■冒険せずにキープコンセプトだったクルマたち
クルマがモデルチェンジされた際に、外観のデザインやメカニズムなどが前世代モデルのコンセプトを引き継いでいることを「キープコンセプト」と呼ぶことがあります。
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フルモデルチェンジをすると、デザインテーマを刷新する場合が多いのですが、先代モデルのデザインが好評で販売が好調だった場合は、良く似たデザインの後継車が登場することがあります。
「新車効果」といって、販売面では新しいモノであることを訴えるのも大切ですが、あまりに狙い過ぎてモデルチェンジによって不評となってしまったクルマも存在します。
すでに決まったユーザー層を確保できているクルマでは、デザインによって新しいユーザーを取り込む冒険をするよりも、キープコンセプトの無難なデザインが好まれる場合もあるのです。
そこで、キープコンセプトすぎるクルマを5車種ピックアップして紹介します。
●BMW「ミニ」第2世代
BMWグループのプレミアムスモールとして2001年に登場した「ミニ」は、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が販売していたミニを彷彿とさせるデザインで、発売直後から世界中で人気となりました。
グレードはベーシックな「ワン」、スポーティな「クーパー」、スーパーチャージャーを装着した「クーパーS」で、軽快に走りも大いに評価されました。
2006年に登場(日本での販売は2007年から)した第2世代のミニは、ボディサイズを若干拡大し、クーパーにはPSAと共同開発した1.6リッター直列4気筒エンジン、クーパーSには最高出力175馬力の1.6リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載。
一般的なハッチバックのサルーンに加え、クラブマン、コンバーチブル、クロスオーバー、クーペ、ロードスター、ペースマンと、7種のボディバリエーションがありました。
オリジナルのミニも長い販売期間のなかでフルモデルチェンジされませんでしたが、BMWになっても基本コンセプトは変えませんでした。
実際に、新旧2台を並べてみないとわからないほど、デザインが酷似しています。
なお、2013年に登場した3代目も同様で、外観だけなら初代、パット見で2代目と区別がつきにいです。
●ホンダ「N-BOX」2代目
軽自動車市場で多くのシェアを持つスーパーハイトワゴンをラインナップしていなかったホンダが、2011年にシェア獲得のために発売した初代「N-BOX」は、フロア高を下げるのに有効な「センタータンクレイアウト」や「ミニマムエンジンルーム」の設計思想によって、広い室内空間を実現していました。
また、ホンダの軽自動車では初の直列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、軽快なドライブフィーリングと低燃費で、軽自動車新車販売台数で第1位となる大ヒットとなりました。
その好調な販売数はモデルチェンジが近づいても衰えることなく、2017年に2代目N-BOXが登場しました。
ボディサイズは初代と大差はありませんが、さらにコンパクト化されたエンジンルームや、薄型テールゲートの採用で、室内空間が広くなっています。
搭載されるエンジンも直列3気筒VTECエンジンに進化。パワフルなターボエンジン搭載車では軽自動車として初めて電動ウェイストゲートを採用し、過給圧の安定したコントロールが可能となっています。
より進化した2代目N-BOXですが、外観は新旧の区別がつかないほどに似ています。この施策は大成功し、2018年度(2018年4月から2019年3月)の登録車を含めた新車販売台数で第1位となるなど、販売面では現在も絶好調です。
●アウディ「A4」5代目
1994年に登場したアウディ「A4」は、フォルクスワーゲン「パサート」と共通のプラットフォームを使用した4ドアセダン/ワゴンで、「80」の後継車でした。
初代A4は前身の80と併せて累計1200万台以上の販売実績を持つ、アウディのベストセラーモデルで、その後モデルチェンジを重ね、現行モデルは2015年に登場(日本での販売は2016年から)した5代目となります。
ボディを始めとする各コンポーネントの軽量化や新燃焼方式の「2.0 TFSI」エンジンなどにより、運動性能や快適性を高めながらも、燃費は従来モデル比最大33%も改善。
またエアロダイナミクスでは、クラス最高のCd 0.23(欧州仕様値)を達成しています。
エンジンは最高出力150馬力の1.4リッター直列4気筒直噴ターボエンジンに加え、190馬力と252馬力の2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンが用意されています。
外観のデザインについては、4代目後期型と瓜ふたつです。独特のフロント周りのデザイン処理はもちろん、ヘッドライト形状やウインドウ配置、ボディのプレスラインなどが似ているせいかもしれません。
■もはやアイコン化した「Gクラス」のデザイン
●スバル「フォレスター」5代目
スバル「インプレッサ」と共通のプラットフォームを持つ、クロスオーバーSUVの「フォレスター」が1997年にデビューしました。
スバルの「シンメトリカルAWD」による高い悪路走破性や、ターボエンジン搭載車の高速性能、ステーションワゴンのようなデザインで使い勝手のよさも評価され、人気となりました。
2007年に登場した3代目は北米市場を意識した、車高が高い純粋なクロスオーバーSUVのルックスへと変わります。
2018年にモデルチェンジされた現行モデルの5代目は、「スバルグローバルプラットフォーム」の採用により操縦性が大きく向上しました。
パワートレインは最高出力184馬力の2.5リッター水平対向4気筒エンジンと、145馬力の2リッター水平対向4気筒エンジンに、13.6馬力のモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「e-BOXER」が用意されています。
5代目では全長/全幅/ホイールベースが拡大され、スバルの次世代デザイン「ダイナミック×ソリッド」を核にSUVらしい力強さや信頼感を凝縮。
一方で、ヘッドライトやフロントグリルの造形とメッキ処理など、2012年に登場した4代目のイメージを色濃く残したために、新デザインのポイントを知らなければ、新型なのか分からないほどに似ています。
●メルセデス・ベンツ「Gクラス」現行モデル
1900年代初頭に4WD乗用車の開発に成功した歴史を持つメルセデス・ベンツですが、現在でも多くの4WD車をラインナップしています。
なかでも本格的なオフロード走行ができる「Gクラス」は、常に人気のあるモデルです。
Gクラスの「G」は、ドイツ語でオフローダーを意味する「ゲレンデヴァーゲン」の頭文字で、1979年に登場した「メルセデス・ゲレンデヴァーゲン」は、NATOの公式採用を認定した段階で付与される「制式名称」を持つ軍用車両として開発され、1981年に西ドイツで販売が開始されました。
究極のオフローダーであり続けるという不朽の哲学を受け継ぐGクラスは、年を追うごとに改良を重ね、大排気量化や、メルセデスが誇るインテリジェントドライブと先進のコネクテッドテクノロジーなど、ハイテク化、装備・インテリアの充実が図られました。
そして、2018年には登場以来初となるボディの大幅変更を受け、ボディの骨格やフロントサスペンションなどメカニズムも刷新されました。
外装ではドアハンドル、スペアタイヤカバー、ヘッドライトウォッシャーノズル程度しか、従来型と共通部品はなく、メーカーは公式にフルモデルチェンジと発表していませんが、マイナーチェンジレベル以上の変更を受けています。
しかし、スタイルは一見すると従来型の最終モデルと新型の見分けはつきにくく、パッと見ではわからない人が多いと思われます。
ひと目でGクラスと分かるデザインは不変で、もはやアイコン化しているということでしょう。
※ ※ ※
モデルチェンジ時に、デザインに関してキープコンセプトといわれるクルマでも、メカニズムはもとより、室内空間や使い勝手、安全性能など、中身を着実に進化させているクルマが多いことに気づきます。
莫大な費用と時間をかけて新型車を開発しているメーカーにとって、失敗は許されませんから、キープコンセプトという手法も仕方ないのかもしれません。
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