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【ヒットの法則441】BMW M3カブリオレがデュアルクラッチを搭載して登場したのは画期的な出来事だった

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【ヒットの法則441】BMW M3カブリオレがデュアルクラッチを搭載して登場したのは画期的な出来事だった

2008年、BMW M3カブリオレが注目のDKG(デュアルクラッチトランスミッション)とともに登場している。この後、M3クーぺやM3セダンへの搭載が予定されていたDKGは、M3にどんな走りをもたらしたのか。Motor Magazine誌では、M3カブリオレの走りとともに、DKGの真価を探っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

ふたつのクラッチの採用でAMT独特のクセを改善
ここ数年の自動車技術の様々な分野での進歩の中でも、トランスミッションに関する動きは非常に活発で新陳代謝も激しい。たとえばトルクコンバーターを使ったオートマチックトランスミッションは、少し前まで6速が最大であったものが7速、そしていまや8速が出てきている。

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また一方では数年前にシングルクラッチにアクチュエーターを用いたオートマチックマニュアルトランスミッション(AMT)が台頭してきた。この変速システムは構造的にエネルギーの伝達ロスが少なく、また各ギアの燃費適正シフトポイントを自動設定できるので、規格に従った最良燃費をメーカー公表値として定めることができるという副産物も持っている。

さらにマニュアル用のギアボックスをそのまま利用できるので、トルクコンバーターシステムに比べると格段にコストが安いという利点もある。そしてなによりF1の影響もあって、スポーティな雰囲気を持っているのも魅力になっている。

難点はクラッチを繋ぐ際にトルクが一瞬途絶えることでシャックリ現象が起こるため、スムーズなトルクコンバーターに比べると快適性の面で劣っており、それが数々の利点を持つにもかかわらず広範囲な普及を妨げていた。

そこに登場したのがデュアルクラッチシステムである。このシステムは前述したオートマチックマニュアルトランスミッションと基本的には同一であるが、クラッチを2枚使ってスムーズなつながりを可能にしているのが特徴。もう少し詳しく説明するならば、ふたつのクラッチを組み合わせて、ひとつのギアからもう一段アップ、あるいはダウンのギアを選択する際にもう1枚のクラッチを使ってスタンバイ状態で繋いでおき、最終的にスムーズに駆動力を車輪に伝えるというシステムである。

ハイテクと思われるこのシステムだが、実はそんなに新しくはない。1939年には、フランス人のアドルフェ・ケーグレッセが基本特許を押さえ、そして1940年にドイツのエンジニア、ルドルフ・フランケがダルムシュタットで基本作動構造における特許申請を行っている。

その後1969年に、オートマチックトランスミッションに興味を持っていた、ポルシェのエンジニアであるイムレー・ツォドフリットが再び目をつけ、当時の開発担当であるフェルディナンド・ピエヒの下でポルシェ・デュアル・クラッチの実用化が果たされた。

油圧制御技術の進歩によって市販化が実現
しかし実用化といっても、当時は高性能高油圧制御系の技術はなく、すべて機械式であったためにポルシェ・デュアル・クラッチ(PDK)の操作は非常に難しく、腕力のいるものであったらしい。事実、このシステムを実際に操作したラリードライバーのワルター・ロールやF1ドライバー、ハンス・ヨアヒム・シュトゥックに直接聞いたところによれば、腕の骨が折れるほど大変な作業だったという。つまりこのPDKは結局、956や962またアウディのWRC用ラリークワトロなどのレーシングカーに使われただけで、市販化はできなかったのである。

そして今日、コンピューターによる高圧油圧制御技術の進歩によってこの複雑で素早い2枚のクラッチ制御が可能になり、デュアルクラッチを使った「ユーザーフレンドリーなAMT」が徐々に実現可能になってきたのである。

この分野で先陣を切り、成功を収めたのはなんと言ってもフォルクスワーゲンのDSGであろう。

ダイレクトシフトギアボックス(DSG)と名付けられたこのシステムには、現在6速と7速が存在し、前者は湿式、つまりクラッチは冷却のためにオイルに浸かっており300Nmまで耐えられるのに対して、後者は乾式で250Nmまで耐え得る仕様となっている。

このシステムは実に良くできておりこれまでトルコン式ATを使っていたユーザーはもちろん、マニュアル好きのドライバーからも好評化を受け、昨年までに100万基がフォルクスワーゲンのカッセル工場から出荷されていった。

そのお陰かどうかはわからないが、現在のドイツにおけるオートマチックの占拠率は28%で、年々1ポイントほどで増加しつつあるといわれる。ちなみにヨーロッパ全体での普及率は19%である。

そしてこのフォルクスワーゲンのDSGに続いて、三菱ランサーエボリューションX、日産GT-Rなどの高性能モデルに「デュアルクラッチのAMT」が採用された。今回紹介するM3カブリオレもDKGと名づけられた同じような形式のトランスミッションを搭載している。

ところで、M3カブリオレのインプレッションへ入る前に、この2枚のクラッチを使うシステムに関してもう少し内容を補足しておきたいと思う。

まず、この形式のトランスミッションは、そのレイアウトから基本的には横置きエンジンを搭載した前輪駆動に向いている。それゆえに、フォルクスワーゲンがまず採用したわけである。また一方で、日産GT-R、そして今回紹介するM3、さらに北京モーターショーで発表されたアウディQ5の縦置き7速Sトロニックのように、高回転エンジンを搭載するスポーツモデルや4WDにも適合性は高い。

さらに、このシステムの要であるデュアルクラッチの基本特許は、現在すべてボルグワーナーが押さえており、このユニットをルーク(フォルクスワーゲン)やZF(ポルシェ)、ゲトラグ(日産、BMW)あるいはゲトラグ・フォード(三菱、ボルボ)などが自製のトランスミッションとコントロールユニットを組み合わせて、各自動車メーカーに提供しているのである。

ちなみに今回紹介するM3に搭載されるデュアルクラッチシステム、DKGは7速ギアを持ったゲトラグ製である。

その走りの実力をさらに向上させるDKG
さて、そんなDKGを搭載して、BMW製品をベースにハイパフォーマンスモデルをプロデュースするBMW M社から送り出される最新モデルが、今回紹介するM3カブリオレである。

これまでM社では、SMGと呼ばれる7速AMTを、M5やM6に搭載してきた。しかしこのシングルクラッチシステムのトランスミッションは、シフト時に多少ショックが伴い、同時にローンチコントロールというスポーティなスタートを頻繁に行うと、クラッチが磨耗して滑り出すという問題が発生していた。そこでこうした問題の少ないデュアルクラッチ方式が待ち望まれていたのである。

さてこのM3カブリオレだが、スタンダードの3シリーズカブリオレとは、もちろん外観からも区別されている。まずフロントではV8のインテークシステムをクリアするために、パワードームと名づけられた中央の盛り上がったアルミ製ボンネット、そして開口部の大きな中央下側のエアインテークなどが目にとまる。サイドに回るとフロントフェンダー後方にはエラのような部分にM3ロゴを持ったエンブレム、また後方ではディフュザー風のリアフィニッシャーから突き出た4本のエグゾーストパイプなどのMアイコンでこのカブリオレの出生がわかる。

搭載されるエンジンは正確に3999ccの排気量を持つV8、最高出力は420ps/8300rpm、最大トルクは400Nm/3900rpmをそれぞれ発生する。

この数字は、M3クーペやM3セダンと同じだがカブリオレボディの装備空車重量(DIN)は1810kg、さらにDKGの分が20kg加わり、MTのM3クーペと比べると155kgの重量増加となる。その結果パワーウエイトレシオは4.3kg/psとクーペの3.8kg/psと比べると、明らかな重量ハンディが見られる。

それゆえにBMWの公式数字では0→100km/hまでの加速所要時間はM3クーペが4.6秒であるのに対して、DKGを搭載するM3カブリオレは5.1秒となっている。ちなみにMTを搭載したM3カブリオレは5.3秒でさらにコンマ2秒遅い。また最高速度はどのモデルも、リミッターによって250km/hに制限されている。

豪華さと快適さ、そしてスポーツ性を巧みにあわせ持ったシートに身体を収めてコクピットを見渡す。インテリアはもちろんM3クーぺに準じており、ドライバーの正面には330km/hまでスケールが広がったスピードメーター、その隣には8300rpmからレッドゾーンが始まる9000rpmまでのタコメーターが並んでいる。

センターコンソールに視線を落とすと、そこには見慣れたSMGと同形状のセレクトレバーがある。そこにあるシフトパターンも基本的にはSMGと同じで、ニュートラルの左上がリバース、そして右がマニュアルポジションで、前に押すとシフトダウン、手前に引くとシフトアップという独自のロジックによるマニュアルシフト操作ができるようになっている。

またさらに右側にプッシュするとオートマチックモードとマニュアルモードに切り替えることができる。そして手前にあるボタンでシフトスピードを6通りに変化させることも可能である。

さらにオートマチックモードとマニュアルモードには合計11のシフトモードが用意されている。これらは、ダッシュボードにあるモニターを見ながら、コンソールにあるiDriveダイアルを操作して選択することが可能である。

まずはオートマチックモードを選択して走り出す。スタートはトルコンに勝るとも劣らないほどスムーズで、低速でのシフトアップ時もSMGのようなギクシャクした動きはまったく感知されない。また苦手だったシフトダウンも同様にスムーズである。驚いたのはこのオートマチックモードでの全体の動きが、トルコンというよりはまるでCVTのような感じでクラッチが慎重にオンオフを繰り返していたことであった。SMGで学んだクラッチ保護のノウハウがここに現れているのだろうと想像できる。

続いてマニュアルモードに切り替え、セレクトボタンで順次シフトスピードを変えながら走る。もちろんこのスポーツセッションでのシフト操作は、ステアリングホイール背後から伸びたパドルで行う。

最初はここでも、ほとんどトルコンのマニュアルモードと変わりのないスムーズな動きをみせていたが、シフトスピードが速くなるにつれて、クラッチのミートが行われている様子が適度なショックをともなって気持ちよく伝わってくる。しかしシフトダウンはどちらかと言えばまだ慎重である。

このDKGは7速であるが、クロスレシオというよりも、7速目はやや高く設定されているので、クルーズ用と解釈するのが正しいようである。

この日のテストでは主にデュアルクラッチの性能を確かめながら、一般道路とアウトバーンをあわせておよそ800km走ったが、M3カブリオレに限らず、M3の魅力はこのDKGの登場でさらに磨かれたといえる。

はっきり言って、日本でM3を買うならば、DKGは不可欠であると思う。ただし問題がなくはない。DKGのオプション価格は、3800ユーロ(約61万円)と決して安くないのだ。つまりテストしたM3カブリオレの、ドイツにおける基本価格は19%の付加価値税込みで、7万7750ユーロ(約1244万円)になってしまうのである。(文:木村好宏/Motor Magazine 2008年7月号より)



BMW M3カブリオレ DKG 主要諸元
●全長×全幅×全高:4615×1804×1392mm
●ホイールベース:2761mm
●車両重量:1830kg(EU)
●エンジン:V8DOHC
●排気量:3999cc
●最高出力:420ps/8300rpm
●最大トルク:400Nm/3800rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速DCT(DKG)
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.1秒
※欧州仕様

[ アルバム : BMW M3カブリオレ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • すぐぶっ壊れて 高額修理か廃車なのは 全く触れず・そりゃそうか。大して新しい機構でもないのに壊れるのか。

    三菱のもすぐ壊れて酷いが、あちら製でしたね。適当なもんだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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