2020年7月にタイで発表され、日本でも2021年9月14日に発売される予定のトヨタのクロスオーバーSUV、カローラクロス。8月2日に発売される新型ランドクルーザー300を含め、トヨタのSUVのラインナップは、まさに半端ないフルラインナップ状態だ。
はたして、新型カローラクロスは、ライズやヤリスクロス、RAV4、ハリアーのように大成功するだろうか? さらに新型カローラクロスに死角はないのだろうか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説する。
一番売れてるミドルSUV!! トヨタ新型RAV4購入ガイド 買いに行く前に読むべし!!!
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】9月14日発売予定!! 新型カローラクロスはホンダヴェゼルを超えられるか?
■新型カローラクロスは8月下旬に予約受注開始、9月14日に正式発売予定
2021年内に登場する新型車の中で、特に注目される車種がトヨタカローラクロスだ。2020年7月にタイで初公開され、日本での販売も予定されている。
販売店ではカローラクロスについて以下のように述べた。
「カローラクロスに関して、現時点(2021年7月下旬時点)では、8月下旬頃には予約受注を開始して、9月14日に正式発売するスケジュールになるだろう。試乗が可能になるのも9月下旬頃だ。お客様からの問い合わせは多い」。
■カローラクロスの外観、内装を徹底チェック!
カローラシリーズとして新たにラインナップに加わるカローラクロス。発売は2021年9月14日を予定している。予約受注開始は8月下旬と予想される
カローラクロスは、文字通りカローラとエンジンやプラットフォームを共通化したSUVだ。カローラの「GA-C」と呼ばれるプラットフォームは、現行プリウスで初採用され、今はトヨタ車に幅広く普及した。したがってカローラクロスも、トヨタが用意するさまざまなミドルサイズカーと基本部分は共通化されている。
カローラクロスのホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2640mmだから、同じプラットフォームを使うC-HR、カローラセダン/ツーリング/スポーツと等しい。現在日本で販売されているトヨタ車で、カローラクロスに最も近い車種はSUVのC-HRだ。
トヨタC-HR(全長4390mm×全幅1795mm×全高1550mm)と同じGA-Cプラットフォームを採用する
カローラクロスのボディサイズは全長4460×全幅1825×全高1620mm、ホイールベースは2640mm。C-HRよりも大きくハリアーよりも小さい
カローラクロスのボディサイズをタイ仕様で見ると、全長は4460mm、全幅は1825mm、全高は1620mmになる。C-HRに比べると70mm長く、30mmワイドで、70mm高い。ホイールベースは同じだが、ボディサイズはカローラクロスが少し大きい。
外観は比較的オーソドックスなSUVのスタイルだ。C-HRの外観は、5ドアクーペ風で都会的な印象を強めたが、カローラクロスは前輪駆動ベースのSUVながらも野性的な雰囲気を併せ持つ。既存のトヨタのSUVに当てはめると、カローラクロスのコンセプトやデザインは、RAV4とライズに近い。
インテリアの造形はC-HRを踏襲する
内装の基本形状はC-HRに似ている。カローラクロスはオーソドックスな上質感を重視するが、各種のスイッチやATレバーの配置はC-HRと共通だ。
居住空間はホイールベースが等しいためにC-HRに近いが、前述の通り全高はカローラクロスが70mm高い。リアゲートの角度は、C-HRでは寝かされたが、カローラクロスは直立させた。
そうなると車内の後部はカローラクロスが広い。例えば身長170cmの乗員が座った時、C-HRの後席では頭上に握りコブシが1つ収まらないが、カローラクロスでは余裕が生じる。
カローラクロスのフォルムはクーペよりもむしろステーションワゴンやRVに近い。後席付近のCピラーを立てた設計により室内空間に余裕が生まれる
またC-HRではサイドウィンドウの下端を後ろに向けて持ち上げたから、ドライバーから見ると斜め後方の視界が悪く、後席に座る乗員も圧迫感を抱く。この点もカローラクロスは外観が水平基調だから、大幅に改善される。後席に座った時の開放感でも差が生じる。
さらにカローラクロスは、全長がC-HRに比べて70mm長いので、リア側のオーバーハング(ボディが後輪よりも後ろ側へ張り出した部分)も伸びる。そのために荷室面積も少し広い。リアゲートもC-HRのように寝かせずに立てたから、背の高い荷物を積みやすい。
以上のようにカローラクロスは、全長が4460mmという適度なサイズで、後席を含めた居住空間と荷室が広い。ファミリーカーに最適なSUVに仕上がる。
エンジンはタイ生産のカローラクロスでは、直列4気筒1.8Lと、1.8Lをベースにしたハイブリッドが用意される。この組み合わせは、基本的にはカローラセダンやツーリングと同じだ。
日本仕様では、C-HRと同様に1.8Lのガソリンエンジンを1.2Lターボに変更したり、両方を設定する可能性もあるが、価格を割安に抑えるなら1.8Lが有利だ。売れ筋のパワーユニットはハイブリッドで、C-HRでも70~80%占める。
■トヨタのSUV戦略において中心的な存在となるカローラクロス
トヨタのSUVラインナップのなかでまさにど真ん中になる新型カローラクロス
カローラクロスは、トヨタのSUV戦略において中心的な存在になる。表に記したラインナップを見ると分かりやすい。
SUVはワイドなフェンダーや大径タイヤの装着で外観の存在感が強く、ボディの上側はワゴン風のスタイルだから、居住性や積載性も優れている。カッコ良さと実用性を両立させて人気を得た。
そしてSUVには、ほかのカテゴリーとは違う多様性がある。乗用車と共通のプラットフォームを使った前輪駆動ベースのSUVでも、シティ派と野性的なラフロード派の両方をそろえることが可能だ。
LサイズSUVでダントツに売れているハリアー。先代のコンセプトをそのままに内外装のクオリティに磨きをかけた
RAV4はハリアーの兄弟車。プラットフォームやエンジンはハリアーと共通だがワイルドで押し出し感の強いデザインを採用
例えばハリアーとRAV4は、エンジンやハイブリッドが基本的に共通で、プラットフォームもホイールベースの数値まで含めて等しい。それでも車両のコンセプトと内外装のデザイン、雰囲気は大きく異なり、別の車種として共存している。
このように基本部分を共通化して開発や製造を合理化しながら、異なる車種をそろえられるのは、SUVならではの妙味だ。メーカーにとって都合が良く、しかも好調に売られることから、今では世界中のブランドがSUVに群がっている。
そしてSUVで売れ行きを伸ばしやすいのは、日本では全長が4300~4500mmの比較的コンパクトな車種だが、今のトヨタのラインナップでは、この位置付けに収まるのはC-HRだけだ。
C-HRは前述の通り個性的なSUVで、2021年1~6月の登録台数は、1か月平均で1814台に留まる。マツダCX-8と同程度だ。そうなるとトヨタがカバーできていないSUVユーザーも多く、需要をヴェゼルなどに奪われる可能性もある。
その意味でカローラクロスは、SUVの典型的なデザインで実用性も高く、ボディサイズは適度にコンパクトだ。ユーザーとトヨタの双方にとって待望のSUVといえるだろう。そのためにカローラクロスが発売されると、トヨタは販売促進に力を入れるから、人気車になることは間違いない。
■大ヒット中のヤリスクロスを超えられるか? ヴェゼルに比べどこが優位?
ヤリスクロスは全長4180×全幅1765×全高1590mm。価格は179万8000円~281万5000円。新型カローラクロスはヤリスクロスに約40万円上乗せされる
大ヒットするには価格が大切だが、カローラクロスは、価格を割安に抑えている。販売促進のためでもあるが、トヨタ車同士の価格ヒエラルキーも影響を与えている。
しばしば「ヤリスクロスは割安」といわれるが、仮に価格をヴェゼルやキックス並みに高めたら、C-HRに近付いてしまう。
トヨタは車種数が多く、しかも今は全店が全車を扱うから、車種間の価格を整理しないとトヨタ車同士で不毛な競争が生じるのだ。ライバル車とのバランスも考えると、価格は必然的に決まってくる。
具体的な価格は、装備内容にもよるがC-HRに近い。2WDの場合、売れ筋になるハイブリッドの価格帯は270万~310万円、1.8Lのガソリンエンジンは230万~270万円だ。共通のプラットフォームを使うカローラツーリングに比べると20万~30万円高い。
最大のライバルになるであろうホンダヴェゼルは全長4330×全幅1790×全高1580mm。ちなみにカローラクロスは全長4460×全幅1825×全高1620mm
ライバル車のヴェゼルに比べると、ほぼ同じ価格になる。ヴェゼルのエンジンは1.5Lだからコンパクトな印象もあるが、ハイブリッドのe:HEVは加速が滑らかだ。内装も上質で、後席の足元空間はカローラクロスよりも広い。ヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室容量にも余裕がある。
カローラクロスは実用指向のSUVで、ファミリーユーザーも対象に入るから、機能と価格をヴェゼルなどのライバル車と比較される。そうなると価格の割安感も大切で、ガソリンエンジンは前述の230万~270万円、ハイブリッドは270万~310万円に収める。
そしてこの価格であれば、人気の高いヤリスクロスとのバランスもとれる。ヤリスクロスの売れ筋価格帯(2WD)は、1.5Lのガソリンエンジンが190万~220万円、1.5Lハイブリッドは230万~260万円だから、約40万円はカローラクロスが高い。
ヤリスクロスの室内。後席の広さはカローラクロス、ヴェゼルよりも狭い
カローラクロスのインテリア。後席リクライニング機能が全車に標準装備される
ホンダヴェゼルのインテリア。カローラクロスよりひと回り小さいながらも後席の広さはヴェゼルに軍配が上がる
ヤリスクロスは後席が狭く、荷室容量も十分とはいえない。ファミリーカーとして使うことも無理ではないが、基本的には2名以内の乗車に適する。そこに40万円を加えるとファミリーでも使いやすいカローラクロスに手が届き、さらに40万円を上乗せするとRAV4を購入できるイメージだ。
ちなみに30万~40万円の価格差は、ガソリンエンジンとハイブリッドの差額にも相当する。車種やパワーユニットをワンランク上級化しようと考えた時、30万~40万円は、ちょうど良い価格差なのだ。
価格差が50万円では、割高感が生じて上級化を控えたくなる。ヤリスクロスとカローラクロスの選択では、ヤリスクロスを選んでしまう。逆に価格差が20万円では、カローラクロスに割安感が生じて、ヤリスクロスの売れ行きを伸ばせない。
この点を考えると、カローラクロスの価格は、前述の通りガソリンエンジンが230万~270万円、ハイブリッドは270万~310万円に落ち着く。なおこの価格差は、ヤリス対カローラツーリングにも当てはまる。
■カローラクロスの死角はどこにある?
パワートレインは1.8Lガソリンと1.8Lハイブリッドの2種類。ハイブリッド車の燃費はC-HR(25.8km/L)とほぼ同等とみられる
カローラクロスが登場しても、ヤリスクロスやC-HRとの共存は可能だ。カローラクロス価格はヤリスクロスに比べて40万円ほど高いが、居住空間と荷室が広くなって内装の質も向上する。エンジンはヤリスクロスが3気筒だが、カローラクロスは4気筒だからノイズも小さく、さまざまな満足度が高まる。
ライバル車のヴェゼルに比べると、価格はほぼ同じで、後席はカローラクロスが少し狭い。ガソリンエンジンの動力性能は、1.8Lのカローラクロスに余裕があり、外観も少し野性的な印象だ。
このようなカローラクロスに死角があるとすれば、コンパクトSUVとしては全幅が1800mmを超えることだろう。駐車スペースの利用性も悪化するので、可能であれば1790mm以内に抑えたい。
また価格を考えて、ガソリンエンジンを1.8Lにすると、基本設計の古いエンジンだから、燃費性能が悪化する可能性もある。その意味でもハイブリッドが売れ筋になりそうだ。
外観の印象がRAV4に似ていて後席と荷室にも相応の余裕があるため、「RAV4ではなくカローラクロスで十分」と考えるユーザーも増えるだろう。
つまりトヨタ車のなかでダウンサイジングが進む。いくつか注意すべき点や影響も生じるが、カローラクロスが売れ行きを伸ばすことは間違いない。
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みんなのコメント
マジで読み難いわ
ダラダラ長文の挙句書かれている「死角」とは、「1800越えの車幅」と「やや設計の古い1.8L エンジン」だった。
これらが意外な死角とは、確かに意外ですなあ、さすが渡辺陽一郎氏!