30年以上前から世界のレース舞台で活躍
6月20日~23日にドイツで行われたニュルブルクリンク24時間レースでは新型GRスープラがレースデビュー。モリゾウ選手(トヨタ自動車の豊田章男社長)らのドライブによって出走158台の総合41位クラス3位で完走。注目を集めることになったのも記憶に新しい。
トヨタ新型スープラのマットグレーが「24台」しか販売できない理由
4代目となる現行スープラ(=90系)には、トヨタのモータースポーツも統括するGR(GAZOO Racing)のイニシャルが入ることになった。これにより以前にもましてモータースポーツシーンでの活躍に期待は高まっている。さて、2002年に先代モデル80系の生産終了から17年ぶりに復活したスープラ。ここまでに至る歴代スープラに関しての海外での活躍を振り返ってみよう。
88年ベルギーの耐久レースでメジャーデビュー
日本国内では87年シーズンの全日本ツーリングカー選手権に、3リッター直6ツインカムターボの7M-GTEUを搭載するグループA(Gr.A)仕様のTOYOTA SUPRA 3.0GTリミテッド(70系)が見事なデビュー・レース・ウィンを飾っている。だが翌年からレギュレーションが変更され、排気量のターボ係数がそれまでの1.4から1.7に引き上げられことにより、3リッターターボのスープラはそれまで排気量4.2リッター(相当)から5.1リッター(相当)へと嵩上げされる。これに伴い、最低車両重量も1325kgから1420kgへと100kg近くも重くされてしまったのだ。
これでは通常のレースでは競争力も大きく低下してしまうが、より長距離/長時間の耐久レースならトータル性能で挽回できるのでは、ということから88年のスパ-フランコルシャン24時間レースへの出場が決定した。
エントリーリストにはIMC ToyotaとBemani Motorenbauの両チームからそれぞれ2台ずつ、計4台のGr.Aスープラの名があったが、当時のヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)などで活躍していたBemaniの2台により注目が集まった。果たして、予選ではBemaniの1台が他の3台に一歩先んじて17番手グリッドを奪う。一方、他の3台は23~25番手グリッドから24時間レースをスタートすることになった。
重いウェイトに苦しめられていたスープラ勢にはハプニングが続出。アクシデントやトラブルで3台がリタイアしてしまうが、4台の中で最も後方のグリッドとなる25番手からスタートしたBemaniの28号車は快調に周回。スープラ勢4台の中では唯一、24時間を走りきって総合5位。排気量が最も大きいDiv.3では2台のフォード・シエラRS500に続いてクラス3位の結果を残している。
95年スープラGT-LM がル・マン24時間に参戦
耐久レースでグループC(Gr.C)が終焉を迎えた後、新たな主役として注目が高まってきたGTカテゴリー。国内でも全日本GT選手権(JGTC)が始まり人気を博していたが、スポーツカーによる耐久レースの檜舞台として知られるル・マン24時間でもGr.Cの流れを汲むプロトタイプに加えてLM-GTクラスにも大きな注目が集まるようになっていた。
そんなル・マンに、JGTC仕様を発展させたTOYOTA SUPRA GT-LM(80系)がデビューしたのは95年。当初、エントリーリストには、チューニングパーツメーカーのサードとトラストの2チームの名があったが、トラストの1台は直前の国内テストでクラッシュし、エントリーをキャンセル。結果的にサードの1台のみの参加となった。
ベースモデルの直6エンジンに代わり、直4の3S-GTEが搭載されているのはJGTC仕様と同じだった。だが、ル・マン24時間の車両規定に対応するためにボディ下面をフラットボトムとしカーボンブレーキを装着。またリストリクターが絞られるなど、変更点も少なくなかった。
国内のトップカテゴリーで活躍していたマルコ・アピチェラ、マウロ・マルティニ、ジェフ・クロスノフの実力派トリオが駆るサードのTOYOTA SUPRA GT-LMは、公式予選で31番手と中段のグリッドを獲得。決勝では一時期駆動系にトラブルを抱えていたものの、レースの大半がウェットとなったコースコンディションにも助けられ、着実に周回を重ねて24時間を走りきり14位でチェッカー。GT1クラスでは8位だった。
ニュルブルクリンクのコースレコードを更新!
ニュルブルクリンク24時間耐久レースが開催されたコースで、1927年に完成した約20kmの北コース(ノルトシュライフェ)では、さまざまなジャンルのクルマなどがタイム計測を行っている。レースとは直接関係ないが、ニュルブルクリンクに繋がるポイントとして、97年にコースレコードを更新したスープラについても紹介しておこう。
主人公はこのプロジェクトのために日本のチューニングパーツメーカーBLITZでパワーアップされたロードカーのスープラ(80系)。BLITZ 753 SUPRAと特別なネーミングが与えられていた。753の意味するところは7分53秒(ラップタイム)。ニュルブルクリンクでのラップタイムに注目が高まり始めていた97年当時、国産車としては日産BCNR33型スカイラインGT-Rが大きな壁とされてきた8分を破る7分59秒をマーク。プロジェクトを企画したBLITZではそれを上回る7分53秒を目標タイムとし、車両のネーミングにも取り入れたわけだ。
BLITZは当時、全日本GT選手権にもスープラで参戦していたが、このBLITZ 753 SUPRAではサーキットのパフォーマンスのみならず安全性や耐久性、さらに快適性からドライビングも含めてストリートでの最高を目指して開発が続けられた。そしてプロジェクトのスタートから1年、97年の夏にBLITZ 753 SUPRAは完成。最高出力600PS、最大トルク79kgmと最高のパフォーマンスを発揮するストリートマシンだった。
これを駆るのはスペシャリストのヘルバート・シュルク。ドライビングスキルのみならず、コースを熟知していることからも、最高のキャスティングだった。一方、BLITZ 753 SUPRAは、ストリートマシンであるがゆえに、エンジンやタイヤ、そしてブレーキなど各パーツが熱ダレを起こすこともありなかなか簡単にはタイム更新ができずにいたが、これが最終日という段階で見事7分49秒40をマーク。目標だった7分53秒を上回っただけでなく、ロードカーによる当時のニュルブルクリンクのコースレコード…2年前にGemballaポルシェ911がマークしていた7分52秒をも更新。見事コースレコードを樹立しニュルブルクリンクに大きな一歩を刻むことになった。
FALKEN SUPRAが2000年にニュル24時間参戦
最近ではGazoo Racingの名のもとにトヨタ/レクサスが精力的に参加を継続、またスバル/STIも参戦を続けることで、モータースポーツ界にとっては“年中行事”となったニュルブルクリンク24時間耐久レース。1990年にはNISMOがR32型スカイラインGT-Rで参戦し、グループNクラスで優勝を飾っていたが、継続的に参戦したのはFALKEN MOTORSPORT TEAMが、その嚆矢(こうし)だろう。
99年に参加を開始した同ファルケンモータースポーツチームの活動は、日本におけるスーパー耐久選手権とリンクしていて、チャンピオンチームがチャンピオンマシンで参戦するのが基本だった。ただし2000年に関しては全日本GT選手権(JGTC)のGT500仕様で仕立てたトヨタ・スープラを投入している。
様々なカテゴリーのツーリングカーやGTカー、いわゆる“ハコ車”が集まる中、GT500仕様はクルマのパフォーマンスとしても高く、決勝レースでは一時総合3位まで進出していたが、残念ながらクラッシュでレースをリタイアしている。
急遽出場したサファリ・ラリーで3位入賞
SUPRAの活躍はもちろん、オンロードのサーキットレースに限ったことではない。広大な大地を駆け抜けるラリーも充分、その守備範囲に入っていた。
世界ラリー選手権(WRC)といえば一昨年に復帰して活動を再開したトヨタが、昨年には早くもマニュファクチャラーズタイトルを獲得したことも記憶に新しい。しかし、スープラ(70系)が活躍したのは30年余り、遥かな昔となる87~88年。車両規定もグループBからグループAへと移行する端境期のことだった。
そもそもグループBの時代からトヨタはサファリ・ラリーだけでなくコートジボワール(アイボリーコースト)も含めてアフリカのラリーを得意としていた。レギュレーション変更でグループBが廃止され、グループAが次なる主役に引っ張り出されたために、トヨタは“ツインカム・ターボ”の愛称で知られるセリカGT-TS(TA64型)に代わる主戦マシンを開発することになった。
ただし当時主流になっていく4WDシステムを装着した“マシン”を5000台も販売するのは大メーカーのトヨタにとってもハードルが高かった。そこでショートリリーフとして招集がかかったのがグループAとしてレースデビューを果たしていた70系スープラだった。
そもそもがラリー向けの車両でなく駆動方式もシンプルなFR(後輪駆動)。それでもパワーと直進安定性を武器にアフリカの大地を味方につけ、87年のサファリ・ラリーでは見事3位入賞の大金星。同年の香港~北京ラリーではビョン・ワルデガルドが総合優勝を飾っている。
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