2016年にトヨタの世界戦略SUVとして登場したC-HR。2017年にはSUV販売台数ナンバーワンに輝き、プリウス・ノート・アクアに次いで、年間11万台以上を販売した超人気車だった。
しかし、モデルライフはそろそろ5年を迎え、2019年10月のマイナーチェンジを最後に大きな改良はない。販売台数も2021年7月は月販1,369台と奮わず、ハリアー・RAV4・ライズ・ヤリスクロスといった、同門SUVに大きく溝を開けられている状況だ。
アイドリングストップ機構はコスト面でも操作性でもキャンセルが正解?
9月14日にはカローラクロスの登場が予定されており、車格の近いC-HRは、ますます苦戦が強いられるだろう。今後、C-HRにはどのような立ち振る舞いが必要になってくるのだろうか。C-HRのこれからを解説していく。
文/佐々木亘 写真/池之平昌信、TOYOTA
【画像ギャラリー】未掲載多数あり!車格の近いC-HRとカローラクロスの内外装を比較!!
C-HRは新型カローラクロスに取って代わられるのか?
カローラクロス(全長4490mm×全幅1825mm×全高1620mm/ホイールベース2640mm/価格帯199万9000円~319万9000円)
2021年9月14日に発表される予定のカローラクロスとC-HRは、ボディスペックやパワートレインなど似た面が多い。
ボディサイズはC-HRが、全長4385mm×全幅1795mm×全高1550mmで、ホイールベース2640mmとなる。対するカローラクロスは全長4490mm×全幅1825mm×全高1620mmで、ホイールベースはC-HR同様2640mmだ。
パワートレインはガソリンモデルの排気量こそ違うが、1.8Lハイブリッドエンジンを積み込むのは共通である。
C-HRは238万2000円~314万5000円の価格レンジで、カローラクロスは199万9000円~319万9000円だ。カローラクロスが発表前であり、現車比較はできていないが、室内の広さを示す数値やラゲッジ容量などを比較すると、圧倒的にカローラクロスのほうが使いやすいクルマとなるだろう。
C-HRは、後席空間の狭さや後方視界の悪さを指摘されるが、カローラクロスでは、こういった不満が出ないように、クルマを作り込んでいるはずだ。カローラクロスは、価格も低く抑えてありコスパも高いとなると、C-HRがお役御免となる日も遠くはないのかもしれない。
スポーツカー要素が強くコアなファンが多いC-HR
C-HR(全長4385mm×全幅1795mm×全高1550mm/ホイールベース2640mm/価格帯238万2000円~314万5000円)
では、C-HRに生き残る術はないのだろうか。今一度、C-HRの魅力を考えていこう。
先日、筆者の愛車(プリウス SツーリングセレクションG’s)が車検時期を迎え、ディーラーが代車として用意してくれたのが、たまたまC-HRだった。
実は、筆者はSUVがあまり好きではない。独特の高い着座位置と、ピッチ&ロールの大きなボディ、ステアリングの入力から少し遅れてボディが動き出すなど、独特のフワッとした感覚や、座っていてタイヤの接地感を感じにくいのが苦手だ。
ヤリスクロスやRAV4、レクサス NXに乗っていても、この違和感があり、SUV独特のものだと半ばあきらめていたが、今回C-HRを1日使用して、そのイメージが少し変わった。
目線は高いが、体を沈められるシートで、サスペンションの動きがよくわかる。もちろんタイヤの接地感もシートやステアリングから感じ取れるし、ルーフが高すぎないから、セダンやステーションワゴンから乗り換えても、運転姿勢や空間に対する違和感が少ないだろう。
用事があり150kmほど走ったが、運転時の疲労感も少ない。普段からG’s(現GR SPORT)の硬めの足に乗り、スポーティな動きに慣れた筆者でも、違和感の少ない乗り味だった。
その中身は、「なんちゃって」ではなく、しっかりとしたスポーツカーを感じられるものだ。GR SPORTがラインナップされ、トランスミッションに6MTも準備されているのも、クルマ好きの心をくすぐるポイントなのではなかろうか。
共存するにはハリアーのようなブランド展開を強めるべし
C-HRは、他のSUVと違い、スポーツカーと似た乗り味を楽しむことが出来る。トヨタのスポーツカーとして生まれ変わることで確固たる地位を築けるクルマになるだろう
C-HRのもつ魅力は大きい。ブランディングを間違わなければ、多くのファンが生まれる可能性があると筆者は考える。
オールマイティに使えるコンパクト~ミドルサイズSUVというイメージは、カローラクロスやヤリスクロスにお任せする。高まるSUV人気を追い風にするのではなく、あえてその流れから外れてみる必要があるのではないだろうか。
ハリアーを例にとると、初代から高級SUVというコンセプトを崩さず、現在ではハリアーという確固たるブランドを作り上げた。上質で優雅な、威風堂々たるイメージは、他車が立ち入る隙を見せない。ハリアーユーザーは、多くが代々ハリアーに乗り換え、高級ミニバンやセダンからの乗り換えも多いのだ。
C-HRも2017年には約12万台、2018年は約8万台、2019年と2020年には合わせて8万台強を販売した。オーナー数は多く、その中にはSUVではなくC-HRが好きなほうも、たくさんいるだろう。
近未来を感じるスタイリッシュなエクステリアデザイン。走り出せばスポーツカーさながらのキビキビとした乗り味が楽しめ、インテリアの質感も高い。幅広いSUVユーザーに求められる形ではなく、C-HRのファンやトヨタスポーツファンが喜ぶようなモデルチェンジを行えば、カローラクロスと共存する道も見えてくるはずだ。
C-HRは、トヨタでいえばランクルやクラウン、ハリアーや86のように、カテゴリーに縛られず、個性を強く出していいクルマのひとつに入る。トヨタの長寿モデルに多い「C」を冠したクルマなのだから、1代限りで終わることなく、長く販売してほしい。
SUVとして勝負するのではなく、トヨタのスポーツカーとして、確固たる地位を築けるクルマがC-HRだ。個人的にはスープラやGR 86のように、GRブランドが指揮を執るクルマに生まれ変わっても面白いと思う。
約6年のモデルサイクルが多いトヨタで、C-HRは今年12月で丸5年となる。勝負の年となる2022年に、フルモデルチェンジの一報を聞きたい。
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