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国立の「自動車博物館」がトリノにありました! イタリアでは「クルマは文化でアート」である証拠を見学してきました

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国立の「自動車博物館」がトリノにありました! イタリアでは「クルマは文化でアート」である証拠を見学してきました

世界中のエポックメイキングなクルマたちを展示

 かつて「フランスにはルノーがあるが、フィアットにはイタリアがある!」とまで言わしめたフィアットは、今では同じラテン系でフランスの雄、プジョーを盟主とするPSAとともにステランティスを設立。世界第4位の自動車メーカーとなっています。

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 そんなフィアットは、イタリアでもっとも新しい自動車博物館となるFCAヘリテージHUBや、フィアットの企業博物館としてフィアット歴史博物館を運営。同時に、お膝元にある国立自動車博物館にも、設立当初から支援を続けています。今回は、トリノ国立自動車博物館を紹介しましょう。

メーカーとしてクルマを生産するだけでなく、クルマ文化を伝承するフィアット

 イタリア北西部、ピエモンテ州の州都であるトリノに本拠を構えるフィアットは、1899年に設立されています。その動きをけん引したメンバーとしては、のちにフィアットの社長を務めることになるジョヴァンニ・アニエッリが有名ですが、彼のほかにもエマヌエレ・カチェラーノ・ディ・ブリチェラジオ伯爵やロベルト・ビスカレッティ・ディ・ルッフィア伯爵など錚々たる顔触れがそろっていました。

 ブリチェラジオ伯爵はフィアットの設立当初から副社長に就任したことでも知られています。ディ・ルッフィア伯爵はイタリア自動車クラブを設立して初代会長に収まった人物で、やはりフィアット設立にかかわったモータージャーナリストとしても知られるチェザーレ・ゴリア・ガッティと2人でトリノに自動車博物館を設立すること考案していたのです。

 実際に博物館が設立されたのは1933年で、設立の中心となったのは、ディ・ルッフィア伯爵の息子のカルロ・ビスカレッティ・ディ・ルフィアで、それに因んで博物館は長い間、カルロ・ビスカレッティ・ディ・ルフィア国立自動車博物館(Museo dell’Automobile Carlo Biscaretti di Ruffia)と呼ばれていました。

 博物館は1960年に現在の場所に移転。ポー河左岸に建てられた特徴的な建屋は、有名な建築家のアメデオ・アルベルティーニがデザインしたもので、トリノ市内におけるベンチマークのひとつとなっています。さらに2011年には大幅なリニューアル工事を実施。建屋の外観には大きな変更はありませんが、内部の展示スペースは拡大され、名称も国立自動車博物館(The Museo Nazionale dell’Automobile。略称MAUTO)に変更されています。

 成立、そして発展するまでにこのような経緯があるから、MAUTOの収蔵展示はさぞやフィアットを重視したもの、と思われがちですが決してそんなことはありませんでした。例えば自動車史にとっては“紀元前”ともいうべき15世紀から18世紀半ばに懸けての展示では、芸術家としてだけでなく科学者など多彩な才能で知られるレオナルド・ダ・ヴィンチが考案したとされる機械仕掛けの自動車(?)から、キュニヨーの砲車(70%のスケールモデル)などが用意されています。

 また19世紀末から20世紀初頭にかけてはフィアットの最初の製品となる1899年製の3 1/2HPはもちろんですが、そのフィアット誕生のきっかけとなったチェイラーノの1901年製5HPや、アルファロメオが誕生する切っ掛けとなったダラックの1902年製9.5HP、さらには1892年製のプジョー・クワドリシクルや1898年製のド・ディオン・ブートン・トライシクル、1904年製のオールズモビル・カーブドダッシュなど世界初を争った米仏のライバルが勢揃いしていました。

 また今回は展示されていませんでしたが、前回、2013年の冬に訪れた時には1893年製のベンツ・ビクトリアも展示してありました。そのため、収蔵展示車両をフィアットやイタリア車に限っている訳ではなく、世界中のエポックメイキングなクルマたちを、生産国やメーカーに拘ることなく集めていることが分かります。

 これはフィアット創設時にアニエッリが「単にクルマを製作する自動車メーカーを立ち上げるのではなく、イタリアに産業としての自動車工業を興さなくては」と語ったも伝えられている彼の想いにも通じるし、ビスカレッティ父子のクルマ愛も伝わってきます。

さまざまなレーシングカーが根付いていたイタリアだからスーパーカーが誕生した

 前半で、世界中のエポックメイキングなクルマたちを、生産国やメーカーに拘ることなく集めていることが分かります、と言っておきながらその舌の根も乾かないうちに、とお𠮟りを受けるかもしれませんが、フェラーリやアルファロメオ、あるいはランチアやマセラティ、さらにはチシタリア、イソなどイタリアンメーカーのクルマの展示が多いのも事実。

 しかしこれは“国産車”だから身びいきしたのではありません。展示されているイタリア車の多くはサーキットを席巻したレーシングカーであったり、ロードレースで大活躍したスポーツカーだったりするわけで、それはとりもなおさずイタリアにレーシングカーが根付いていることにほかなりません。

 だからこそイタリアからは、ロードカーとレーシングカーの境目にあるスポーツカーや、さらにパフォーマンスを磨いてプレミアム性を高めたスーパーカーが数多く輩出されてきたのでしょう。クルマファンとしてこれはもう嬉しい限りです。

 その一方でレーシングカー志向が全てではない、というのも納得でした。これはヒストリックなコンパクトカーが主役となる展示コーナーが少なくなかった……1955年式フィアット600と1958年式ACMAヴェスパ400、そして1968年式フィアット“Nuova”500の3ショットが端的に表しています。

 そんな3ショットに代表されるように、MAUTOでは収蔵車両の展示方法についてもいろいろなトライがなされていました。1928年式のアルファロメオ 6 C 1500 ミッレミリアなどはボディを剥ぎ取られてローリングシャシー状態で壁に貼られて展示されていたのです。

 ちょっとかわいそうとも思いましたが、注目を集めるのは間違いなく、パッケージングの詳細を確認する上ではベストな展示方法とも思われました。また1956年式のフィアット・ムルティプラが海辺のキャンプ地に佇むシーンからは、楽しさが十分すぎるほどに伝わってきます。個人的にはフィアット500をベースにしたヴィニャーレ・ガミネが刺さりました。

 前回訪れたときには初めて出会ったフィアットのテュルビナに心を奪われてしまったのですが、今回は2度目とあって感激もそこそこ。移り気な身を反省しながらも、今回が初対面のヴィニャーレ・ガミネに心を奪われてしまいました。フィアット508バリッラにも通じる2座オープンのデザインもさることながら、フィアットの500という日常ベストなコンパクトカーでもオープンスポーツに仕立て上げてしまうラテンのノリに、極東の老いぼれはもう白旗状態となったのです。

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みんなのコメント

4件
  • 日本だってここまでの経済大国になるにあたり、自動車残業の功績はかなり大きいはず。しかし今は税収の格好の標的。自動車関連からは絞れるだけ絞る税制度。国立の自動車博物館など話を出すだけでも政治家には鼻で笑われて終わりだろう。
  • 国立市に自動車博物館なんてあったっけ?
    山口百恵さんぐらいしかわからん
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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