国産車のアウタードアハンドルは、90年代ごろまではフラップ型が主流であった。だが2000年を越えたあたりからグリップ型を採用する車が増え始め、今では軽自動車から高級車まで、そのほとんどがグリップ型のアウタードアハンドルを採用している。
なぜフラップ型のドアハンドルは減少したのか。アウタードアハンドルの将来とともに、考察しよう。
フルモデルチェンジが仇となった!? 先代の栄光を引き継げなかったクルマ6選
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、SUBARU、MAZDA、DAIHATSU
欧州メーカーのクルマづくりを目指して取り入れた
飛行機のフラップ(主翼後端にある上下に動く部分)が由来の、フラップ型のアウタードアハンドル。ドアハンドルの下から手を差し込み、手前方向へ引くことで、ドアを開く機構となっている。
冒頭でも触れたように、国産車のアウタードアハンドルがグリップ型へと切り替わり始めたのは、2000代前半のこと。
スカイラインを例に挙げれば、1998年発売のR34スカイライン(GT-R含む)、そして2001年発売のV35型スカイラインセダンまではフラップ型だが、2003年発売のスカイラインクーペではグリップ型へと変更されており、次のV36からはセダン、クーペ共にグリップ型となっている。またクラウンの場合も、1999年発売のS17まではフラップ型、2003年発売のS18(ゼロクラウン)からはグリップ型へと変わっている。
当時は、欧州メーカーが日本市場へ本格的に参入し始めたころ。そして、トヨタや日産、ホンダといった日本車メーカーが、北米市場や欧州市場へチャレンジして10年が経とうとしていたころだ。2000年当時の国産車の実力は、欧州車にまだまだ届いておらず、国産車メーカーが、欧州車のクルマづくりを目指すなかで、欧州車が採用していたグリップ型ドアハンドルを取り入れた、というのが理由だろう。
2001年発売のV35型スカイライン。アウタードアハンドルはフラップ型だ
安くてカッコいいフラップ型
フラップ型のメリットとしては、コストが安く済む、ということがある。グリップ型と比べて簡単な構造で済むため、安く、軽く、そして小さくつくことができる。商用車などで今も採用されている理由だ。
また、当時はボディ側面へ出っ張ることが少ないフラップ型の方が、空気抵抗の面や風切り音対策にはいい、ともされていた(当時はシミュレーション技術が確立されていなかったため分かっていなかったが、空気抵抗や風切り音の発生原因ならば、フロントウィンドウの角度や車体後方のボディ形状、サイドミラーなどの大きな突起物の方が、何倍も影響度が高い)。
また、「デザイン的にカッコ良い」という理由もある。クルマの開発初期段階のデザイン画には、アウタードアハンドルが描かれていないことが多いが、カーデザインにおいて、ドアハンドルは存在感を消したいパーツであり、できるだけドアを大きく魅せ、キャラクターラインを際立たせた方が、カッコ良くみせられる。いまでも一部のスポーツカーで採用されているのはこれが理由だろう。
例えば、最近の国産スポ―ツカーだと、R35GT-Rや、新型フェアレディZ、ホンダNSXなどは、フラップ型を採用している。また、スイフトやC-HR、ヴェゼルなどでみられるように、後席のアウタードアハンドルをフラップ型にして、デザインに紛れ込ませ、2ドアのクーペSUV風に魅せる事例も増えてきた。今ではグリップ型のアウタードアハンドルもおさまりがよいデザインとなってはきたが、フラップ型の方がスタイリッシュに魅せるのに向いていたのだ。
グリップ型となったのは使い勝手を優先したから
このように、メリットが多いように思えるフラップ型ドアハンドルだが、なぜ欧州車はグリップ型を採用していたのか。それは、ドアハンドルとしての使い勝手を考えれば、グリップ型のほうが際立っていいからだ。
欧州を代表する自動車メーカーのフォルクスワーゲンでは、グリップ型ドアハンドルを初代ビートルの時代(1940年代)から一貫して続けている。事故の時にドアハンドルにロープやフックなどをかけて引っ張ることで救出するまでの時間を短くするためだという。一分一秒を争う交通事故車からの救出の際、ドアが開かなかった(開きにくかった)なんてことは、自動車メーカーとしてはあってはならない。
また、冬場に寒くなる欧州では、分厚い手袋をしたままドアを開けるため、そもそもグリップ型でないと手が入らない。寒い中、わざわざ手袋を外してフラップ型ドアハンドルを引っ張り上げて開けるのは不便すぎる。また上下両方から手を入れられるので、荷物を持った場合でも扱いやすく、そして力を入れやすい(少ない力で開けられる)といったメリットもある。
国産車メーカーもこの使い勝手のよさに納得して、取り入れていったのだろう。
将来的にはドアハンドルは「不要」にも
昨今は、グリップ型のドアハンドルを握ればドアをアンロックできる、スマートキーシステムを搭載したクルマも増えている。また、メルセデスのEQSやヒョンデのIONIQ5、テスラ車などでは、ドアハンドルが自動的にポップアップする「自動収納型」を採用している。
その分コストはかかってはいるが、利便性はなかなか高い。あと数年もすれば、ドアに近づいただけで隣のクルマとの距離をサーチして、自動で開くドアのクルマが登場することだろう。となれば、そもそもドアハンドルは不要(エマージェンシーのために隠しドアハンドルを設ける)になる。
そうなると、かつてのフラップ型や、現在主流のグリップ型のドアハンドルすら、ノスタルジックに感じることになるのかもしれない。次世代ドアハンドルがどういった姿となるのか、今後の展開も楽しみだ。
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そしてフラップ型は爪を伸ばしてる女性には不人気でも有る。