見た目も走りも妥協したくない 欧州最強ハッチバック車
デザイン、動力性能、使い勝手の良さ、コストパフォーマンスなどさまざまな観点から、特に優れた小型ハッチバックを10台紹介する。
【画像】クラストップ! キビキビ走るフレンチ・ハッチバック【ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)の最新モデルを写真で見る】 全16枚
本稿では、「小型」とは具体的に欧州Bセグメントのクラスを指す。トヨタ・ヤリスやフォルクスワーゲン・ポロなどが属しているコンパクトな乗用車クラスだ。
昨今、車高の高いクロスオーバー車やSUVがトレンドとなっているが、Bセグメント・ハッチバックの需要はまだまだ非常に大きい。
ハッチバックが特に栄え、発展しているのが欧州市場だ。今回は競争の激しい欧州から、選りすぐりの10台を見ていきたい。
選定条件として、まず3~4人家族でも使える広さと荷物の積載量は欠かせない。さらに、デザインの魅力、パッケージングの良さ、運転しやすさ、使い勝手の良さなどが挙げられる。
動力性能で重要なのは、軽快さだと考えている。年齢や体格、ドライビングスキルの異なるさまざまな人が運転するため、基本的に軽快で「分かりやすい」ものでなければならない。ステアリングが緩慢なのは受け入れがたい。
蛇足だが、筆者(英国人)を含む弊誌の記者陣は、柔らかい乗り心地よりも、やや硬くて安定感のあるハンドリングを好む傾向がある。その点を踏まえてお読みいただくといいだろう。
1. ルノー・クリオ
長所:インテリアはクラス最高レベル、優れた燃費、ガソリン車の価格の安さ
短所:乗り心地はもっとしなやかでもいい、後部座席は大人には厳しい
ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)に数年ぶりに改めて乗ってみると、居住空間のデザイン、人間工学に基づいたレイアウト、そして質感について想像以上に高く評価できた。コストパフォーマンスは非常に高い。
凸凹の多い一般道においては、フランス車らしくない硬い乗り心地を見せる。不快というほどではないが、かつてのようなしなやかさはない。
しかし、ハンドリングは優れている。ステアリングホイールから伝わる情報量はそれほど多くはないが、かなり直感的でナチュラルなフィーリングを持つ。ややボディロールが大きい印象はあるが、コーナリング時のバランスは見事だ。
現行世代で最速のモデルは最高出力140psのクリオEテックである。ガソリン車に比べてやや高価だが、トヨタ・ヤリスやホンダ・ジャズ(日本名:フィット)と大差はない。
Eテックというルノー最新のハイブリッド・パワートレインは、大型車では少しパワー不足を感じることもあるが、小柄なクリオにはぴったりで、ヤリスやジャズよりも速くて魅力的だ。
2. セアト・イビサ
長所:コストパフォーマンス、VWポロより優れたインテリア
短所:フォード・フィエスタほど運転は楽しくない、エントリーグレードは装備が貧弱、ハイブリッドの設定がない
スペインの自動車メーカーでフォルクスワーゲン・グループ傘下のセアトが手掛けるイビサ。第5世代にあたる現行型は2018年に登場し、欧州市場におけるセアトの主力モデルとなっている。
フォルクスワーゲンのMQBプラットフォームを使用し、2021年の改良でさらに魅力が増している。ハンドリングや洗練性、コストパフォーマンス、充実した標準装備、若々しいスタイリングなど、特筆すべき点は多い。
運転の楽しさではフォード・フィエスタ(現在は生産終了)に及ばないが、かなり楽しい部類に入る。インテリアにはソフトタッチな素材が多く使われ、セアト最新のインフォテインメント・システムも搭載されている。
イビサはどちらかというと、フィエスタよりも高級感ある所有体験を得られる。フォルクスワーゲン・ポロよりも運転が楽しく、素敵なインテリアを備えていることから、弊誌のお気に入りの1台となっている。
3. スコダ・ファビア
長所:広い室内空間、一部の高級車よりも乗り心地が良い、競争力のある価格設定
短所:硬くて傷つきやすいプラスチックの内装材、運転が楽しくない、ハイブリッドの設定がない
チェコの自動車メーカーでフォルクスワーゲン・グループ傘下のスコダは近年、これまでのバジェットカー(低価格)路線から離れて少しずつ高級化してきた。価格が高すぎるものもあるが、最新型のファビアでは高次元のバランスに目が奪われるだろう。
かつてほど安くはなくなったが、それでもトップクラスにお手頃な価格設定である。室内空間の広さはピカイチで、欧州Bセグメント・ハッチバックでファビアより広いのはホンダ・ジャズ(日本名:フィット)だけだ。
インテリアは特に豪華というわけではないが、コントロール(操作系装置)が大きくてシンプルなボタン類にまとめられており、直感的に操作できる。人間工学的に優れたデザインだ。
パワートレインはガソリンエンジンのみとシンプルだ。その代わり、3気筒と4気筒が用意されている。できれば自然吸気モデルは避け、TSIターボ搭載の「95 PS」モデルを選びたい。
フォルクスワーゲン・ポロやセアト・イビサと多くの主要部品を共通化しているが、ドライビング・エクスペリエンスではきちんと差別化できている。スポーティ性やエキサイティングを追求するわけではなく、それでいてコーナリングでも安心して走り抜けることができる。非常に乗りやすい。
実用的で優れた1台だが、標準装備が貧弱なのが惜しいところで、マトリックスLEDヘッドライトや運転支援システム、アクティブセーフティ機能、大型タッチスクリーン、デジタルメータークラスターなどはすべてオプションとなっている。
4. フォルクスワーゲン・ポロ
長所:内外装ともにソリッド感がある、高い洗練性、サイズの割に広い
短所:ダイナミック性能にやや欠ける、ライバルの方がお買い得、カリスマ性が足りない
ポロは、使いやすさ、洗練性、広々とした室内空間、快適性、スマートなルックスと褒めるべき点はとても多い。それほど高くない価格でこのような資質が揃っており、Bセグメント・ハッチバックとして最も優れた選択肢の1つである。
先代のポロとは大きく異なり、進化した車載システムと高いダイナミクス特性を併せ持つ。複数あるエンジンはいずれも強力で、ボディコントロールも優れ、後部座席には平均的な身長の大人が座れるだけの広さがある。
ポロはハッチバックの理想形に近い。とはいえ、かつてはトップを独走していたが、強力なライバルの台頭により存在感が薄まってきている。また、価格も比較的高く、フィエスタやイビサなどの方が運転が楽しい。
5. ヒョンデi20
長所:豊富な装備、広い室内空間とトランク、使いやすいインフォテインメント
短所:刺激に欠けるハンドリング、乗り心地の悪さ、インテリアが安っぽく感じる
トヨタGRヤリスの対抗馬となる高性能モデルのi20 Nはかなり注目度が高い「ホットハッチ」だが、標準のi20の存在感は薄い。
しかし、広々とした室内空間、大きなトランク、ハイレベルの標準装備など、魅力も多い。ただ、インテリアの質感はクリオやポロほど良くないし、価格から期待されるほどの仕上がりではない。
乗り心地はかなり硬めだが、その分ライバルにはない鋭さがある。運転の楽しさではフィエスタに軍配が上がるが、退屈さは感じない。
6. ダチア・サンデロ
長所:コストパフォーマンスが高い、ファミリーにも十分な広さ、驚くほど優れた品質
短所:ユーロNCAPの安全性評価が低い、一低グレードのエンジンは非力
Bセグメント・ハッチバックは本来、手頃な価格設定を最大の「売り」とするシンプルな乗り物であり、走りの良さを追求するものではない。
ダチア・サンデロは1万2000ポンド(約230万円)強という圧倒的な安さで、十分な広さと高品質を誇り、その他にもさまざまな強みを持っている。 “ドライバーズカー” として喧伝するつもりはないが、走行性能も決して悪くない。
快適なシート、扱いやすい位置に置かれたスイッチ類、高速道路での燃費、すっきりとしたエクステリアデザインなど、平凡ながらも全体的に高く評価できる。
とにかくシンプルで使い勝手が良く、使えば使うほど愛着が湧いてくる。ダチアはルノー・グループ傘下であるため、随所にルノー車らしさも垣間見えるが、それもまた良い一面として受け入れることができる。
7. トヨタ・ヤリス
長所:市街地での快適性、優れたダイナミクス、非常に経済的
短所:パワートレインは魅力に欠ける、居住空間とトランクはライバルに劣る
第4世代となる現行型ヤリスは、歴代で最も好ましいモデルである。優れたパッケージングを誇った1999年の初代モデルに原点回帰し、見事な進化を遂げた。
スタイリングが良くなったほか、ハンドリングも優れており、トヨタが手掛けるハイブリッド・パワートレインの経済性の高さには目を見張るものがある。特に一般道の市街地走行ではハイブリッドの恩恵が大きい。
しかし、加速力のパンチには欠けており、またホイールサイズはよくよく注意して選ばなければならない。大径ホイールを装着すると外観はスマートになるが、その反面、足回りの硬さが顕著になり、乗り心地を損ねてしまう。
室内空間については、もう少し広ければよかったのにと思う。それでもヤリスは非常に好印象のハッチバックであり、新感覚のトヨタ車である。
8. プジョー208
長所:ファッショナブルな外観、力強いエンジン、優れたダイナミクス
短所:低いハンドル位置は人を選ぶ、乗り心地が雑に感じることもある、後部座席が狭い
Bセグメント・ハッチバックのデザインとしては、プジョー208が最高の教材かもしれない。綺麗にまとまったエクステリア、質感高いインテリア、そして3Dデジタルメーターやワイドスクリーンといった上級装備も特徴的だ。
しかし、手足の位置がしっくりこないドライビング・ポジション、プジョー独自の「iコックピット」の視界の狭さ、後部座席の狭さなど、身体のフィット感(人を選ぶ)と使い勝手に欠けるのは残念なことだ。
乗り心地はほぼ申し分なく、特にダイナミクスには磨きがかかっている。ハンドリングは正確でコントロールしやすく、スポーティに走らせることもできる。軽快感ではライバルに譲るところもあるが、ドライビングを十分に楽しめるはずだ。
3気筒ガソリンエンジンは性能もさることながら、静粛性や振動特性が好印象だ。e-208というEVバージョンも選ぶことができる。
9. アウディA1スポーツバック
長所:アウディらしい高級感、洗練された経済的なパワートレイン、スポーティな外観
短所:繊細さに欠けるサスペンション・チューニング、高価、高速走行時のロードノイズ
第2世代となる現行型A1スポーツバックは高級ハッチバックであり、価格もそれに見合った設定となっている。
エクステリアについては、特にスポーティなグレードが魅力的だ。可愛いだけで存在感に欠けるライバルもあるが、A1スポーツバックはどちらかというとアスリート的な強い存在感を放っている。
ハンドリングも良好で、運転するとシャシーが比較的アグレッシブなドライビングスタイルに偏っていることがわかる。軽快感という点では平均的なものだが、走りに対する熱意は感じられる。
その一方で、乗り心地の繊細さに欠ける場面も多い。ステアリングは少し軽すぎて、伝わってくる情報量も少ない。
10. ミニ・クーパーS E
長所:運転が楽しい、ハンサムなスタイリング、パンチの効いたパフォーマンス
短所:航続距離が短い、バッテリーが小さい、特に実用的ではない
Bセグメント・ハッチバックにもEVが増えてきた。短期間に大きく進歩しており、今回もミニであえてEVバージョンのクーパーS Eを紹介することにした。
純粋に客観的かつ合理的な観点で記事を書くとしたら、ミニ・クーパーS Eには目もくれないだろう。弊誌の実走行テストでは、1回の充電での航続距離がわずか160~190kmだった。トランクは小さく、後部座席は乗り降りしにくい。しかし幸いなことに、愛すべき点も多いのだ。
クーパーS Eをここで紹介する理由は、一体感とエネルギーだ。最高出力183ps、最大トルク27.5kg-mを発生し、ライバルよりもはるかに活発である。ハンドリングは俊敏で安定感も高く、ガソリン車のミニと同等だ。
現行型はEVとして物足りない点も多いが、大型バッテリーを搭載し、航続距離を伸ばした次世代車の到着も近い。弊誌は新型のプロトタイプに短時間試乗したが、非常に優れていることがわかった。市販モデルの公道試乗にも大いに期待している。
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