幅広い能力を持つ現代のスーパーカー
動力性能、サウンド、デザイン、質感、快適性など、さまざまな観点から特に優れたスーパーカーを11台紹介する。
【画像】V6を甘く見てはいけない! 刺激的な最新ハイブリッド【フェラーリ296 GTBを写真でじっくり見る】 全27枚
30年ほど前は、パワフルなミドシップエンジンを搭載したスーパーカーを見かけることは稀だったが、今日ではサーキット以外でも頻繁に目にするようになった。
「スーパーカー」の定義はやや流動的で曖昧だが、基本的には、エキゾチックで特異な外観と、他を圧倒するパフォーマンスとハンドリングを持ち、郊外の一戸建てと同じくらいの価格で販売されるもの……と考えていいだろう。真の億万長者しか買えないような数億円単位のハイパーカーは別の機会に取り上げたい。
近年のスーパーカーは、純粋なガソリンエンジン車からプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)まであらゆるモデルが混在している。エンジン自体のレイアウトも驚くほど多様で、V6ターボ、自然吸気V10、フラットプレーン・クランクV8などが競い合っている。
加えて、能力の「幅」も必要だ。多くのオーナーは天気の良い日や休日以外にも使いたいと考えているため、ある程度は日常的に使えるものでなければならない。
1. フェラーリ296 GTB
長所:唯一無二にして自由自在なハンドリング、瞬時の加速力、技術面での魅力
短所:公道ではやや速すぎる、硬すぎると感じることがある
純粋なミドエンジン車であるF8トリブートの終焉を心配するフェラーリファンも少なからずいた。PHEVに置き換われば、先代の面影はなくなるに違いない……と。しかし、実際にはそんなことはなかった。
SF90ストラダーレは猛烈な速さを誇るが、ちょっとトゲのあるキャラクターで、フェラーリの試行錯誤を象徴していた。一方、より小型で価格も低い296 GTBは、センセーショナルなほどよくできている。あまりの出来栄えに、マラネロの人たちが何か勘違いしているのではないかと心配になるほどだ。
このクルマの心臓部には新開発の3.0L V6ツインターボエンジンが搭載され、最高出力166psの電気モーターと組み合わされることで合計出力830psという驚異的なパワーを発揮する。ご想像通り、パフォーマンスは容赦なく、荒々しくセンセーショナルで、さらに電気のみの航続距離は25kmと謳われている。
重要なことに、エンジンのフィーリングとサウンドは他のどのモデルにも負けない特別なものであり、あらゆる入力に熱意をもって反応し、12気筒と錯覚させるような咆哮を聞かせてくれる。
さらに驚くべきは、これほどのパワーとポテンシャルを持つクルマでありながら、非常に親しみやすく魅力的なものに仕上がっているということだ。トレードマークであるクイックなステアリングは、まだ少々過剰な部分もあるかもしれないが、コーナー中盤のバランス、コントロール性、安定性には目を見張るものがある。
296 GTBは、ただひたすらに「頂点」を追ったマシンなのだ。運転支援システムやさまざまなドライブモードが満載されているが、常にナチュラルで、ドライバーの側にいるように感じられる。
驚くべきスーパーカーであり、電動化が必ずしもドライバーの感動を減らすわけでないことを示す1台だ。
2. ランボルギーニ・レヴエルト
長所:9000rpmまで回る壮大なV12エンジン、超優秀な非対称トルクベクタリング、見る者のハートを射止めるルックス
短所:ランボルギーニ特有のタイトなキャビン、重量級の車体、高価
ミウラ、カウンタック、ディアブロのラインを受け継ぐランボルギーニのフラッグシップモデルが、ついに電動化時代に突入した。ライバルがエンジンを小排気量化したりターボ化したりする中、ランボルギーニではなぜか、大排気量のV12エンジンを維持している。それもそのはず、このエンジンがなければ「ランボ」のフラッグシップたりえないからだ。
レヴエルトは3基の電気モーターと、かなり小型の駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、その重量を相殺するためにこれまでで最も革新的で高剛性、軽量なカーボンファイバー・モノコックを採用している。エンジンと合わせた合計出力は1015ps/9250rpmに達する。
乾燥重量は1800kg弱で、0-100km/h加速はわずか2.5秒、最高時速は350km/hとされる。スーパーカーとしては明らかに重いが、フロントアクスルの非対称トルクベクタリング(2基のフロントモーターによる)が、ハンドリングに大きな影響を与えている。
これまでのV12ランボがそうであったように、グリップの限界に近づくにつれてコントロールを離れていき、物理的な言葉で限界点を表現する。しかし、フロントモーターがターンインとコーナリング・エイペックスで車体を安定させ、出口でもラインから外れないように仕事をする。
このような巨大なスーパーカーが、ドライバーの意図した方向にただ進みながら9000rpmを超える回転数で絶叫する光景には、深い感銘を覚える。これはエンジニアリングの偉業である。その証拠に、電子制御スタビリティをオフにすれば……あとは説明不要だろう。
弊誌はまだレヴエルトをサーキットでしか試乗できていない。しかし、公道で試乗した暁には、スーパーカーの中でも最高の部類に入ると期待している。圧倒的にドラマチックな体験と背筋が凍るような臨場感を味わえるだろう。
3. マクラーレン・アルトゥーラ
長所:この上なく軽いタッチで行われた電動化の恩恵、公道でも鮮やかに楽しませてくれる
短所:広角V6エンジンのサウンドはそれほど魅力的ではなく、ややパンチに欠ける
マクラーレンはここ数年、厳しい状況に耐えてきた。世界の多くの国が不況にあえぐ中で、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェなどの宿敵が好調な利益を上げているのは、富裕の買い手が増えているからだ。しかし、マクラーレンはその流れを十分に生かすことができなかった。そのため、10年以上ぶりに一から設計されたアルトゥーラの成功に大きく依存している。
カーボンファイバー構造や電気アーキテクチャーなど、これまでのモデルとはほとんど何も共通化していない。そして、ツインターボの3.5L V6エンジンと電気モーターと組み合わせたPHEVとなっている。電気駆動装置は可能な限り軽量化を追求しており、モーターとバッテリーの重量はわずか130kg。また、30kmのEV走行を謳っている。
合計出力は680psに達するが、電気モーターのトルクによって、数字から想像されるよりも速く感じさせる。サウンドも良く、シャシーはマクラーレンに期待される通り、ドライバーとの距離感を縮めるとともに十分なダイナミクスを発揮する。マクラーレンは油圧機構のステアリングにこだわっており、指先にこれほど鮮明な情報を提供できるスーパーカーはライバルにもほとんどいない。
素晴らしい1台だが、ナンバーワンでないのには理由がある。アルトゥーラは開発に難航し、微調整のために何度も発売が延期されたにもかかわらず、本質的には未完成だからだ。初期に生産された車両から、ソフトウェアの不具合、品質管理の問題、そして奇妙な故障が数多く見つかっている。何度も言うが、素晴らしいクルマであることは間違いない。ただ、顧客の手に渡すにはもう少し開発を煮詰める必要がある。
4. ランボルギーニ・ウラカン・エボ
長所:V10エンジンは希少かつ特別、後輪駆動モデルは魅力的なハンドリングバランスを持つ
短所:ウェッジ形状が居住空間に負担をかけており、長時間は辛い
ドラマチックな走り、注目を集めるルックス、そして野性的で自由な魂を持ったクルマを作るという点で、ランボルギーニに対抗できるのは世界でも一握りの少量生産メーカーだけだ。
ウラカンはランボルギーニのエントリーモデルかもしれないが、そのセンセーショナルなスタイリングやワイルドな自然吸気V10エンジンは、スピード、レスポンス、サウンドにおいて決して二流ではない。
フェイスリフトされた「エボ」では後輪操舵とトルクベクタリングが採用され、ライバルのマクラーレンやフェラーリにまた一歩近づいた。往年のハードコアモデル、ウラカン・ペルフォルマンテの最高出力640psのパワートレインも搭載され、実に手応えのある魅力的なスーパーカーとしての評価を高めている。
純粋な後輪駆動バージョンのエボもある。フロントのドライブシャフトをなくすことで、さらなる個性とダイナミクスを手に入れた。
さらに興奮を求めるなら、ポルシェ911 GT3に相当する、カーボンファイバーボディの超ハードコアなウラカンSTOがある。エンジンカバーに取り付けられたシュノーケル型のエアインテークは、レーシングカーのトロフェオからインスピレーションを得ている。他では味わえない魅力と楽しさを備えた特別なマシンだ。
STOは標準車と基本的に同じ640psのV10を搭載しながらも軽量化が図られており、背筋がゾクゾクするほど速く、うるさくて、スタートボタンを押した瞬間から夢中になれる。硬くなったサスペンションは公道では許容しがたいレベルだが、カミソリのようにシャープなレスポンスと驚異的なアジャスタビリティがそれを補う。
スリルは欲しいが、派手なルックスはちょっと……という人には、最近発表されたばかりのテクニカがちょうどいい。メカニカルは同じだが、サスペンションはややソフトで公道走行に適しており、ボディワークはほぼ標準的。ランボルギーニのエントリーモデルのスーパーカーとしては最も美味しい “スイートスポット” である。
5. マクラーレン750S
長所:純粋でシンプルなコンセプト、公道走行に適したダイナミクス、扱いやすさ
短所:心躍るようなエキサイティングな体験には欠ける
マクラーレンは2017年に720Sを発表し、華々しい成功を収めた。使い勝手の良さと圧倒的なパフォーマンスへの絶え間ないこだわりが、クラスをリードするスーパーカーを生んだのだ。720Sは間違いなく、地球上で最も優れた、最も完成されたスーパーカーだった。最もエキサイティングというわけでもなく、最も突飛というわけでもない。ただ最高だった。
洗練されたコーナリングバランスと引き締まったボディコントロール、公道走行に適した流麗な乗り心地、優れた人間工学と運転視界、そして卓越したステアリングフィールとリニアなレスポンスで、長年にわたってトップに君臨してきた。
しかし、720Sが丹精込めて作られた2010年代のスーパーカーの完成形であるとすれば、750Sは……まあ、大筋では同じものだ。同じように素晴らしいが、800馬力超のハイブリッド・スーパーカーの時代には、やや古臭さを感じさせる。
エクステリアのスタイリングに手を加えたほか、技術面ではステアリングを少しクイックにし、エンジンマウントを強化し、新しいダンパーとホイール、ブレーキシステムを取り付けた。必要のないところに大規模な変更を加えるのではなく、細部をアップデートしたのだ。
総じて750Sはセンセーショナルな走りを見せてくれるが、かつてのようなテクニカルな魅力は薄い。
6. フェラーリSF90ストラダーレ/SF90 XXストラダーレ
長所:驚異的なパフォーマンスと巨大なダウンフォースで目を見張る速さを見せつけてくる
短所:目が飛び出るほど高価で、ハイブリッドシステムはまだ完璧なハンドリングバランスを実現できていない
ラ フェラーリに続く2台目のハイブリッド車となるSF90は、フェラーリ史上最もパワフルなロードカーだ。2023年にはさらにパワフルなXXバージョンが登場した。PHEVであり、電気だけで約25kmの走行が可能とされる。
SF90ストラダーレは、フェラーリの中でもかなり異質な存在だ。488ピスタの3.9L V8ツインターボエンジンを大幅に改良し、それを3基の電気モーターが補完することで合計出力を1000psに高め、0-100km/h加速タイムを2.5秒に縮めた。
技術的な力作であることは間違いない。電動パワートレインによって重量が増しているにもかかわらず、ミドエンジンのフェラーリに期待されるグリップと破壊的な速さは健在だ。ただし、スタビリティ・コントロール・システムをオフにする前に、しっかり食事と休息をとっておく必要がある。深い敬意と集中力を要求されるからだ。
SF90 XXストラダーレは、フェラーリ初の公道走行可能な「XX」モデルであり、合計出力1030psを発生する。弊誌はまだ公道で試乗できていないが、フェラーリのフィオラノ・テストコースでは、少々乱暴で野蛮なハンドリングではあるが、呆れるほど速いことがわかった。
7. シボレー・コルベットZ06
長所:他車と比べてかなり手頃で、感動やドラマチックさにも不足はない
短所:サーキットで全開走行すると重さを感じ、またハンドリングは完璧ではない
シボレーが数十年にわたる定説を覆し、古き良きコルベットをオール・アメリカンなフロントエンジン・マッスルカーからヨーロピアンなミドシップ・スポーツカーに変身させるというのは大変な衝撃だった。そして、さらに遊び心を持たせたZ06が登場した。
Z06は新しいフラットプレーン・クランクの5.5L V8を搭載し、最高出力646ps、最大回転数8500rpm、0-97km/h加速2.9秒を実現。さらに重要なのは、そのサウンドだ。高らかに咆哮し、バチバチと音を立て、真のイタリアン・スーパーカーのような興奮に満ちている。
標準のC8より30%硬いサスペンションを装備するZ06は、コーナーに飛び込むと強く路面に食いつき、アンダーステアに耐える。クイックなステアリングは逃げ惑うガゼルのような俊敏性をクルマに与えている。同時に、アダプティブ・ダンパーによって日常的に使えるようなコントロール性と快適性を兼ね備えている。
よりハードコアな体験を望むなら、Z07のアップグレード・パッケージでさらに硬いサスペンション、カーボンセラミックブレーキ、そしてミシュラン・パイロット・スポーツカップ2というサーキットタイヤを手に入れることができる。
しかし、一番の美点は価格だろう。イタリアのスーパーカーを大きく下回る価格で、大きな感動を得られるのだ。
9. マセラティMC20
長所:GT寄りのゆったりとした特性、見事なルックス、カーボンファイバー構造
短所:V6ターボのサウンドがイマイチ、ステアリングフィールもさみしい
少し前までは、マセラティはもう店じまいの準備に入っていると多くの人が考えていた時期があった。かつての面影を失い、個性的だが旧式化したGTモデルが、活力の少ないギブリとクアトロポルテを支えていた。SUVのレヴァンテが登場してもなお、明るい未来はなかなか見ることができなかった
そんな中、突如として発表されたのがMC20というセンセーショナルなスーパーカーだった。アルファ・ロメオとして開発が始まったという噂もあるが、ミドエンジン車のエキゾチックな要素をすべて持ち合わせている。カーボンファイバー製シャシー、ダブルウィッシュボーン・サスペンション、そして最高出力630psを発揮する新開発の3.0L V6ツインターボエンジン。ランボルギーニV10やフェラーリV8の音の迫力にはかなわないにしても、0-100km/h加速は2.9秒、最高速度は325km/hに達する。
しかし、そのパフォーマンスもさることながら、MC20を特別たらしめているのはコーナリング特性だ。車重は1500kgをやや超える程度で、クイックなステアリングと相まって高い俊敏性を発揮する。マクラーレンのような豊かなフィーリングや、フェラーリ296 GTBのような機敏な走りには及ばないかもしれないが、コーナリングのダイナミズムと乗り心地の良さがうまく融合しているので、非常に扱いやすい。
マセラティは何年にもわたって “偽りの夜明け” を繰り返してきたが、MC20はついに、真の意味での復活の狼煙を上げることができるだろう。
8. ノーブルM500
長所:昔ながらのアシストなしのアナログ・ドライビング体験、速さとフィーリングに富んでいる
短所:キャビンの質感と快適性に欠ける
2009年に発売されたノーブルM600に続く待望の新型車。オーディオ業界でレコードが再び注目を集めているように、自動車業界におけるアナログ回帰の象徴となるかもしれない。ますます無味乾燥になっていくデジタルの世界に対する、温かみのあるアナログの反動なのだ。
M600のアーキテクチャーを多く引き継いだM500は、フォードGTと同じ最高出力550psの3.5L V6ツインターボを搭載している。先代より安価で入手しやすいモデルとして開発されたが、ドライバーとクルマの距離を可能な限り近づけるというノーブルのこだわりを守っている。
そのため、6速MTが採用され、ABS、トラクションコントロール、エアバッグは装備されない。ステアリングは油圧機構で、シャシーはスチール製、サスペンションは前後ダブルウィッシュボーンを採用している。
弊誌はまだ開発後期のプロトタイプにしか試乗していないが、すでに十分研ぎ澄まされているように感じられた。ステアリングはよりシャープになったが、フィーリングと重量感には何の不足もない。また、MTのメカニカルなシフト・アクションも魅力的で、ブレーキもしっかりしていて強力だ。
こうしたオールドスクールなアプローチは、他の主要メーカーとは一線を画している。ドライバーが力を捧げれば捧げるほど報いてくれる。そういう点では、ノーブルは他の追随を許さない。
アストン マーティン・ヴァルハラ
ここからは近日発売予定のスーパーカーを2台取り上げたい。
アストン マーティンはヴァルハラを「ヴァルキリーの息子(son of Valkyrie)」と呼んでいるが、それは決して格下のスーパーカーということではない。
コスワース開発のV12は与えられないかもしれないが、いずれにせよ最高出力は900psを超えると期待されている。アストン マーティンがフェラーリSF90ストラダーレなどを狙っているのは明らかだ。
ヴァルキリーと同様のカーボンファイバー構造を採用し、アクティブサスペンションやエアロも関連したものになるだろう。しかし、アストン マーティンは、現実世界ではより使いやすいものになるだろうとも語っている。
アルファ・ロメオ33ストラダーレ
アルファ・ロメオのスペシャルモデル・シリーズ最新作。2024年末までに納車が始まる予定だ。1960年代の同名のレーシング・プロトタイプへのオマージュとしてデザインされ、最高出力650psのV6ターボガソリンと、最高出力750psのバッテリーEVから選ぶことができる。価格は200万ポンド(約3億9000万円)弱。
その名にちなんで、わずか33台しか生産されないため、非常に希少価値の高いスーパーカーとなることは間違いない。ハンドルを握ったときにどのような体験が得られるのか、今から楽しみだ。
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みんなのコメント
ホイールのリムが変形しそうな感じ!でも
タイヤが薄いのがスーパーカー!って感じですね!