浮き沈みの激しい英国自動車産業
自動車業界に詳しいと自負する人たちの間でも、英国は自動車を作るのがあまり得意ではないという思いが蔓延している。ドイツやフランス、イタリアとさえ違うのだと。
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戦後数年間は世界最大の自動車輸出国としてスタートし、米国にも勝っていたが、その後の70年間で優位性は失われてしまった。
確かにハードルはあった。特に、第2次世界大戦後のドイツ自動車産業の再建を支援し、自国よりも大きな市場につなげるために最善を尽くして以来、競争ははるかに激しくなっている。
フランスもまた、自国製品を好む国民性に後押しされ、急速に復興を遂げた。
その後、外国からの輸入が本格化した。1950年代と60年代には米国が、そして60年代と70年代には日本がやってきた。
我々は、オースチン、モーリス、ローバー(さらにウーズレーやライレーも数台)を生産して自らの首を絞めた。技術的には魅力的だったが、製造品質はひどく、輸出力もほとんどなかった。
1990年代から2000年代にかけては韓国(英国にインスパイアされた産業)がやってきた。そして今、中国が以前よりも明らかに魅力的な、先進的な電動モデルを携えて目の前に迫ってきている。
日本メーカーの貢献と輸出の低迷
それでも、1980年代にはトヨタ、ホンダ、日産といった日本企業が製造業者として英国にやってきたことは、我々が彼らの輸入モデルを制限しようと努力した賜物だ。
彼らは英国の安定性、共通語、歓迎的な政府、繁栄するフリート(社用車)市場を気に入り、英国での自動車製造業は健全さを保った。
啓蒙的な外国の経営陣と労使関係(1979年のホンダとローバーの提携が特に重要だった)の影響を受け、英国の自動車製造業が抱えていた一見修復不可能な労働組合の問題は解消された。
日産のサンダーランド工場は同社の世界的な宝石の1つとなり、それは現在も変わらない。トヨタのダービーシャー工場とホンダのスウィンドン工場も繁栄した。
2016年末、国内の自動車生産台数172万台という17年ぶりの大記録を達成し、英国自動車製造販売者協会(SMMT)の会長とCEOが、200万台という大台も間もなく達成されるだろうと示唆する衝撃的な出来事もあった。
これは、ブリティッシュ・レイランド全盛期の1972年に達成された192万台を上回るものである。当時はまだ英国の消費者がアレグロ、マキシ、マリーナを大量に購入していたため、輸出市場の低迷にはほとんど気づかなかった。
200万台の記録は達成されなかった。その年の初め、英国国民の過半数が僅差でEU離脱に投票し、その決定(3年半後に正式決定)が自動車販売に影響を及ぼし始めた。
当初はわずかな兆候だったが、徐々に加速していった。2017年の自動車生産台数は3%減の167万台となったが、2020年にブレグジットが正式決定するまでに(この年はコヴィッドによる最初のロックダウンという悲惨な事態も発生した)、92万1000台にまで落ち込んだ。部品不足と自動車需要の乏しさが響いて、2022年には77万5000台と、6年前の記録の45%にとどまった。
2022年2月のウクライナ侵攻によって状況は複雑化した。ワイヤーハーネスの重要な供給源となる工場が、ウクライナ国内に17あるのだ。
暗い見通しは的外れ
このような危機的かつ不成功に終わった数年間で、英国の自動車製造業の長期的な存続に対する深刻な不信感が、一部で芽生えた。
ロールス・ロイス、アストン マーティン、ベントレー、マクラーレン、レンジローバーといった英国の名だたる高級車ブランドに対する需要の影響は、実際のことろ、大衆車ブランドに比べてはるかに少なかった。
また、モーガン、アリエル、ケータハムといった小規模メーカーの購入希望者の列にもまったく影響がなかった。
しかし、否定論者は、自動車需要の低迷と、特に半導体などの輸入部品の問題に関するメッセージを聞いて、国内の自動車製造業の将来について悲観的な絵を描いた。2002年にフォードがフィエスタの生産を中止し、その10年後にトランジットの生産を中止したときとまったく同じだった。我々はいつも、自動車に関する悪いニュースが大好きなのだ。
今日、その見通しは完全に間違っている。英国は、日本メーカーを1社(スウィンドンのホンダはいずれ撤退するは予定だった)失っただけで、着実に再建を進めている。2022年の惨事以降、自動車生産台数と総販売台数はともに加速している。
自動車総登録台数は20%増の190万台で、多くの情報筋がこの10年間の期待値として挙げている210万台まであと一歩のところまで来ている。
270万台登録された時代は戻ってこないと専門家は言う。自動車(特にEV)は高価になり、使い方も異なっている。しかし、販売された自動車の価値に関しては、古き良き時代に戻っている。
個々のモデルの中には、傑出したものもいくつかある。日産キャシュカイは英国製であるだけでなく、設計・開発もほとんどが英国で行われており、3世代にわたって大ヒット作となっている。
最新の登録台数は、8月初旬までの1年間で11万2000台という驚異的な数字で、その75%が国外に輸出されている。同じくサンダーランドで生産されている、小型のジュークの成功も加味すれば、日産が英国の自動車産業にとって極めて重要な存在であることがわかるだろう。
もちろん、ミニも上位にランクインしている。オックスフォード工場では年間約20万台が生産され、その80%が輸出されている。
しかし、価値で言えば、レンジローバーが最高だ。JLR(ジャガー・ランドローバー)は8月までに、4万8000台のレンジローバーと同数のレンジローバー・スポーツを生産・販売し、その大半を輸出した。この2車種の平均販売価格が現在では10万ポンド(約2000万円)を超えていることを考えれば、同社にとっても国にとっても、いかに立派な稼ぎ頭であるかがすぐにわかる。
現在JLRは、レンジローバーモデルに続いて、ジャガーから革新的なEVシリーズを出そうとしている。実現すれば、そのポテンシャルは明らかだ。
SMMTのチーフ・エコノミストであるマット・クラウチャー氏によると、英国の自動車産業は現在、470億ポンド(約9兆3000億円)相当の自動車製品を輸出し、国の総輸出収入の11%から12%を生み出しているという。
製薬や防衛などの高収益産業を含めても、自動車および部品製造がこの国最大の輸出収入源となっているのだ。
豊富な「資産」を活かせるか
その他にも、現在英国には、EVの組み立て技術の導入準備が整った、よく訓練された意欲的なスペシャリストたちがいる。また、国内に22以上の自動車研究開発センターがあり、その多くはMIRAやミルブルックのようなテクノロジー・ハブにあるが、そのうちの5つは国内の大学と提携している。
英国を訪れたり、英国で働いたりする技術者たちは、産業界と一流大学との密接な関係についてよく言及する。過去にはリチウムイオンバッテリー技術を開発し、最近ではメルセデス・ベンツに買収されるほど将来の電動化にとって重要な、電気モーターメーカーのヤサ(Yasa)もこうした関係性の中で育った。
クラウチャー氏は、英国の自動車産業の今後の発展において、才能ある人材の幅広いスキルがこれまで以上に重要になると確信している。
「自動車業界では、やりたいことは何でもできる」と同氏は言う。「グラフィックデザイナー、ソフトウェア、ハードウェアエンジニア、空力研究、そして良いシートやインテリアを作りたい人など、活躍の場はある。誰にでも居場所がある」
一方、専門家によると、英国は基礎的な研究開発においては優れているが、重要な開発を「デスバレー(死の谷)」を越えて成功に導くことに関しては、歴史的にはるかに不得手であるという。
少なくとも、この欠点は現在ではよく認識されている。政府出資の先進推進センターなどの機関は、中小企業が貴重な技術の所有権を手放すことなく、危険な航海を乗り切れるよう支援するという素晴らしい実績を積み上げてきた。
すべてがバラ色というわけではない。自動車メーカーは、英国のエネルギーコストは欧州諸国の平均より60%から65%も高いと見積もっており、それは一部の人にとっては耐え難い重荷である。
労働党新政権が再生可能エネルギー・プロジェクトに集中し、より賢明な税制と、ガスと電気料金の古くからの(そしてますます不適切になっている)つながりを切り離し、この不利な状況を軽減してくれることを願っている。
そして未来は? SMMTの技術革新部門責任者であるデビッド・ウォン氏は、人工知能と自動運転技術の分野で英国が特に成功すると予測している。現在の電動化ブームが収束した後の重要な発展分野だという。
Wayve、Oxa、Aurrigoのような企業は、すでに製品と技術の面で十分に進んでおり、世界をリードする企業になる可能性があると同氏は言う。少なくとも、英国は再び自動車の世界をリードすることができるのだ。これは決してハッタリではない。
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みんなのコメント
中々難解な日本語の文章だ。