地味な存在 でも意外と勢いあり?
text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
【画像】勢いあるSUV【エクリプス・クロスとヴェゼルを比較】 全191枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
今はSUVが人気のカテゴリーになり、新型車の投入も活発だ。
ヤリス・クロス、ヴェゼル、ハリアーなどが人気を高めた。
今後はレクサスNX、アウトランダー、エクストレイルなどがフルモデルチェンジを受ける。
これらの新型車の中で、エクリプス・クロスは地味な存在だが、売れ行きを着実に伸ばしている。
直近の2021年7月の登録台数は656台と少ないが、対前年比は223.9%だ。売れ行きが前年の2倍以上に増えた。
エクリプス・クロスの売れ行きが伸び始めたのは2020年12月で、この時は2151台を登録して前年の7倍近くに達した。
2021年1月以降も、対前年比は150-400%で推移している。
分母が少ないから、前年の4倍売れても登録台数自体は1000台以下だが、比率は大きい。エクリプス・クロスに一体何が起きたのか。
マイチェンとPHEVが追い風に?
エクリプス・クロスの売れ行きが急増した直接の理由は、2020年12月に、比較的規模の大きなマイナーチェンジを実施したことだ。
フロントマスクを今の三菱車に共通するダイナミックシールドのデザインにあらため、エクリプス・クロスがもともと備えていたスポーティ感覚を際立たせている。
さらにクリーンディーゼルターボを廃止する一方で、PHEV(充電可能なハイブリッドシステム)を用意した。
ちなみにエクリプス・クロスの発売は2018年で、この時には直列4気筒1.5Lガソリンターボエンジンのみを搭載したが、2019年にクリーンディーゼルターボを追加した。
2020年にはこれを廃止してPHEVを設定したので、目まぐるしいモデルチェンジであった。
根強い「三菱SUVファン」が支える
それにしてもマイナーチェンジを実施するだけで、エクリプス・クロスの売れ行きが最大で前年の7倍に達するのか。
販売店に尋ねると以下のように返答された。
「エクリプス・クロスは大量に売られる車種ではないが、根強いファンのお客さまがおられる。2018年に購入され、2021年にPHEVに乗り替える場合もある」
「また設計の古くなったアウトランダーPHEVから、エクリプス・クロスPHEVへの乗り替えも生じている。三菱のSUVには、プラグインハイブリッドやスポーティな走りなど、ほかのメーカーとは違う個性があり、お客さまが定着している」
良い意味で古典的 デザインと走り
エクリプス・クロスのデザインや運転感覚は、良い意味で古典的だ。
操舵感が機敏で良く曲がり、運転の仕方によっては、後輪を横滑りさせようとする。
今のクルマは安全性を重視するので、足まわりの設定も、運転操作が難しい状態に陥らないよう後輪の接地性を最優先させる。
そこがエクリプス・クロスでは、グリップバランスが少し前輪寄りになるのだ。
例えば新型トヨタ86は、良く曲がって相対的に後輪の接地性が下がることもあるが、一種の演出として作為的におこなっている。
これでは興ざめと受け取るユーザーもいるが、エクリプス・クロスは違う。
このプラットフォームは初代(先代)アウトランダーに採用された時からグリップバランスが前輪寄りで、2代目の現行アウトランダーは安定指向にあらためたが、エクリプス・クロスは曲がりやすいセッティングを受け継いだ。
そしてエクリプス・クロスのクリーンディーゼルターボでは、ボディの前側が重く、曲がりやすさが裏目に出てしまった。
後輪の接地性を大幅に悪化させたので、エクリプス・クロスPHEVでは足まわりの設定をあらためて見直した。
その結果、安定性を著しく損なわない範囲で、古典的なスポーティ感覚を味わえる走りに落ち着いた。
コアな話になったが、このような経緯を辿って走りの個性を洗練させたクルマは少ない。
86のような演出ではなく、通常の進化を経た結果、適度に機敏で良く曲がる運転感覚に至っている。だから走らせると奥の深さが感じられ、離れられなくなるのだ。
また販売店では、前述のとおり「アウトランダーPHEVから、エクリプス・クロスPHEVへの乗り替えも生じている」という。
かなりのサイズダウンに思えるが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値は、アウトランダー、エクリプス・クロス、RVRの全車が2670mmで共通だ。
そのためにアウトランダーとエクリプス・クロスを比べると、荷室の奥行寸法は異なっても後席の足元空間に大差はない。
エクリプス・クロスも4名乗車が快適で、無理のない乗り替えをおこなえる。
以上のようにエクリプス・クロスには、ほかのSUVとは違う独特の価値があり、アウトランダーPHEVからの乗り替えも生じて、売れ行きを伸ばした。
しかしそれにしても、前年の4倍から7倍といった売れ方は過剰ではないのか。
背景にはエクリプス・クロスの魅力とは別の理由もあった。
なぜ異様な伸び幅を見せている?
2021年1~7月におけるエクリプス・クロスの登録台数は、1か月平均で843台だ。
対前年比は220%に達した。前述のとおり2倍以上の売れ行きだ。
それなら2020年1~7月の対前年比はどうだったかといえば、50%の半減であった。
つまりエクリプス・クロスの過去3年間の売れ方は以下のようになる。
エクリプスクロスの1か月平均登録台数
2019年1~7月:767台
2020年1~7月:384台(対前年比50%)
2021年1~7月:843台(対前年比220%)
2021年は2019年に比べると110%
「前年の前年」の数字にも注意
2021年の登録台数を対前年比で見ると、2倍以上に達して凄いと思うが、その理由として前年が大きく落ち込んだことも挙げられる。
2020年1~7月の対前年比はわずか50%であった。
したがって2019年の767台と、2021年の843台を比べると110%だから、驚くほどの増え方ではない。新たにPHEVを設定したことを考えれば想定の範囲内だ。
そして2020年1~7月が半減した背景には、コロナ禍による外出の自粛と、マイナーチェンジを控えたことによるバリエーションの削減があった。
2020年4~6月は国内販売全体が大きく落ち込み、7月以降は回復に転じたが、エクリプス・クロスはマイナーチェンジを前提に受注を減らしていた。
つまり2020年のエクリプス・クロスは、中盤はコロナ禍、後半はマイナーチェンジという2つの理由で、売れ行きを50%まで下げた。
そのために2021年は対前年比が急増したのだ。
このようなモデルチェンジが関係する対前年比の乱高下は、時々見受けられる。
分かりやすいところでは、2021年7月のヴェゼルは、対前年比が258%だった。
現行ヴェゼルは2021年4月に発売されたので、前年の7月はモデル末期の状態にあり、対前年比は58%に落ち込んでいた。
その反動とフルモデルチェンジの相乗効果で、2021年7月の対前年比は2.6倍に達した。
ヴェゼルの過去3年間の登録台数は、2019年7月:5058台、2020年7月:2935台、2021年7月:7573台だ。
2021年は前年と比べれば258%だが、2019年との比較では150%にとどまる。新型車としては普通の、あるいは少し物足りない増え方だ。
以上のように対前年比を見るときは、「対前年比の対前年比」も確認する必要がある。そうしないと売れ行きの急増や急減を誤解しやすい。
エクリプス・クロスに話を戻すと、共感を得るクルマづくりをおこなって顧客の支持も厚いが、それと同時にマイナーチェンジ前の減少も大きく響き、2021年の登録台数を押し上げた。
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みんなのコメント
車を1台売るのがどれだけ大変かを知っている人なら、容易にそんな言葉は出ないはず。
朝早くから夜遅くまで働き、ものすごいストレスにさらされる、それがディーラーの営業マンの姿です。
私は精神を病んで辞めてしまいました。
三菱の営業マンさん、頑張ってくださいね。
カッコイイだけじゃない
走りも燃費も何もかも凄くいい!!
もっと早く出逢えばよかった