メルセデス・ベンツ EQC 「EVでもメルセデス・ベンツらしさは建材」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

EVでもメルセデス・ベンツらしさは建材

2022.1.17

年式

2019年7月〜モデル

総評

たとえば超コンパクトカーであるスマートでEVを試験的に販売したり、欧州ではカーシェアリング用に使うなど、メルセデス・ベンツのEV歴は長い。ただ、メルセデス・ベンツブランドとしての量産EVはEQCが初だ。緻密なエネルギー制御技術と、メルセデス・ベンツらしい骨太の走行性能によって、「静かで速い」といった尺度以外にEVとしてのメリットを提示した。

満足している点

車両重量は2495kgのうち約26％（652kg）は80kWhのリチウムイオンバッテリー。その搭載が車体中央の下部にあるのだからどっしりとした運転感覚が伝わる。メルセデス・ベンツのEVは緻密なモーター駆動制御でも定評があるが、アクセルペダルの踏み込み量に応じて変化する前後モーターの駆動力制御も優秀。滑りやすい路面での安定感も高い。

不満な点

EVからの乗り換えユーザーにとってはまったく気にならないところだが、やはり大容量バッテリーの充電時間は使い勝手を左右する。急速充電が必要な場合は連続した長距離走行が多い傾向にあり、バッテリー自体が熱を持つ。そうなると充電時間がカタログ値よりかかるからだ。充電時間を加味した移動にかかる時間計算は、筆者にとって未だに課題だ。

デザイン

3

EQCのベース車両は内燃機関モデルのGLC。全長×全幅×全高のうち全長が100mmほど長く、全高が20mmほどEQCが低いがホイールベースは両車とも同じ。GLCからヘッドライトやテールランプ形状、前後バンパー、ホイール形状など全面にわたって意匠が変更されているが、全体のシルエットは見慣れたメルセデス・ベンツのSUVといった印象。

走行性能

5

前後モーターによるシステム出力は408PS/765Nmと強力だが、ドライブモードによらずアクセルコントロールがやりやすい。EVのなかにはじわっと踏んでも一気に発進するモデルもあるが、メルセデス・ベンツらしく紳士的。ひとたび踏み込めば、通常のFF走行から、後輪モーター駆動が加わった4WD走行となり、蹴飛ばされたように猛然と加速する。

乗り心地

3

前輪をコイルバネとし、後輪にエアバネを用いた。路面からの衝撃を徹底的にいなす特性で乗り心地は快適だ。曲率のきついカーブではロール量が多く、一気に車体が傾く場面もあるが、車両中央の下端部にバッテリーを搭載することから丁寧な運転操作をしている限り、従順に反応する。メルセデス・ベンツのSUVらしくグランドツアラー的な乗り味だ。

積載性

4

ラゲッジルームの積載スペースは、ベースのGLCとほぼ同じ。4:2:4の分割可倒式のリヤシートも同じ構造だ。アンダーフロアボックスも備え実用的だ。前席のセンターコンソールもGLCと同位置にあり、ドアポケットも前後4つのドアに備える。助手席側のコンソールボックスは小さめで車検証入れでいっぱいになるが、ここも他のメルセデス・ベンツ同様だ。

燃費

3

EVなので電費計算。1回の充電当たりの走行可能距離はWLTC値で400km。二次バッテリー容量は80kWhで高効率なリチウムイオンバッテリーを搭載する。以上のことから、5㎞／kWhとの計算が成り立つ。AC普通充電と直流急速充電に対応。 条件にもよるが、満充電までにかかる時間は、普通充電で約13時間、急速充電で約80分だ。

価格

3

導入当初1080万円だったが、2021年春に895万円に大幅値下げした。装備内容の見直し（快適装備の削減など）がその理由とのことだが、EVシステムやバッテリー容量に変わりはないので実質的なコストパフォーマンスは高まった。EQC含むEQシリーズやプラグインハイブリッドモデルを購入すると充電機器設置の各種サポートが受けられる。