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ハイブリッドでも実はそんなに燃費がよくないクルマ「買う基準」はどこにある?

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ハイブリッドでも実はそんなに燃費がよくないクルマ「買う基準」はどこにある?

ハイブリッド=燃費がいい、と思う方が多いだろう。しかし、ハイブリッドの種類やクルマによっては、実はあまり燃費がよくないクルマもある。

2030年~2040年の間に、世界の国々では新車販売のすべてを電動車(HV、PHV、EV)にする方針を打ち出しているが、それ以前の話として、日本では厳しい2030年度燃費基準燃費基準をクリアしなければいけない。

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2030年度燃費基準は、燃費の計測方法もWLTCモードに変わり、車両重量に対応する数値も全般的に高まるため、小型/普通車で見ると、ハイブリッドでも達成できない車種が多いのだ。

軽自動車のマイルドハイブリッド搭載車も厳しいと言われており、例えばハスラーは、マイルドハイブリッドを搭載しながら、2030年度燃費基準を達成するには燃費数値を14%向上せねばならない。軽自動車のハイブリッドはマイルドではなくストロングハイブリッドが必要になってくるのだ。

そこで、本企画ではハイブリッドでも燃費がよくないクルマをモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏にあげてもらい、ガソリン車と比べ、どれくらいの価格差があって燃費が向上したか、ガソリン車ではなく、ハイブリッドを選ぶ基準も書いてもらった。

文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ日産スバル、ベストカーweb編集部

【画像ギャラリー】2021年WLTCモード燃費ランキング TOP10はこちら!!

■WLTCモードに切り変わったことで見えてきたもの

ヤリスハイブリッドはWLTCモード燃費36.0km/Lとハイブリッドのなかでも特に燃費が高いモデル。2021年の欧州CAFEもクリアできる

エンジンとモーター駆動を併用するハイブリッドは、メカニズムが複雑で価格が高くなる代わりに、燃費性能が優れている。特にノーマルエンジン車ではムダになる減速エネルギーを使って発電を行い、駆動力として再利用できるのは、モーターを搭載するハイブリッドや電気自動車のメリットだ。

ただしハイブリッドの燃費性能も車種によってさまざまだ。WLTCモード燃費の格差も大きい。ちなみに以前のJC08モード燃費は、実際に走った時の燃費との差が開いていたが、今のWLTCモード燃費は実用燃費に近い数値を示す。

しかもWLTCモード燃費には、コンバインモード(総合的な燃費数値)に加えて、市街地モード、郊外モード、高速道路モードの3種類も併記される。

国土交通省によると、各モードの平均速度は、コンバインが時速36.6km、市街地は18.9km、郊外が39.5km、高速道路は56.7kmだ。

自分で頻繁に走るルートが街中なのか、あるいは高速道路かにより、参考になる数値を選べる。また市街地/郊外/高速道路の内、最も悪い数値を基準に燃料代を計算すると、出費が予想外に増えて悩むことも少ない。

まずハイブリッドの燃費数値が優れた車種から見ると、筆頭はヤリスハイブリッドXだ。直列3気筒1.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドシステムを搭載して、WLTCモード燃費は36.0km/Lに達する。日本で購入可能な乗用車では最も優れている。

ヤリスに1.5Lノーマルエンジンを搭載したXは、WLTCモード燃費が21.6km/Lだから、ハイブリッドの燃費数値を比率に換算するとノーマルエンジンの1.7倍だ。ヤリスのハイブリッドは、ノーマルエンジンに比べると、燃料代を40%節約できる。

カローラツーリングハイブリッドSのWLTCモード燃費は29km/Lだ。ヤリスには劣るが、ハイブリッドでは優れた部類に入る。1.8LノーマルエンジンのSは14.6km/Lだから、ハイブリッドの燃費数値は約2倍に達する。

ハイブリッドの燃料代は、ノーマルエンジンの約半額で済む。このようにトヨタ車が搭載する1.5~1.8Lエンジンをベースにしたハイブリッドは、全般的に燃費性能が優れ、ノーマルエンジンと比べた時の燃費向上率も高い。

■軽自動車のマイルドハイブリッドは燃費がよくない

49ps/5.9kgmを発生する657cc直3エンジンに2.6ps/4.1kgmのモーターでアシストするマイルドハイブリッドを採用。減速時のエネルギーを利用して発電し、専用バッテリーに充電。加速時には、その電力を用いてモーターでエンジンをアシストし、燃料消費を抑制

逆に燃費の良くないハイブリッドはどれか。燃費向上率が最も低いのは、軽自動車を中心に採用されるマイルドハイブリッドだ。モーター機能付き発電機を搭載して、減速時の充電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。

いわば簡易型のハイブリッドで、新型車のワゴンRスマイルが搭載するマイルドハイブリッドのWLTCモード燃費は25.1km/Lだ。ノーマルエンジンは23.9km/Lだから、燃費向上率は5%に留まる。

ワゴンRスマイルのノーマルエンジンには、アイドリングストップが装着されないので、燃費の節約効果もアイドリングの停止によるところが大きい。

その代わりマイルドハイブリッドは価格も安い。ワゴンRスマイルの場合、ハイブリッドSはノーマルエンジンのGに比べて17万6000円高いが、この内の約13万円は、両側スライドドアの電動機能、運転席の上下調節機能、チルトステアリングといった装備で埋まってしまう。

したがってマイルドハイブリッドの正味価格は約4万6000円だ。ストロングハイブリッドは、35万~60万円に達するので、マイルドハイブリッドは燃費の節約効果が少ない代わりに価格も安い。

そのほか、スズキのマイクロハイブリッド搭載車のWLTCモード燃費は、ワゴンRが25.2km/L、スペーシアが22.2km/L、ハスラーが25.0km/L。

モーターの最高出力は、スズキの場合で2.6~3.1ps、最大トルクは4.1~5.1kgmだ。燃費向上率はワゴンRで3%だから、このシステムだけで2030年度燃費基準に対応するのは難しい。

フォレスターe-BOXER:WLTCモード燃費:14.0km/L

フォレスターのe-BOXER搭載モデルはツーリング、X-BREAK、アドバンス。パワートレインは145ps/19.2kgmを発生する水平対向4気筒DOHC 2L直噴エンジンと、13.6ps/6.6kgmを発生するモーターを組み合わせる

スバルのe-BOXERも燃費が良くない。フォレスターのe-BOXERは、WLTCモード燃費が14.0km/Lで、スポーツが搭載する1.8Lターボは13.6km/Lだ。ターボが直噴式を採用したこともあり、高い動力性能を発揮しながら、燃費数値はe-BOXERと比べて0.4km/Lしか違わない。

特にWLTCモード燃費の郊外モードは、ターボが14.3km/Lで、e-BOXERは14.2km/Lだ。0.1km/Lの違いだが、e-BOXERの数値がターボよりも劣る。つまり使われ方によっては、e-BOXERの実用燃費が、ターボに比べて悪化することも考えられる。

e-BOXERのメカニズムもシンプルだ。モーターはコンパクトで、動力性能も最高出力が13.6馬力、最大トルクは6.6kg-mに留まる。そのために価格が安く、e-BOXERの正味価格は10万~12万円だ。マイルドハイブリッドに近い設定となる。

スカイラインハイブリッド:WLTCモード燃費/14.4km/L

スカイラインハイブリッドは306ps/35.7kgmを発生する3.5L V6エンジンに68ps/29.6kgmのモーターを組み合わせる。同一車線でハンズオフが可能なプロパイロット2.0はハイブリッド車に標準装備される

スカイラインのV型6気筒3.5Lハイブリッドも、WLTCモード燃費は14.4km/Lと伸び悩む。V型6気筒3Lツインターボの数値は、最高出力が405psに達する400Rを含めて10km/Lだ。

ハイブリッドの燃費数値はツインターボの1.4倍になる。特にWLTCモード燃費の郊外モードは、ハイブリッドが12.3km/L、ツインターボは10.6km/Lだから、ハイブリッドの数値は1.2倍だ。

スカイラインのハイブリッドには、運転支援機能のプロパイロット2.0が装着され、ツインターボは衝突被害軽減ブレーキが歩行者も検知できない。先進装備ではハイブリッドにメリットがあるが、動力性能と燃費のバランス、価格の割安感ではツインターボの魅力が上まわる。

レクサスLS500h:WLTCモード燃費/13.6km/L

3.5L、V6エンジン(299ps/36.3kgm)と2基のモーター(180ps/30.6kgm)、10速トランスミッションを直列に配置したマルチステージハイブリッドシステムを搭載する

レクサスLSもハイブリッドの燃費数値が良くない。ハイブリッドはV型6気筒3.5Lをベースにしており、2WDの数値は13.6km/Lだ。

ノーマルエンジンはV型6気筒3.5Lにツインターボを装着して、最高出力は422馬力に達する。ハイブリッドのシステム最高出力とされる359psを大幅に上まわるが、WLTCモード燃費は10.2km/Lとさほど悪くない。ハイブリッドの燃費数値は、ツインターボの1.3倍に留まる。

レクサスLSのWLTCモード燃費を走行モード別に見ると、市街地モードでは、ハイブリッドの数値はツインターボの1.6倍に達するが、高速道路モードは1.2倍と小さい。ハイブリッドは加減速を頻繁に行う街中では有利だが、一定の速度で走り続ける高速道路では不利だ。LSではこの傾向が特に顕著に生じた。

アルファードハイブリッド:WLTCモード燃費/14.8km/L

ハイブリッド車は電気式4WDのE-Fourを採用。152ps/21kgmを発生する2.5L、直4エンジンにフロントモーター(143ps/27.5kgm)とリアモーター(68ps/14.2kgm)を組み合わせる

アルファードの2.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドも、WLTCモード燃費が14.8km/Lになる。アルファードのハイブリッドは、後輪をモーターで駆動するE-Four専用だから、2.5Lのノーマルエンジンも4WDで比べるが、WLTCモード燃費は10.8km/Lだ。ハイブリッドの燃費数値はノーマルエンジンの1.4倍になる。

そしてアルファードのハイブリッドは価格も高い。ハイブリッドX(8人乗り)は、ノーマルエンジンを搭載するX・4WDを76万2000円上まわる。一部の装備は充実するものの、価格が高い割には、燃費を節約できるメリットが乏しい。トヨタのハイブリッドが、全面的に買い得とは限らない。

■ハイブリッド購入の目安は、WLTCモード燃費がガソリンエンジンの1.5倍以上か否か

ハイブリッドXと2.5X(どちらも4WD)の価格差は76万2000円。この価格差を受け入れられるか?

以上のようにハイブリッドの燃費数値は、車種によって大きく異なる。グレードを選ぶ場合、ハイブリッドで燃費の良さを実感したいなら、WLTCモード燃費がノーマルエンジンの1.5倍以上になることが条件だろう。

そしてグレードを選ぶ時は、ハイブリッドとノーマルエンジンとの価格差を燃料代の差額で取り戻すには、どの程度の距離を走れば良いかも計算しておきたい。

例えば先に述べたアルファードハイブリッドX(8人乗り)の価格は、ノーマルエンジンを搭載するX・4WDを76万2000円上まわる。ただし税額も異なり、購入時に納める環境性能割と自動車重量税は、合計するとハイブリッドが9万3500円安い。そのために実質差額は約67万円に縮まる。

そしてレギュラーガソリン価格が1Lあたり150円(今は160円近いが平均すれば下がる)、実用燃費がWLTCモード燃費として計算すると、1km走行あたりの燃料代はアルファードハイブリッドXが10.1円、2.5LノーマルエンジンのXは13.9円だ。1km当たり3.8円の差額だから、67万円の実質差額を取り戻すには、17~18万kmの走行を要する。

ハイブリッドは、全般的に加速が滑らかでノイズも小さく、走りは上質だ。またエコロジーの目的は環境保護だから、ハイブリッドは損得勘定だけでは語れないが、ユーザーとしては経済性も気になる。前述のような計算を行い、コストの違いを把握したうえで、パワーユニットを選ばれるのが良いと思う。

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みんなのコメント

8件
  • 知り合いにPHEV乗ってる人がいるが
    サービスエリアでエンジンかけっぱなしにしてたから何故か聞いたら、充電してるとドヤ顔で言われた。
    高速走行中はEVモードで音楽聴きながら走りたいらしい。
    燃費最優先って訳じゃない人も居るんだなと思ったよ。
    その人は高齢でジャズ聴くような人。

    もう一人もミニバンHV乗りのおじいちゃんいるが
    ケチで高速より下道派。
    高速だと燃費も落ちるから尚更乗らないと言っていた。
    色々いるよ。
    自分なりのこだわりを持って選んでる高齢者も。
  • V37ハイブリッドですが
    せいぜい10km弱
    近場だけだと8km程度です
    燃費は購入する際に考慮してませんので、どうでもいいのですが
    運輸省届出は17km程度なので、このクルマに限らず皆さんは注意して下さい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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