マツダは、2019年5月9日の決算報告会見の場で、今後の商品開発の展開として、直6エンジン、FRプラットフォームを正式に発表した。このなかで「Largeアーキテクチャー=Dセグメントを想定したラージプラットフォーム」は縦置きエンジン後輪駆動(FR)で開発することを示唆している。
エンジンは、SPCCI(火花点火制御圧縮着火)を採用した新開発の直6 スカイアクティブX(SKYACTIV-X)を搭載する。さらに48V電装システムを使ったマイルドハイブリッドを用意し、プラグインハイブリッドへの展開も視野に入れている。
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また、トヨタにOEM供給されて次期クラウンとプラットフォーム共用の可能性も検討されている、という驚きの情報もある
なぜマツダは直6+FRセダンという選択をしたのか? そこから見えるマツダが目指しているものは何なのか? マツダ6(旧アテンザ)後継車となるこのFRセダンは、資本提携しているトヨタへのOEM供給はあるのか? について、自動車評論家の鈴木直也氏が分析する。
旧アテンザは2012年11月に登場し、2019年8月の一部改良モデルからマツダ6に改名した
文/鈴木直也
写真/MAZDA
CG/ベストカー編集部
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■当初計画からの延期はマツダにとってプラスに働く可能性あり
マツダの第7世代新型車戦略は、「スカイアクティブX(SKYACTIV-X)」と「ラージFRプラットフォーム」がクルマの両輪だ。
スカイアクティブXは「マツダ3」と「CX-30」ですでに商品化されたが、2012年の初代CX-5のようなロケットスタートとはならず、専門家の評価は高いものの国内販売比率は10%ほどにとどまっている。
CX-30のパワーユニット別の販売構成比は、1.8Lディーゼルターボと2Lガソリンが45%ずつ、残りの10%がスカイアクティブXとなっている
一方、マツダの成長戦略を決定づけるラージFRプラットフォームは、2019年秋の決算報告会でしばしの導入延期が表明された。
藤原清志副社長の説明によると、これは主にPHVなど電動化技術を広範に取り込むためとされているが、高価格帯の市場にチャレンジするにはさらなる商品力の強化が必要という判断だ。
当初、この延期はほぼ1年程度と予想されていたが、その後の新型コロナウイルス騒動によって再度のスケジュール見直しは必至。マツダの新型車戦略は、いま厳しい試練のさなかにあるといっても過言ではない。
ただ、ことラージFRプラットフォームに限っていえば、ぼくはコロナ騒動による導入延期はむしろプラス面が大きいと考えている。
ひとつには、前述したような新技術によるさらなる商品力アップだが、もうひとつ言えるのは、ポストコロナ時代にはクルマを取り巻く環境が、少なからず変化することが予想されるからだ。
たとえば、環境とエネルギーの問題。もちろん、これは今後も自動車メーカーの最優先事項に変わりはないが、そこに「持続可能性」の面から見直しが入るのは避けられない。
2019年秋に、トランプ政権が地球温暖化対策の「パリ協定」から離脱して大きな話題となったが、コロナ騒動による経済の悪化はおそらくその流れを加速させる。
EV比率にしてもCO2規制にしても、それを満足させるために自動車メーカーが潰れてしまっては元も子もない。補助金削減や環境規制緩和など電動化の流れが見直され、相対的にスカイアクティブXのような高効率内燃機関の評価が高まるのが自然の流れだ。
そういった状況を踏まえたうえで、2022年頃の登場といわれるマツダのラージFRプラットフォームを考えると、以前より見通しは明るくなったということができる。
■高い商品力が求められる高級車にスカイアクティブXはマッチする
スカイアクティブXの泣き所は「評価は高いがコストも高い」ところだが、価格5万ドル級の高級車セグメントならそのコストを十分に吸収して商品力アップにつなげることが可能。しかも、マツダが開発中のラージFRプラットフォーム用直列6気筒は、開発関係者によると「パフォーマンスや燃費性能はもちろん最高水準だが、なにより官能性能が素晴らしい」と言われている。
前述のとおり、ポストコロナ時代には高効率内燃機関が再評価されるのは必然で、スカイアクティブXはトヨタのダイナミックフォースシリーズと並んでこの分野のトップランナー。直6 スカイアクティブXにPHVなどの電動アシスト機能が加われば、パワートレーンだけでもワクワクするような期待感があるわけだ。
それにしても、3年くらい前にマツダが新たに直6エンジンを開発中という噂を聞いた時には、「なぜいまさら直6?」といぶかしく思ったものだが、ようやくそれが「必然」であることがわかってきた。
流麗なスタイルで登場するマツダ6。FRならではの伸びやかなプロポーションで新たなセダン像を創り出す(ベストカーが製作した予想CGイラスト)
搭載する直6 スカイアクティブXはモジュラーエンジンとして開発されるため、排気量は1気筒あたり499.25cc、総排気量2996ccになると考えられる
30年ほど前、直6がV6に置き換えられた時の最大の理由は、衝突安全性とパッケージングの問題。前後に長い直6はクラッシャブルゾーンを確保するのが難しいし、FF車に横置きするのも困難。これが当時のトレンドだった。
ところが、現在では衝突安全設計のクリティカルポイントはスモールオフセット衝突。なんと、そこではエンジン幅の狭い直列のほうが設計上有利なのだという。
また、30年前より格段に厳しくなった環境規制によって、排ガス浄化システムを収めるスペースは拡大の一途。排気が左右に分かれるV型より直列のほうがコンパクトにまとめやすいというメリットがある。
さらに、ダウンサイズターボの普及でFFにV6を搭載するメリットがなくなった今、FR=高級車専用となった6気筒エンジンはスムーズさや静粛性などクオリティ面が重要。ここでも、完全バランスの直6の魅力が見直されている。
■2%のシェアでも勝負できる! マツダの次代の戦略
この直6見直しのトレンドは、ほかの自動車メーカーも共有しているはずだが、技術的にも投資コストの面でも、まったくの新エンジンというものはそう簡単に開発できるものではない。
マツダが資本提携しているあのトヨタですらその辺の事情は同じで、かつて大量に直6を生産していたからといって気軽に直6を復活できるかと思ったら大間違い。新エンジン開発のような大型投資は、採算性を厳しく吟味した上でないと容易にゴーサインを出せるものではない。
それゆえ、先日ぼくが藤原副社長にインタビューした時のお答えは「うーん。彼ら(トヨタ)にもプライドがあるからねぇ」というもの。
マツダはどこへ向かうのか「我々はシェア2%でいい」マツダ副社長ロングインタビュー
最近のトヨタは技術提携に柔軟ではあるが、もし直6を使うとなればクラウンやレクサスなどがからむ大規模なプロジェクトになる。それは86/BRZやスープラ/Z4などとはレベルが違うお話で、「それはないんじゃないかな?」というのがぼくの持論だ。
さて、トヨタへのOEMがあるかないかは別として、マツダとしては大きなリスクを取って直6開発に舵を切った。ビジネスの世界ではリスクなしに報酬なしだが、その戦略がうまく開花すれば、マツダにとってのメリットも絶大。ブランドの新たな金看板となり得る。
いわゆる高級車ブランドといわれるクルマの市場規模は、おおむね年間1000万台ほど。うち、ドイツ御三家が約60%強を占め、最下位グループのジャガーやアキュラなどは約20万台程度。2%のシェアを争っている。
マツダは常々「シェアは2%でいい。しかし100人のうち2人のお客様に熱烈に支持されるブランドでありたい」と言い続けている。その言葉どおり、新しいラージFRプラットフォームが高級車市場で2%(20万台)のシェアを確保することができたら、2020年代のマツダには明るい未来が待っていると思います。
【NEW マツダ6予想スペック】
・ボディサイズ:全長4900×全幅1880×全高1420mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1550kg
・エンジン:直6、3L、SKYACTIV-X(300ps/35.0kgm以上)
・予想価格:400万~450万円(SKYACTIV-X)
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みんなのコメント
コロナ不況前と後では、企業の財務状況は様変わりしている。開発費に回せる資金も無いよ。
販売の現場はそんな事は関係無い。兎に角
何でもいいから売れ、の一言。見てて可哀想になる。もう鼓動デザインの神通力は無くなってる事を早く気付いた方いいよ。クルマ自体は物凄く良いと思うがマーケティングで足を引っ張っている。今のマツダはシンボリックなクルマが無いからRX-7でも復活させた方が良い。ロードスターでは力不足。NSX.GTRのようなものが無いと。そういった車種も無くプレミアブランドを目指すのは虫が過ぎる。