メルセデス・ベンツ Aクラス のみんなの質問

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横滑り防止機構(VSA)について

最近質問の中に横滑り防止機構(VSA)とかが良く出て来ますが、数年後には法制化されるのですか?
横滑り防止するってどうやって行うのですか?
縦方向には駆動力が掛っていますが横方向にはタイヤの摩擦抵抗しか働いていませんが?
トラクションコントロールのように滑りだすと働く物ですか?
FFにもFRにも使える技術なのですか?

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ベストアンサーに選ばれた回答

●VSAとは?
技術用語では,ESC(Electronic Stability Control : 横滑り防止装置)といい,VSAはホンダが付けた名称(固有名詞)です。

●横滑り防止装置の仕組み
主として、下記の3点の組み合わせです。
・ABS … 4輪独立のブレーキ制御をおこなうアンチロックブレーキシステム
・TRC … エンジンの過大な出力を制御して車輪のすべりを軽減するトラクション制御TRC
・各種センサ(主としてヨーレイト・センサ) … 車両の横方向への移動速度を検出して、車両のスピン状態を把握

●技術用語
技術用語でいうと,「横滑り防止装置」になります。自動車メーカにより呼び方が異なるため,統一用語として「ESC = Electronic Stability Control」といいます。

ESP … ベンツ、VW、AUDI、クライスラー、シトロエン、プジョー、フィアット、ルノー、スマート、スズキ、オペル、サーブ
VSC … トヨタ、レクサス(高機能版をVDIM)、ダイハツ
VDC … 日産、アルファロメオ、ヒュンダイ
DSC … BMW、ジャガー、ランドローバー、マツダ
DSTC … ボルボ
VSA … アキュラ、本田(VSAは欧州で通じないため,ESCやESPも使っています)
ASC … 三菱
PSM … ポルシェ

●機能
大きく分けて3つの機能があります。

(1) スピン防止 … オーバステアからスピンに入る挙動を防止します (理由は後述の制御例をご覧ください)
(2) アンダーステア防止 … 前輪駆動力が過大で,横力を失うと,旋回モーメントが発生しません。この時,内輪側の車両に軽い制動をかけ,エンジン出力を絞ることで,狙っているラインをトレースさせます
(3) 滑りやすい路面 … 各輪の滑りを検出し,駆動力と制動力を制御しますので,雪道などの低μ路(すべりやすい路面)走行では,非常に高い効果を発揮します。もちろん多少の尻振りはありますが,横滑り防止装置なしと比べると雲泥の差です。非常に安定して,走行することができます。
ただ4WD(四輪駆動)車のように駆動輪が四輪あるわけではないので,走破性は4WDに劣ります。

●欧州
欧州では、アルプスに近い地域では20cm程度の積雪があります。しかしESCが付いていれば、そこそこ走れます。もちろん4輪駆動車(4WDあるいはAWD)にはかないませんが。このため欧州では、雪が降る地方でもAWD(4WD)車の比率は少ないです。

●ESCを最初に採用したクルマとは?
1995年 メルセデスベンツ Sクラス(W140)
同年 トヨタ クラウン・マジェスタ

●開発した会社
ボッシュ社

●どうして普及したか?
ベンツAクラスの横転事故防止のため,全車に装着したため(1997年)。

●ボッシュが本当に最初か?
ESCという技術は次の3つの技術の組み合わせです

ABS制御 + トラクション制御 + ヨー制御

しかし,この技術の前に次のような技術がありました。

トラクション制御 + ヨー制御

これを開発したのは,日産です。当時,日産は「901活動」を受けたシャシー制御をさかんにやっており,前後挙動のトラクション制御とスピン検出のヨー制御があれば,車両の運動性能を大幅に改善できると考えていました。また左右輪のトラクションについては,左右輪に対してのリミテッドスリップデフ(LSD)を電子化すれば良いと考えていました。しかし電子制御LSDはかなりコストも高く,実用化ができませんでした。

これに対して,LSDを4輪のブレーキ制御で簡易的に差動制限をすることを考え出したのはボッシュ社でした。これならば,コストアップも小さく,瞬時のスピン防止制御にも応答性から見て有利でした。

つまり原型を考えたのは日産ですが,現在につながるESCを開発したのはボッシュ社です。

●制御例
添付図をご覧下さい。FR車の場合です。

右旋回をしているとき,アクセルを少し踏み増すと,後輪の駆動力が増え,摩擦円を超えてしまいます。これにより,横力が不足し,後輪が流れます(スリップします)。こうしてスピンします。

この時,エンジンの駆動力を落とし(=トラクション制御),外側の車輪(この例では,左側の前後輪)にブレーキをかけます(=ABS制御の応用)。すると,反時計回りのモーメントが生じて,オーバーステアを回避し,スピンに入ることを防止できます。

●今後は?
日本に輸入される欧州の高級車には,ほとんどすべてESCが装着されています。あの小さなスマートにもESCは付いています。また米国もすでに義務化されています。

今後,すべての日本車に義務づけられます。日本での義務化スケジュールは下記の通りです。

・軽自動車以外 … 2012年からすべての新型車,2014年からすべての新車
・軽自動車 … 2014年からすべての新型車,2018年からすべての新車

日本での装着義務化が欧米に遅れたのは,軽自動車でのコストアップが足を引っ張ったからです。

●適用車両
FF,FR,およびその4WDのいずれにも適用可能で,実際に適用されています。

簡単ですが,ご参考になれば幸いです。

回答の画像

質問者からのお礼コメント

2011.2.25 17:33

色々なシステムの仕組みや、組み合わせ、歴史にまで解説をありがとうございました。技術解説は私にはちょっと難しすぎたけど何となく判りました。他の回答者様もそれぞれの切り口で解説をありがとうございました。

その他の回答 (6件)

  • メカニカルなことは先の回答の皆さんの通りです。
    法制化は下記の通りです。

    カーブや雨の道で自動車がスリップしそうになるのを防ぐ「横滑り防止装置」(ESC)が、すべての新車の乗用車につくようになる。センターラインをはみ出して衝突するなど横滑りによる交通事故が多いため、国土交通省が自動車メーカーに装着を義務づける方針を固めた。

    まず、2012年10月以降に全面改良(フルモデルチェンジ)して発売する新型車に義務づける。既存車種も14年10月以降には装備に追加する必要がある。軽自動車は設計変更に手間がかかるため、新型車が14年10月以降、それ以外は18年2月以降とする。

  • 始めにVSA(ヴィークルスタビリティーアシスト)は本田技研の商標ですが、別には走行姿勢安定装置とも言いがたいです。ジャイロセンサー、個別ブレーキ制御、エンジン出力制御装置、スリップセンサーから構成され、FF、FRとも作動原理は同じで、小回りぎみになってしまった(オーバーステア)場合には前輪逆進行方向側輪に、大回り気味になってしまった(アンダーステア)場合には後輪進行方向側輪に、各弱めのブレーキを作動させ走行姿勢を安定させる装置で、将来的に標準化されます。当然ブレーキでは制御しきれないのでエンジン制御もします。

    この装置は乗用車だけではなく、大型トラック、バスにも採用されておりますが、作動が始めに全てにブレーキがかかり、そこから個別に強弱をつけて姿勢安定させます。大型車は重量がある為、個別にブレーキ作動すると足回りを傷める場合があるからです。この装置の名称もVSC(トヨタ)、ESP(ベンツ、BMWなど)メーカーにより呼び名が変わります。

  • はい、これからはVSAって必要な装備になると思いますよ。
    ぼくも、先週買ったクルマに、ちゃんとつけましたよ。
    高速道路で100kmからスピンした経験もあるしね。。。。つけたほうがいいよ。

  • たとえばシロートさんというか一般ドライバーは、オーバースピードでカーブに突入して滑りそうになったらブレーキを踏みアクセルを離します。あるいはアクセルオフをやっちゃう。でもこれをやっちゃうと前後方向のグリップにもタイヤの負荷が高まり、横方向のグリップは減るんですよね。それでスピンや横滑りが発生します。高いコーナリングスピードを滑らずに進むには、車速一定で減速も加速もしていない状態が一番横滑りを起しにくいのです。

    つまりカーブを曲がってる最中って、前後方向と左右方向のいろんなベクトルを持った力をタイヤが受けてます。横滑り防止装置は滑り出したと検知したら、前後方向、つまりアクセル(前方向ですね)まはたブレーキ(後ろ方向)の力を緩めて左右横方向へのグリップを確保します。こうすることによって結果的に滑らないというのはVSAです。

    VSAはこのアクセルとブレーキの過入力を抑制します。既にTCSやABSって実用化されて導入していますが、これらはアクセルを緩めたり、ブレーキを緩くしてしまう装置。さらに、これらを制御して更に横滑りを起さないように・・・ということですね。

  • ステアリングの舵角やスピードをセンシングして、ヨーレートなども測りスロットルを絞ったり、4輪個別に自動的にブレーキをかけたりする訳です。
    これは駆動方式にあまり関係なく使える技術です。

  • 法整備が整えば標準装備になるでしょうね。
    FFでも、FRでも使えますが、若干制御方法が異なります。

    横滑り防止装置はABSとトラクションコントロールの制御、パワーステアリング、ヨーレートセンサーなどで構成されています。ヨーレートセンサーは横Gの検出と思ってください。

    例えば、FF車で右カーブを曲がりきれずにアンダーステアーになるとします。(アンダーの判定は一定以上のスピードでステアリングを切っているのにもかかわらずヨーレートセンサーが横Gを検出できない・・・などの条件が整ったときです。)
    するとABSが4輪のブレーキ圧を一つずつ変更します。
    この場合、右フロントのグリップ力が一番欲しい(右フロントを中心に車体を回転させたい)ので、ABSは右フロントのブレーキを強く効かせ、そのほかの3輪はスピードを下げさせるために右前よりもやや弱めにブレーキをかけます。
    逆にオーバーステアーは左フロントのブレーキ力を強くする事で曲がりにくくします。

    ただし、大口径のホイールやグリップ力が落ちる雨天時などは性能が発揮できないときがあるので、未だ発展途中のものと言えるでしょう。

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