これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、主役になりそうでなれなかった初期ハイブリッドカー、初代シビックハイブリッドを取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】英雄になり損ねた偉大な先駆車[初代シビックハイブリッド]
文/フォッケウルフ、写真/ホンダ
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待望の実用的ハイブリッドセダンとして誕生
ホンダのハイブリッドといえば、1999年に発売された初代インサイトが元祖であったことはよく知られている。しかしその2年後に、より実用的なハイブリッドカーとしてシビックにハイブリッドモデルが設定されたことを知っているだろうか。
ホンダのハイブリッドシステムは「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」と呼ばれるパラレル型のシステムで、エンジン主体で走り、モーターがサポートする方式になっている。このIMAを採用した初代インサイトは、35.0km/L(10・15モード)という当時の量産ガソリンとしては世界最高の燃費を達成していた。
そして、2001年12月に発売されたシビックハイブリッドには、このIMAシステムに1.3Lの気筒休止型VTECエンジンが組み合わされ、さらに高効率化されたものが搭載されている。結果、このシビックハイブリッドも「5人乗り量産ガソリン車として世界最高」を誇った低燃費、29.5km/Lを達成することになった。
この数値は、当時すでに発売されていた初代プリウス(マイナーチェンジモデル)の29.0km/Lを超えるもので、ホンダとしては2ドアのインサイトがすこし実用性に欠ける雰囲気のモデルだったため、自動車業界はシビックハイブリッドをセンセーショナルに受け入れられた。
デザインテーマは「スマート・エアロダイナミック」。空力性能向上のため、ベースのシビックフェリオとは異なる専用エアロパーツを採用し、先進イメージも高めている
ベースとなったのは、当時まだホンダの象徴的な存在であったシビックであり、その7代目モデル。しかもハッチバックではなく高い実用性を備えたセダンモデルの「シビックフェリオ」だったことからも、4ドアでトランクを備えていた初代プリウスへのホンダの対抗心が見て取れた。
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マジメなルックスに秘めた環境性能へのこだわり
「フェリオ」は基本的にシビックハッチバックのリアをトランク状に改良したシビックのセダン版だが、顔がシャープな雰囲気だった「スポーツシビック(5代目)」や、どんぐり眼が印象的な「ミラクルシビック(6代目)」と違い、7代目モデルはとにかくコンサバであった。特にフェリオは、トールタイプに変貌したハッチバックモデルと比べて、フロントライトまでおとなしめに変更されている。
生来のシビックが持つスポーティさやオリジナリティは若干失われてしまったように感じられるが、コンパクトセダンということで「実用性の高さ」や「ファミリーカー」を象徴するようなスタイリングになったのだろう。
ベース車と比べて車高が低くなっているほか、エンジンアンダーカバーやリアフロアサイドカバーなどでアンダーフロアのフラット化も実現
一方、技術的な部分では、「世界最高レベルの環境性能」を掲げており、先述のとおり独自のハイブリッドシステム「IMA」を高効率化。1.3L i-DSIエンジンの優れた燃費特性を活かしてリーンバーン(希薄燃焼)化し、VTECの可変バルブ制御技術を気筒休止にも使用している。
さらに、無断変速AT「ホンダマルチマチックS」との組み合わせやPCU(パワーコントロールユニット)の高効率化などが、超低燃費に貢献しており、排出ガスも国土交通省「超-低排出ガス」認定を取得するなどクリーン化も高レベルで実現していた。
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一時期販売を休止したが名前を変えて復活
2001年末に発売されたこの初代シビックハイブリッドは、その後、2002年に「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー2002」を獲得し、同2002年には機能追加、質感向上のマイナーチェンジを敢行。2003年にはバンパーやガーニッシュなどのデザインを一新するなど、毎年品質向上のためのテコ入れが行われた。
そして2005年9月には、ベースのシビックと同時に2代目モデルへとフルモデルチェンジを果たす。新開発の1.8Lエンジンと新しいハイブリッドシステムが搭載され、10・15モード燃費も31.0km/Lへとさらに向上。同モデルは「2005-2006 日本カー・オブ・ザ・イヤー」にも輝いた。
2代目シビックハイブリッドは近未来的なフォルムに。キャビンスペースは広く取られ、やはり使い勝手の良さは秀逸だった
ここまで順調に販売を続けてきたシビックハイブリッドだったが、2代目モデルは全幅1.7mを超えて3ナンバー化。ベースのシビック(8代目)とともに、2010年に国内販売を終了することとなった。その後、世界中で販売されるシビックの最適解を求めて精査され、2015年に先代型シビックが、2021年に現行型シビックが誕生し、ハイブリッドモデルも「シビックe:HEV」として、2022年から販売されている。
シビックハイブリッドが、いったん市場から姿を消した理由は、シビック自体の国内撤退のせいかもしれない。しかし、初代モデルからライバルとして競合してきたプリウスがベストセラーモデルになったことと比べると、シビックハイブリッドに何が足りなかったのだろうか。たとえば、プリウスと違ってデザインに特別感がなかったこと、ハイブリッドシステムがパラレル式だったこともあるかもしれない。
とはいえ、その環境性能へのこだわりや実用性の高さは評価に値するものだし、もっとホンダらしいスポーティさがアピールできていれば、ハイブリッドカーの“代表的存在”としてプリウスに変わる存在になっていたとしてもおかしくなかったのではないだろうか。
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みんなのコメント
宗一郎時代からそうだが、ホンダは失敗作にこそ工夫と技術が詰まってる。
(買っちゃった方はいろいろ大変だが)
2代目インサイトが低価格で発表されたら
トヨタは3代目プリウスを販売するものの高いので
2代目プリウスの廉価版も併売してホンダに対抗
なんて面白おかしな時代でしたね