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新型日産デイズ・三菱eKはゲームチェンジャーになるか

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新型日産デイズ・三菱eKはゲームチェンジャーになるか

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2019年3月28日に、日産からモデルチェンジされた新型デイズ、デイズ・ハイウェイスター、三菱からはeKワゴン、eK X(クロス)が発表された。日産デイズと三菱eKは、デザイン以外は共通の軽ハイトワゴンで、日産、三菱の軽自動車開発合弁会社のNMKVで商品企画が行なわれている。従来モデルはMNKVという新しいスキームで開発された最初の軽自動車で、2013年6月に発売されている。つまり今回の新型は6年振りのフルモデルチェンジを受けて登場したことになる。

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NMKVの果たす役割

NMKVは2011年に2社の合弁会社として設立され、当初は日産側は部品調達、商品企画、デザインを、そして三菱はデザイン、開発と生産を行なうという役割となっていた。つまり両社が協力して軽自動車を開発するという、国内では例を見ない新しいクルマづくりのシステムが構築されている。

日産は、スズキ、三菱から軽自動車をOEM供給をうけて販売をしていたが、軽自動車のマーケットは日産にとっても重要で、日産の国内の販売台数の30%を稼いでおり、欠くことのできない存在となっている。そのため、一時は日産も独自で軽自動車の開発、生産を検討したが、巨額の投資が必要なためカルロス・ゴーン前会長は独自開発・生産を止め、三菱の協業を選択した。そして結果的には、これが日産が三菱を傘下に収めるきっかけになったといえる。

日産と三菱は、2011年に新たな軽自動車の開発・企画会社としてMNKVを設立したが、日産には軽自動車づくりの経験がないため、戦後から一貫して軽自動車をラインアップしていた三菱の存在は不可欠だった。一方で、日産の持つグローバル部品調達力は大きく、三菱は日産とともに部品を購入すればよりコストを下げることが実現する。

つまりNMKVは両社のメリットを活かした軽自動車を造ることができることになった。ところが、三菱が開発、設計、製造した従来モデルは、2016年に型式認証用の走行抵抗データに不正なデータがあったことが発覚し、4月から販売、製造を停止するという大事件が起きた。これによって三菱は大きなダメージを受け、さらに軽自動車以外の車種にも長らく不正、あるいはずさんな走行抵抗データを使用していたことが判明し、企業としての存続が問われる事態になった。

結果的に2016年5月に、日産は三菱の株式の34%を2370億円で取得し、三菱は事実上、日産の支配下になっている。このようにNMKVで企画された第1弾となる従来モデルのデイズ、eKは一時、販売、生産の停止まで追い込まれたが、モデルライフでの販売は意外と堅調を維持したモデルだったのだ。



ゼロからの開発

新型デイズ、eKはこれまで同様にNMKVで商品企画が行なわれているが、両社の分担では今回から日産が設計、開発、部品調達を行ない、生産を三菱が担当するという形に大きく変貌している。製造工場は軽自動車製造の経験の長い三菱の水島製作所で、これはこれまでと同じだ。岡山県・倉敷市の水島製作所の周辺には軽自動車づくりに必要な基本部品のサプライヤーが集中しており、軽自動の生産には有利な条件が整っているのだ。

今回の新型の開発にあたり、NMKVではより商品力を高めること、日産と三菱でよりそれぞれのブランドを反映したデザインにすることになった。その結果、商品力の向上のために軽自動車という枠を破った先進技術(プロパイロットなど)や安全性能を向上させる装備の採用が決断され、車両のラインアップは、日産デイズ、三菱eKワゴンをベース車種とし、通常の軽自動車業界でいうカスタム・モデルとしては、日産はデイズ・ハイウェイスター、三菱はSUVテイストを持つeKクロスを設定している。

また新型モデルの開発では、プラットフォーム、エンジン、トランスミッション、電装・電子プラットフォームを一新し、ゼロからの開発となったことも画期的だ。日産は軽自動車専用のプラットフォームをデザインし、この新プラットフォームに合わせて電装・電子プラットフォームは小型車用のものを導入している。

新型のボディは快適性向上のため、静粛性も高められた。エンジン-トランスミッションの結合剛性の向上から、車体の要点の防音・遮音対策の導入により、軽自動車トップレベルの静粛性能を実現している。

アライアンスのシナジー効果

新たに搭載されたエンジンは、日産マイクラ、ルノーのトゥインゴなど、ヨーロッパで販売されている車両に搭載されているH4B型3気筒・900ccのエンジンの基本部分を採用し、日本の軽自動車用に660ccにサイズダウンしたエンジンだ。これもルノー・日産・三菱アライアンスのひとつの成果ともいえる。

この新エンジンは、動力性能の向上、特に加速力のアップを目指し、従来より低中速トルクを重視し、最大トルク発生回転数は自然吸気で3600rpm、ターボ仕様で2400-4000rpmとし、扱いやすさ、加速性能の向上を果たしている。

ベルト駆動式のスターター/ジェネレーターを備えたマイルドハイブリッドも、リチウムイオン・バッテリーを採用し、従来より大幅に減速エネルギー回生、モーターアシスト力を向上させた。モーターは最高出力2.7ps、最大トルク40Nmを発生。エンジンをアシストする時間は従来の10倍以上になっている。

また、CVTトランスミッションもジャトコ(JATCO)が軽自動車用に新開発した最新型を採用。新型CVTはCVT-S(JF021E型)と呼ばれる。従来の7.3というワイドな変速ギヤ比を狙った副変速機付きのJF015E型から、副変速機なしで変速比幅を6.0と変速比幅を狭めた仕様となっている。小型車より最高速が低い軽自動車用に特化した仕様だ。そのかわりに4.2kgの軽量化、従来型比8%の低フリクション化を実現している。

さらに軽自動車初となる、急加速時にステップ変速(呼称はDステップ変速)するフィールをつくり、従来のCVTのように、急加速時は高回転でエンジンが回り続けるというCVTの特性を消して、AT的なフィーリングにして、気持ち良い加速感を生み出している。

最新電子プラットフォームによる先進

最新の電装・電子プラットフォームを採用したことの意味は、車両の内部に張り巡らされている配線をできる限り統合化し、さらにLANに適合させ、各種の電子デバイスや電装品を容易に追加できる拡張性、フレキシビリティが備えられていることだ。

その結果、カーテンエアバッグを含むエアバッグの全車標準装備化、電動パーキングブレーキ、VDC(ESC)、緊急自動ブレーキを含む運転支援システム、プロパイロット、踏み間違い防止アシスト、さらにデイズは常時通信接続を利用したSOSコール(D-Callネット)などの装備が実現している。なおこのSOSコールは、販売店で契約して利用開始となる。また作動は、事故によりエアバッグが作動した状態になると自動通報する他、手動でSOSコールを呼び出すこともできる。



渋滞追従、ストップ&ゴーの機能を含む全車速追従・ステアリングアシスト型のプロパイロット(三菱の呼称はマイパイロット)、デイズのSOSコール(D-Callネット)などは、軽自動車ユーザーには強くアピールできる装備だ。

日産は2019年~2020年にコネクテッド技術を導入する戦略を策定しているが、デイズがその適用第1号になっている。またプロパイロットは、エクストレイル、リーフ、セレナなどに採用され、セールスポイントになっている現状もあり、軽自動車に導入して一気に商品競争力を高める作戦で、こうした点が「軽自動車市場を変える」というコンセプトの象徴になっているわけだ。

今後三菱は、軽自動車以外にも「マイパイロット」として導入する計画で、プロパイロットのさらなる量産化によるコストダウン効果も高まるはずだ。

軽自動車は日本の自動車市場で約40%を占めており、この大きな市場にダイハツ、スズキ、ホンダ、日産/三菱が激戦を展開している。軽自動車はボディ・サイズ、エンジンの排気量と出力が規制され、横並びの性能となっている一方で、デザイン、パッケージング、装備や質感に関しての競争は激しくなる一方だ。

しかも軽自動車は今やファーストカーであり、日常的な運転で多数を占める女性ドライバー、高齢ドライバーにとって安全性能や安心感を訴求することは効果的で、新型デイズ、eKの商品競争力はかなり高いということができる。

日産デイズ 諸元表
三菱 eK X諸元表

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みんなのコメント

9件
  • 今回のデイズ/ekになってやっと他社軽モデルと同等の動力性能を得ることが出来た。
    先代モデルは、比べるのもかわいそうなくらいショボい走りしかできなかったので、先代モデルに乗ってた人は今回のモデルに乗り換えると如実に良くなったと体感できる。
  • ゲームチェンジャーって市場の状況やルールを急激に変えてしまう製品や企業のことらしいが、ことデイズ/ekに関しては、後日出ると噂される軽EVのほうがゲームチェンジャーとして相応しいだろう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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