軽自動車サイズの電気自動車、日産サクラは、2022年5月20日に発表され、7月下旬には約2万3000台を受注した。2021年におけるEVの販売総数(小型/普通車)は2万1139台だから、サクラだけでこの数字を上まわった。
またサクラと基本部分を共通化した三菱eKクロスEVも、7月下旬の受注台数が5400台を超えた。三菱の販売店舗数は、日産の約2100箇所に対して540箇所と少ないため、1店舗当たりの受注台数は日産サクラと大差ない。このように考えるとeKクロスEVの売れ行きも好調だ。
「水を得た魚」軽とEVは相性抜群!? 今後続々と登場する軽EVと不安な課題
試乗すると、馬力こそ自主規制の64ps(47kW)だが、トルクが19.9kgm(195Nm)と、660ccの自然吸気エンジンに対して3倍強、ターボエンジンに対して約2倍の最大トルクを誇る。軽こそEVにピッタリなのではと感じる。
そこで、軽にとってEVは最適なパワートレインなのか、また今後、軽EVはどんなモデルが登場するのか、解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーweb編集部、ベストカー編集部、日産、三菱
■軽自動車にとって「EV」は適しているのか?
2022年5月20日に発表された軽自動車サイズの電気自動車、日産 サクラ。7月下旬には約2万3000台を受注した
サクラとeKクロスEVの販売が好調な理由は、軽自動車の規格とEVの親和性が高いからだ。
まずEVには、1回の充電で走行できる距離が短い欠点がある。走行できる距離を伸ばすには、駆動用電池を大型化する必要があり、それを行うとボディが大きく重くなる。さらに強力なモーターが求められ、もっと大きな駆動用電池を搭載せねばならない。つまり拡大の悪循環に陥ってしまう。
そして駆動用電池は高コストだから、拡大の悪循環に陥ると、車両価格も高まる。駆動用電池を製造する時の二酸化炭素排出量も増えるから、エコロジーにも逆行する。
その点で軽自動車のEVなら、少なくとも日本では拡大の悪循環に陥らない。軽自動車は街中の移動手段で、長距離を走るニーズは、日産リーフのような小型/普通車のEVに比べて大幅に少ないからだ。
特にセカンドカーの軽自動車と小型/普通車を使い分ける複数所有の世帯では、長距離を移動する時には、ファーストカーの小型/普通車を使う。そうなれば軽自動車のEVには、長距離移動の機能が一切求められない。
サクラが1回の充電で走行できる距離は、WLTCモードで180kmだからリーフの半分以下だが、問題はほとんど生じない。リーフとサクラでは、使われ方が根本的に異なるからだ。
価格も同様で、サクラのベーシックなXは239万9100円だ。リーフXの370万9200円に比べると65%に収まる。
以上のようにEVと軽自動車の親和性はきわめて高く、サクラとeKクロスEVの受注も好調だ。表現を変えると、日本でEVの売れ行きを伸ばすには、軽自動車の規格に収めるのが最も効果的だ。
■今後登場する軽EVは? ホンダは軽商用および軽乗用ワゴンの軽EVを投入
「四輪ビジネスの取り組みに関する会見」で明らかにされたホンダの軽商用EV計画。2024年前半に軽乗用EVよりも先に軽商用EVを補助金込みで100万円台で提供するという
今後は海外市場も視野に入れ、さまざまなボディサイズのEVが発売されるが、大多数を占める3ナンバー車は売れ行きを必ず低迷させる。
先に述べた「拡大の悪循環」に陥り、駆動用電池が小さければ「走行できる距離が短い」と文句をいわれ、そこを改善すれば「価格が高い」という話になるからだ。その点で軽自動車は、この束縛から解放され、EVの売れ筋タイプになる。
メーカーも同様の見通しを立てており、これからは軽自動車サイズのEVが積極的に投入される。EVは使い方だけでなく、構造的な商品開発の面からも、軽自動車と親和性が高い。
EVは床下に駆動用電池を搭載するから、背の高いボディが適しており、サクラもデイズと同じプラットフォームを使って全高が1600mmを超える軽自動車に仕上げた。小型/普通車のEVでも、背の高いSUVが圧倒的に多い。つまりこれからEVの主役になるのは、背の高い軽自動車で、そこには軽商用車も含まれる。
ホンダはGMと提携を行って、世界の各地域にEVを投入する計画を発表した。2040年までに、すべてをEVと燃料電池車にして、それ以降はハイブリッドを含めてエンジン搭載車を生産しない。日本では2024年の前半に、軽商用車のEVを投入する。
このシルエットは既に公表され、ボディスタイルはN-VANに似ている。駆動用電池を床下に搭載して、前後どちらかのホイールを駆動する。
既に市販されているコンパクトEVのホンダeは、モーターを後部に搭載する後輪駆動だが、軽商用EVは前輪駆動になる可能性が高い。EVと後輪駆動は、相性が悪いからだ。
後輪駆動のEVでは、減速エネルギーを使って回生する時の制動力も後輪に働くから、雪道の下りカーブなどでは後輪のグリップ力が下がり、走行安定性が悪化しやすい。
ホンダeの開発者は「後輪駆動のEVでは、開発時の手間と苦労が前輪駆動に比べて大幅に増える」と述べており、今後登場するホンダの軽商用EVは、前輪駆動になる可能性が高い。
開発や生産の合理化を考えると、プラットフォームは次期N-BOXと共通化する。現行N-BOXは2017年の発売だから、次期型は2023年の末から2024年に登場して、ほぼ同時期に次期N-VANとこれをベースに開発された軽商用EVも加える。
ホンダの軽商用EVでは、動力性能や1回の充電で走行できる距離は、サクラに近い。外観は前述の通りN-VANに似ているが、ボンネットはもう少し短く、有効室内長を拡大する。車内はN-BOXと同じく床が平らで、荷物の出し入れもしやすい。N-VANのメリットを受け継いだEVになる。
■ダイハツ、ホンダ、スズキが続々と軽EVが登場する
ガソリン車のアトレー、ハイゼットはフロントシート下にエンジンが搭載されているが、その部分にモーターを配置し、35の部分にバッテリーを搭載しているのだろうか(出典:特許庁)
またベストカーWebでは、ダイハツが開発している軽商用EV「e-アトレー/e-ハイゼットカーゴ」に関する特許資料も入手した。これによると駆動用電池は床下に搭載され、制御システムとモーターは、前席の下側付近に配置されている。
ガソリンエンジンのハイゼットカーゴ/アトレー/ハイゼットトラックでは、エンジンを前席の下に搭載して後輪を駆動するが、EVでは駆動用電池が邪魔をして駆動力を後輪に伝えるプロペラシャフトを配置しにくい。この事情もあって前輪を駆動する。
e-アトレーの方式だと、前席の下にさまざまな機能が搭載されるから、着座位置が高まりやすい。座面が薄手になって座り心地でも不利になるが、前輪の取り付け位置を大きく前進させて有効室内長を大幅に広げられる。
ホンダがこの方式を採用する可能性もあるが、エンジンを前側に搭載するN-BOXとの共通化は困難で、着座位置も高まる。軽乗用車のEVも成立させにくい。
そうなるとホンダの軽商用EVでは、パワーユニットの搭載位置はボンネットの下側になる可能性が高い。ダイハツのeアトレーなどとはレイアウトの違いが生じる。
なお軽商用車は倉庫内を移動することも多く、排出ガスやノイズを発生させない軽商用EVに置き換えると、さまざまなメリットを得られる。電動フォークリフトのように、倉庫や工場の中で荷物を運ぶツールとしても使いやすい。
以上のように、乗用車、商用車ともに、軽自動車とEVは親和性が高い。ダイハツ、日産/三菱、ホンダが軽自動車のEVに乗り出した以上、スズキも追従する。スズキは2025年までに軽自動車のEVを投入する予定で、ホンダと同様、軽商用EVを先行させる可能性が高い。次に軽乗用EVが発売される。
■CEV補助金の残りは約177億円、2022年10月末には終了見込み
2022年度の政府補助金55万円を活用するとサクラ「X」の実質価格は184万9100円。自治体によってはさらに補助金が加わる
商用車も含めて軽自動車のEVが続々と発売されるが、その売れ行きを大きく左右するのが補助金だ。現在実施されている経済産業省の補助金では、サクラやeKクロスEVで55万円が交付される。サクラのベーシックなXは239万9100円だから、この金額を差し引くと、実質約185万円で手に入る。
さらに自治体も補助金を交付する場合があり、極端な例では東京都の交付額は45万円、東京都足立区は10万円だ。経済産業省も加えた補助金交付額の合計は110万円に達するから、サクラを実質130万円で入手できる。
ただし補助金には予算があり、使い切ると終了する。日産の販売店では「補助金は自治体の交付も含めて、2022年の末には使い切る可能性が高い。そしてサクラの納期は、8月中旬に注文を入れて届け出できるのは2023年3月頃だから、今年度の補助金は使い切られて申請できないだろう」という。
実際、8月2日に次世代自動車振興センターが発表した補助金の予算残高と申請受付終了の見込み時期が発表されたが、以下の通り。
●8月2日公表
予算残高:約177億円
終了見込み時期:2022年10月末目処
今年度に漏れても来年度に申請できるが、予算を含めて詳細は未定だ。前述の通りEVの販売台数は急増しているから、1台当たりの交付額が減る可能性も高い。サクラが実質130万円で手に入るような状態は、長くは続かないかもしれない。
それでも価格が安く、セカンドカーとして使われて走行距離の問われない軽自動車は、EVに最適だ。今後の軽自動車は、EVとしても売れ行きを伸ばす。今は国内で売られる新車の約38%が軽自動車だが、今後は50%前後を占めることになるだろう。
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トータルでの効率も環境への配慮もまだまだ過渡期であって普及への道程はは厳しいものがある