■ミニバンだけど、パワーがすごい!
1990年代からのステーションワゴンブームがひと段落すると、室内が広く荷物も多く詰めるミニバンの人気が高まりました。
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かつては、1BOX(ワンボックス)と呼ばれていたエンジンがキャビンの下にある商用バンをベースに、乗用車化したものが主流でしたが、前面衝突時の安全確保の観点などから現在ではフロントにエンジンがレイアウトされたものがほとんどです。
ボディサイズは取り回しのしやすいコンパクトなものや、装備が充実して大きさも価格も高級車並みのモデルまでさまざまですが、ミニバンは家族連れでドライブや買い物を楽しむユーザーに広く受け入れられています。
最近では、余裕ある走りのためにターボエンジンやハイブリッドも増えましたが、なかにはミニバンにこれほどパワーが必要なのか、と思ってしまうようなクルマもあります。
そこで、大パワーなエンジンを搭載した高性能ミニバンを、新旧合わせて3車種紹介します。
●ホンダ「エリシオン プレステージ」300馬力
2004年に発売されたホンダ「エリシオン」は、広い室内空間を持った高級ミニバンでした。
新開発された低床プラットフォームは「オデッセイ」よりも大きな全長/全幅で、しかも安定した操縦安定性を持っていました。
デビュー時にラインナップされていた最高出力250馬力の3リッターV型6気筒SOHCエンジンは余裕の走りを見せてくれましたが、160馬力の2.4リッター直列4気筒DOHCエンジン搭載のベーシックグレードでも何不自由なく走らせることが可能でした。
さらに2007年追加の「PRESTIGE(プレステージ)」では、同時期の「レジェンド」と同じ3.5リッターV型6気筒SOHCエンジンを搭載し、そのスペックは最高出力300馬力/最大トルク36.0kgmで、1940kgの車重(PRESTIGE SG・FF)を感じさせない程に軽やかに走らせ、一見すると大人しそうな外観に反して国内ミニバン最速といわれました。
残念ながらエリシオンは2013年に国内販売を終了してしまいましたが、2代目エリシオンは控えめな2.4リッターエンジンを搭載して、5代目オデッセイの兄弟車として、いまも中国で販売されています。
■スポーツカーの心臓を持った2台のミニバン
●日産「プレーリーリバティ ハイウェイスターGT4」230馬力
まだミニバンという呼び方がなかった1982年に日産「プレーリー」は登場しました。両側センターピラーレス構造のスライドドアや、トーションバー・スプリングを横置きにして超低床レイアウトを実現するなど、画期的でチャレンジングなクルマでした。
しかし、低い動力性能などからセールス的には成功せず、2代目以降は「ブルーバード」をベースにした普通のミニバンに生まれ変わりました。
2代目プレーリーのマイナーチェンジで、当時の日産の高性能エンジンである2リッター直列4気筒DOHCのSR20DE型にスイッチ。
1998年に登場した3代目では「アベニール」と共通のサスペンションやパワートレインにあらためられ、車名も「プレーリーリバティ」となり、純正エアロパーツ装着の「ハイウェイスター」も設定されました。
そして1999年、「ハイウェイスター4WD」に、当時「シルビアK’s」や「ブルーバードSSSターボ」に搭載されていた、日産の2リッタークラス最強のパワーユニットSR20DET型エンジンを搭載する「プレーリーリバティ ハイウェイスターGT4」が登場しました。
最高出力230馬力/最大トルク28.0kgmのスペックを持つ2リッター4気筒DOHCターボエンジンは、シルビアのチューニングパーツが流用できたため、ターボのブーストアップなどにより簡単に260馬力程度まで出力を高められたといいます。
日産車好きからは熱い視線が向けられましたが、発表時に販売目標台数が月間200台と記されていたため、決して多くの台数が販売されたわけでなく、いまとなっては非常にレアなクルマになっています。
●三菱「シャリオ リゾートランナーGT」230馬力
1983年に発売された三菱「シャリオ」は、日産「プレーリー」と同様に2ボックスボディに3列シートを備えたミニバンの先駆けともいえるクルマでした。
デビュー時の駆動方式はFFのみでしたが、後にパートタイム4WDが追加され、その後にはビスカスカップリング式フルタイム4WDへと進化。国内仕様の「ランサーターボ」と同じ1.8リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載したモデルも存在しました。
1991年には「RVR」と主要コンポーネンツを共有する兄弟車となった2代目シャリオが登場。多彩なシートアレンジなど使い勝手の良さや、ミニバンという呼び名が定着しはじめたこともあり、日常でシャリオを目にすることが増えました。
1995年には、ハイルーフに前席チルトアップガラスルーフを備えた「リゾートランナーシリーズ」に、当時の三菱車で最もスポーティなパワーユニットだった「ランサーエボリューション」と同じ2リッター直列4気筒DOHCインタークーラーターボの4G63型エンジンを搭載した「リゾートランナーGT」が追加ラインナップされました。
最高出力230馬力/最大トルク29.5kgm(5MT車)のスペックは、ランサーエボリューションよりはマイルドでしたが、ミニバンとは思えない鋭い加速を見せてくれました。
このクルマも販売数は多くなかったため非常に稀少な存在で、いまでは滅多に見かけることはありません。
※ ※ ※
今回、紹介したプレーリーリバティやシャリオのようなクルマは、ミニバンが成長過程にあった時代のものです。
本来、ミニバンに必要以上の動力性能はいらないのですが、こんなマニアックなミニバンが、かつては存在していまいた。
それだけ、メーカーも余裕があったということではないでしょうか。
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