。「GOAください」のTVCMを覚えている人も多いのではないだろうか。そのほかのメーカーはホンダが「G-CON(G-force control technology)」、スズキが「TECT(Total Effective Control Technology)」、そしてダイハツが「TAF(Total Advanced Function)」などとなっている。
上級編:LKA(2001年登場)
上級編は「LKA」をピックアップ。文字だけを見ると難易度は高いが、クルマ好きなら一度は耳にしたことがある安全に関わるシステムの略称だ。これは車載カメラで車線を検知し、長距離運転時に車線の中央を走るようにステアリング操作をサポート。ドライバーの負荷を軽減するLane Keep Assist (車線維持支援システム)のこと。
ちなみに「ACC(Adaptive Cruise Control=定速走行・車間距離制御装置)」とセットで使われることが多い。初採用は2001年の日産シーマで、当初は高速道路の直線のみだった。
そのほかの安全運転支援機能の略称をあげると2021年11月から義務化された衝突被害軽減ブレーキの「AEB(Autonomous Emergency Braking)」、モニターや音波レーダーなどで駐車を支援するシステムであるIPA「Intelligent Parking Assist」。そして、支援先進技術を駆使してドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した先進安全自動車が「ASV(Advanced Safety Vehicle)」など、多くがアルファベット3文字で表記されているのも特徴だ。
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