■気合の入り方がすごいホットなコンパクトモデルを振り返る
日本は住宅街に狭い道が多く、駐車スペースが非常に限られている家も散見されます。また、都市部のスーパーなどの駐車場やコインパーキングでは1台分のスペースが比較的狭いといえるでしょう。
そのため、ボディサイズが小さい軽自動車やコンパクトカーは、常に販売台数ランキングの上位に入るほど売れています。また、そうしたモデルは価格も安価で低燃費なことから経済的にも優れているというメリットがあります。
軽自動車やコンパクトカーは実用的なモデルが多い傾向がありますが、なかには特別なクルマも存在。
そこで、かなり気合が入っていたコンパクトなホットモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●スズキ「セルボモード SR-Four」
今からちょうど50年前の1971年に、スズキは軽自動車初の本格的なスポーツカーである「フロンテクーペ」を発売。リアに搭載された360cc2サイクル3気筒エンジンは37馬力を発揮して、見た目も走りもホットなモデルでした。
その後、1976年に550cc規格に対応した後継車の初代「セルボ」が登場。外観もフロンテクーペを継承していましたが、2代目では初代「アルト」をベースのFFとなり、やがてさらに代を重ねるとスポーツカー色は薄れていきました。
しかし、1990年に発売された「セルボモード SR-Four」は、当時としてはかなり気合が入っていた高性能モデルとしてデビュー。
スズキが誇る高性能軽自動車といえば「アルトワークス」ですが、セルボモード SR-Fourはアルトワークスを上まわるメカを搭載したモデルで、一見するとシックなデザインの軽ハッチバックですが、搭載されたエンジンは最高出力64馬力の660cc直列4気筒DOHCターボ「F6B型」です。
このエンジンは軽自動車では初の4気筒DOHCターボであり、搭載したのはセルボモード SR-Fourのみと、今では考えられないほど贅沢なエンジンといえます。
また、ピレリ製タイヤを標準装着していたり、後期型では4輪ディスクブレーキとなるなど、装備も充実。
もともとセルボモードはスペシャルティカーという位置づけでしたが、ここまで凝ったエンジンを搭載したというのも、まさにバブル景気という時代背景があったからでしょう。
●トヨタ「iQ GRMN スーパーチャージャー」
全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmと軽自動車よりも全長が短いマイクロカーでありながら4名乗車を可能にしたトヨタ「iQ」は、多くのパーツが専用に開発され、それだけでもかなり気合が入ったモデルといえます。
そして、このiQをベースにハードにチューニングするという快挙を成し遂げたのがトヨタのモータースポーツ系ブランド「TOYOTA GAZOO Racing」で、2012年に発売された「iQ GRMN スーパーチャージャー」こそ本当に気合が入っていたモデルです。
iQをベースにしたiQ GRMN スーパーチャージャーは、その名のとおり1.3リッター直列4気筒スーパーチャージドエンジンが搭載され、最高出力は122馬力を発揮。組み合わされるトランスミッションは6速MTのみです。
また、ボディでは専用の前後バンパーや、全幅を1705mmまで拡大するワイドフェンダーなどを装着。
シャシもスポット溶接箇所を増やして剛性アップが図られ、前後にパフォーマンスダンパーを装着し、専用にチューニングされたサスペンションを採用するなど運動性能も高められています。
内装では専用スポーツシートやステアリング、加飾されたメーター類などスポーティに演出されました。
限定100台で販売されたiQ GRMN スーパーチャージャーの価格は355万円(消費税5%込)と、ベースのiQに対して180万円ほど高額に設定されましたが、予約の段階で完売。いまではかなりレアなモデルです。
●三菱「コルト ラリーアート バージョンR スペシャル」
現在、三菱のコンパクトカーというと2012年に発売された6代目「ミラージュ」ですが、2000年に5代目をもって一旦販売を終了しています。
この5代目ミラージュの実質的な後継車として2002年に誕生したのが「コルト」で、日産「ノート」やホンダ「フィット」などと競合する1.3リッター、1.5リッターエンジンを搭載したベーシックカーです。
その後、2004年のマイナーチェンジで、ショートワゴンの「コルトプラス」の誕生と同時に、147馬力を発揮する1.5リッター直列4気筒DOHC MIVECターボエンジンを搭載した「コルト ラリーアート」と「コルトプラス ラリーアート」が設定されました。
そして2008年4月に、最高出力163馬力まで向上した改良型をベースにした特別なモデル「コルト ラリーアート バージョンR スペシャル」を限定300台で発売。なお、トランスミッションは5速MTのみです。
最大のトピックスは、ドア開口部4か所すべてのボディパネル貼り合わせ部分の全周を、自動化されたスポット溶接に加えて手作業による「連続シーム溶接」をその上から施したことで、従来のボディと比べ縦方向の曲げ剛性で約10%アップしました。
これにより、車両のピッチングとロールが抑えられタイヤの接地性が向上。ドライバーの意図に忠実なステアリングレスポンスとトラクション性能を実現しています。
外観ではラリーアート製のスポーツマフラーを採用して、迫力あるリアビューを演出。16インチアルミホイールを専用のブラック塗装を施し、足元が引き締まった印象です。
内装ではレカロ製バケットシートを標準装備し、シリアルナンバー入りプレートがフロアコンソール部に装着されています。
このコルト ラリーアート バージョンR スペシャルは好評だったことから、2010年4月にも第2弾として一部改良したモデルが200台限定で販売されました。なお、価格はどちらも232万500円(消費税5%込)です。
コルト ラリーアート バージョンR自体もかなりつくり込まれた秀作でしたが、残念ながら2012年に生産を終了しました。
※ ※ ※
本文中に登場したミラージュは、かつてモータースポーツの世界で活躍したほどホットなグレードが数多く存在しました。しかし、現行モデルの6代目では、発売以降これまで高性能モデルは存在していません。
一方で2021年5月に、三菱はモータースポーツブランドであるラリーアートの復活を宣言。
市販車にもラリーアートの名を冠したモデルが登場するかは不明ですが、ぜひともミラージュベースのホットハッチの誕生に期待したいところです。
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みんなのコメント
「真面目」を売りにしていたのにデビューじに三菱のリコール隠し問題の時期と重なり思うように売れなかった。
スタイルは遠目で初代フィットによく似ていたがフィットが2代目3代目とモデルチェンジしていったがモデルチェンジする余裕もなくマイナーチェンジで結果的に長寿モデルとなってしまった。
そのあとにミラージュとバトンタッチしたけどタイ産のミラージュはアジア新興国向けでとてもじゃないがコルトに比べると質感が低すぎた。