BYDの支配力が極大化している中国市場
中国市場における最直近の3月度における電気自動車の販売動向が判明し、歴史上最高の電動化率を更新するという快挙を達成しながら、BYDとテスラの支配が続いている様子も判明。そして、BYDの在庫切れ、ファーウェイとシャオミの台頭というキーワードから、4月以降の展望について解説します。
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中国市場に関しては、2月中は春節が丸々かぶってしまっていたために、自動車市場全体が停滞していました。その煽りを受けてとくに値下げ競争や新型車攻勢の強いEVに対しては様子見ムードが広がってしまい、EVの販売比率が低下してしまっていたという背景が存在します。そして、春節が明けてから各社の販売体制が本格化したことを受けて、2024年初めてといってもいいい、本格的な1カ月において、どれほどのEV販売台数を実現しているのかに大きな注目が集まっていたわけです。
まず、中国市場におけるバッテリーEVとPHEVの合計を示した新エネルギー車の販売台数に関しては70.9万台と、前年同月に記録していた54.6万台という販売台数と比較しても、なんと30%もの販売台数の増加を記録しました。
そして、その新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率は、黄色のラインで示されているとおり42.03%と、歴史上最高の電動化率を更新。さらに、2021年以降の3月単体での電動化率は、それぞれ10.6%、28.1%、34.3%、そして今年である2024年の42%と、着実に成長している様子が見て取れるわけです。
とくに2024年シーズンについては、前年同月比で電動化率が7.7%も上昇。2023年シーズンは前年同月比で6.2%の上昇であったことから、むしろ電動化率の上昇度合いが加速しているレベルです。
いずれにしても、春節が明けてからは一気に新エネルギー車への需要が増大している様子が見て取れます。
一方で注目するべきは、その新エネルギー車のなかでも、ピンクで示されたバッテリーEVと、水色で示されたPHEVの販売割合です。
黄色のラインで示されているのが、新エネルギー車全体に占めるバッテリーEVの販売比率です。このとおり数年前というのは9割近い割合がバッテリーEVでした。つまり、新エネルギー車=バッテリーEVであったものの、最直近である2024年3月単体では60.37%と、そのシェア率が大きく減少しています。
現在は、新エネルギー車のうち6割がバッテリーEVであり、残りの4割がPHEVという、水色のPHEVの販売シェアが急速に増加している様子が見て取れます。
実際に、バッテリーEVに絞った月間販売台数の変遷を見てみると、このとおり最直近である2024年3月単体では25.37%を達成。2021年から、9%、22.7%、24.3%、そして今回の25.4%という流れをみると、そのバッテリーEVシェア率の伸びが鈍化してしまっている様子が見て取れます。
販売状況が安定化する3月単体を見ても、やはり中国市場に関しては、新エネルギー車全体のボリュームは着実に上昇し、むしろそのペースが増加傾向にすらあるものの、バッテリーEVという観点では微増に留まっており、この1年ほどはシェア率25%以上の壁を大きく突破することができていないわけです。
つまり中国市場において、なぜPHEVの販売シェア率が急上昇を見せているのかを考察する必要があるわけです。
また、この新エネルギー車の販売シェア率の好調ぶりとともに懸念するべきは、内燃機関車の販売動向です。じつは内燃機関車の販売台数については、前年同月比で6.4%もの落ち込みを記録。新エネルギー車が30%もの増加を記録していることを踏まえると、明確に販売シェアを奪われている様子を確認可能です。
そして、それ以上に気になるのは、週間保険登録台数の数値との比較という観点です。このグラフは2024年シーズンに突入してからの、新エネルギー車の販売比率を週間ベースで示したものです。この通り、とくに3月に突入している第9週以降、歴史上最高の48.38%を最高点として、40%中盤というシェア率をキープしています。
その第9週から第13週通しでの新エネルギー車の販売比率は45.5%と、すでに新車全体の半数近くが新エネルギー車に置き換わってしまっている状況です。
また、3月の月間販売比率を見てみると、そのシェア率は42%であったことから、週間保険登録台数の数値の方が、新エネルギー車の販売比率が高いことが見て取れます。これは何を意味するのかというと、内燃機関車の保険登録台数が、小売台数よりもかなり下まわっていることを示しています。
要するに、とりあえず3月の販売台数を最大化するために出荷してはいるものの、在庫車両として内燃機関車がより多くディーラーなどに溜まってしまっている可能性があるということです。それを総合すると、じつは42%という数値以上に、新エネルギー車のほうに勢いがある、もしくは内燃機関車の売れ行きが想像以上に悪いことを示唆している可能性があるわけです。
それでは、この中国市場においてどのようなEVが人気となっているのかを確認しましょう。まず3月単体のNEV販売でトップに君臨したのが、BYDの大衆セダンQin Plusです。春節が明けた2月中旬に、2024年モデルであるHonor Editionを発売し、このQin Plusの兄弟車であるDestroyer 05とともに、爆発的な販売台数を達成中です。
在庫車は完売で納期が伸びてしまっている状況ですが、すでにBYDは問題解決へと乗り出しており、4月以降の生産能力をアップすることで、さらに販売台数が伸びる見込みです。
また、テスラモデルYが第2位にランクインし、世界でもっとも人気の自動車としての存在感を示すなか、第3位以降については、Song Plus、Seagull、Song Pro、Yuan Plus、Han、そしてDestroyer 05と、すべてBYDのEVが支配している状況です。トップ10のうち、BYDのEVが7車種という、これまでにも増してBYDの支配力が極大化している状況なわけです。
実際にこのグラフは、中国国内における主要な大衆車ブランドの四半期別の販売台数の変遷を比較したものです。黄色で示されたBYDが、2022年第四四半期以降、一貫してトップの座に位置。直近の2024年第一四半期に関しても例外ではなく、前年同四半期と比較しても6万台以上販売台数を伸ばすことにも成功。2位につけるフォルクスワーゲンとの差をさらに広げている状況です。
他方で、この主要メーカーのなかで気になるのがトヨタとホンダの存在です。まず水色で示されているホンダについては、四半期で23.4万台と販売規模が明確に縮小し、トヨタにも大きな差をつけられてしまっている状況です。
そしてそれ以上に、緑で示されたトヨタについては、この主要メーカーのなかで唯一、前四半期と比較して販売台数を落としている状況です。2023年シーズンは、既存メーカーのなかで唯一といってもいいほど販売規模をなんとか維持することができていたことから、いよいよトヨタをもってしても、販売規模を維持することが難しくなり始めているのではないかと推測できるでしょう。
このグラフは、1月から3月までの、販売の伸びが鈍化しているバッテリーEVの累計販売台数を示したものです。3カ月間で10万台というモデルYの盤石ぶりが見て取れるものの、その後については、Seagull、Yuan Plus、Hong Guang Mini EVを挟んで、ドルフィン、Qin Plus EVと、やはりBYDが圧倒的な存在感を示している状況です。
また、個人的に注目したのは、中国ジーリーのプレミアムEV専門ブランドであるZeekr の存在です。第18位にシューティングブレークのZeekr 001、第20位にはミッドサイズセダンのZeekr 007がランクイン。どちらも極めて競争力が高いことから、競争の激しい中国市場においても、しっかりと販売台数を伸ばしている様子が見て取れます。
BYD・ファーウェイ・シャオミによる内燃機関車からの解放戦
それでは、この中国市場における展望について、バッテリーEVの停滞が続くのか、そして既存メーカーのさらなる苦悩というふたつの観点から考察していきたいと思います。
まず初めに、バッテリーEVの停滞が続くのかという観点について、結論から申し上げると、シェア率についてはもう少し上昇するものの、概ね30%程度で足踏みをする可能性が高いと推測しています。
というのも、まず大前提としてバッテリーEVの販売台数自体は4月以降大きく上昇するポテンシャルを秘めています。なかでも大きなポテンシャルを秘めていると考えられるのが、プレミアムセダンセグメントです。
このグラフは、モデル3を筆頭として、Avatr 12、Luxeed S7、Zeekr 007、そしてシャオミSU7といった、プレミアムセダンEVの週間登録台数の変遷を示したものです。とくに最直近のデータである4月1日からの週に関しては、モデル3が登録台数を大きく落とすなか、ファーウェイのLuxeed S7とシャオミSU7がどちらも1000台以上を実現しています。
S7に関しては、これまで生産を委託するCheryの生産体制の制約の問題、並びにS7に採用されているADAS用のチップであるMDC-810の供給不足によって、大幅に生産台数が制限されていたという背景が存在します。4月以降は生産の制約が解消されたことで急速に販売台数を伸ばすでしょう。
いずれにしても、ファーウェイとシャオミというスマホの巨人のEVたちの存在によって、とくに競合となる、ドイツ御三家の3シリーズ、A4、Cクラスという内燃機関車の販売台数を大きく奪う可能性があるわけです。
次に、既存メーカーのさらなる苦悩という観点として、やはりなんといっても、BYDによる極限のプレッシャーという観点を指摘せざるを得ません。
このグラフは、大衆セダンセグメントの週間登録台数の変遷を示したものです。現在Qin PlusとDestroyer 05の存在によって、日産シルフィやトヨタ・カローラ、ホンダ・シビック、フォルクスワーゲン・ラヴィダなどの既存メーカーの内燃機関車の販売台数がまったく戻ってきていません。BYDの生産体制が増強された暁には、さらにその差が広がることは確定的でしょう。すでに大衆セダンセグメントについては、BYDの手に落ちたといっても過言ではありません。
さらに、この流れは大衆SUVセグメントにも波及中です。BYDのSong Plus、Song Pro、Yuan Plusという強力なEVたちの存在によって、トヨタ・カローラクロスやRAV4、ホンダCR-Vといった内燃機関車の販売規模が戻ってきていない様子が見て取れます。
よって、既存メーカーの販売台数の稼ぎどころでもあった大衆セグメントの内燃機関車が、この4月以降も販売台数を回復できず、これまでとは異なる、より一層の販売台数減少というリスクに直面する可能性が高いわけです。
したがって、その内燃機関車からの解放戦の真っ最中であるBYDに関しては、まずは既存メーカーの内燃機関車のシェアを奪うために、Honor Editionによる大幅値下げによって、内燃機関車と同等の値段にまで引き下げることで、PHEVへの転換を促して、その効果が現れ始めているわけです。
こうなると、バッテリーEVの普及スピードよりも早く、BYDのPHEVがシェアを伸ばすことによって、現在のトレンドである、PHEVのシェア上昇トレンドが1年ほどは持続するものと見られます。
ただし、2025年中旬を境にバッテリーEVがもう1段階巻き返しを図るとも推測しています。具体的には、
・中国EV市場の話題の中心であるシャオミ、そしてファーウェイについては、SU7やS7の生産能力の増強を完了させているタイミングであるということ ・BYDに関しては、2024年後半にも第二世代のBlade Battery、および次世代EVプラットフォームであるe-platform4.0を発表見込み。EV性能が飛躍的に向上することで、PHEVからのリプレイスが進み始めるのではないかということ ・NIOとXpengの大衆車ブランドが2024年後半にも発売をスタート、その生産能力が増しているのが、2025年前半ごろになる見込みであるということ
したがって、これらの動向から、今年である2024年シーズンについては、BYDによる内燃機関車からの解放戦によって、まずは内燃機関車からPHEVへの置き換えが急速に進み、とくにPHEVの躍進がフォーカスされる一年となる見込みです。
一方で、2025年中盤以降については、その内燃機関車からの解放戦に加えて、今度はPHEVも含めた解放戦が幕を開けるわけです。とくにBYDだけでなく、ファーウェイとシャオミ、そして中国EVスタートアップたちによる大衆ブランドの生産体制が大幅拡充されることで、2025年後半からは、バッテリーEVがこれまでにはない躍進を見せ始めるのではないかと推測できるのです。
いずれにしても、この3月の中国EVシフト動向については、歴史上最高の新エネルギー車の販売シェア率を更新しながら、なんといってもそれをリードしているのが、中国BYDのHonor Editionによる内燃機関車からの解放戦です。さらにファーウェイとシャオミに関しても、4月からの週間登録台数において登録台数が急増し始めています。
そしていよいよ、日本メーカーを筆頭とする既存メーカーたちの内燃機関車が、明確に販売ペースを落とし、その販売ペースが戻らなくなり始めている状況であり、内燃機関車からの解放戦が不可逆的なものとなり始めている様子が見て取れます。
この中国市場における不可逆的なEVシフトがどのように推移していくのか。4月末の北京オートショーにおいて発表された、さらなる新型EVの動向についても含めながら、最新動向をウォッチする必要があるでしょう。
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みんなのコメント
中国は自動車用のマトモなエンジンを作ることができない。韓国も同様で今でも三菱の古いGDIエンジンをコピーしたモノを作るのがやっと…
そもそも、中国や韓国がBEVに注力し続ける最大の理由がコレ
どちらにしろ、中華製には魅力が全くないのが現実