販売台数でステップワゴンの低迷が続く。ライバルのノア/ヴォクシー、セレナに対し、明らかに後塵を拝してしまっている。この3車種は2022年にそろってフルモデルチェンジを果たしたボックスタイプミニバンだが、なぜここまで差が出たのかを分析してみた。
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカーWeb編集部、ベストカー編集部、日産
スパーダよりエアを頑張るべき? ステップワゴンが微妙に苦戦してる理由5選
■ライバルのノア/ヴォクシーとセレナと比較して何がどう違う?
ホンダステップワゴンのみがボックスタイプミニバンカテゴリーで苦戦しているのはどこに原因があるのか?
最近はSUVの人気が高く、ミニバンは押され気味だ。小型/普通乗用車の新車販売状況を見ると、SUVが約30%を占めてコンパクトカーの次に多く、ミニバンを僅差で上回った。
しかし、今後はミニバンが盛り返す可能性もある。2022年にはミドルサイズミニバンのトヨタノア&ヴォクシー、日産セレナ、ホンダステップワゴン、コンパクトなトヨタシエンタが一斉にフルモデルチェンジされ、2023年6月には新型トヨタアルファード&ヴェルファイアも登場したからだ。
ノア/ヴォクシーはボックスタイプミニバンカテゴリーで最多の販売台数を誇る。2023年1~6月は両車とも平均8000台以上を販売
このなかで気がかりなのは、ステップワゴンの売れゆきだ。2023年1~6月の1カ月平均登録台数は2662台で、ノアの8415台、ヴォクシーの8112台、セレナの5743台に比べて大幅に少ない。
こちらは日産セレナe-POWER。セレナ全体で2023年1~6月は1カ月平均5000台以上販売している
また、同じホンダのコンパクトミニバン、フリードの7252台と比べても大きく下回る。フリードの発売は2016年だから、発売されたのは約7年前だ。ハイブリッドなどの設計が古く、2024年にはフルモデルチェンジを受ける可能性が高い。
このフリードが1カ月平均で7000台以上を登録して、2022年に発売されたステップワゴンが2662台というのは、どう見ても少なすぎる。そこでステップワゴンが売れない5つの理由を考えてみたい。
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■売れない理由1:フロントマスクのデザインが不評
標準モデルともいえるステップワゴンエアの顔つき。プレーンでシックなフロントマスクだが……
今のミニバンでは「オラオラ系」などと呼ばれる存在感を強めたフロントマスクの人気が高い。しかし、ホンダの市場調査によると、このようなフロントマスクを好まないユーザーが、約30%存在することがわかった。
そこで現行ステップワゴンは、この30%を狙って顔立ちを穏やかに仕上げた。特に従来の標準ボディに相当するエアは、柔和なデザインにしている。
昨今は新型コロナウイルス禍、ロシアのウクライナ侵攻などもあり、世の中が殺伐としている。ステップワゴンの顔立ちは、街中の雰囲気を和らげる表情で好感を持てるが、前述の市場調査からもわかるとおり、ミニバンユーザーの70%は存在感の強い外観を好む。ステップワゴンは好ましいデザインだが、30%を狙ったから販売面では辛くなった。
■売れない理由2:主力グレードのエアーに装着される装備が貧弱
ステップワゴンエアのインテリア。筆者はライバルに比べた場合、装備の貧弱さを指摘している
現行ステップワゴンは、約30%のユーザーを狙って、フロントマスクを穏やかな表情で仕上げた。このコンセプトを明確に反映させたグレードは、エアロパーツを装着した「スパーダ」ではなく、外観がさらに柔和な「エア」だ。
そこで現行ステップワゴンのデザインに賛同したユーザーが、エアを選ぼうとすると、装備に不満が生じる。後方の並走車両を検知して知らせる安全装備のブラインドスポットインフォメーション、LEDアクティブコーナリングライト、前席のシートヒーター、2列目のオットマン、電動開閉式テールゲートなどはスパーダ系のグレードには標準装着されるのに、エアーではオプションでも選べないからだ。
このうち、ブラインドスポットインフォメーションは、ボディ後端の形状が異なるからエアには搭載できなかった。スパーダならブラインドスポットインフォメーションのユニットがボディの後端に収まるが、エアーには入らなかった事情がある。
しかし、それ以外の前席シートヒーターや2列目のオットマンも、リラックスできるステップワゴンのデザインコンセプトと親和性の高い装備だ。エアにこれらを装着できないのは辛い。ステップワゴンエアーの個性に共感してもらえても、魅力的な装備を装着できないために、ユーザーを逃している。
開発者は「最初の考えでは、エアとスパーダには、同等の装備を採用して価格も同程度にするつもりだった」と振り返る。その考え方を貫くべきだった。次のマイナーチェンジ、あるいは特別仕様車でもいいから、エアはステップワゴンを象徴するグレードとして早急に装備を充実させるべきだ。
■売れない理由3:ライバル車に比べて注目される機能や装備が乏しい
視界のよさはステップワゴンのメリットとなっているのだが……
ステップワゴンは床の低いボディを生かして、走行安定性や乗り心地が優れている。16インチタイヤ装着車の最小回転半径は5.4mだから小回りが利き、視界もいいから混雑した街中や駐車場でも運転しやすい。
これらはライバル車に対するメリットだが、注目される派手な機能や装備は乏しい。例えば、ノア&ヴォクシーには車両が接近すると、スライドドアの作動を止めて乗降時の事故を防ぐ安全装備が採用される。
渋滞時にはステアリングホイールから手を離しても運転支援が受けられたり、スマートフォンを使って車外から車庫入れできたりする機能もある。
セレナはシートアレンジが多彩で、2列目の中央を1列目の間までスライドできる。この状態では1列目の中央が収納設備になり、2列目の間には通路ができて車内の移動もしやすい。
最上級のe-POWERルキシオンには、高度な運転支援機能のプロパイロット2.0も採用した。ステップワゴンには、このような注目される機能や装備がなく、販売面でも不利になっている。
■売れない理由4:ライバル車と比べてボディが大きすぎる
ステップワゴンスパーダ。そのボディ全長は4830mmとライバルのセレナ4690~4765mm、ノア/ヴォクシー4690mmより明らかに長い
先代型の標準ボディは5ナンバー車だったが、現行型はボディを大幅に拡大させて3ナンバー専用車になった。全長はエアが4800mm、スパーダは4830mmで、全幅は両タイプとも1750mmだ。
ライバル車の全長は、ノア&ヴォクシーがエアロ仕様を含めて4690mm、セレナは標準ボディが4690mmでハイウェイスターが4765mmだから、ステップワゴンの4800mm/4830mmはやはり長い。
小回りの利きはいいが、多くのユーザーはボディサイズを気にするから、販売面で不利になった。
■売れない理由5:ホンダのブランドイメージが小型化した
ステップワゴンが振るわないのはN-BOXやフリードなど軽と一部の小型車に力を入れているホンダの戦略にも原因があると筆者は指摘
2011年に初代ホンダN-BOXが発売され、2017年には2代目にフルモデルチェンジした。この間にN-BOXは売れゆきを増やし、国内で売られる新車のベストセラーになった。
その一方、ホンダは小型車と普通車に力を入れず、シビックやCR-Vは車種を廃止した後に復活させる迷走に陥った。オデッセイもいったん廃止され、今後復活する。
2代目N-BOX。2023年上半期でホンダの新車販売の4割をこのN-BOXが占めていたという
これらの影響もあり、2023年1~6月に国内で新車販売されたホンダ車のうち、N-BOXが40%を占めた。N-WGNなどほかの軽自動車も加えると56%に達する。そこにフリードも加えると70%を超えるのだ。
つまり、今のホンダのブランドイメージは、ダウンサイジングされて実用指向を強め、「小さくて背の高い実用車を作るメーカー」になった。そのために最も多く売られるホンダ車は発売から6年を経過した2代目N-BOXで、2位は7年を経るフリードだ。
両車ともにボディが小さく、全高は1700mmを超えて、スライドドアも装着する。この2車がホンダの代表になり、かつて販売の中心だったステップワゴン、フィット、シビックなどは売れゆきを落とした。
つまり、ステップワゴンはライバル車と身内の両方に販売競争で負ける「内憂外患」に陥り、登録台数を低迷させているのだ。
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みんなのコメント
排気量もターボだか頻繁にオイル交換必要だし。
エアーはデザインが軽自動車みたいだし。