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「小さな高級車」爆誕!! 日産サクラ大ヒット! 軽自動車は「EV」で革命を起こすのか?

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「小さな高級車」爆誕!! 日産サクラ大ヒット! 軽自動車は「EV」で革命を起こすのか?

 軽自動車とは思えない質感や走りのよさ、そして、手の届きやすい価格で登場し、販売が好調な日産サクラ。先日には、日本自動車殿堂が主催する「2022~2023日本自動車殿堂 カーオブザイヤー」を受賞したほか、日本自動車研究者・ジャーナリスト会議(RJC)主催の2023年次「RJCカーオブザイヤー」も受賞した。

 2022年12月8日に発表される日本カーオブザイヤー2022-2023でも10ベストカーに選出されている。

「小さな高級車」爆誕!! 日産サクラ大ヒット! 軽自動車は「EV」で革命を起こすのか?

 そこで本稿では、なぜ日産サクラは評価され、ここまで売れているのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が考察していく。さらに気になる納期や補助金対策について、姉妹車である三菱eKクロスEVの情報と合わせてお伝えします。

文/渡辺陽一郎、写真/NISSAN、MITSUBISHI、ベストカーWeb編集部

なぜ「日産サクラ」の販売が堅調なのか

2022年6月に発売した日産サクラ。発売から4カ月半で3万3000台以上を受注し、電気自動車の売れ行きとしては絶好調

 エンジンを搭載しない電気自動車は、走行段階に限れば、二酸化炭素や窒素酸化物などの排出ガスを発生させない。従って究極的なエコカーともいわれるが、今までは売れ行きが低迷していた。

 例えば電気自動車で人気の高い日産リーフの登録台数は、コロナ禍の影響を受ける前の2019年でも、1カ月平均が約1600台だった。当時は日産ノート(ノートオーラを含まず)が1カ月に約1万台、日産セレナが約7700台を登録していたから、リーフの約1600台は少なかった。

 ところが同じ電気自動車でも、軽自動車となる新型日産サクラは堅調だ。新型コロナウイルスの影響を受けながら、2022年7月は3319台、8月は3523台、9月は4247台を届け出した。9月の届け出台数は、N-WGNやジムニーよりも多く、タフトに比べて若干少ない程度だ。軽自動車販売ランキングの上位には入らないが、中堅レベルには達している。電気自動車の売れ行きとしては絶好調だ。

 サクラが電気自動車でありながら好調に売られている背景には、複数の理由がある。筆頭に挙げられるのは、サクラが軽自動車の規格に収まることだ。

 一般的に電気自動車は1回の充電で走行できる距離が短いとされ、リーフのような小型/普通車では、その欠点が販売を妨げている。ところが軽自動車なら話が変わり、長距離移動の機会は大幅に減るから、走行可能な距離が短くても問題になりにくい。

 特に軽自動車には、セカンドカーのニーズも多い。複数の車両を所有する世帯なら、長距離ドライブにはファーストカーを使うから、セカンドカーの用途は買い物などの短距離移動に限られる。

 この使われ方なら、サクラが1回の充電で走行できる距離が短くても文句は生じない。サクラのリチウムイオン電池は20kWhだからリーフの半分以下で、1回の充電で走行できる距離もWLTCモードで180kmに限られるが、買い物などに使うなら片道50km/往復100kmを走行できれば充分だろう。

 そして買い物など街中の移動で使うなら、ボディの小さな軽自動車が適している。つまり日本の道路環境で電気自動車を成功させるなら、街中で運転しやすく、セカンドカー需要が多い軽自動車が最適だ。

EV補助金の交付金額もサクラの販売を後押し! 「小さな高級車」も味わえる魅力あり!!

 ちなみにかつての三菱アイミーブも軽自動車サイズの電気自動車だったが、発売当初はリースのみであった。その後、2010年から一般ユーザーにも販売したが、価格は398万円で、経済産業省の補助金(114万円/2010年度)を差し引いても284万円であった。軽自動車では価格が高かった。

 ほぼ同時期に発売された初代(先代)リーフXは、価格が376万4250円で、補助金は78万円が交付された。この金額を差し引くと298万4250円だ。アイミーブは軽自動車なのに284万円だから、3ナンバー車の初代リーフに比べると割高感が生じて、売れ行きも低迷した。

 その点でサクラは価格が安い。中級グレードのXは239万9100円で、経済産業省の補助金が55万円(2022年度)だから、交付を受けられると実質184万9100円に収まる。前述のアイミーブに比べて約100万円安く手に入る。

 この金額は、日産ルークスハイウェイスターGターボの184万9100円と同額だ。つまり補助金の交付を受けると、電気自動車のサクラを、一般的な軽自動車の上級モデルと同程度の予算で購入できる。

 さらに東京都は経済産業省とは別に45万円の補助金も用意しており、これも加えると総額100万円が交付される。サクラXの価格は239万9100円だから、100万円が交付されると139万9100円だ。この金額はルークスで最も安価なSよりも安い。

 現行リーフX・Vセレクションは、価格が394万6800円で、経済産業省による補助金が78万6000円(2022年度)交付される。これを差し引くと316万800円だから、サクラXは130万円以上安い。この補助金を含めた実質価格の求めやすさも、サクラの販売が好調な理由だ。

 このほかサクラは電気自動車だから、加速が滑らかでノイズも小さい。モーターの最大トルクは195Nm(19.9kg-m)で、軽自動車が搭載するターボエンジンの約2倍に達する。走りが滑らかで動力性能に余裕があることもサクラの魅力だ。

 さらにサクラのフロントマスクは、上級電気自動車のアリアに似ている。プラットフォームはデイズと基本的に同じだが、ボディは異なり、電気自動車らしさを際立たせた。内装も上質で、インパネはファブリック調に仕上げている。

 後席の座り心地はデイズよりも柔軟で「小さな高級車」という雰囲気も漂う。高機能なスマートフォンのような凝縮感もあり「優れたツールを使っている」満足感を味わえる。

 いっぽう、三菱eKクロスEVは、サクラと基本部分を共通化した姉妹車だが、「電気自動車であること」は強調されていない。「三菱eKシリーズ」としてのSUVらしさを重視する。そのために内外装も、一部を除くとeKクロスと共通だ。

 eKクロスEVがeKクロスと内外装を共通化した背景には、販売台数もある。日産の販売店は全国に約2100箇所を展開するが、三菱は約550店舗だから日産の26%だ。そうなると販売台数も限られる。eKクロスEVが、サクラのように内外装を独自のデザインに仕上げるのは、コストの面から難しい。そこでeKクロスEVの内外装をeKクロスと共通化した事情もある。

サクラ受注停止中!! 三菱は補助金対策あり? 気になる販売状況と納期

SUVテイストの軽自動車であるekクロスシリーズのEVモデルとして登場した三菱eKクロスEV。三菱車のアイコンであるダイナミックシールドの採用で人気を得ている

 サクラとeKクロスEVの運転感覚は基本的に同じだが、電気自動車らしさや上質感を重視すると、一般的にはサクラが魅力的だろう。そこに店舗数の違いも加わり、2022年7~9月におけるサクラの届け出台数は1か月平均で約3700台、eKクロスEVは700台少々に留まった。

 それでも三菱の販売店では「三菱車のセカンドカーとして使われるお客様には、(今の三菱車に共通する)ダイナミックシールドのフロントマスクが人気を得ている」という。これも納得できる話だ。自宅の車庫にアウトランダーやデリカD:5と並べて駐車するなら、サクラよりもeKクロスEVのフロントマスクがピッタリだ。サクラは電気自動車の個性、eKクロスEVは三菱車の持ち味を重視する。

 そして両車では納期も異なる。日産の販売店では「サクラは納期が約1年に達したから、受注を一時的に停止した」という。三菱では「eKクロスEVの納期は約半年で、今のところ受注は止まっていない」と述べた。納期を重視するなら、eKクロスEV。

 さらに三菱の販売店では、補助金に関する話も聞けた。「経済産業省の補助金は、(2022年)11月上旬には予算を使い切って終了すると見られている。今年度の補助金に間に合わなかった場合は次年度に申請するが、交付を受けるには、新車登録日(軽自動車は新車届け出日)の翌々月の末日までに申請書を提出せねばならない。

 このときに補助金を受け付けていないと交付を受けられないから、お客様が希望すれば車両を預かり、登録を遅らせる。それにより次年度の補助金を受け取られるように配慮している」。

 新車を預かるといっても、長期間にわたって保管するにはコストを要する。補助金の交付は、ユーザーや販売店にとってメリットになるが、そのために困惑したりコストを費やしている面もあるわけだ。補助金に予算があるのは分かるが、予め締め切りを決めて、それまでに申請された分は漏れなく交付すべきだ。そうしないとユーザーや販売店が困惑したり、コストを費やすことになってしまう。

 それが無理なら、次年度の補助金を今年度まで遡って申請可能にするなど、「補助金を受け取れない期間」が生じないように配慮して欲しい。岸田文雄首相も、同様の方針を示したと報道されている。サクラやeKクロスEVを安心して購入できるようになれば、軽自動車サイズの電気自動車が、新たなカテゴリーとして人気を高める可能性も高い。

 日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住んでいて、自宅に充電設備を設置しにくい。残りの60%は一戸建てに住むが、複数の小型/普通車を所有するには、広い駐車スペースと高い維持費が必要だ。そのために軽自動車を併用するユーザーが多く、サクラやeKクロスEVは、そこにしっかりと食い込んでいる。

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  • 結局は補助金がなければ売れない車。これがなくなった後どうするかまで考えているのだろうか。
  • バッテリー性能と充電インフラ考えたら現段階で買ってもいいと思えるのは軽EVだけ。通勤や近所の買い物用のセカンドカーに良さそう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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