8ATの信頼性
フロントヘビーな他のCセグFFライバルたち(前65:後35くらい)とは一線を画す、「力学的に素直と感じられる」挙動。高速移動する1.4
2013.4.27
- 総評
- 8ATの信頼性
フロントヘビーな他のCセグFFライバルたち(前65:後35くらい)とは一線を画す、「力学的に素直と感じられる」挙動。高速移動する1.4トンの重量物のなかでドライバーが最も快適なポジションに居るという安心感。検討を始めた時点ではメーカーにこだわりはなかったのですが、このドライブフィールにハマると「BMWかそれ以外か」という選択になってしまいます。試乗時には高速やバイパス路などで何度かレーンチェンジをしてみるだけで「どのFFモデルとも異なる気持ちよさ」「素性の違い」を体感できると思います。
車歴は国産5社のFFと4WDばかりでしたが、ハンドリングの「雑味」やブレーキングの際の「つんのめるような不快感」はFFのものであることをあらためて知りました。FRという看板や先入観に騙されてはいないかと価格の近い国産FR(マークX)も乗り比べてみましたが、こちらは静かではある半面、布団にくるまって運転しているようでインフォメーション不足、全く楽しめませんでした。いったい何が違うのか。
今回のクルマ選びにあたってはCセグを乗り比べ、いくつか感想をここに載せましたが(ここは試乗どころか触ることすらなく、単に世直し気取りの個人攻撃目的で徘徊している輩がいて気味悪いのでサイト一新は歓迎)、輸入車ライバルの多くが積んでいる「ツインクラッチ系」のミッションは、いずれも渋滞や車庫入れ等の微速時の違和感がぬぐえず、結局クラス唯一の「トルコン8速AT」のほうがはるかに上等で間違いのないメカニズムに思えました。
これ以外に候補に残したのはベンツAクラスとジュリエッタです。Aクラスは迫力十分、ミッション(DCT)の出来もFF最良で、三度試乗し、街乗りで刺激はないものの上品な乗り味がだんだん好ましく思えてきたのですが、コラムシフトや視界を遮るリアヘッドレスト、間口の狭い荷室の形状など気になるネガ要素も多く見送り。スタイル抜群のジュリエッタは一週間モニターし相当に気に入ったのですが、ミッション(TCT)が難点で(特に後退時はギアがうまく入りにくい)長く所有する前提では不安が消せませんでした。話題のボルボV40は、回すとやかましいエンジンフィールが独御三家に見劣りし、期待外れでした。未発表で比較できなかったフォーカスやゴルフ7(と新A3)はやはり気になりました。
- 満足している点
- FRがゆえの50:50、そして8AT。他では得られないこれだけで選ぶ価値があると思います。上位車種を買う余力は私にはありませんが、ボトムグレードでもステアリングを握ればBMWの正統なる末弟であることが体感でき、Cクラス以上との駆動方式の壁を承知で「それでもベンツ」のAやBクラスを選ぶのとは違う種類の「所有する満足」を得られます。踏むと体の後ろで「ブーン」とかすかに響く音とともに加速を始めるのは、なんとも心地よいものですね。アクセル開度の設定がずいぶん変わるエコプロやスポーツなどの演出も、気分に応じて積極的に使ってみようと思える出来ばえです。
触れる頻度の高いスイッチやレバーなど操作系のクリック感や大きな室内側ドアグリップ、アルカンターラのシート表皮や専用ステアリング(Mスポ)も上質でいい感じ。ライバルに比べ視界も良好で(台形のドアミラー、ルームミラーが見やすい)、116なので手動ながら座面アジャストの自由度が高いこと、サイドブレーキがきちんと右側にコンバートされているのも好ましい。上を見ればキリがないですが、あくまで走りの質感を主役に据えつつ(したがって「走る曲がる止まる」で妥協することがなく)、かつ日常使いのレベルで嫌みがなく、国産のキラキラ感とも別次元の「イイモノ感」に満ちているという、得難い工業製品だと思います。さすがにBMWのバッジを背負う限りは「無印良品」とはいえませんが。
- 不満な点
- おそらく乗ってみる前から顧客の数パーセントを他に奪われている、エクステリア、というかフロントマスク。FRがゆえのやや特殊なプロポーションはやむをえないにしても、標準モデルの顔はやはりファニーな印象でシャープさに欠けます。実はボンネットやサイドのラインは相当に計算されて色っぽい、というのはよく見ないと気づかない。私はプチ整形版のMスポーツが気に入り購入しましたが、このグレードがなければもう少し他と迷っていたかも。
オプションを含め割高な定価。多くのライバルが新機能を盛り込みつつも戦略的な価格を出してきている中、「駆け抜ける歓び」を優先してくれる客ばかりではないでしょう。116と120の価格差も大きすぎます。エンジンスペックだけならボルボやアルファ、フォーカスは116の価格で120並みだし(なので120は売れていないらしい)、カタログ映えする安全・危険回避の装備に至っては、オプションでもカバーしきれないところまで他社は進んでおり、はっきり見劣りします。メーター下部のディスプレイは高精細かつ見やすいレイアウトで極めて便利なのですが、これもナビとセットオプション。
まだ2,000キロほどしか走っていませんが、走りは軽快かつ上質で不満は今のところ見当たりません。しかし渋滞路での燃費は期待したほど伸びないようです。今のところ平均時速20キロ程度になってしまう市街地ばかりの用途では燃費も11キロ/L程度というところです(ただし高速では20キロに迫ります)。ハイブリッドでなければこんなものでしょうか。でもこのクラスでは1、2を争う「乗って楽しいクルマ」であることは間違いありません。「1シリーズだけは(ドライバーズカーに徹しているという意味で)ファミリーハッチとは別カテゴリーのクルマと考えてほしいです」という新型ライバル車の担当もいたほどです。かわいがって長く乗るつもりです。
- デザイン
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- 走行性能
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- 積載性
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