運営元:旧車王
著者 :柴太郎
■「ステーションワゴン」の王道を走っていた。レガシィツーリングワゴンの物語のはじまりナポリタンにミートソース、さらにはペペロンチーノ……。
カテゴリー(種類)豊富なスパゲティに選ぶ楽しさ、味わう楽しさがあるのと同様に、クルマにもカテゴリーは多く、クルマ選びの楽しさを倍増させていると感じる。
スパゲティの話からという、やや大胆な入りになったが(汗)、クルマのカテゴリーの基盤を築き、軸となっていった「開拓者」に迫るシリーズ。
その2回目のテーマはステーションワゴン。
そして開拓者は「スバルレガシィツーリングワゴン」の初代(上写真)。
これに異を唱える者はいないでしょう。
きっと!
■スキーや釣りなどのアウトドアレジャーの人気の高まりが、背景にあったスバル初代レガシィツーリングワゴンの誕生前夜、日本車にステーションワゴンがなかったわけではない。
1970年代末から1980年代にかけて、スキーや釣りなど、アウトドアレジャー人気が高まるのと並行するように、トヨタ スプリンターカリブや日産 サニーカリフォルニアなどのステーションワゴンが誕生。
そして、スバルレオーネからもステーションワゴンが誕生する。
この後継モデルこそ、初代レガシィツーリングワゴンだ。
1980年代に各メーカーからいくつか生まれたステーションワゴンは、それまでのライトバンと異なり、当時の人気のカテゴリー「セダン」と同じ、あるいはそれ以上の機能を備えるカテゴリーとしてジワリとユーザーに定着していく。
■居住性に驚き、走りにも驚いた。「ツーリングカーの新時代」を感じた初代モデル▲いきなりですが、時代を一気に駆け抜け、2009年登場のレガシィツーリングワゴン5代目モデルに登場いただいた!
そして、バブル真っ盛りの1989年。
スバルレオーネの後継モデルとして、初代レガシィツーリングワゴンが誕生する。
レオーネ同様、4ドアセダンもあったが、注目はツーリングワゴン。
洗練されたスポーティなスタイリングが、なんといっても目を引いた。
1970年代末、それまで格好いいともてはやされた「ラッパズボン」が急に格好悪く見えたように(例えが古いですか?)、それまでの各社のワゴン・デザインが急に、やぼったく見えたほど……。
2Lターボエンジンが搭載され、セダンにも引けを取らない走行性能。
スバル特有の4WD走破性に加え、エアバネと減衰力可変ダンパーを備えるグレードもあり、乗り味は上質。
……走りに関する、これらのウリ文句だけでもウットリするほど。
そのうえで5人がムリなく乗れる居住性があり、ラゲッジに荷物をたくさん積める実用性。
さらに後席を倒すと、長さ1685×幅1365mmという広大なフラットスペースが現れる。
この「優秀さ」がユーザーに認められ、初代レガシィツーリングワゴンの人気とともに、「ステーションワゴン」というカテゴリーは市民権を得ていくわけだ。
■初代~3代目までは5ナンバーサイズ。「荷物満載の長距離移動でも快適でした!」▲こちらは2代目モデル。初代のDNAが注入され、レガシィ人気を定着させた
どこか洒落た匂いがする、レジャーヴィークルという位置づけとなったステーションワゴン・カテゴリー。
各メーカーからも「ならばウチも出そう!」とばかりに、本格的に開発されたステーションワゴンモデルが次々と投入され、日本にステーションワゴンのブームが到来したのが1990年代前半。
この軸となったのは、間違いなく初代レガシィツーリングワゴン。
「国産車ステーションワゴンの開拓者」、その称号にふさわしいモデルだ。
その初代に続き登場した2代目(1993年)は、初代のDNAを受け継いだモデルで、3代目(1998年)は大胆に顔つきを変えたのが話題になった。
それ以上に、FFモデルが廃止され、全グレードが4WDとなったことがクルマ好きの心を躍らせたのは記憶に新しい。
そして、この3代目までが5ナンバーサイズボディというのも、今となっては驚く。
そういえば2000年のころ、筆者は友人が所有する2代目レガシィツーリングワゴンに乗り、4名で東京~新潟・釣りドライブに出かけてことがある。
1泊2日の旅だったが、荷物や釣り具を満載した状態での長距離移動でも快適だったことを思い出す。
数時間ほどしか運転せず(寝ている時間のほうが長い!)、今でもみんなに申し訳ない気持ちでいっぱいだが(笑)。
■トヨタ、日産、ホンダ……。各社からのワゴン包囲網をものともしない「安定した実力」▲3代目モデル。全グレードが4WDとなったのも話題になった!
初代がステーションワゴンというカテゴリーを切り拓いて定着させ、2代目でそのカテゴリーを盤石のものにしたといっていいスバル レガシィツーリングワゴン。
3代目が誕生した1990年代後半から21世紀に入ったころは、世の中に「RVブーム」が巻き起こり、各メーカーからのステーションワゴンの新規モデル投入はますます過熱。
トヨタからはカルディナ、カローラワゴン、マークIIクオリス、クラウンワゴン、アルテッツァ・ジータなど。
日産からはプリメーラワゴンやステージア。
さらには、ホンダ アコードワゴン、三菱からはランサーセディアワゴン、ディアマンテワゴン、加えてマツダ カペラワゴン……など。
一部しか車名を挙げていないが、壮観ともいえる各メーカーのラインナップ数だ。
そのさなかでもスバル レガシィツーリングワゴンの凄みは圧倒的だった。
「ステーションワゴンとしての出来」で見た場合。
総合評価で、どのモデルもレガシィツーリングワゴンには及ばない、というのが当時の専門家の評価だったと記憶している。
数多のライバルを敵にまわしても、王者レガシィの座は揺るがなかった……ということである。
レガシィツーリングワゴン、恐るべし。
■後継モデルとしてレヴォーグが誕生。ここにもレガシィDNAはしっかりと息づく▲初代レヴォーグ
ステーションワゴン・カテゴリーの開拓者となり、世代が変わっても常にステーションワゴン界の主役であったレガシィツーリングワゴン。
2009年誕生の5代目が最終モデルとなり(海外ではレガシィの名前は継続販売)、2014年、後継モデルとなるレヴォーグが誕生。
2023年現在、2代目が現行モデルとなり、スタイルや走りはもちろんのこと、先進安全技術などの評価も高く、人気を博している。
さらに、2023年9月にはレヴォーグをベースにした、レヴォーグレイバックというSUVモデルが登場するなど、「レガシィツーリングワゴンのDNA」は新章を迎えている。
ちなみに、筆者のイチ推し世代は2003年登場の4代目モデルである。
▲レガシィ4代目モデル
レガシィ初の3ナンバーサイズモデル(といっても車幅は1730mm)で、扱いやすさと徹底した軽量化が施された、街中でもロングツーリングでもベストな相棒というワゴンだ。
EJ20エンジンを踏襲しながらも、出力などをブラッシュアップ。
ドライバーになんら不満要素を与えないモデルだったと思う(……実燃費が悪いのはご愛敬ですが)。
多くの自動車評論家の評価が今でも高く、その年の日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのも納得といえる一台である。
[ライター・柴太郎 / 画像・Dreamstime, 旧車王]
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