この記事をまとめると
■10月18~20日に全日本ラリー選手権「ラリーハイランドマスターズ」が開催された
「F1&WEC」よりも「WRC」! いまトヨタがラリーを猛プッシュする理由
■ワインディングを舞台に競技を行ったラリーカーの燃費をクラスごとに検証
■給油量も戦術のひとつだった
考えてみれば気になりませんか? 競技車両の燃費
2024年の全日本ラリー選手権もついに最終戦を迎え、10月18~20日、岐阜県高山市を舞台に第8戦「ラリーハイランドマスターズ」が開催。19日のレグ1は雨/ウエット、20日のレグ2は曇り/ドライ&ウエットの難しいコンディションのなか、各クラスで激しいタイム争いが展開されていたのだが、そもそもワイディングでタイムを競うラリーカーの燃費はどのくらいなのだろうか?
当然ながらSS(スペシャルステージ)とリエゾンでは燃費が異なるほか、エンジン排気量や車両重量などでも燃費性能は異なってくると思うが、ラリー競技用に開発されたマシンは、いったい1リットルあたり、どれくらいの距離を走ることができるのだろうか?
というわけで、最終戦の舞台、ラリーハイランドマスターズで各クラスを代表するラリーカーの燃費を調べてみた。
まず、もっとも気になるマシンが最高峰のJN1クラスに参戦する国際規定モデルのRally2/R5だといえるだろう。
2024年のJN1クラスにはトヨタGRヤリスRally2に加えてシュコダ・ファビアRally2およびファビアR5、さらにシトロエンC3 R5などが参戦していたが、エンジン排気量は1.6リッターながら、純レーシングカーだけあって国際規定モデルの燃費性能は悪く、NUTAHARA Rally Teamのメカニックによれば「SSでは1.1km/L、リエゾンでは5km/Lぐらい」だという。
一方、国内規定で開発されたJP4モデルも燃費性能は低く、2.4リッターのエンジンが搭載されているスバルWRX S4について、SUBARU TEAM ARAIのメカニックによれば、「SSで1.1km/L、リエゾンはラリー北海道で10km/Lまで行きました。直噴ターボなので排ガスはクラスで一番きれい」とのこと。
さらに2リッターのスバルWRX STIも燃費が悪く、WinmaX RALLY TEAMのメカニックは「SSで1.1km/L、リエゾンで5km/Lぐらいです」と語る。
このように、ラリーカーの燃費はSSとリエゾンで大きく異なるが、その傾向はほかのクラスでも同様で、JN2クラスのGRヤリスはSSで1km/L、リエゾンで7~8km/L、スバルWRX STIがSSで1km/L、リエゾンで5km/Lといった状況だが、同じGRヤリスでもノーマルコンピュータを使用しているMORIZO Challenge Cupのマシンは、ECUにMoTECを使用したほかのマシンよりも燃費性能は高く、SSで2km/Lと約2倍の数値となっている。
ハイブリッドはラリーでもやっぱり低燃費
そのほか、JN3クラスの主力モデルの一台、トヨタGR86の燃費について、2024年のチャンピオンに輝いた山本悠太選手によれば、「SSで2km/L、リエゾンで10km/Lぐらい。それは2リッターの旧型モデルも同じでした」とのこと。さらに、JN4クラスの主力モデル、スズキ・スイフトはSSで4km/L、リエゾンで10~12km/Lというのが平均的な数値だといわれている。
一方、JN5クラスのCVTモデルは燃費性能が低く、第8戦のラリーハイランドマスターズを制した大倉聡選手は、自身の駆るCVTモデルのGRヤリスについて「ずっとアクセルを踏んでいるので、SSでは2.5km/Lぐらいです。水温が高くなると燃費が悪くなりますね。リエゾンは11km/Lぐらいまで行きます」という。
さらにハイブリッド車両や電気自動車を対象にしたJN6クラスの参戦マシンは燃費性能が高く、トヨタ・アクアGRスポーツを武器にシーズン7勝目を獲得した天野智之選手は、「SSは4km/Lしか走りませんが、リエゾンでは20km/Lぐらい走ります」とのこと。さらにトヨタ・ヤリスの清水和夫選手のコ・ドライバーの山本磨美選手は「SSは4km/L、リエゾンは14km/Lで計算しています」と語る。
そのほか、オープンクラスに参戦しているトヨタ・ハイエースは、ディーゼルとガソリンで燃費が異なっており、ディーゼル仕様のSSが3~4km/L、リエゾンが7km/L、ガソリン仕様がSSで1.5~2km/L、リエゾンが7km/Lといった数値。同じくオープンクラスに参戦したダイハツ・ミライース ターボはSSで8km/L、リエゾンで20km/Lで、やはりラリー競技でもエンジン排気量と車両重量で燃費性能が異なっている。
ちなみに、ラリーカーは競技期間中にリフューエルとして定められたガソリンスタンドで給油を行っているのだが、ドライバー/コ・ドライバーは残された走行距離に応じて必要なガソリン量を計算し、そのぶんだけを給油している。事実、ラリーハイランドマスターズでもレグ2の2回目のリフューエルでは、11リットルや17リットルなど1リットル単位で少量のガソリンを入れる選手が多かったことも、ラリー競技の燃費事情を語るときには欠かせないトピックだといえるだろう。
もちろん、リフューエルでガソリンを満タンにしている選手もいるようで、JN4クラスでスイフトを駆る西川真太郎選手は、「そもそもドライバー/コ・ドライバーの体重が重いし、燃料がギリギリだとガス欠を心配して走りに集中できないので満タンにしています」とのこと。当然ながら満タンにすれば車両重量は増してくるのだが、それでも西川選手が第5戦のモントレーを制していることは興味深い。
このように、ラリーカーの燃費はじつにさまざまで、各クルーは給油量をシビアにマネジメントするなど、ドライビング以外の部分でも激しいバトルを行っているのである。
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3ローターのユーノス・コスモも裸足(?)で逃げ出す超超極悪燃費。