昭和の遺産か再生資源か
皆さんは、現在のバスターミナルにどのような印象を持っているだろうか。バスの専門家である筆者(西山敏樹、都市工学者)は日本各地のバスを取材しながら利用しているが、近年バスターミナルの活気が失われつつあると感じている。
滋賀「米原駅」がびっくりするほど栄えてない理由 新幹線が停まるのになぜ?2
モータリゼーションの進展、人口減少、さらにはコロナ禍の影響により、高速バスや路線バスの廃止・減便が進み、利用者が減るのは当然の流れだ。
多くのバスターミナルは、バスの需要が高かった昭和時代に整備されたままの状態が続いている。しかし、
・鉄道との結節点として機能するケース
・地域の公共交通の拠点となるケース
もあり、依然として一定の需要はある。2024年問題なども踏まえれば、バス事業者としては収益向上の糸口を見出したいところだ。今回は、バスターミナルの在り方について改めて考えてみたい。
バスターミナルの新たな役割
本稿の執筆にあたり、各自治体が公表している路線バスの利用目的に関するデータを改めて参照した。
・北海道士別市
・埼玉県久喜市
・千葉県四街道市
・東京都三鷹市
・静岡県袋井市
・兵庫県加西市
・愛媛県新居浜市
など、日本各地のデータを見直したところ、通勤や通学を除けば、
・通院
・買い物
・公共施設利用
が主要な目的となっている。つまり、路線バスは日常生活における移動手段として機能しているのだ。
公共施設への移動ニーズには、役所や役場での手続きだけでなく、コミュニティーセンターでの趣味・交流活動や、スポーツセンターでのスポーツ交流活動も含まれる。こうした生活ニーズを踏まえると、バスターミナルを単なる乗降拠点ではなく、
「地域住民の移動需要をより幅広く満たす場」
として活用できるのではないか。
買い物機能を備えた次世代バス拠点
最近のバスターミナルや折り返し場におけるイノベーションの事例を紹介する。
福井県坂井市の丸岡バスターミナル交流センターでは、交通結節点としての機能だけでなく、地域のにぎわいを生み出す拠点としての役割を果たしている。丸岡城の玄関口でもあるこの施設は、木造瓦葺の2階建てで、1階には飲食スペース、待合ギャラリー、キッズスペース、バス待合室、事務所がある。2階には多目的ルームが設けられ、屋外にはマルシェや朝市にも活用できる「にぎわい広場」と「にぎわい回廊」を備えている。これらのスペースは、市長の許可を得れば利用でき、多目的ルームや待合ギャラリーも貸し出しが可能だ。利用料は多目的ルームが1時間200円、にぎわい回廊の物販スペースが1区画1時間400円となっている。
定期的に物販スペースが活用されれば、バスターミナルでの買い物が日常化する可能性がある。仮に1日5時間、20日間利用した場合、にぎわい回廊のスペース使用料は4万円となり、一般的な店舗を借りるよりもコストを抑えられる。多目的ルームなら同条件で2万円に収まる。バス事業者がバスターミナル内で物販を展開し、買い物支援と地域貢献を両立しながら収益を確保する方法も考えられる。さらに、バスで往復して買い物をした利用者に対し、運賃の一部を割引くインセンティブを設けることも可能だ。
一方、小田急バスは、東京都調布市の「晃華学園東」バス折り返し場を活用し、新たな複合施設「meedo(みいど)」を今春開設する予定だ。バスターミナルの規模ではないものの、「なりわい暮らし」を実現する場として、住居と商業が共存する形をとる。三鷹駅からの路線バスが発着する閑静な住宅地に位置し、店舗兼用住宅、土間付き住宅、シェア店舗、井戸のある広場、バス待合所などで構成される。
この地域は、国分寺崖線から湧き出る豊かな水が魅力で、住宅地としての人気も高い。小田急バスの公表資料によれば、1階部分に広い土間を設けた店舗兼用住宅では、カフェや飲食店、地場産野菜の販売などを想定している。さらに、入居者や近隣住民が活用できるシェア店舗の設置も予定されている。加えて、カーシェアリングやシェアサイクルの拠点としての機能も備える。
バス折り返し場に買い物機能や地域交流の要素を加えるこの計画は、地域コミュニティーの形成を促す点で注目に値する。日常の移動のなかで、バスを利用したちょっとした買い物や交流の機会が生まれることが期待される。
なお、小田急バスは「meedo」に先駆けて、武蔵野市桜堤にあるバスターミナルを地域交流拠点「hocco」として開発し、高い評価を得ている。バスターミナルに店舗併用の賃貸住宅を組み合わせることで、地域コミュニティーの活性化に成功した。このような取り組みを重ねることで、バスターミナルの新たな可能性が広がっている。
モバイル行政サービスの挑戦
筆者の研究室では、鉄道車両を移動型のスーパーにし、駅で買い物をしてもらう「買い物列車」を企画・運行し、その評価を行ってきた。同様に、十勝バスはバス車両そのものを移動スーパーとして活用している。バスを利用すれば、店舗スペースの賃料が不要となる点が利点だ。
一方、福島県いわき市では、バンを出張行政サービス車両に改造し、「お出かけ市役所」として2021年から2022年にかけて実証実験を実施した。これは、中山間地域の行政サービス向上やスマートシティ推進を目的とした取り組みであり、同様のコンセプトをバス車両に応用し、バスターミナルに配置するアイデアも考えられる。
病院機能を備えたバスの実現は難しいかもしれないが、過去には横浜駅構内に「ケアプロ東急横浜駅店」が開設され、ワンコイン500円で健康診査を受けられる事例もあった(2011年8月12日開店)。医療従事者によれば、利便性の高い場所で低価格の健診施設を提供する需要は今後も増すと考えられる。筆者の研究室では、高齢社会を見据え
・メディカルトレイン
・メディカルバス
といった、移動型のクリニックや病院の構想を持っている。
バスターミナルを活用した買い物支援の取り組みはすでに進みつつあるが、今後は行政サービスや医療機能を組み込むことも検討すべきだ。バスの特性を活かし、モバイルライフスペースとして機能させ、バスターミナルやバスの折り返し場を拠点に市民サービスを提供することも十分に可能だろう。
さらに、バスと連携するパーソナルモビリティや自転車の貸出ビジネスを導入すれば、地域のライフステーションとしての集客力が一層高まるはずだ。
地域拠点化で収益増加
バスターミナルやバスの折り返し場には、各方面からバスが集まってくる。地域交通の中心であるバスターミナルに行けば、買い物、通院、公共施設といった生活上の三大ニーズを一度に満たすことができれば、移動に対する抵抗感が減り、利便性が向上するだろう。
経営が厳しいバス事業者にとって、上記のような例やアイデアを取り入れ、買い物、通院、公共施設の機能を組み込むことで、新たな収益源を得るチャンスが広がる可能性がある。読者のなかには現実的な観点から否定的な意見もあるだろうが、本稿で述べた内容は、バスの車両がモバイルライフスペースとして機能する柔軟性を考慮し、バスターミナルを集客の拠点とするアイデアである。
まちづくりの拠点として、坂井市のようにバスターミナルを積極的に活用している事例も存在する。産官民の連携を前提にしたバスターミナルの地域拠点化を提案したい。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
ロシア軍の「超重要な機体」危うし!? 空軍基地で“巨大な爆発”が発生か 配備されている機体とは
ついに「クルマの税金」来年度から大きく変わる? 抜本的な見直しは可能なの? 準備はいま、どのように進められているのか
80年ぶりの帰国! 国内現存ゼロの「激レア日の丸戦車」里帰り成功 ボロボロだけど「3年後には動かします」
8年ぶり全面刷新! 日産「新型SUV」まもなく登場へ!? スゴイ4WD搭載の「パワフルモデル」? 流麗な“クーペボディ”採用? 「新リーフ」どんなモデルになるのか
日産「新型エルグランド」登場へ! 待望の「キングオブミニバン」全面刷新で「強敵“アルヴェル”」打破なるか! 新たな日産「最上級ミニバン」どうなるのか
嘘だろ [日本製鉄]の米国への訴訟は日本全体の[イメージダウン]になるってホントかよ!?
「国鉄の乗務員 = 態度悪かった」は本当? SNSで議論白熱! 懐かしき昭和の記憶! あなたの場合はどうだった?
「善意を踏みにじるな」 おたる水族館「無料ベビーカー」消失でSNS炎上! 犯人は誰? 性善説もはや崩壊? 感情論を排した解決策を考える
ついに「クルマの税金」来年度から大きく変わる? 抜本的な見直しは可能なの? 準備はいま、どのように進められているのか
【マイチェン情報】新型「ステップワゴン」登場は5月。デザイン変更、ブラックエディション&上級仕様エアーでライバルを追撃
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
ちゃんと屋根を作るか建物の一階部分にして欲しいですね。