「昔はこうだったのに、今は何でこうなっちゃっうの?」。古き良きものを懐かしみ愛好するオールドファンにとって、イマドキのクルマは少々魅力に欠けるところがあるのかもしれない。
しかし、よ~く調べてみると、良くも悪くも“らしくない”ことがそのクルマの魅力に直結していたりすることも! “らしくないこと”をどのように捉えるか、信じるか信じないかはあなた次第?
名門首位奪還の原動力! 新型カローラクロス 絶好調の秘訣と気になる短所
文/FK、写真/日産、トヨタ、ホンダ、マツダ
[gallink]
スカイラインはグランドツーリングカーからプレミアムスポーツセダンへ
2019年9月のビッグマイナーチェンジで追加された400R。史上最高の最高出力405psを誇る最強モデル。最大トルクも47.8kgmで、強烈な加速力を発揮
1957年4月の登場以来、日産を代表するグランドツーリングカーとして多くのファンを虜にしてきたスカイラインだが、2001年6月のフルモデルチェンジで登場した11代目V35型で路線変更に踏み切ったことは当時、賛否両論を呼んだ。
翌2002年から行われる北米での販売を見据えたフルモデルチェンジで、エンジンはスカイラインのDNAとも言える直6からV6へ移行。ショートオーバーハングと大径タイヤの採用でスポーティさを打ち出したエクステリアも、それまでの直線基調なものから曲線を多用したものに様変わりした。歴代モデルの概念を変える21世紀のプレミアムスポーツセダンへと進化したことは間違いなかったが……。
その後、2006年11月のフルモデルチェンジを経て、2013年11月に現行の13代目V37型が登場。その際にインフィニティの開発で培った技術力&デザイン力の証としてインフィニティバッジを採用するも、これまたオールドファンをがっかりさせる結果に。
しかし、2019年9月のマイナーチェンジで日産バッジの復活ととともにスカイライン史上最高の400psを超える最高出力を実現した400Rをラインナップし、徐々に“らしさ”を取り戻しつつあるスカイライン。開発中止・生産終了の噂もあるが、果たして?
今までにないアプローチで鼓動デザインの新たな方向性を示すMX-30
2020年に登場したマイルドハイブリッドモデル。直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」に独自のマイルドハイブリッドシステム「M ハイブリッド」を組み合わせた 「e-SKYACTIV G」を搭載
“魂動-SOUL of MOTION”の哲学のもと、生命感あふれるダイナミックなデザインを採用して新しいブランドイメージを確立したマツダ。
魂動デザインが醸し出すエレガントで上質なスタイルはいまやマツダの代名詞となっているが、そのいっぽうで統一感のある現行モデルのラインナップはすべて同じように見えてしまうこともまた事実……。
しかし、2020年10月に登場したMX-30はセンターオープン式のフリースタイルドアの採用をはじめ、それまでの魂動デザインの流れとは少々異なる個性を感じずにはいられない1台に仕上げられている。なぜ、そのような個性を感じるのか?
例えば、シグネチャーウイング、五角形のフロントグリル、ボディのリフレクションによる光の移ろいといった鼓動デザインの象徴とも言うべきディテールがMX-30にはいっさい採用されていないことも要因のひとつだろう。
加えて、最新の魂動デザインで提唱する“要素をそぎ落とすことの美しさ”から、純粋に塊が印象に残るという1点にのみフォーカスを当てた力強くてシンプルな造形も見る者に新しい価値を気づかせてくれるだけの存在感を発揮している。
今までにないアプローチで魂動デザインの新たな方向性を示した結果が、“らしくない”につながっている。
実用性よりもカッコ良さを優先したC-HRはトヨタの異端児
コンセプトカーのまま市販化されたような個性的な外観。保守的なイメージがあったトヨタのデザインだったが、C-HRはその既成概念を打ち破った「らしくない」クルマと言えるだろう
2014年のパリモーターショーで新世代コンパクトクロスオーバーのデザインスタディモデルとして発表されたコンセプトカーの姿カタチをそのままに、2016年12月に発売されたC-HR。
発売当初の人気は抜群に高く、発売1カ月後の受注台数は月間目標6000台に対して約4万8000台という好調な立ち上がりを記録した。
その主な要因としてあげられるのはTNGAによる新プラットフォームを採用した低重心パッケージ、レスポンス・リニアリティ・コンシステンシーを突き詰めた優れた走行性能、エコカー減税の免税対象となるハイブリッド車の30.2km/Lという低燃費性能などだが、それ以上にスピード感あふれるキャビン形状、ダイヤモンドをモチーフに大きく絞り込んだボディと大きく張り出したホイールフレアとの対比といった個性が際立つ斬新なスタイリングこそが人気を獲得した一番の要因としてあげられる。
そんな個性的なスタイリングを優先させたこともあり、居住性や積載性といった実用面における使い勝手はライバルのコンパクトSUVに比べて少々難アリ……と、万人受けするクルマを中心にラインナップを展開するトヨタ車らしくない一面も持っている。
とはいえ、決して優等生然としていないところもC-HRの魅力なのかもしれない。
“らしくない”と思っていたヴェゼル、ホントのところは……
2021年4月の登場から1カ月で月間販売計画の6倍以上となる受注台数を記録。最近、安パイが多いと言われるホンダだが、ヴェゼルも安パイに向かっている!?
2021年4月の発売から約1カ月後の受注台数が3万2000台を超える好調なセールスを記録した2代目ヴェゼル。
日常シーンの大半をモーターで走行することで低燃費を実現した2モーターハイブリッドシステムの“e:HEV”や、最新の安全運転支援システムである“Honda SENSING”の搭載がSUVユーザーだけでなく、ミニバン・ハッチバック・セダンからの乗り換え組にも高く評価された結果なのだとか。
加えて、エクステリアも強い存在感と精悍さをあわせ持ったフロントデザインやスリークなプロポーションが購入者から好評を博している。
しかし、Dynamic Cross SolidをコンセプトにSUVの力強さとクーペのあでやかさを上質に磨き上げた初代と比べると、2代目は良くも悪くもコンベンショナルな印象を受けざるを得ない。しかも、SNSなどでは「某社の某車に似ている」という意見も数知れず……。
しかし、侮るなかれ! 実はF1パワーユニットの設計・開発などを行う風洞実験施設で検証を重ねてクラストップレベルの空力性能を追求、シンプルで美しいエクステリアデザインと優れた空力性能を見事に両立しているのだ。
そう考えると、ヴェゼルは“らしくない”どころか、実はHondaイズムを継承するホンダらしい一台と思わずにはいられない!?
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