ドラムブレーキ用の登場で普及率がアップ
最近になって軽自動車にまで採用が広がる、電動パーキングブレーキシステム「EPB」。これまでは上級車向けの便利装備として捉えられがちだったが、近年は「アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)」が普及し始めた今、そこには多くのメリットが生まれている。そんなEPBにまつわる最新事情を解説したい。
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EPBでは「P」ボタンを動作させると“ウィーン”という音が後方から聞こえ、スイッチにランプが点灯。音の正体は”パーキングブレーキを動作させるためのモーター音”で、EPB作動時はこの音が発生する。大半がディスクブレーキのキャリパー内に組み込むタイプで、後輪にもディスクブレーキを採用する上級車向けの装備とされてきた。
そんな状況を一変させたのが昨年3月に登場した日産デイズと三菱eKワゴン/eKクロスの軽自動車だ。後輪にドラムブレーキを採用しながらEPBの搭載を実現したのである。
ドラムブレーキは、構造上モーターでワイヤーを巻き取る方法。それ以降、ホンダが同年8月に新型N-WGNで搭載し、今夏までに登場するダイハツ・タフトにも搭載されることが決定している。もはや、EPBは上級車だけのハイグレード装備とは言えなくなっているのだ。
この搭載を後押ししているのが「ACC」(アダプティブ・クルーズコントロール)の普及だ。一時はN-BOXのように、ACCを搭載しながらも一定速度以下になると機能がOFFされていた。しかし、今やACCの主流は「全車速追従型」。ヤリスやライズ/ロッキー、タント、ハスラーなど相次ぐ新型車もパーキングブレーキを機械式としながらも、ACCは全車速追従に対応している。ただ、アクチュエータで通常の油圧式ブレーキを使って停車しているから、2秒前後でブレーキがリリース(解除)されてしまう。
それに対し、EPBなら停車状態を維持し続けることが可能。発進するにも最近はレジュームボタンを押すか、アクセルをチョイ踏みするだけ。以前のようにいちいちEPBボタンを操作する必要はなくなりつつあるのだ。その意味でACC+EPBの組み合わせは欠かせない装備となっており、それがEPBの普及を後押ししているというわけだ。
EPBのメリットは他にもある。最近はATのシフトレバーを「P」にするだけで自動的にパーキングブレーキがかかるのが一般的となり、機械式とは違って操作も不要。最近は、パーキングブレーキがかかっていても発進時はアクセルを踏むだけでリリースできるので、これによりパーキングブレーキを解除し忘れることもなくなる。
さらにEPB搭載車は大半がホールド機能(ブレーキペダルを離してもブレーキが効いている)を搭載しており、坂道発進などでペダルを踏み換えるときに後ろへ下がる心配もなくなった。
一方でデメリットもある。まず、作動にラグがあることが多く、これに違和感を覚える人も少なくない。ただ、これは前述したようにATシフトレバーを「P」にすると自動的に作動するので、感覚的に慣れの問題とも言える。
また、ジムカーナの180度ターンや360度ターンで使われる、サイドブレーキを引いてクルマの向きを変える「サイドターン」もEPBでは不可能。別に競技に出るわけじゃない、と思う人もいるかも知れないが、欧州では緊急時にクルマの向きを変えて危険を回避するテクニックとして教えられているらしい。
とはいえ、多くの人にとってEPBは便利装備となることは間違いない。今後は車両の電動化も進み、様々なコントロールが外部から行なっていくことも想定される。EPBならそういった状況にも対応可能。少なくともEPB搭載の流れは止められず、標準装備となる日が訪れるのも時間の問題となったと言えるのだ。
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