この記事をまとめると
■レクサスLSとして初のハイブリッドモデル「LS600h」を振り返る
クルマでよく出てくるけどよくわからない言葉! 「プレミアム」ってどういう意味?
■ハイブリッドとなったことで最大の特徴である静粛性が増し、燃費性能も大きく向上した
■高級車の世界で電動化という新たな価値観を示してみせた
電動化による高い静粛性は世界の高級車も無視できなかった
現在、RXやNXなどのSUVが主力となっているレクサスにおいて、フラッグシップとなるのがLS。国内ではセルシオとして販売されていた初代から現行モデルとなる5代目まで、国内はもちろん、海外市場でも人気のラグジュアリーセダンです。
そんなLSの4代目にラインアップされたLS600hは、LSとして初となるハイブリッド車。レクサスのみならず、世界中に存在する高級車のありかたを大きく変えた1台となりました。
今回はレクサスLS600hがどんなクルマだったかを詳しく説明していきます。
レクサスLS600hとは
国内でセルシオではなくレクサスLSとして2006年9月から販売を開始した4代目。そんな4代目に追加されたのがハイブリッド車のLS600hです。
レクサスのフラッグシップとなるLSに設定されたLS600hは、従来、大排気量&多気筒エンジンを搭載することが当たり前だったラグジュアリーセダンにおいて、ハイブリッドユニットを選択するという独自性を備えたモデルでした。
ハイブリッドユニットを搭載したことでLSの代名詞ともいえる静粛性がさらに増しただけでなく、モーターが織りなすリニアな走りが加わったLS600hは、メルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズといったライバルとはまったく違う高級車に仕立てられていたのです。
また、燃費性能がライバル車より高かったのも特徴。先述のライバル車たちが5.9~7.3km/L(10・15モード燃費)だったのに対し、LS600hは12.2km/L(同)と、圧倒的な燃費性能を有していました。
ただ、ハイブリッド車の宿命というべきか、トランク下に駆動用バッテリーを配置したことで、トランク容量が狭くなるというデメリットも……。2009年に行われたマイナーチェンジでバッテリーを小型化したことやスペアタイヤを廃止したことで容量を拡大しましたが、LS600h最大の弱点だったことは間違いありません。
LS600hは、2012年にスピンドルグリルを採用するなど外観を刷新するビッグマイナーチェンジを実施。
2017年に5代目が登場したことで生産終了となりました。
大排気量&マルチシリンダーという高級車の常識を覆した
LS600hの特徴
パワーユニット
国内でLSとして販売を開始した際、LS460には4.6リッターV8エンジンが搭載されていましたが、半年後に登場したLS600hにはハイブリッドユニットが採用されています。
LS600hに搭載されたパワーユニットは、5リッターV8エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドユニット。システム最高出力は618馬力、最大トルクは83.6kgmを誇りました。
このパワーユニットは、初代プリウス以降、トヨタのハイブリッド車に採用されてきたTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)がベースとなっています。
システムを簡単に説明すると、エンジンからの動力を車輪とジェネレーターに分割し、機械動力伝達系と電気動力伝達系へそれぞれ振り分けるトヨタ独自の機構。遊星歯車機構でエンジンとモーター、発電機を繋ぐことが大きな特徴といえるでしょう。
ただ、プリウスのユニットと比べ、フラッグシップモデルとしてふさわしいパワーを確保するためにコントロールユニットを新たに設計し、モーターの出力とトルクを向上。モーターに使用される永久磁石の配列を他モデルとは変更して静粛性も高めました。
バッテリーはニッケル水素電池を使用。放電電流が大きくなるLS600hに搭載するため、リヤクーラーから冷気を導入する冷却システムを備えています。
また、モーターやバッテリーのみならず、V8エンジンもハイブリッドユニットに最適化するためチューニングが施されていることも忘れてはなりません。
LS460に搭載された1URエンジンをロングストローク化し排気量を5リッターに拡大。ハイブリッド車であるため頻繁にエンジンの停止・再始動が行われることに対応すべく、吸気バルブタイミングを遅らせる制御などが施されています。
2012年に行われたビッグマイナーチェンジでは、システムの大きな変更こそありませんでしたがエネルギー回生を見直し燃費の向上を実現しました。
フルタイム4WDシステム
レクサスLS600hは、全グレードでフルタイム4WDを採用。その理由は5リッターV8エンジンとモーターが織りなす最大トルクを、FRでは確実に路面に伝えることができなかったからです。
この4WDシステムは、トルセン式のセンターデフを備えた機械式フルタイム4WD。センターデフは遊星歯車を利用するトルク配分機構を備えていました。
前後トルク配分比率は40:60ですが、加速時やコーナリング中は30:70となるなど、状況に応じたトルクを前後輪に提供。4WDながらワインディングロードなどではFRに近い感覚で操縦が可能でした。
その他、LS460との違い
上に挙げてきたパワーユニットやロングボディ、駆動方式はLS460が備えていないもの。これ以外にもLS600hのみが装備する機能やシステムがありました。
まず外観で目を引いたのが3眼プロジェクターライト(ロービーム)にLEDを採用したヘッドライト。プロジェクター式ディスチャージヘッドライトを採用していたLS460に対し、量産車としては世界で初となる光源にLEDを採用したヘッドライトを採用しました。
後にLEDヘッドライトはLS460にも採用されましたが、デビュー当時はLS600hの大きな特徴だったのです。
また、先に挙げたようにLS600hがフルタイム4WDシステムを装備したことでフロントサスペンションを新設計。マルチリンク式であることは変わりませんが、前輪にもドライブシャフトが通るため、ロワアームの配置が変更されました。
サスペンション絡みでいうと、LS600hに設定された「バージョンS」には前後のスタビライザーに電気モーターと減速機を組み合わせたアクチュエーターを内蔵。
路面状況や車両の状態に応じて車体の最適なスタビライザー剛性を発揮するアクティブスタビライザーを標準装備しましたが、この機能もLS460には用意されていません。
レクサスLSの歴史
レクサスLSの源流がセルシオであることは皆さんご存知でしょう。セルシオおよびレクサスLSは、1989年に初代がデビュー。大衆車の販売が主だったトヨタのブランド力を向上させる高級車として、また、北米で1987年から展開をスタートしたラグジュアリーブランド「レクサス」の基幹モデルとなるべく開発されました。
北米のレクサスチャンネルでは「レクサスLS」と名付けられた初代は端正なスタイリングが特徴。ライバルとしてメルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズを想定して開発された初代ですが、他の高級車と比べ際立っていたのが静粛性です。
その後の高級車に大きな影響を与えたのは、エンジンや車体のノイズ発生源を遮音材などで抑え込むのではなく、元から断ち切る「源流対策」を採用したこと。ライバル車とくらべ圧倒的な静粛性を実現したのです。
そんな初代は国内外で大ヒット。1994年に2代目、2000年8月に3代目がモデルチェンジで登場しましたが、3代目は最後にセルシオとして国内販売されたモデルとなりました。
※写真は3代目トヨタ・セルシオ
その理由は国内でもレクサス店を展開するため。今回のテーマとなるLS600hがラインアップされた4代目は2005年に登場しましたが、国内でもレクサス店が立ち上がったことでセルシオではなくLSとして販売されています。
その4代目は、登場から11年というロングライフとなり、2017年に5代目へバトンタッチ。
4代目までに用意されていたV8エンジンを廃止しV6エンジンやハイブリッドユニットを採用するなど、いまの時代にふさわしい高級車として現在も販売が続けられています。
まとめ
レクサスLS600hが登場した当時、すでにレクサスGSにはハイブリッド車が設定されていたものの、ライバルとなる同クラスの高級セダンにハイブリッドユニットを搭載するという選択肢はありませんでした。
ただ、現代の高級車といえばご存知の通り、ハイブリッド車はもちろんPHEVやBEVなどがあたりまえのように存在してきています。
そんな流れを作ったのは間違いなくLS600hで、同車が登場していなかったら多気筒&大排気量ユニットを積む高級車がいまだに中心だったかもしれません。
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みんなのコメント
今でこそ当たり前だけど、この巨体でリッター10は当時としてはありえない数字だった。