2022年4月に1.5Lエンジンのハイブリッドシステムを搭載したスズキ エスクードが発売を開始した。
2015年の4代目登場から7年目にして初のハイブリッド登場、そして2021年9月末以来7ヶ月ぶりの販売再開となる。
スズキSUV「エスクード」ハイブリッド化でどう変わった?? ベストカー編集部員がよってたかって評価!!
エスクードの初代登場は1988年。長い歴史を持ち、実はその評価も高いクルマなのだが、知名度はそれにまるで反比例でもしているかのように低い。
ハイブリッドになったことでなにが変わったのか? ベストカー編集部員9名と評論家2名が「よってたかって」評価する。
※本稿は2022年6月のものです
文/鈴木直也、渡辺陽一郎、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2022年7月26日号
■ベストカー編集部員はエスクードをどう見た?
スズキが送り出す人気のコンパクトSUVがエスクードだ。
このモデル、当初は2015年にガソリン車として発売されていたが昨年9月に一旦販売を終了。4代目エスクードは終わった……と思われた。
だが、それから7カ月後になんとハイブリッドを搭載してラインナップに復活した。これは乗るしかない! よってたかって評価しようじゃないか!
■編集長イイジマはこう見た!
昨年9月に日本発売を終了したエスクードがなんと本年4月電動車で復活! 果たしてその走りは!?
コンパクトSUVということで、ヤリスクロスのようなカジュアルな感じをイメージして乗ると違和感を感じるのではないでしょうか。ハンガリー生産ということもあり、雰囲気はやはり国産車とは異なります。
ストロングハイブリッドとなって気になるパワー感も、「SPORT」モードを選択すると伸び感のある加速が楽しめます(「AUTO」だとそれなり)。ハイブリッドらしさは若干希薄なので、電気嫌いにもオススメですね。
ミッションはシングルクラッチ式2ペダルMTということで「ギクシャクするかな」と思ったんですがけっこうスムーズです。タコメーター見てると「今ギアつないでるな」というのがわかりますが、ほぼ体感はできません。
で、私が一番気に入ったのは直進性ですね。同一車線内でもちょこちょこ修正舵が必要なモデル(国産車)もあるなか、このクルマはビシッとまっすぐ。今回、高速道路には乗りませんでしたが、意外とロングクルーズも得意なんじゃないでしょうか。
前述のように乗って感じる「ほかと違う感」もあり、気になる人には試乗を強くお薦めします。お値段がチョイと高めなのが、なんとも悩ましいですが……。
●編集長イイジマの評価
・パワー感:★★★☆☆
・乗り心地:★★★☆☆
・お買い得度:★★☆☆☆
■編集部イイボシはこう見た!
今回の試乗車は強敵だ。何を書けばいいのかわからない。調べたら、この4代目は2015年登場。意外に新しくてまだ7年。もう10年以上経っている気がしていたから、古さを逆手に取ってネタを探そうと思ったがそれもできない。生産国であるハンガリーに思いを馳せてみようとも思うが、行ったことないので何も思い浮かばない。
試乗してひとつ感じたのは、街中だろうと高速だろうと「SPORTモード」一択だろうということ。そこに放り込んでおけばキビキビ走れて、なかなか楽しい。トヨタのハイブリッドよりもそこはいいが、そんな走り方をしていたら、当然燃費は伸びない。
つまり「ストロングハイブリッド=低燃費」という常識を捨て「走りを元気にするハイブリッド」と思えばしっくりくるのかもしれない。もしも3ペダルMTでもあればマニア垂涎の1台になれたかもしれないが、そんな空想をしても埒が開かない。
ひたすら思うのは「これで凄く安ければ……」ということだ。試乗車の車両価格約300万円、オプション込みで約330万円という価格から50万円ほど引いてほしい。それならマニアックな走りの楽しさも加味して競争力はありそうだ。無理だよね。
●編集部イイボシの評価
・パワー感:★★★☆☆
・乗り心地:★★☆☆☆
・お買い得度:★★☆☆☆
■編集部ウメキはこう見た!
あれれ!? スズキってAGSを介したストロングハイブリッドは「やめる」方向とばかり思ってましたよ……。ところがどっこい、AGSが6速になっていたり、モーター出力が倍増(13.6ps/3.1kgm→33.4ps/6.1kgm)するなど、進化しちゃってますよ、これ!
なんで、このストロングハイブリッドを搭載するのがハンガリー生産のエスクードなのか???? という疑問を抱きながら乗ってみると、おおおおおっ! めちゃめちゃスムーズ! 街中を普通に加速するような場面なら、トルコン有段ATと感じるほどの自然な変速フィールなのよ。
シングルクラッチ自動変速で感じる「空走感」がない。上手いこと出力アップしたモーターが変速時の空走を埋めているんだろうね。全開加速だと若干のシフトショックを感じるものの、“ガックン”みたいなショックではない。
って、エスクードのSUVとしての話よりもハイブリッドの話ばかりになっちゃったけど、それほどビックリしたってこと。エスクード、ちょっと足が固くて突き上げるような乗り心地なんだよなー。もうちょい足がしなやかに動いてほしいのよ。あとね、後席の座面がちょっと高いんだよね~。
●編集部ウメキの評価
・パワー感:★★★☆☆
・乗り心地:★★☆☆☆
・お買い得度:★★☆☆☆
■編集部イチハラはこう見た!
エンジンはK15C型1.5L直列4気筒DOHCを搭載。スズキ独自の高効率技術デュアルジェットが投入されており、燃費と高出力を両立している。最高出力は101ps、最大トルクは13.5kgmだ
お恥ずかしながら、エスクードがデビューした2015年から数年間、クルマから離れていたこともあり、1.4Lターボのエスクードは運転したことがないので、ハイブリッドのみの評価となる。
スズキのストロングハイブリッド+6速AGSは、走っている間終始マイルドな印象。エンジンがかかった状態でアクセルを踏み込むとモーターがアシストしている感はあるが、基本的にエンジンの主張が強いハイブリッドだと感じた。
一方で気になっていた6速AGSは、シフトアップ時のトルク抜けによる空走感が5速AGSに比べて大きく改善されていて評価アップ!
エスクードハイブリッドで最も特徴的なのはEV走行。モーターのみでガンガン走るのではなく、エンジンがストップして結果的にEV走行になる感じだが、発進から40km/h程度までモーターのみでの走行も可能だった。
それよりも80km/hくらいまでの速度域でアクセルオフすると頻繁にエンジンがストップ、いわゆるコースティング状態になってこれが気持ちいい。エンジンの再始動時のショックもほとんどなく非常に出来がいい。
7カ月の空白期間を経て復活したエスクード、デザインのアピール力は弱いが、乗り心地もいいし実用性高し!
●編集部イチハラの評価
・パワー感:★★☆☆☆
・乗り心地:★★★★☆
・お買い得度:★★★☆☆
■編集部ババはこう見た!
いい意味で「落ち着ける」クルマ。「居心地がいい」と言いますか。アイポイントが高すぎず低すぎず、ちょうどいいSUVなんです。
目の前のインパネ部も奇をてらったあしらいなしで落ち着ける。センターに鎮座するアナログ時計に「レクサスか!?」とニヤリとしながら走りだすと、低速ではモーターアシストがしっかり効いた加速感を味わえる。
「SPORTモード」にすれば、「うお~。規格外の走りだぜ!」と心のなかで叫ぶ私。
が、アクセルを踏み込むと「ブワ~ン」というエンジン音が強すぎてハイブリッド感が失せる感覚というのは残念な部分。また路面のコツコツがタイヤからよく伝わり、乗り心地は今一歩。
でも、30~40km/hの低速巡航ならEV走行になるので、経済面では助かる部分。またACCはなかなかの制御のよさと感じた。前車のすぐ後ろまで走りを緩めないところはベンツ並みで(笑)、スムーズに減速し停止まで行う(止まった瞬間ブレーキを踏む必要あり)。使って損なし……の機能と思える。
総じて、スマートに走るのが現行エスクードのたしなみ方と実感。1988年に登場した初代の、カタチを含めた荒々しさが懐かしい。それだけに現行モデルは個性が薄いですね。
●編集部ババの評価
・パワー感:★★★☆☆
・乗り心地:★★★☆☆
・お買い得度:★★☆☆☆
■編集部フルカワはこう見た!
そういえば、現行エスクードは2015年の登場時に事前撮影会には行ったけれど、今まで試乗したことがありませんでした。
それで、一時ラインナップから消えながらも1.5Lエンジンと6速AGSのトランスミッションを組み合わせたハイブリッドへと1.4Lターボから換装して復活したエスクードに初めて乗ったわけですが、もともとが7年前のデビュー車だけあってモデルの古さをところどころに感じながらも、独特のハイブリッドの走りを感じられる点が面白かったですよ。
最近はEV走行をメインにした、静かで電動感が強いハイブリッド車が増えてますが、これはアクセルを踏むと積極的にエンジンがかかり、SPORTモードだとけっこう高回転も使って加速する。
6速AGSもハイブリッドのモーターが介在することで、シングルクラッチならではの変速ショックをほとんど感じないのですが、わざとキックダウンをさせた時の軽いショックはむしろ、うまく制御しているなぁと感心させられました。ハイブリッドだけれどエンジン感が強い。
燃費はトヨタのハイブリッドのほうがいいのでしょう。でもエスクードは操縦性も意外にスポーティで、走りの楽しいSUVだと思いました。
●編集部フルカワの評価
・パワー感:★★★☆☆
・乗り心地:★★★☆☆
・お買い得度:★☆☆☆☆
■編集部マツナガはこう見た!
室内はほかのスズキ車と異なった空間が広がっている。なかでもセンターのエアコンダクトに挟まれるように設置されたアナログ時計に目が行く
動力性能はライバルのキックスやヴェゼルより上かな? と思わせるようなパワートレーンの出来です。モーターのアシストがよく効くからアクセルを踏んだ時のピックアップがよくて、軽快に加速します。SPORTモードだと特に実感できるのでぜひ試してほしいですね。
ECOモードだとしっかり回生ブレーキが効きます、エンジンの回転数の上がり方もマイルドになって静かです。スズキのハイブリッドシステムの進化を感じられます。
ハンドリングは、手ごたえが軽いのが△。アシがふにゃふにゃしてる感覚はないけど、接地感もあまり感じられず。
前回評価したシビックのようなハンドリングを求めてはいけません。バチがあたります。乗り心地などはクラス標準レベルで、可もなく不可もなくといった感じで特に印象には残りません。
ほぼ300万円のクルマなので、買うならやはりトキメキが必要になります。エスクードにそれがあるのかというと「もっと頑張りましょう」という感じ。
コスパや燃費で見るとヤリスクロス、内外装のクォリティを見るとCX-30やヴェゼルに分があります。スイスポが90万円ほど安く買える状況でエスクードは推しにくいというのが率直な感想ですね。
●編集部マツナガの評価
・パワー感:★★★★☆
・乗り心地:★★★☆☆
・お買い得度:★☆☆☆☆
■編集部アカザワはこう見た!
実は私も他の先輩編集部員と同じく、エスクードに乗ること自体が初めてだったりする。姿格好は知っててもその走りまでは体感したことがなかった。
なので、今回「よってたかって」でハイブリッド化されたエスクードに乗れると聞き、どんなクルマだろう!? と凄くワクワクして乗り込んだのだ。
名前や外見の雰囲気や、あとどうしても初代エスクードを模したパイクスピークのマシン(あれはほぼ見た目だけだが……)がチラつくこともあり、凄く強そうなイメージを抱いていたのだ。
実際に走り出すと……。おお~思ったほどパンチがあるわけではないけどクセはない。アクセルを踏みだしタイヤが回り始めた時の感覚は確かに「お、モーターが働いているな」と感じられる。
ただモーターの強さはトヨタヤリスクロスとか、あの辺りと比べちゃうとそこはご愛嬌……といったところ。あと高速合流で加速しなければいけない場面で、グググっと車体を前へ引っ張るまではいいけど、変速時になるとスッと駆動力が抜ける瞬間がある。これは少しビックリしちゃったかな。
総評としては「可もなく不可もなし」。決してダメなクルマではないし日常使いやアウトドアでも充分役に立てるクルマだと思う。
●編集部アカザワの評価
・パワー感:★★★☆☆
・乗り心地:★★★☆☆
・お買い得度:★★☆☆☆
■編集部オグマはこう見た!
現行型エスクード、昨年までの1.4Lターボ時代は妄想が捗る1台でした。「スイフトスポーツ用のパーツでエンジンチューニングできるのでは?」とか。その点、1.5Lのハイブリッドに変更されたと知った時は改悪された感が否めませんでした。ここまでは乗る前のイメージ。
まずは、異国情緒漂うコンチネンタル製のエコタイヤに思わずニヤニヤ。ハンガリー製であることを実感します。前席に座ってみますが、まったくと言っていいほど身体に合わない。
背中が圧迫されていて、ホールド感も薄い。長距離は耐えられないなと思い、早々に後席に移動。リアのサスペンションはトーションビームということですが、意外にも脚がよく動いているのが乗り味として伝わってきます。
クルマ好きの性、前席に乗りたいことがほとんどですが、エスクードに関しては積極的に後席に乗りたいです。センターアームレストがないのが残念ですが。
総じて掴みどころの少ない1台だったこともあり、どんなユーザーに刺さるかなと悩んだら、いました。それは鉄道ファン。
「キィーン」というモーター音が室内に入ってくるのですが、これが電車の走行音に結構似ている。特に乗り鉄の方、おススメですよ!
●編集部オグマの評価
・パワー感:★★☆☆☆
・乗り心地:★★★★☆
・お買い得度:★★☆☆☆
■評論家2人はエスクードをどう見たのか?
●評論家・鈴木直也はこう見た!
鈴木直也氏が感心した6速AGS。変速時のフィーリングやギアが6段になっていることにも感心していた
実はワタシ、ちょっと変わったメカニズムが大好物。だから、以前からスズキ独自のストロングハイブリッドに注目してました。
ベースとなるのは、スズキが新興国向けに開発したシングルクラッチAMTで、そこに駆動用モーターを追加して本格ハイブリッドに仕立てたのがコレ。既存のコンポーネンツを使い、コストをかけずコツコツ技術を積み上げているのが、いかにもスズキらしく健気なわけです。
まぁ、ゼロから開発するなら、日産e-POWERみたいなシリーズハイブリッドのほうが合理的なんでしょうが、ハイブリッドもバリエーションがあったほうが楽しいじゃないですか。だから、ソリオがモデルチェンジでカタログから落ちちゃった時は「やっぱダメだったか」と、残念に思っていたのであります。
そしたら、このたびエスクードでこのシステムが復活。しかも、エンジンは1.2L→1.5Lに、モーターは出力2.5倍/トルク2倍にパワーアップ、ベースになるミッションも6速に進化してるじゃありませんか!
走りっぷりは、こりゃ間違いなく「世界一完成度の高いシングルクラッチAMT」と言っていい大満足の仕上がりです。
この変わり種ハイブリッド、末長く育てていただきたいものでございます。
●評論家・渡辺陽一郎はこう見た!
軽自動車で稼ぐスズキの小型/普通車には「よさのわかる人だけが買えばいい」という思惑の見える商品が多い。以前のスプラッシュ、キザシなどがそれだ。
エスクードもそこに該当する。スイフトハイブリッドのモーターは最高出力が13.6psだが、エスクードは33.4psで、モーター駆動のみの発進も力強い。1組のクラッチを使う有段ATは、変速がツインクラッチ並みに滑らかだ。ブレーキペダルを踏んだ時、回生による充電効率を高める協調制御も採用した。
運転感覚は欧州車風で、SUVではよく曲がる。その最中にアクセルペダルを緩めると、車両が緩やかに内側を向き、安定性を妨げない範囲でコントロール性を広げた。シートの座り心地も絶妙に快適だ。開発者のこだわりが感じられ、一種のフェティシズムを喚起させる。
ただし一般的な選択ではない。WLTCモード燃費は19.6km/Lで、ヤリスクロスハイブリッドZ・4WDの26km/Lに比べて悪い。有段ATも、無段変速に慣れたユーザーには違和感が伴う。
価格はカーナビが非装着で297万円だ。ヤリスクロスハイブリッドZ・4WDの281万5000円を大きく上まわる。2WDを270万円に抑えて売る方法もあるが、4WD専用にするところも、エスクードのフェティシズムだ。
■【総評】新型エスクードは乗るほどに味が出るクルマだった!
ベストカー編集部員9人とよってたかって企画でおなじみの評論家陣2名で見てきた今回のスズキエスクードハイブリッド。色んな人の意見を見ていくと、ちょっと味気ないと感じた人もいれば、モーターアシストの心地よさを評価されるなど、非常に好みが分かれるクルマとなった。
実際、走らせると「飛び道具」的要素は弱い印象であるが、一方で何万kmと走り込み、使い込んでいくことで見えてくる「別のよさ」が見えるかもしれない。ということで今回のエスクードハイブリッドは「乗るほどに味が出るクルマ」という結論で締めて終わりにしたい。
■エスクードハイブリッド 主要諸元
・全長:4175mm
・全幅:1775mm
・全高:1610mm
・ホイールベース:2500mm
・車両重量:1320kg
・最小回転半径:5.2m
・最低地上高:185mm
・エンジン:直列4気筒DOHC
・総排気量:1460cc
・最高出力:101ps/6000rpm
・最大トルク:13.5kgm/4400rpm
・モーター出力:33.4ps/5500rpm
・モータートルク:6.1kgm/100-2000rpm
・トランスミッション:6速AGS
・サスペンション:F)ストラット、R)トーションビーム
・タイヤサイズ:215/55R17
・WLTCモード燃費:19.6km/L
・価格(税込):297万円
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みんなのコメント
何より特徴的なのが6速AGSを採用したこと。クラッチを切れば即座にEV走行へ移行ということなんだけど、手持ちの技術をうまく組み合わせて作り上げている。
欧州向けビターラからチョイスしてワングレード販売ということで、4WDのみ、4気筒エンジン。ほか、走行・安全装備面のケチり感が少ないことも美点だと思う。
「エスクード買うならシエンタを買う」とヨイショ記事にして終わりだろ