ホンダの量販EV(電気自動車)「ホンダe」に小川フミオが試乗した。はたして、キュートなEVの魅力とは?
注目度バツグン!
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全長3895mmにすぎないコンパクトなハッチバックなのに、ホンダeは、存在感が大きい。かたちはシンプルでも、一瞬で忘れてしまうたぐいでなく、ずっと記憶に残る。乗っているときだけでなく、乗り終わったあとも、操縦しているときの感覚がよみがえる。
かつてフランスの思想家、ロラン・バルトは、シトロエン「DS」というクルマを“カテドラル”にたとえた。その伝でいうと、ホンダeは軽やかさにおいて、テントぐらいかもしれない。ただし、スノーピークのそれのように、作りはよく、自由で、生活をゆたかなにしてくれる道具といったかんじだ。
H.Mochizukiホンダeの販売開始は(2020年)10月30日とされるものの、9月初頭には、ホンダの会員制レンタカーサービス「EveryGo(エブリ・ゴー)」で借りることが出来た。青山本社をはじめとして東京、神奈川、大阪、福岡の各拠点に計10台導入して8月27日からレンタルが始まっているのだ。
東京・代官山の「代官山T-SITE」でのローンチイベントでの試乗などをべつとすれば、つまり、日本でドライバーが好き勝手に乗れるホンダeは10台しかない。その時点での東京都内の試乗だったため、よく目立った。
道ゆくひとがスマートフォンで撮影するのは当たり前。印象的だったのは、多くのひとが笑顔で、見ていた点だ。私の経験からいって、これまでこんなふうに目立ったのは、過去に3回。日産「Be-1」、トヨタの初代「RAV4」それにフィアットの「クーペフィアット」に乗っていたときだ。
いずれの場合も、周囲のひとが満面の笑みで「どうですか?」とか「このクルマ、なんていうんですか?」とか、話しかけてきたのが楽しかった。真っ青な空の下、「チャージイエロー」なる外板色のホンダeにも、おなじようなパワーがあるのだなぁ、と、感心した。
“ナチュラル”な走り
じっさい乗ると、とても印象ぶかいクルマだ。ひとことでいうと、すべての感覚が“ナチュラル”なのだ。足まわりはしなやかに動き、ノイズはほとんどなく、加速も減速も運転する私の気持ちにさからわない。ハンドリングはすなおで、コーナリングはボディのロールが少なく、気持よい動きを見せる。よく出来ているのだ。
試乗した上級グレードの「アドバンス」に搭載されるモーターの出力は113kW(標準モデルは100kW)。最大トルクは標準モデルとアドバンス共通で、315Nm。
H.MochizukiたとえばBEV(バッテリー駆動のピュアEV)でいえば、日産「リーフ」のパワフルなモデルは160kW。数値的にはだいぶ差があるものの、ホンダeを走らせての印象はパワフルだ。ドライブモードに「スポーツ」の設定はあるが、標準モードで充分。都内の道をすいすいと走ってくれた。
ドイツ製のBEVなどは“鋼(はがね)の機械”というイメージであるいっぽう、ホンダeはやわらかい。そう思った第1の理由は、当たりのやわらかいサスペンションのせいだ。少なくとも都内の道では路面状況にかかわらず、凹凸をきれいに吸収してくれるうえ、フラットな姿勢を保つ。
乗り心地の快適さはリアシートにいても同様。乗りこむとき、ルーフがサイドまでまわりこんでいるので頭をぶつけないよう注意する必要があるものの、乗りこんでしまえば、身長175cmの私でも、ヘッドルームにもニールームにも余裕があった。落ち着いていられる空間だ。
BEVのメリット
ホンダは、ホンダeを都市型のBEVとして設定。満充電時の航続距離は標準モデルで283km、アドバンスで259kmとしている。私としては、たとえ航続距離がその倍あっても、渋滞のなか遠出をする勇気はいまだ持てない。都市型BEVという考えの支持派である。
すでによく書かれていることなので、ここで繰り返すのは恐縮であるものの、ホンダは、ホンダeをリアモーター/リア駆動とした理由として、フロントをすっきりさせることで回転半径を小さくし、取りまわしをよくしたかったことを挙げている。
H.Mochizukiこの“すっきり”のなかには、衝突安全構造という要素も大きかったはずだ。昨今のクルマの大型化は、衝突安全性を担保するため、とはよくいわれることだ。モーターやインバーターなどをリアに移し、そのぶん、フロントの衝撃吸収構造をしっかり作りこんだのは、BEVのメリットを活かしたものといえる。
いっぽう、BEVと後輪駆動の組合せは、操縦安定性の面で課題を残す。制動時に発電し、バッテリーに充電するいわゆる回生ブレーキは後輪に作動する。コーナーの手前でブレーキをかけると、そこで回生ブレーキが働く。
たとえば路面の摩擦係数が低いときなど、そのままでは後輪が不安定になる危険性がある。そこでホンダのエンジニアは、4輪のブレーキを電子制御で最適化し、車両の動きが安定するように設定している。今回の試乗でそのような場面には遭遇しなかったものの、気になるところではあると思うので、記しておきたい。
ほっこりするインテリア
デジタルカメラを使った「サイドカメラミラーシステム」のモニターが、ダッシュボード左右に搭載されている。これが予想以上に使いやすかった。同様のカメラを使ったシステムは、レクサス「ES」やアウディ「e-tron」にも搭載されているが、170万画素の高精細カメラとともに標準装備にしたのはホンダeが初めてという。
画像は鮮明で、視線の移動も実際の鏡面ミラーと変わらない。混んだ道のなかをすいすい……と、走ろうというときも、まったく不安はなし。便利で、たいへん好ましい。
私がホンダeの実車を最初に見たのは、2019年4月にイタリアで開催されたミラノ・デザインウィークの特設会場だった。そのときホンダeは、北欧家具に囲まれて、“ちょこん”というかんじでインテリアのなかに置かれていた。
家具との相性はともかく、ホンダeが印象的なのは、インテリアだ。それもダッシュボードである。複数のモニタースクリーンが並べられているのだ。
ひとつはデジタルの計器類、そのとなりにある2つのモニターは12.3インチのものをふたつ並べた「ワイドスクリーン Honda CONNECTディスプレー」。ナビゲーション、インフォテインメントシステム、ホンダコネクト、などさまざまな機能を受け持つ。
ユニークなのは、画面の左右入れ替えボタンがそなわっている点だ。これを操作すれば、2つのモニターが入れ替わる。走行中などとくに、運転席のひとに代わって、助手席のひとが、ナビゲーションなどの操作を受け持てるのだ。実際、使い勝手がよさそうであると思った。
「オーケイ、ホンダ」の掛け声で起動する会話型のボイスコマンドの「Hondaパーソナルアシスト」も、慣れると、なかなか楽しそうな機能だ。オーディオ、ナビゲーションシステムなど、さまざまなコマンドを受け付けてくれる。顔のようなアイコンがさまざまに変化するのも、ユーモラスだ。
スマートフォンがキーのかわりになって、ドアの解錠からパワーシステムの作動までおこなえる。さらに、充電の管理や乗りこむ前のエアコン操作などもスマートフォンで出来る。このあたりは説明の写し。本来は、自宅にあってこそ、真価のわかるシステムだろう。
価格は451万円から
ホンダeのシステムを使いこなすには、オーナーになるのが1番だ。私は短時間の試乗で、このクルマを好きになることは出来たとはいえ、堪能するまでにはいたらなかった。それが心残り。
「リビングルームにいながら移動しているような新体験」をホンダeはもたらしてくれる、と、ホンダでは説明する。あながち誇張ではなさそうだ。iPhoneがあっというまに生活のなかに溶け込んだときのことを思い出した。未来がほんとにここまで来た、と思った。
価格は「ホンダe」が451万円、「ホンダeアドバンス」が495万円。競合では、リーフの40kWh仕様が332万6400円から、62kWh仕様が441万1000円からだ。
輸入車をみると、BEVの先駆的存在であるBMW「i3」は499万円から。ジャガー「I-PACE」は976万円から、メルセデス・ベンツ「EQC」は1080万円から。これにまもなくアウディ「e-tron」がくわわる。そんななかにあって、ホンダeがこの世界をおもしろくしてくれるのは間違いなさそうだ。
文・小川フミオ 写真・望月浩彦
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みんなのコメント
リア駆動で素直なハンドリング。
未来的なメーターパネルやインテリア。
チャレンジングなホンダらしい楽しそうなクルマ。
だが、乗り出し500万。
こんな町乗りEVを求める層には決して手が出ない価格設定。
ホンダよ、これでいいのか?
都市にはマンションが多く充電設備が自宅に用意できない人が多い。
一方、ガソリンスタンドの廃業が多く、給油に困ってEVが欲しい田舎は持ち家率が高く、充電設備(200vコンセント)など簡単に設置できるが、長距離移動が多いので航続距離の長いEVを求める…。
今のホンダ車に共通する、発売した瞬間から売れない気配満々です。