2020年は各社からコンパクトカーの新型車が一気に登場し、このジャンルの競争が厳しくなった。トヨタヤリス、ホンダフィット、日産ノートはいずれも強力なモデルであり、またスズキのスイフトやマツダ2など個性的なクルマもそれぞれ根強い人気を抱えている。
そんななか、トヨタパッソ/ダイハツブーンはすっかり存在感が薄くなってしまった。
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かつてはヒットモデルだった小型車は、なぜめっきり目立たなくなってしまったのか。販売状況はどうなっているのか? そして気になる次期型は…? と取材を進めていると、なんと「次期パッソは発売されないかもしれない」という情報が出てきた。
え……、本当に? 本当に開発が凍結しているのでしょうか?? パッソ……、発売当時はマツコ・デラックスさんのCMで人気を集めていたのに……。
文/遠藤徹 写真/TOYOTA、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】次期型パッソの予想CGとパッソのこれまでの歩みを画像で振り返る
■パッソ・ブーンともに発売からすでに5年が経過
ベーシックコンパクトカーの「トヨタパッソ」は、ダイハツがトヨタへOEM供給しているモデル。ダイハツ版である「ブーン」を含む両車種は、ボディパネル&エンジンなど基本コンポーネントを共用した兄弟車である。
現行モデルの登場はどちらも2016年4月12日で、すでに発売から5年が経過した。近年コンパクトカーのモデルサイクルは長期化しているが、それでもそろそろ次期モデルの開発情報が流れてきても遅くない頃合いである。
2016年4月登場時の現行型パッソの真正面
2016年4月現行型登場時のパッソ
今年(2021年)1~3月の登録合計台数はパッソが9657台で、前年同期に比べて3.3%増、月平均3219台だから、デビューから5年が経過し、ライバルが非常に強力なこのカテゴリーにあっては、おおいに健闘しているといえる。いっぽうこれに対してブーンは同期間で1003台、51.1%減、月平均334台の激減ぶりだから、まさに明暗を分けている状況にある。
パッソはトヨタのコンパクトハッチバック車のなかで最も安い価格帯であり、販売店に取材すると、女性ユーザーを中心によく売れているという。ブーンはトヨタにOEM供給している小型車のなかではライズ/ロッキー、ルーミー/トールよりも古く、商品力が落ちているので、販売が大幅なマイナスになるのは当然といえる。
■販売店幹部より「モデル廃止」の声が..!
トヨタのパッソが健闘している第一の要因は、まさにトヨタの販売力によると考えられる。
2020年4月までパッソはカローラ店の専売車種であったのが、同年5月からトヨタ全系列店の併売になり、販売力はおよそ4倍に増強された。これによってパッソの販売が上向きになった、という側面がある(だから「4倍になった」というわりにはこの増加幅は小幅だという見方もできる)。
現行モデルのレンジからすると2022年頃は世代交代の時期といえる。
とりあえず今年3月は一部改良して商品ラインアップを強化した。4月から実施となった法規改定でヘッドランプのオートライトシステムが固定式となった。消したままで走行すると危険だから、これを回避する狙いがある。
2021年4月に安全装備強化を中心とした一部改良を実施
2021年4月に一部改良したパッソのインパネ
慣例を考えると改良後のモデルチェンジは1年ほど先になる。
すると2022年春ごろか、と考えて、首都圏にあるカローラ店やダイハツ店を回り、営業担当者にコメントを求めると、一様に「パッソ/ブーンが世代交代する情報はまだいっさい流れていない」とのこと。
さらに取材を進めると、「もしかしたらモデル廃止になるかも知れない」という販売店幹部の声に行き当たった。
というのも、トヨタやダイハツのコンパクトモデルのラインアップの推移を見ると、2016年11月9日にルーミー/タンク/トール、2019年11月9日にライズ/ロッキーが加わった。そしてルーミー/タンクは2020年9月15日にルーミーに1本化。
2021年1~3月実績での月販平均台数はルーミー/トールが1万5664台、ライズ/ロッキーは1万1335台で、ともに月販1万台を突破している。どちらもダイハツの工場ではフル生産状態で供給しているから、これ以上の増産余力がないのが実情といえる。
■販売制度の変更でヤリスとパッソが直接競合することに
トヨタにとっても難しい課題を抱えている。
これまでパッソと同クラスのコンパクトハッチバックであったヴィッツはネッツ店、パッソはカローラ店の各専売だったから、売り分けが出来ており、あまり競合しなかった。
小型車がほしいネッツ店の顧客はヴィッツに、カローラ店の顧客はパッソを買っていた。
ところがヴィッツが2019年12月20日にフルモデルチェンジして、ヤリスに改名、2020年5月からトヨタ全系列店扱いになると同時に、パッソも全店併売に切り替わった。
2020年4月に発売したヤリスは2021年3月に英国カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。同月に獲った欧州カー・オブ・ザ・イヤーに続く栄誉となる
こうなるとヤリスの1L仕様とパッソが直接競合し、「どちらを選ぶか」という問題が発生する。
トヨタの営業マンにとってヤリスはトヨタのオリジナルモデルだが、パッソはトヨタの子会社とはいえ別会社のダイハツ製だから、同じユーザーがどちらを選ぶか迷ったら、ヤリスを優先したくなるのは道理である。
人気の高さやリセールバリューもヤリスのほうが格段に上だから、「薦めやすさ」もヤリスが優位といえる。
■パッソがモデル廃止になる場合に考えられる要因とは?
またトヨタにとっては中期的なモデル政策として、「2025年までに2017年時点で約60車種あった国内向けのモデルを半分の30車種に削減する」という計画を打ち出している。
ヤリス1Lとパッソが競合するというのであれば、販売規模が少ないパッソをモデル廃止の対象とするのは自然な流れだろう。
また、政府は地球温暖化防止の環境対応で二酸化炭素の削減目標を提唱し、その一環として2030年までに100%ガソリン車を廃止するという方針を明らかにしている。
この流れに従うとすれば、コンパクトカーはハイブリッドカーへの切り替えが必要になる。ヤリスはハイブリッドモデルを設定しており、今やシリーズ全体の60%以上の販売がハイブリッド車。この比率は今後さらに上昇する方向にある。
仮にパッソ/ブーンがフルモデルチェンジし世代交代するとすれば、ハイブリッド車をラインアップに加える必要があるが、普通に考えると約50万円のコストアップになるはずだから、そうなるとますますヤリスに価格帯が近づき、競合する確率が高くなる。
次期パッソ予想CG(2019年にベストカー編集部が作成)
次期パッソ予想CGリアデザイン(ベストカー編集部が作成)
こうした観点からも、次期型パッソ/ブーンの存在は否定的にならざるをえない。
この手の「次期型開発凍結」については、情報が流れにくい。開発が始まれば多くの人、多くの部署が携わることになり、新しいニュースとして話題になるが、プロジェクトが消えるときは誰もが口をつぐみ、静かになくなる。
もちろんこの話題は、まだなんの確証があるわけでもなく、引き続き取材を続けてゆきます。
■「安さが魅力なのに大幅値上げとなると…」証言1:首都圏カローラ店営業担当者
パッソは2020年4月まではカローラ店の専売モデルだったので、代替え母体を多数抱えており、当店の実績ではまだヤリスよりも多く売れている月もある。ヤリスの1Lモデルよりも約20万円安いので、足替わりに使うのに向いている。
パッソの標準仕様と丸目の「MODA」
女性ユーザーが多いが上級の「MODA」はフロントのデザインにワイルド感があり、男性のお客さんも多い。今後、純ガソリン車の新車販売を禁じるといった国の方針が明確になれば、パッソもそれに従わざるをえなくなる。そうなると大幅な値上げになるので、ヤリスと競合する確率が高くなり、次期型の存在が厳しくなることも十分に考えられる。
2020年4月に発売したパッソ特別仕様車MODA“Charm(チャーム)”
■「他の人気車に食われている」証言2:首都圏首都圏ダイハツ店営業担当者
ブーンは最近、ほとんど売れない状況が続いている。当店では2ヶ月に1台売れればよいほうだ。モデルが古く、商品力が落ちているのと、小型車では他に人気の高いロッキーやトールがあるので、こちらにセールスパワーが食われている側面がある。
ブーンは残価設定クレジットを利用すると1.9%の低金利に加えて10万円相当の5年分サービスパックが無料でつくキャンペーンを実施し、なんとか増販しようとしているが、あまり売れ行きはよくない。次期型についてはまだなんの情報も流れていない。もしかしたらトヨタの車種削減の方針に沿ってモデル廃止の対象になる可能性がある。
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みんなのコメント
レンタカーで乗ったけど、クソやん。色々イマイチだから売れないのがわかるよ。アレなら軽のが良いよ。
設計の古いチープな車です。と割り切ってしまっても良いと思う。