■実はオープンカーが意外にも人気!?
新型コロナ禍の制限が解除されつつある現在ですが、半導体不足などの影響で新車の納期が長期化したり、中古車価格が高騰したりするなど、自動車業界では色々なニュースが流れています。
【画像】ホンダ「S660」終了でオープンカーから撤退! 最後の限定車がカッコ良すぎる!
そんな市場で意外に堅調な人気となっているジャンルが「オープンカー」です。
新車で買える国産オープンカーといえば、マツダ「ロードスター」やダイハツ「コペン」程度。ホンダ「S660」は生産終了となり、レクサス「LC500コンバーチブル」は超高級車。
かつてはもう少し車種も多かったのですが、時代のニーズは環境性能へと変化しており、“魅せる”要素の強いオープンカーは世界的にも減少傾向です。
それでも、日本自動車販売協会連合会が公表している登録車ランキングで見ると、2022年の上半期(1月から6月)では、1位のトヨタ「ヤリス」が8万1580台(2021年度比68.5%)に対し、「ロードスター」は44位の4817台(同148.4%)でした。
ここで注目なのは登録台数ではなく、ロードスターが2021年度比で148.4%と、50%近く販売台数を伸ばしている点です。上位のクルマが軒並み販売台数を落とすなか、ロードスターはかなり伸びていることがわかります。
一方で、オープンカーのほかにコロナ禍で人気が出たものは、アウトドアやキャンプ、そして「バイク」があります。
両車に共通するキーワードは「1人(または少人数)で密を避けつつ、オープンエアを楽しめる」という点。「売れなくなった」といわれて久しいバイクもまたかなり人気を盛り返しているようです。
ただバイクも昔からあるとはいえ2輪免許所有者が1~2人で乗るものですし、日本ではオープンカーは絶滅危惧種。1回や2回乗った経験あっても、いざ所有となると二の足を踏むユーザーも多いでしょう。
両方乗ったことがない人からすれば「どっちも同じなんじゃないの?」と思われがちですが、実はかなりフィーリングが違うのです。
そこで今回は、オープンカーとバイクを所有した経験を持つ元オーナーや、現在でもクルマとバイク両方を所有するオーナー、自らバイクにも乗る中古車販売店のオーナーにも、それぞれの魅力を聞いてみました。
まず、どんな人がオープンカーのオーナーになる傾向が強いのでしょうか。都内で国産・輸入車を問わず中古車を取り扱う販売店のオーナーN氏に話を聞きました。
「弊社は輸入中古車がメインなのでちょっと特殊ではありますが、国産車ではオープンカーに対して希少性が高いイメージをお持ちの方が多い気がします。
一方で輸入車を選ばれるお客さまに関しては、オープンカーはSUVなどと同じくジャンルのひとつという感覚をお持ちの方が多いです。
日本で販売されている輸入メーカーではオープンモデルが充実しているのも要因でしょうが、あえて輸入車を選ぶほどクルマにこだわりを持つオーナーにとっては、クーペもオープンも単純に状況と予算が許せば敷居はそれほど高くない乗り物というわけです」
そういった輸入車オーナーのなかにはバイクも所有する人もいますが、面白いのは、国産車オーナーが所有するバイクは国産・輸入両方なのに対し、輸入車オーナーはバイクも輸入メーカーを選ぶ傾向が強いこと。
もちろんホンダやヤマハ、スズキにカワサキという4大メーカーを抱える日本ですから日本製バイクも人気は高いのですが、2輪・4輪の両方を所有するオーナーにはある種の傾向があるのだそうです。
「信頼性や性能、燃費などを考慮すると、日本製(のクルマやバイク)が間違いなく世界一だと思います。
ただ、スペックとは違う乗り味や所有する喜びを満たしてくれるのは、輸入車の方が強く、高いブランド力に惹かれる部分が強いということでしょう」(中古車店 オーナーN氏)
ではオープンカーの魅力はどんなところでしょうか。気になる実用性はまったくないのでしょうか。
「オープンカーといっても2シーターと4シーターでは実用性が違ってきます。もちろん耐候性はルーフ付きのセダンやクーペには劣りますが、それ以上にオープン化のために補強されたボディや、強力なエアコンやシートヒーターなども装備され、快適性はあまり劣ることはないと思います。
とくに欧州車のオープンカーには4シーターも多く、ワゴンのような積載能力はなくても、実用性はクーペにまったく劣らないレベルです」(中古車店 オーナーN氏)
これに加えて、オープンならではの開放感を味わえるのは、やはり高級かつ贅沢な乗り物といわれる所以。クーペ以上に高い希少性を誇り、所有する喜びは大きいのだそうです。
「はじめてオープンカーを所有したいと思う人は、ぜひ4シーターの輸入オープンを試してみてほしいです。
みなさんが心配するほど実用性も悪くなく普通に使えますし、屋根を開ければ独特の開放感を味わえますので」(中古車店 オーナーN氏)
■オープンカーとバイクの違いは「快適性」と「緊張感」
では、実際にオープンカーとバイクを所有した経験のあるユーザーは、どんな違いを感じているのでしょうか。イタリア製オープンカーを複数台所有した経験のあるSさん(50代男性・都内在住)は現在、ドイツ車とバイクを同時所有。両車の違いを聞いてみました。
「オープンカーは2シーターも多く実用性を諦めた部分はありますが、それ以外はルーフ付きのクルマと同じ感覚で乗れます。
ルーフを閉じればエアコンも十分に効くので冬は暖かく、夏は涼しく快適性はほとんど犠牲になっていなかったと記憶しています。
それに引き換えバイクは、冬寒く夏は暑い。しかも全身で風を受けているので体への負担が大きく、降りるとドッと疲れが出ます。長距離走行ではその差は大きいです」
確かに、高速道路で窓を開けるとすごい風圧を感じますが、バイクのライダーはあの風圧を全身で受けているわけですからそれは疲れるでしょう。
「オープンカーはルーフを開けていても通常のクルマと同じであるように、構えて乗る必要がないのが良いです。
ただ、風を感じながらオープンカーに乗っていると周囲からの注目を集めがちですが、その一方で、バイクは予想以上に注目されないのに、『コケたら大怪我』という緊張感を常に感じながら乗っています。
乗り味も全然違うのですが、どちらも実用性を犠牲にしているぶん、運転する楽しさは一般的なクルマよりも大きいと思います」
オープンならではの楽しさがあると教えてくれたSさんですが、オープンカーとバイクを同時に所有したことはないといいます。
それはやはり圧倒的にバイクには実用性がないからなのだとか。そのため、バイクを所有しているときは実用性の高いクルマを選ぶようになるのだそうです。
もう1人、バイクを手放しオープンカーに乗り換えた人の意見も聞いてみましょう。Tさん(40代男性・神奈川県在住)は国産スーパースポーツのバイクを手放し、オープンカーに乗り換えた経歴の持ち主。その経緯を教えてもらいました。
「スポーツバイクを手放したのは、体力的にも精神的にあのスピードについていくのが厳しくなったからです。
バイク特有の、全身を使って走る喜びは捨て難いのですが、もう少し気軽にオープンエアを楽しみたくてMTのオープンカーにしたところ、快適性は圧倒的です。
それでいてMTを駆使してスポーティにも走れますし、風を感じたければフルオープンにすればいいのですから便利ですよ。
まぁどちらも女性から乗せてほしいといわれたことはありませんが」
それでもオープンカーはあまり長く保有できない傾向があるのだとか。その理由を聞いてみました。
「やはりクルマには便利さを求めてしまうからだと思います。2シーターのオープンですと、ちょっとした荷物ですら助手席を活用するかトランクに入れるしかありません。
人を乗せたくてもあと1名しか乗せられず、買い物でも多くの荷物は積めません。
そんなことが続くと、実用性のあるSUVやワゴンに乗り換えたくなる人が多いのでしょうね。
それでも、大切な実用性を犠牲にしてでもオープンにこだわった仕様だけあり、スピードを出さなくても十分運転を楽しめるのが魅力です。
目的地へ向かう手段というより、そこに行くこと自体が目的にできる人には一度は所有して乗ってみてほしいです」
※ ※ ※
筆者(金田ケイスケ)もアメリカンバイクも所有していますが、とにかく乗るまでに気合いが必要です。
実用性はほぼゼロなのに、ヘルメットやグローブ、ブーツなど専用装具も必要だったりします。
それでも全身で風を受けつつ、むき出しのエンジンの鼓動を聞きながら走る爽快感はジェットコースター以上。
それと比べると、オープンカーも実用性は乏しいものの、気合いも必要なく気軽かつ快適。また街中での注目度はオープンカーの方が高い気がします。
そして何より「オープンカーという贅沢な乗り物」に乗っている満足感が最大の魅力かもしれません。
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