2021年上半期に軽を含めた販売台数のトップに立つなど、フルモデルチェンジから1年半が経過する今も好調に売れ続けているトヨタのヤリス。
2020年8月にSUVのヤリスクロス、9月に4WDスポーツのGRヤリスを加えたシリーズ化によってさらに販売を伸ばしていて、登録車では昨年7月から連続販売台数トップと圧倒的な強さをみせている。
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ここまでヤリスが売れ続けている理由はどこにあるのだろうか?
文/渡辺陽一郎
写真/ トヨタ、ベストカー編集部
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■販売1位の「ヤリス」は1車種ではない……
国内で新車として最も多く売られている車種は、統計上はヤリスだ。2021年1~7月の1カ月平均登録台数は2万台少々に達する。2位のN-BOXは1万8000台だから、ヤリスは1カ月平均で2000台ほど上まわる。
なぜヤリスが国内販売の1位なのか。理由の筆頭に挙げられるのは、ヤリスの登録台数がシリーズ全体の販売実績になることだ。日本自動車販売協会連合会(自販連)では「ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス」の登録台数を合計して発表している。
国内販売台数トップのヤリス。これは自販連が「ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス」の登録台数を合計し発表したもので、単一車種の数字ではない
カローラも継続生産型を含めて、セダン+ツーリング+スポーツ+アクシオ+フィールダーの合計台数だ。
ヤリスの場合、ハッチバックのヤリスとSUVのヤリスクロスは、ユーザーから見て別の車種になる。そこで登録台数を分割すると、ヤリスの1カ月平均は9800台、ヤリスクロスは9100台、残りの少数がGRヤリスだ。毎月の売れゆきを見ると、ヤリスよりもヤリスクロスのほうが多く売られることもある。
ヤリスという名を持つなかで別格なハードさを持つGRヤリスの販売台数も、ヤリスシリーズに含まれる
いずれにしろ、ヤリスをボディタイプ別でとらえるか、それともシリーズ全体かによって登録台数は大きく変わる。
ヤリスをボディタイプ別に算出すると、小型/普通車の登録台数1位はルーミーだ。2021年1~7月の1カ月平均は1万3000台に達した。Lサイズミニバンのアルファードも9400台だから、ヤリスやヤリスクロスと同等に売れている。
今後はこの上位グループにアクアも加わる。2021年7月の時点でも、小型/普通車の登録台数ランキングでは、アルファードに次ぐ売れゆきであった。
■「ベストセラー」は数字の妙技
以上のようにヤリスの登録台数は、複数のボディタイプを合計したから大幅に増えたが、ここにもトヨタの巧みな戦略が絡む。複数のボディを合計しても、国内販売の1位を獲得すれば、「ベストセラーカー」としてニュースになるからだ。
TVや新聞では「ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリスを合計して販売ランキングの1位になった」とは報じないので、多くの人達はヤリスが絶好調に売られていると受け取る。
逆にヤリスクロスの車名は登場しないが「ヤリス」として取り上げられればいい。安定的に国内販売の1位とされていたN-BOXを押さえ込むことが可能になるからだ。
SUVのヤリスクロスなどもすべてヤリスとして販売台数に含まれる。「ベストセラーカー」としてニュースになり、見た目上で国内販売1位のN-BOXを押さえ込むことができるのだ
国内販売の過去を振り返ると、1997年頃までは、カローラが安定的に新車販売の1位であった。稀に年間販売の1位を奪われても、翌年には奪い返した。
それが軽自動車が規格を一新した1998年以降は、国内販売の総合1位がワゴンRなどの軽自動車に変わり、カローラは小型/普通車の登録台数1位になった。2008年以降は、小型/普通車のプリウス、アクア、フィットなどがカローラの売れゆきを上まわるようになっている。
そこでトヨタとしては、改めて国内販売の1位に君臨する車種として、ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリスのヤリスシリーズを用意した。小型/普通車だけでなく、N-BOXをはじめとする軽自動車軍団にも負けない確固たる新車販売1位を築くわけだ。
トヨタは軽自動車を扱わないので「N-BOX対策」の意味は特に大きい。
■全店/全車販売体制の影響も?
ヤリスシリーズが販売1位になった理由として、2020年5月に実施されたトヨタの全店/全車販売体制も挙げられる。ヤリスが同年2月に発売された時点では、東京など一部の地域を除くと、ネッツ店のみの取り扱いだった。
それが全店で全車を扱う体制に変わると、人気車は好調に売れて、不人気車は落ち込んだ。
ヤリスは人気車の部類に入るので、売れゆきを伸ばせた。逆にプリウス、アルファード、クラウン、先代アクアなどは登録台数を減らしている。
トヨタの全店/全車販売体制によってヤリスの売れゆきは伸びたいっぽう、クラウンなど販売台数を減らした車種もある・・・・
この経緯について、トヨタ店は以下のように述べた。
「クラウンのお客様がアルファードの購入を希望された時、以前はなるべくクラウンに留まっていただけるよう、いろいろな条件を示した。クラウンはトヨタ店だけが扱う商品だから大切に売りたい。アルファードはトヨペット店だから、乗り替えられるとお客様も失ってしまう。しかし今はトヨタ店でもアルファードを販売するので、お客様のご希望次第で乗り替えることもある。ただしそうなるとクラウンの売れゆきは下がる」。
トヨタに限らず、全店が全車を扱うと、人気車と不人気車の販売格差が拡大する。この効果もあってヤリスシリーズは売れゆきを伸ばせた。
特に今は、安全装備や運転支援機能の充実により、クルマが値上げされている。ミドルサイズやLサイズの車種から、コンパクトなクルマに乗り替えるユーザーも増えた。
そこに全店が全車を扱うようになった影響も加わり、ミニバンやSUVなど、さまざまなトヨタ車のユーザーがヤリスシリーズに乗り替えている。
■グレード展開による幅広い対象顧客
多彩なグレード構成も、好調に売られる理由だ。ハッチバックのヤリスはヴィッツの後継車種だから、乗り替えを希望するユーザーも多い。一般の顧客に加えて、営業車に使う法人、レンタカーなどの需要も豊富だ。そこを考えてノーマルエンジンに直列3気筒の1.5Lと1Lを用意した。
1Lは1.5Lよりも設計が古く、動力性能に加えて燃費性能まで下まわるが、価格も14万3000円安い。X・Bパッケージは、安全装備の衝突被害軽減ブレーキを省いたから推奨できないが、価格は140万円以下の139万5000円だ。
さらにSUVのヤリスクロスにも、同様に安全装備を省いた1.5LノーマルエンジンのX・Bパッケージを用意する。価格は180万円を下まわる179万8000円で、安さを重視する需要をねらう。
ヤリスクロスにも安全装備を省いて低価格にしたグレードを用意するなど、幅広いグレード展開も好調な理由か
実用重視のコンパクトカーならともかく、SUVにこのような法人やレンタカー向けの仕様を用意するケースは珍しい。幅広い顧客を相手にするトヨタらしさで、ヤリスシリーズの好調な売れゆきにも結び付いている。
■選び分けで痒いところに手が届く「トヨタらしさ」の体現
商品力にも注目したい。
ハッチバックのヤリスは後席と荷室が狭いが、ハイブリッドのWLTCモード燃費は35.4km/L~36km/Lに達する。国内で販売される乗用車では、燃費数値が最も優れている。
ヴォクシーの2Lノーマルエンジン車のWLTCモード燃費は13.2km/Lだから、ヤリスハイブリッドに乗り替えると、燃料代を40%以下に抑えられる。
ハッチバックのヤリスはハイブリッドのWLTCモード燃費が35.4km/L~36km/Lだ。特に燃費性能に優れている点が、商品力としてある
ヤリスクロスは都会的なコンパクトSUVで、後席の居住性はヤリスよりも少し快適だ。ヤリスの実用性に不満を感じた時、ヤリスクロスを検討すると、満足できることもある。
その代わりヤリスの価格は、ヤリスクロスに比べて22万~24万円安い。ハッチバックとSUVというボディタイプの違いと併せて、実用性と価格でも選び分けられる。ヤリスとヤリスクロスは、互いに選ぶメリットを補いながら売れゆきを伸ばしている。
デザインや運転感覚は、ヤリス、ヤリスクロスともに特に優れてはいないが、コンパクトな車種に散見されやすい粗さは払拭させた。多くのユーザーに出費に見合う満足感を与え、購入後の乗り替え需要に繋げられることも、ヤリスシリーズの特徴だ。
その意味でヤリスシリーズは、トヨタ車の典型だから、好調に売れているともいえるだろう。
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みんなのコメント
文章のところどころに嫌味みたいなのが見え隠れする
ヤリスとヤリスクロスを別にしたらヴェゼルが10位圏内脱落するんだが(笑)