日産が、2020年5月の事業構造改革計画発表記者会見において、「18カ月以内に12車種を投入」する計画を発表してからはや10カ月。日産は約束通り、ちょっと前の日産では考えられない、怒涛の勢いで、新型車を続々と投入している。
日産はこれまでに、グローバルで、新型キックス、新型ノート、新型マグナイト、新型ローグ、新型テラ、新型パスファインダー、新型フロンティア、新型キャシュカイ、新型NV300コンビ、インフィニティQX55を投入済み。
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そして今後は、新型車アリアが投入される予定だ。こうしてみると、意外にもSUVの層が厚いことがわかる。
そこで今回は、改めて日産のSUVのフルラインナップを紹介すると同時に、日本未発売車種の日本発売の可能性についても考えていこうと思う。
文/吉川賢一、写真/ベストカー編集部、日産自動車
【画像ギャラリー】世界で展開している日産のSUVをまとめてチェック!
■マグナイト/インド市場向けのコンパクトSUV
全長3994×全幅1758×全高1572mm、ホイールベース2500mm、車重1039kg、タイヤサイズ195/60R16。全長は4mを下回っており、車幅が60mm広いが、ライズ/ロッキーとほぼ同サイズ
インド市場向けコンパクトSUVである「マグナイト」。テーマ色となる鮮やかなレッドのボディカラー、角型のLEDヘッドライト、従来のVモーショングリルとは異なるタイプの6角形大型グリル(ダットサンブランドの名残でもある)。
ヘッドライトから下に伸びる縦型LEDデイライト、アルミ加飾を多用したスタイリッシュな内装、大型ナビゲーションモニターなど、実にスタイリッシュなSUVだ。実は、2019年にデビューしているルノーのインド市場向けコンパクトSUV「Triber」と兄弟車でもある。
ボディサイズはキックスよりも小さく、全長4000mm以下と非常にコンパクト。排気量1リッター直列3気筒ターボエンジン(最高出力100ps、最大トルク160Nm)とエクストロニックCVTもしくは5速MT、廉価なノンターボエンジンと5速MTもある。
最小回転半径は5.0m、クルーズコントロール付き。インド市場向けなのでなんと右ハンドルでの製造となる。インド価格は54.9~98.9万ラーク(約82万~146万円に相当)、日本の水準で考えれば破格ともいえる価格だ。
■キックス/日本市場での販売はe-POWERのみ
全長4295×全幅1760×全高1585mm、ホイールベース2620mm、車重1350kg、タイヤサイズ205/55R17。初代ジュークに比べて160mm長く、全幅は同程度、全高は20mmほど高い
2020年6月24日に日本へ投入された「キックス」。タイで生産し、日本へ輸出するコンパクトSUVだ。写真のボディカラーはダークブルー。シルバー加飾と相まってシンプルなカッコよさがある。カラーは他にもツートンが4種類、単色はダークブルーを含む9種類から選べる。
排気量1.2リッター3気筒ガソリンエンジンを発電機としたモーター駆動のe-POWER(最高出力129ps、最大トルク260Nm)による、圧倒的な動力性能が武器だ。
キックスは、もともとは南米を中心に2016年から売られていたコンパクトSUVだが、2020年5月にタイ市場において、e-POWERの新型SUVとして登場した。
日本での車両本体価格は276万円からと、やや高めの設定。車両価格を抑えたガソリン仕様がない点と、雨の日や雪道での走行安定性が飛躍的に高まる4WDの設定がないという点、見慣れた日産車のインテリアで、新しさがない点などは、キックスの弱点でもある。
■ジューク(2代目)/キックスよりもひと回り大きい
全長4210×全幅1800×全高1595、ホイールベース2636mm、車重1187kg、タイヤサイズは215/65 R16から225/45R19までがある
丸型ライトやボディのプロポーションなど、初代ジュークのキープコンセプトではあるが、サイドのキャラクターデザインや、大きなVモーショングリル、シャープなテールランプなど、ずいぶんと洗練された印象を受ける、2代目ジューク。
どのSUVにも似ていないデザインは魅力で、「実にカッコ良い!!」というのが、筆者の印象だ。
エンジンは排気量1リッター直列3気筒ガソリンターボエンジン(最高出力114ps、最大トルク200Nm)のみで、e-POWERは現時点ではない。
トランスミッションは7速DCTもしくは6速MTとなる。サイズは、キックスよりも幅広くて短い。現行ヴェゼルよりも40mm幅広く、C-HRに対しては5mm広い程度ではあるが、1800mmという大台にのっているため、ライバルたちよりもやや大きめだ。
現在のところ、2代目ジュークは欧州のみでの販売だ。イギリス(つまり右ハンドル仕様がある)での価格は、18595~25095ポンド(約278万~376万円)。イギリスで生産されているため、日本導入となった場合には船輸送となりコストアップは免れない。しかし、それでも手に入れたい日本人はいるだろう。
■3代目キャシュカイ(ローグスポーツ)/全長4425×全幅1838mmのミドルSUV
全長4425×全幅1838×全高1635mm、ホイールベース2666mm、現行キャシュカイに対し、ひと回りほど大型化した
キャシュカイは、欧州を主戦場とするクロスオーバーSUVだ。北米では、ローグスポーツという名称で販売されており、3代目となる新型キャシュカイがつい先日、ワールドプレミアされた。
ひと足先にフルモデルチェンジを受けた兄弟車の北米ローグが、直線やスクエアなかたちを意識したデザインに対し、新型キャシュカイは、アリアや新型ノートにも似た、カーブを意識したデザインとなった。
新型キャシュカイには、2種類のエンジンが用意される。ひとつは、新開発の12Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.3リッターの直噴ターボエンジン。最高出力136ps/最大トルク240Nmの6速MT仕様と、156ps/260Nmの6速マニュアルモード付きのエクストロニックCVT仕様。
そしてもうひとつが注目の、1.5リッターサイズの可変圧縮比エンジン「VCターボ」を発電専用エンジンとして搭載した新型e-POWERだ。
最高出力187ps、最大トルクは330Nmと、スピード嗜好の欧州ドライバーにとって、不足ないパフォーマンスを手に入れている。新型の販売価格はまだわかっていないが、現行キャシュカイのイギリス価格は、23550~27470ポンド(約353万~412万円)だ。
■ローグ(エクストレイル)/これが2021年秋に日本に導入予定のエクストレイル
全長4648×全幅1839×全高1699mm、ホイールベース2705mm、先代ローグと比べ、全長は1.5インチ(約38mm)、全高で0.2インチ(約5.1mm)、全幅はほぼ同じであり、やや小型化された
2020年9月より北米で発売している新型ローグ。ボクシーなイメージのミドルサイズのSUVだ。ご存じの通り、日本名はエクストレイルだが、こちらはまだ旧型のままだ(2021年3月時点)。
新型ローグのエクステリアデザインは、従来モデルの流麗なボディラインから大変身。前後フェンダーにはブラックのフェンダーアーチを採用するなど、力強くタフなイメージがアップした。
現時点、パワートレインは、先代ローグと同様の排気量2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジン(最高出力181ps/最大トルク245Nm)のみ。
旧型に比べて、11psアップとなるが、おそらくこの後、キャシュカイに搭載されたe-POWERターボが導入され、そして、おそらくその状態で、新型エクストレイルは登場することになるだろう。北米価格は、25750~36930ドル(約279万~400万円)。気になる日本発売時期は2021年秋が濃厚だ。
■新型パスファインダー/全長5mの7人乗りクロスオーバーSUV
全長5004×全幅1979×全高1778mm、ホイールベース2900mm、ブラックグリルの上段に空いたスリースロットグリルは、初代パスファインダーをオマージュしたそうだ
北米市場は、日産にとってメイン市場だ。その北米で需要の高い大型SUVのパスファインダーが、2021年2月4日、満を持してモデルチェンジとなった。
ムラーノと同じDプラットフォームを採用する、全長5mの7人乗りクロスオーバーSUVである、パスファインダー。新型のフロントフェイスは、C字型につながったシグネチャーライトとヘッドライト、新形状のVモーショングリルなど、非常に力強い表情だ。
パワートレインは、全グレード新型9速ATと、排気量3.5リッターV型6気筒NAエンジン(最大出力284ps/最大トルク351Nm)の組み合わせとなる。
また、4WDモデルは、7種類のモード選択が可能なドライブ&テレインモードセレクターを装備した新型のインテリジェント4WDを採用。オンロードから砂地、雪道、泥地、トーイングまで、あらゆるシーンに対応した駆動制御を行ってくれる。
上級グレードの「SV」「SL」には、先進運転支援技術「ProPILOT Assist」を搭載。また、最上級グレードのプラチナには、前方にカーブがあるシーンや分岐合流点、高速道路出口などで自動減速を行う「ProPILOT Assist with Navi-link」も採用された。
さらには、12.3インチデジタルディスプレイも新採用するなど、デザインだけでなく、中身も一気にブラッシュアップされた。現行モデルの北米価格は、31980~44910ドル(約347万~487万円)だ。
■アルマーダ(パトロール)/日産最大の本格派クロカン四駆
全長5306×全幅2029×全高1925mm、ホイールベース3076mm
北米市場向け高級フルサイズSUVである「アルマーダ」。スペイン語で「海軍・戦艦」という意味をもつパトロールは、日産最大のボディサイズをもち、その名の通り巨大な戦艦のようなSUVだ。
2020年12月にビッグマイナーチェンジが行われ、新しいフェイスへと変更されている。なお、中東向けのパトロールや、インフィニティブランドで販売される高級仕様のQX80とは、兄弟車だ。
排気量5.6リッターV型8気筒NAエンジン(最高出力390ps/最大トルク534Nm)と7速ATを組み合わせ、後輪駆動もしくは4WD。ラダーフレーム構造の頑丈な車体に、ストロークが大きくとれる前後ダブルウィッシュボーン形式のサスペンションと、タフな走りを余裕で吸収するだけのポテンシャルはある。
ちなみに、トーイングキャパシティは8500lb(約3855kg)もあり、小さなボートやキャンピングトレーラーなど、自重以上の荷物でも余裕で引っ張るパワーの持ち主だ。北米価格は52600~68000ドル(約570万~746万円)。
■まとめ/マグナイトの日本導入は大いにあり得る!!
コンパクトSUVの「ライズ/ロッキー」のライバル車となりえるサイズで、日本導入の期待も高まるのがマグナイトだ
ここまで挙げたモデルのうち、まず、新型ローグは「新型エクストレイル」として日本に導入されるのは間違いない。新型キャシュカイに搭載されたe-POWERターボを備え、今秋に日本市場デビューする、というのが筆者の予想だ。
おそらく日産は、Bセグメント以上の新型車には、今後、純ガソリン車を用意しないつもりであろう。コンパクトカーである新型ノートで、廉価なガソリンモデルを用意しなかったことを考えると、相当な覚悟で電動車率を上げることに取り組んでいることがわかる。
そしてもう一台、日本導入の可能性が高いのが「マグナイト」だ。全長4メートル以下というボディサイズは、日本市場で大いに扱いやすいはず。
できることならば1700mm未満の5ナンバーサイズまで抑えたいところではあるが、右ハンドル車ということを考えると導入の可能性は高い。もし導入されれば、一人勝ちをしているコンパクトSUV「ライズ/ロッキー」に迫ることも可能であろう。
一方で、パスファインダーやアルマーダなどの大型SUVに関しては、日本国内でヒットする可能性は低いため、日本導入は考えにくい。だが、あのデザインのカッコよさは日本では新鮮に映るし、台数限定販売をするなど、何かしらの作戦が行われると面白くなりそうだ。
キャッシュカイやジュークだが、かつて日本市場から撤退している理由を考えれば、残念ながら再導入はないだろう。
キャシュカイはかつてデュアリスの名で販売されていたが、国内SUVをエクストレイル中心の戦略としたために撤退。ジュークはデザインの斬新さが大いに話題にはなったが、販売台数としては大成功には至らなかった。
キックスを登場させたばかり、というのもある。ユーザー側としては、クルマの選択肢が多いほうがありがたいのだが、日産としては、ジュークとキャシュカイのちょうど中間サイズを狙ったキックスに販売を集中させたい、という考えが強いのだろう。
そうなると、キックスに廉価なガソリンモデルと、4WDがないことは、大きな懸念点だ。
販売台数よりもブランド価値を高める戦略を取る、日産。その信念で突き進むと決めたならば、ファンとしては「やっぱりガソリンモデルも出します」のような、みっともない後追い戦略はないことを祈る。
主要な仕向け国に合わせたスペックを与えたSUVを揃える日産。このうち、日本市場と趣向が近い、インド市場向けのマグナイトは日本導入の可能性もありそうだ
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