ドミンゴに始まるスバルのミニバン3モデルを振り返る
SUBARUというメーカーは、レガシィやインプレッサといったセダンやワゴン、SUVをラインアップしているが、古くから6名以上の乗車を可能にする多人数乗車のモデルが少ないメーカーだ。2021年12月現在では5人乗りまでのモデルしか存在せず、下火になってきたとはいえまだまだ人気のミニバンが必要なユーザーからは縁遠いメーカーになってしまった。
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それでも以前は意欲的な3列シートの多人数乗車を可能にしたモデルもあり、家族構成などから3列シートを必要とするスバルファンからも新たなモデルの設定を願う声も数多く聞かれる。今回はこれまでスバルで販売されてきた3列シートモデルを振り返りつつ、紹介しよう。
キャンピングカー仕様の「ドミンゴ アラジン」もあった!
【1983年発売/初代ドミンゴ(KJ型)】
1983年に登場したスバル初の3列シートのワンボックスカーがドミンゴだ。スバルの3列シート車では唯一スライドドアを有し、2世代にわたり生産されたモデル。とはいえベースは軽ワンボックスのサンバーで、初代ジャスティと共通の1.0L直列3気筒EF10型エンジンを、リヤオーバーハングに搭載したリッターワゴンとして登場した。
トランスミッションは5速MTのみの設定で、駆動方式はRRと4WDが選択できた。1986年にはフルタイム4WD+1.2Lエンジン搭載車を追加。のちに4WDモデルはすべてフルタイム方式となったほか、1.2Lエンジンに統一された。エクステリアはボディのシルエットこそサンバーそのままではあったが、角型4灯式ヘッドライトや専用の前後バンパーなどでぱっと見の印象は異なっていた。
インテリアでは軽自動車のサンバーがベースとなるため、当然ながら室内空間はお世辞にも広くはないが、逆にそのコンパクトさゆえに、山間部や都市部といった狭隘道路の地区で重宝された。限られた室内空間を最大限に活かすため、停車中には運転席と助手席を回転し、セカンドシートやサードシートと対座レイアウトを可能にすることで、アウトドアフィールドでのベース基地としても重宝した。
また、1994年にはベースモデルのサンバーのフルモデルチェンジから遅れること4年目にして、ドミンゴもフルモデルチェンジ。初代モデルと比べると前後バンパー以外はベースのサンバーと同一のエクステリアとなったが、サンバーよりも大型化されているフロントバンパー内にはY字型フレームを追加し、前方からの衝突安全性を高めていた。
エンジンは初代4WDモデルと同じ1.2L直列3気筒EF12型エンジンを踏襲するが、キャブレター方式からインジェクションへと進化。トランスミッションもMTに加え、スチールベルト方式の無段変速機 ECVT車が設定された。
また、この2代目ドミンゴにはルーフをリフトアップし、内部をベッドスペースとして使えるキャンピングカー「ドミンゴ アラジン」を追加。ルーフのリフトアップ機能のみを備える「アラジン リフトアップルーフ」とギャレーやサブバッテリー、外部入力電源など本格キャンピングカー顔負けの装備を備える「アラジン キャンパー」の2タイプが設定された。 コアなユーザー層から一定の支持を得ていたドミンゴだが、軽自動車の規格が変わり、乗車人数を除くとサンバーとの違いが少なくなったということもあり、1998年に生産を終了した。しかし、このドミンゴの生産終了を待っていたかのように他社から軽ワンボックスベースの3列シートリッターワゴンが続々登場し、当時人気を博した。スバルファンとしてはドミンゴの終焉を惜しむ一方で、15年以上も前から、コンパクトワンボックスのシェアをほぼ独占していたことを考えるとスバルの先見の明に感服する。
オペル・ザフィーラのOEMモデルとしてトラヴィックが登場
【2001年発売/トラヴィック(XM型)】
ドミンゴが生産終了し3年の空白のあと、ふたたびスバルから3列シートを備えるモデルとしてトラヴィックが登場した。とはいえ当時提携関係にあったGM(ゼネラルモータース)系列のオペル・ザフィーラのOEMモデルであった。
トラヴィックはヒンジドアの3列シート車で、OEMモデルながらベースとなるザフィーラの日本仕様には設定がない直列4気筒2.2Lエンジンが搭載されていた。Sパッケージにはトラヴィック専用のエアロパーツや専用サスペンションを装備。とくに足まわりは多人数乗車時でも安定した走りが可能で、そのセッティングはじつに秀逸であった。これらはスバル独自の仕様で、トラヴィックのSパッケージはSUBARUのSなのではないか? とささやかれるほどであった。
ベースとなるオペル・ザフィーラはドイツで生産される一方、トラヴィックはGMタイ工場で生産されていた。そのため製造コストの低減などにより、エンジンや装備などザフィーラよりも充実していながら、車両本体価格はトラヴィックのほうが50~100万円ほどリーズナブルな価格設定だった。結果、OEMモデルながら一定の支持を得るモデルとなった。
2003年にはマイナーチェンジが実施され、ウインカーレバーとワイパーレバーを入れ替え、ほかの国産車と同一のレイアウトに変更。さらに、セカンドシートのリクライニング機構や電動格納式ドアミラーなどが追加され、より日本国内で扱いやすいモデルとして進化。しかし、生産拠点であるGMタイ工場での生産終了に伴い、2004年をもってトラヴィックの生産が終了した。
ミニバン人気が飛躍的に高まるなかエクシーガがデビュー!
【2008年発売/エクシーガ(YA型)】
トラヴィックの生産が終了してから4年後の2008年、空前のミニバンブームのなかエクシーガがセンセーショナルにデビューした。発売当時は3代目ホンダ・オデッセイや2代目トヨタ・イプサムなど、ヒンジドアを持つミニバンも人気があり、スライドドア車よりも扱いやすいサイズ、セダンから乗り換えて違和感のないドライブフィールなどが支持されていた。
そんなライバルがひしめくヒンジドアのミニバンカテゴリーに突如現れたエクシーガは、7人乗りでありながらスバル自慢のシンメトリカルAWDや、フラッグシップのGTグレードにはEJ20型ターボエンジンを搭載。さらにはレガシィ譲りのスポーツカー顔負けの軽快なフットワークといった、スポーツ性能を前面に打ち出していた。
もちろんNAエンジン車やFFモデルなども設定されており、リーズナブルな仕様も人気を博した。走りを求めるお父さんからの支持はもちろん、レガシィやインプレッサといったスポーツモデルに乗っていたユーザーが、家族構成やライフスタイルの変化で必要を迫られる3列シート車の受け皿としての役割も果たしていたといえる。
もちろんそれらの高性能モデルからの乗り換えでも不満なく走るドライビングパフォーマンスに満足するオーナーも多く、カスタマイズやチューニングといった点でもインプレッサやレガシィのパーツ流用などができるという点でも人気を得た。
しかし、エクシーガはフルモデルチェンジすることなく一世代で終焉を迎えてしまった。だが、10年間にわたり生産される間、運転支援システム「アイサイト」搭載車の追加、2.5L NAエンジン搭載車の追加、NAモデルのトランスミッションの変更(AT→CVT)、さらにSTIコンプリートカーのtuned by STIやtSを限定生産。さらに、ビッグマイナーチェンジでSUV色を強めたクロスオーバー7を設定するなど、つねに色あせないチャレンジングな展開に根強いファンも多いモデルだ。
スバル製ミニバンが市場から姿を消して早3年。一部のユーザーからは北米専売の大型SUV「アセント」の国内導入を望む声もある。だが、8人および7人乗車の3列シート車ながらそのボディサイズは大きく、やはり扱いやすいサイズでの3列シートモデルを望む声も多い。
時代はミニバンブームからSUVへとシフトしていることもあり、新たに3列シート車がSUBARUからデビューすることは現実的には難しそうである。しかし、今回紹介した3車種にはいずれも根強いファンがいまでも乗り続けており、それだけ魅力ある高い商品力を持ったクルマであることは間違いない。クルマに対して実直なメーカーだからこそ愛されるモデルとなるのだ。
個人的には完全新製のモデルは難しいかもしれないが、ラインアップとして新型アウトバックに7人乗りを設定したらある程度の需要は見込めるのではないか? と思ってしまうのである。
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